夜、神楽はパチリと目が覚める。
蔵にいたはずなのに何故か今は畳の上で布団の中に入っており、寝息が聞こえ天井から横を見ればそこには雪がこちらを向きながら眠っていた。
実はあれから天人を吊るした後、雪が銀時と土方に沖田と神楽を運んでもらうよう頼んだのだ。
土方は一応手練れだと認めている沖田が、そして銀時は夜兎族である神楽が一緒になって気を失っているのを見て『どうしたのこれ』と雪に問う。
2人の問いかけに雪はただ目を逸らすしか返せず、どう見ても共倒れになった形跡もなく更には目を逸らす雪の態度を見て2人はハッと察した。
ゆっくりと雪に振り返ればそれに合わせて雪も顔を2人から逸らす。
それを見て土方は大人しく見える雪に妙の影を見たのか顔を引きつらせ、銀時は嫌でも同じく再確認させられる事となった。
「雪アル」
横を向いて眠っている雪を認識した神楽は自然と口に出していた。
ジッと雪を見れば当然だがメガネを外しておりその素顔を露わにさせていた。
無防備に眠っているその顔はとても幼げで、つい甘えてしまうが雪が16歳というのを神楽に思い出させる。
雪は到底自分と2歳差だとは思えないほどしっかりして坂田家を支えている存在である。
きっと雪がいないともう坂田家は…万事屋はやっていけないだろう……色々な意味で。
神楽は何故か雪といるとまるで赤ん坊になったように無性に雪に甘えたくなるのだ。
それは雪の母性が満タンどころかあふれ出ているからだろう。
幼くして母を亡くした神楽にとって、母の存在を雪で感じていた。
「……………」
ゆっくりと体を起こし、眠る雪を神楽は見下ろす。
自分の向けている視線など気づかず雪は呑気に眠っていた。
くうくうとそれはもう呑気に。
ここで殺気を雪に向けたらどうなるか…神楽は考えた。
勿論母と思っている雪に殺気など本気で向けるわけがない。
しかし何故か急にそう思ったのだ。
そして考えられる結果としては雪は確実に殺気に気づかない。
自分を受け入れてくれているらしい雪はきっと気づかない。
そして神楽の殺気に銀時が気づくのだ。
きっとその殺気の正体を知って驚くが自分が雪を手にかける動きを見せれば銀時は雪を助け出すだろう。
そして殺しはしないだろうが愛刀である木刀を向けるに違いない。
きっと…きっと、『やめろ!神楽!!』と言って止めようとしてくれるに違いない。
そして止まった自分にホッと安堵しながら『何してんだよ、てめえはよォ』と呆れた声を掛けるのだ。
そして…俯く自分の頭を撫でてちょっと叱ってくれるのだ。
そして雪も『何か事情があったんでしょ?仕方ないよ』と笑って許してくれるのだ。
そこまで想像し神楽はギュッと掛布団を握った。
神楽は…怖いのだ。
夜兎である自分が。
夜兎であるからこそのこの力が。
夜兎族の力はすさまじく、雪や銀時のような地球の生き物なんてあっという間に死んでしまうだろう。
あの時の動物のように…
だから銀時や雪を壊さないか…殺さないか怖かった。
雪のおっぱいに抱き付くのは本能だから仕方ないと真顔で言い切れるが、自分から雪の小さくて柔らかい手を繋いでいいのだろうか…自分から雪に華奢で細い体に抱き付いていいのだろうか…またつい力を入れてしまい殺してしまうのではないか…そう思ってしまえば神楽は自分から雪に触れることは出来なくなった。
だから雪から手を繋いでくれようとした事は嬉しかったし、心配も、女の子扱いも、とても嬉しかった。
「か、ぐらちゃん…?」
「…!」
物思いに耽っていたらしい神楽は雪の声にハッと我に返る。
いつの間にか落ちていた視線を雪に向ければ少し体を起こし目をこすっている雪がいた。
眠気眼に見上げてくる雪に神楽は更に胸が締め付けられた。
「どうしたの?」
「なんでも、ない、アル」
瞬きをしながら自分を見上げて小首を傾げる雪に神楽は笑った。
その笑みはとても無理に笑っており、寝ぼけていなかったら雪も気づいていただろう。
雪は神楽が首を振ったのを見てふにゃりと笑い、『ならよかった』と呟きながら布団に戻っていく。
それを見て神楽は『あっ』と思わず声を零してしまった。
また眠ってしまう雪に神楽は『嫌だ』と思ってしまった。
また静かな中一人起きているのが、嫌だった。
声を零した神楽に雪は閉じかけていた目をゆっくりと開きにこりと笑った。
その笑みに神楽はドキリとさせる。
「おいで」
雪は笑みをそのままに布団を中から持ち上げて捲った。
雪の言葉が今の神楽には意味が理解できなくて固まっていると雪から『おいで、一緒に寝よう』と言われ更に固まった。
一向に動かない神楽に雪は嫌なのだと思ったのか悲しげに笑い捲っていた布団を元に戻した。
「ごめんね、もう一人でねれるもんね」
「………、……」
『おやすみ』、と呟き目を瞑る雪に神楽は何とも言えない苦しみが襲う。
そうではないのだ。
雪に悲しい思いにさせたくはないのだ。
本当は捲られた雪の布団に入りたいのだ。
布団に入って雪と一緒に寝て、雪の体温を感じて眠りたいのだ。
「雪!」
「ん?」
神楽は脳裏に雪の悲しげな笑顔が離れなかった。
いらない世話だと思わせてしまった雪に謝りたかった。
だけど神楽は素直に伝える術を持っていなかった。
だから神楽は別の手段をとることにした。
名前を呼ばれた雪はうつらうつらとして重くなっていた瞼を無理やり開き、視線を神楽に向ける。
「さ、寒い…から…入れてほしい、アル…」
眼鏡がない雪の目にはぼんやりと神楽が映っているだけにしか見えない。
だから今、神楽がどんな表情を浮かべているのか分からないだろう。
しかも寝ぼけてもいるため脳が正常に動かないのだ。
真夏に寒いと零す神楽に雪は本来の役目であるツッコミはお休みしていた。
もう一度『寒いアル』と呟く神楽に雪はふにゃりと笑い、再び中から布団を捲ってあげた。
「おいで」
そう呟き少し間を開けてあげれば神楽は恐る恐ると中に入ってきた。
緊張した面持ちで雪の腕に入る神楽に雪はギュッと抱きしめる。
すると自分の腕の中にいる神楽がビクリと肩を揺らし、雪を見上げた。
雪は神楽に腕枕をしてやり満足なのか更に笑みを深めた。
「あったかい?」
雪の問いに神楽は一瞬目を見張る。
しかしすぐに目を瞑って雪の胸に顔を寄せ頷いた。
頷いた神楽を見て『よかった』と呟き抱きしめる力を強めながら神楽の頭に顔を埋め、雪は眠りについた。
「…あったかいアル…雪…」
すぐに雪の寝息が聞こえ、神楽は、すり…、とまた雪にすり寄った。
蔵にいたはずなのに何故か今は畳の上で布団の中に入っており、寝息が聞こえ天井から横を見ればそこには雪がこちらを向きながら眠っていた。
実はあれから天人を吊るした後、雪が銀時と土方に沖田と神楽を運んでもらうよう頼んだのだ。
土方は一応手練れだと認めている沖田が、そして銀時は夜兎族である神楽が一緒になって気を失っているのを見て『どうしたのこれ』と雪に問う。
2人の問いかけに雪はただ目を逸らすしか返せず、どう見ても共倒れになった形跡もなく更には目を逸らす雪の態度を見て2人はハッと察した。
ゆっくりと雪に振り返ればそれに合わせて雪も顔を2人から逸らす。
それを見て土方は大人しく見える雪に妙の影を見たのか顔を引きつらせ、銀時は嫌でも同じく再確認させられる事となった。
「雪アル」
横を向いて眠っている雪を認識した神楽は自然と口に出していた。
ジッと雪を見れば当然だがメガネを外しておりその素顔を露わにさせていた。
無防備に眠っているその顔はとても幼げで、つい甘えてしまうが雪が16歳というのを神楽に思い出させる。
雪は到底自分と2歳差だとは思えないほどしっかりして坂田家を支えている存在である。
きっと雪がいないともう坂田家は…万事屋はやっていけないだろう……色々な意味で。
神楽は何故か雪といるとまるで赤ん坊になったように無性に雪に甘えたくなるのだ。
それは雪の母性が満タンどころかあふれ出ているからだろう。
幼くして母を亡くした神楽にとって、母の存在を雪で感じていた。
「……………」
ゆっくりと体を起こし、眠る雪を神楽は見下ろす。
自分の向けている視線など気づかず雪は呑気に眠っていた。
くうくうとそれはもう呑気に。
ここで殺気を雪に向けたらどうなるか…神楽は考えた。
勿論母と思っている雪に殺気など本気で向けるわけがない。
しかし何故か急にそう思ったのだ。
そして考えられる結果としては雪は確実に殺気に気づかない。
自分を受け入れてくれているらしい雪はきっと気づかない。
そして神楽の殺気に銀時が気づくのだ。
きっとその殺気の正体を知って驚くが自分が雪を手にかける動きを見せれば銀時は雪を助け出すだろう。
そして殺しはしないだろうが愛刀である木刀を向けるに違いない。
きっと…きっと、『やめろ!神楽!!』と言って止めようとしてくれるに違いない。
そして止まった自分にホッと安堵しながら『何してんだよ、てめえはよォ』と呆れた声を掛けるのだ。
そして…俯く自分の頭を撫でてちょっと叱ってくれるのだ。
そして雪も『何か事情があったんでしょ?仕方ないよ』と笑って許してくれるのだ。
そこまで想像し神楽はギュッと掛布団を握った。
神楽は…怖いのだ。
夜兎である自分が。
夜兎であるからこそのこの力が。
夜兎族の力はすさまじく、雪や銀時のような地球の生き物なんてあっという間に死んでしまうだろう。
あの時の動物のように…
だから銀時や雪を壊さないか…殺さないか怖かった。
雪のおっぱいに抱き付くのは本能だから仕方ないと真顔で言い切れるが、自分から雪の小さくて柔らかい手を繋いでいいのだろうか…自分から雪に華奢で細い体に抱き付いていいのだろうか…またつい力を入れてしまい殺してしまうのではないか…そう思ってしまえば神楽は自分から雪に触れることは出来なくなった。
だから雪から手を繋いでくれようとした事は嬉しかったし、心配も、女の子扱いも、とても嬉しかった。
「か、ぐらちゃん…?」
「…!」
物思いに耽っていたらしい神楽は雪の声にハッと我に返る。
いつの間にか落ちていた視線を雪に向ければ少し体を起こし目をこすっている雪がいた。
眠気眼に見上げてくる雪に神楽は更に胸が締め付けられた。
「どうしたの?」
「なんでも、ない、アル」
瞬きをしながら自分を見上げて小首を傾げる雪に神楽は笑った。
その笑みはとても無理に笑っており、寝ぼけていなかったら雪も気づいていただろう。
雪は神楽が首を振ったのを見てふにゃりと笑い、『ならよかった』と呟きながら布団に戻っていく。
それを見て神楽は『あっ』と思わず声を零してしまった。
また眠ってしまう雪に神楽は『嫌だ』と思ってしまった。
また静かな中一人起きているのが、嫌だった。
声を零した神楽に雪は閉じかけていた目をゆっくりと開きにこりと笑った。
その笑みに神楽はドキリとさせる。
「おいで」
雪は笑みをそのままに布団を中から持ち上げて捲った。
雪の言葉が今の神楽には意味が理解できなくて固まっていると雪から『おいで、一緒に寝よう』と言われ更に固まった。
一向に動かない神楽に雪は嫌なのだと思ったのか悲しげに笑い捲っていた布団を元に戻した。
「ごめんね、もう一人でねれるもんね」
「………、……」
『おやすみ』、と呟き目を瞑る雪に神楽は何とも言えない苦しみが襲う。
そうではないのだ。
雪に悲しい思いにさせたくはないのだ。
本当は捲られた雪の布団に入りたいのだ。
布団に入って雪と一緒に寝て、雪の体温を感じて眠りたいのだ。
「雪!」
「ん?」
神楽は脳裏に雪の悲しげな笑顔が離れなかった。
いらない世話だと思わせてしまった雪に謝りたかった。
だけど神楽は素直に伝える術を持っていなかった。
だから神楽は別の手段をとることにした。
名前を呼ばれた雪はうつらうつらとして重くなっていた瞼を無理やり開き、視線を神楽に向ける。
「さ、寒い…から…入れてほしい、アル…」
眼鏡がない雪の目にはぼんやりと神楽が映っているだけにしか見えない。
だから今、神楽がどんな表情を浮かべているのか分からないだろう。
しかも寝ぼけてもいるため脳が正常に動かないのだ。
真夏に寒いと零す神楽に雪は本来の役目であるツッコミはお休みしていた。
もう一度『寒いアル』と呟く神楽に雪はふにゃりと笑い、再び中から布団を捲ってあげた。
「おいで」
そう呟き少し間を開けてあげれば神楽は恐る恐ると中に入ってきた。
緊張した面持ちで雪の腕に入る神楽に雪はギュッと抱きしめる。
すると自分の腕の中にいる神楽がビクリと肩を揺らし、雪を見上げた。
雪は神楽に腕枕をしてやり満足なのか更に笑みを深めた。
「あったかい?」
雪の問いに神楽は一瞬目を見張る。
しかしすぐに目を瞑って雪の胸に顔を寄せ頷いた。
頷いた神楽を見て『よかった』と呟き抱きしめる力を強めながら神楽の頭に顔を埋め、雪は眠りについた。
「…あったかいアル…雪…」
すぐに雪の寝息が聞こえ、神楽は、すり…、とまた雪にすり寄った。
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