ゴリラの妖精・妖怪マヨネーズは見つかったものの肝心のカブトムシが見当たらなかった。
某ストーカーは3人とも完全になかったこととし、その話題には一切触れない。
『見つかりませんね〜』とそろそろ本気で帰りたくなってきた雪は2人が諦めるようにそう何度も呟くもやはり二人は全く相手にする気はないようで、雪は肩を落としとぼとぼと2人の後ろを歩いていた。
すると上から物音がし、雪はふと顔を上げる。
そこには…文字通り巨大なカブトムシがいた。
「ひっ―――ギャーー!!なんじゃありゃアアア!!」
虫は嫌いだがどちらかと言えば平気な方だ。
だが平気とはいえ流石に雪もあれほど大きなカブトムシに背筋をひやっとさせた。
雪が叫び銀時と神楽も気づけば2人は嬉々として取り網を放り捨て巨大なカブトムシがいる木をけり始める。
「うそぉ!!嘘だと言ってよ!!とんでもねェ大物じゃねえか!!」
「お、大物すぎでしょーが!!きもちわるっ!」
「んなこたァいいんだよ!!何もたもたしてんだ!早く落とせオラァ!!」
「オラオラァ!!死ねオラァ!!」
神楽と銀時は自ら進んで木を蹴ってカブトムシを落としに掛かり、雪は鳥肌が立っている腕をさすっていたが銀時に言われ渋々一緒に木を蹴ってカブトムシを落とそうとしていた。
3人によってカブトムシはポロリと地面に落とされる。
「これで定春28号の仇が討て――…」
ぽろりと落ちていった巨大なカブトムシに神楽は大喜びで駆けつけた。
これで死んでしまった定春28号の仇が討てる、と。
しかし…
「何しやがんでィ」
巨大なカブトムシだと思ったソレは…巨大なカブトムシの着ぐるみを着た沖田だった。
沖田は落ちた衝撃から鼻血を出し駆け寄った神楽を睨む。
「お前こんな所で何やってるアルか!!」
巨大なカブトムシさえ捕まえればあのサド野郎をギャフンと言わせれる!!、と神楽は大いに喜んだ。
そして銀時はこんだけでかけりゃ大金になる、と大いに喜んだ。
更には雪は巨大すぎて若干引いていた。
しかし実際には沖田が着ぐるみ着ているだけで生き物は生き物でも売れない生き物だった。
そして生き物は生き物でも、対戦相手だった。
神楽は期待させられた分怒りはその倍である。
その怒りを込めて雪以外の2人は動けないのをいいことに沖田をボッコボコのフルボッコにしていく。
裏返しにされ仰向けになりフルボッコで鼻血を更に流しながら睨む神楽に沖田は相変わらずの無表情で答える。
「見たら分かるだろィ。」
「分かんねえよ!!お前が馬鹿ということ以外分かんねえよ!!」
「ちょっ、ごめ、起こして…1人じゃ起きられないんでさァ……仲間のフリして奴らに接触する作戦が台無しでィ」
仰向けにされあわあわと手を振って起きようとするも着ぐるみの形から1人で起きられずにいる沖田は誰に言うでもなく起こしてほしいと零した。
誰に言うでもなく、とは言ったが神楽が万が一でも手を差し出されても決してその手は取らないだろう。
雪は体を起こそうとしても起きられない沖田を見ながら『なんでそんなん選んだんすか』と呆れたように突っ込んだ。
「おい、何の騒ぎだ?」
沖田を2人でリンチしていた音に気づいた真選組が集まってきた。
黒い制服の中に光り輝くハチミツ漬けの男が異様に目立っている。
雪は流石に姉のストーカーとはいえ居たたまれなくなってそっとゴリラの妖精、近藤から目を逸らした。
「あ!お前ら!!こんな所で何やってんだ!?」
「何やってるだって…全身ハチミツまみれの人に言う資格があると思ってんですか…」
「これは職務質問だ!いくら将来の義妹になるお雪ちゃんとはいえ仕事は仕事だ。さあ!ちゃんと答えなさい!」
「誰が義妹だ!!私は姉上との交際も結婚も許さんぞ!!」
「なにを言う!お雪ちゃん!!確かにお妙さんは将来の俺の奥さんだが…今のは鷹臣の奥さんになるよね的なニュアンスだ!」
「どんなニュアンス!?どうしたら聞き分けできるの!?」
会うごとに『義妹』だ『将来の妹だ』だと付ける姉のストーカーである近藤に雪は声を上げた。
指差す雪に土方は怒る気力はない。
むしろ『もっと言ってやれ。再起不能になるまで。』と思っていた。
そんな土方など露知らず隣にいるハチミツまみれの上司、近藤は『な!鷹臣!』と賛同を得ようとちょっと離れた場所に立ち頭に包帯を巻いている鷹臣に振り返った。
兄に振り返られた鷹臣はハチミツに包まれふんどし一枚の兄から目を逸らしながら『そうですね、ゴリラの妖精…あ、間違えた…兄上。』と呟く。
鷹臣は『え、ちょ…なに!?今ゴリラの妖精って言った!?ゴリラの妖精ってなに!?ねえ鷹臣くん!!なんなの!?』とわめく兄など放置し、雪の前に歩み寄りそっと壊れ物を触るように優しく雪の手を握った。
「お久しぶりですね、お雪さん…」
「は、はあ…」
「こんな広大に広がる森であなたと会えるなんて、やっぱり俺とお雪さんは結ばれる運命なんだよ。だから俺の奥さんになろう!」
「「だからでなんで奥さんになんだーー!!!」」
ストーカーは、鷹臣は、仕事が忙しくどこかのストーカーのように毎日はこれない。
それには助かっている。
例え仕事内容が血生臭くて引きつった笑みしか返せなくても。
手をギュッと握りキラキラ輝く鷹臣はまさに王子そのもの。
どこかのハリウッド映画でもイケメン俳優として名が上がりそうなほど光輝きイケメンだった。
だが姉がイケメンな雪にはそのイケメンオーラは通用せず生返事しか返せない。
更に生返事しか返さなかった雪に調子に乗った鷹臣は結婚を迫るも土方に首根っこ掴まれ、雪は銀時に脇に手を差し入れられ抱き上げられてしまった。
「何するんですか!十四郎さん!!」
「何するんですか!じゃねえよ!!お前会って早々何言ってんだ!!」
「だって最近お雪さんと会ってなかったんだから仕方ないじゃないですか!!写真で我慢するしかないじゃないですか!!」
「写真っておま…それ盗撮だろうが!!警察が盗撮してんじゃねえぞ!!お前を逮捕すんぞ!!」
「トシ!!よせ!!」
「――!」
首根っこ掴まれた鷹臣は土方を睨み、土方もそんな鷹臣にギロリと睨む。
ここで銀時やら沖田やらが手を握ればセクハラだと言って切って捨てれるが、土方は鷹臣に甘いため首根っこ掴む事で収まっている。
ムッとさせる鷹臣に土方が怒鳴りつければそれを見た兄の近藤が弟を怒鳴る土方に声を上げた。
土方はまさか近藤に止めれるとは思ってもみなかったのか目を丸くし近藤を振り返る。
格好はどうあれ腕を組み怒号を止めた近藤に雪は少し見直した。
「何で止めんだ近藤さん…こいつ盗撮してんだぞ」
「確かに、盗撮はいかんな…だが、鷹臣はそれほどお雪ちゃんを想ってるっていうことだ…許してやってくれないか?」
「いやいやいや!許さんよ!?そこ許しちゃダメだろ!?どうしてそこで許されると思ってるの!?盗撮だろ!?なあ盗撮って犯罪だったよな!?そこは兄であるあんたが正さなきゃいけない道だよな!そこは警察である俺らが正さなきゃいけない道なんだよな!?ほんとあんたどんだけブラコンなんだよ!!」
しかし出てきた言葉はその見直した気持ちを粉々に砕け散らせ雪を裏切る言葉だった。
盗撮された本人を目の前に許せと抜かす近藤に雪は眉をピクリと上げる。
土方が突っ込んでくれているだけ救いはあるだろう。
そんな真選組のコントを見ていると横から隊員に起こしてもらった沖田が『そういやァ』と何かを思い出したように呟く。
「俺ァ見たんですがねィ……近藤さん、あんたこの間タッキーから姐さんの写真貰っていやしたっけねェ…ありゃどう見ても隠し撮りでさァ」
「え、マジで…近藤さん、マジか」
「……………」
沖田の情報に土方は思わず目を丸くさせ近藤を見た。
鷹臣も釣られて兄を見上げ、周りも近藤へと視線を集中させる。
周りの目線を感じながら近藤は土方の視線から逸らすように目線を外す。
その態度が黒だと知らしめた瞬間だった。
「神楽ちゃん」
「おっけーネ!!『何私と姉上の写真を無許可で撮ってんだ!てめぇらの股間をブチ潰すぞワレェ!!』」
「「ギャーー!!」」
目を逸らす近藤に土方は『おいおいおいおい…』と返すしかなく、自分だけではなく姉の写真も盗撮していた近藤兄弟に雪は静かにキレた。
すっとゆっくりと近藤兄弟へと指差し、雪は神楽の名を呟いた。
神楽は雪の声掛けに何が言いたいのか察し、銀時に動きを封じられた雪の代わりに地面に転がっていた石を持ち思いっきり振りかぶる。
雪の言いたい言葉を叫びながら投げられたその石は見事に2人に当たり、近藤兄弟は撃沈する。
夜兎族の力も加わったその石はもはや凶器ではなく弾丸だった。
俯き嫌に静かな雪を銀時は顔を引きつらせながらそっと降ろしてやり、その場に静けさが重く落ちていく。
「まったく…タッキーも近藤さんも諦めが悪いでさァ………雪には俺という婚約者がいるっていうのに。」
「「はあ!!?」」
沈黙を破ったのは良くも悪くも空気を読もうともしない沖田だった。
そっと降ろされた雪の肩に手を置いて自分の方へ引き寄せ勝ち誇った笑みでそう呟く。
問題発言どころではない言葉を吐いた沖田に反応したのは銀時・土方・鷹臣・神楽だった。
雪は本人なのに全くもって聞いたことのないその事実に目を真ん丸にさせ沖田を見上げ、そんな雪に沖田は目を細め優しく微笑み『あんたを不幸にはさせねェぜィ…俺を選びな』、と雪の耳元で呟き更に肩に置いている手の力を強める。
ポツリと低い声で呟かれた雪はその瞬間顔をボッと真っ赤に染め上げた。
「ちょっと待てエエエ!!なんだそれ!聞いてねえぞ!!なん…え!?お前らそういう仲なわけ!?そういう感じなの!?いつから!?」
「雪ーーッ!!!おま…お前…!!銀さんを弄んでたのか!?あどけなく処女みたいな顔しながらも男を手玉に取る小悪魔系淫乱女子なのお前ー!!何それ萌えるんだけど!!!手玉に取ってほしいんだけどーー!!」
「ばっかお前…!雪!こんな糖尿予備軍でいつ死んでもおかしくねえ奴より俺を手玉に取ってくれ!!俺ならお前が満足するほど従順だから!!お前しか見えないから!お前が言えばこんなストーカーだらけの職場なんてやめて一生お前に尽くすから!!」
「はあ!?何言ってんだお前!雪は俺の助手だぞ!!昼は俺に従順だけど夜は俺が雪に従順なんだよ!!てめぇはお呼びじゃねえんだよ!!誰が好き好んでニコチンマヨネーズ臭い奴隷欲しがるかボケ!!」
「2人とも違いまさァ。昼は俺のMだが夜は俺がMにならァ。そこんとこ間違いないでくだせェ。」
「「だから一般人をMに仕立てんな!!!」」
真っ赤になった雪を見て更に信憑性が湧いた男2人は顔を真っ青にさせる。
鷹臣はすでに気を失っており、彼の信者である部下達が『た、隊長オオ!!』と無駄に叫んで介抱していた。
近藤も沖田の言葉を信じ込み『ええ!!?た、鷹臣のお嫁さんが総悟のお嫁さんンン!!?お兄ちゃんどうしたらいいの!どっち応援したらいいの!!』と一人叫んでいた。
雪は三人のヒートアップする言い合いに顔を更に真っ赤に染めた。
人を悪女みたいに言い到底16歳の女の子に向ける言葉とは思えない事を三人は雪に向けているのに全く気付かない。
だから神楽に今も軽蔑の眼差しで見られる挙句に日頃から『だからマダオネ』と言われるのだ。
雪は我慢の限界が来たのかギャーギャー騒ぐ三人にキッと睨み付け、ダン、と思いっきり地面を蹴る。
ぎゃあぎゃあと騒いでいた三人だったが、雪の地面をける音にハッとさせ固まった。
三人同時に雪に振り向けば雪は俯かせていた顔を弾かれたように上げ、キッと顔を赤くして涙目で三人を睨み、そして…
「三人ともいい加減にしてください!!!人を悪女みたいに!!」
妙のようにキレたわけではないが、涙目で睨み叫ぶように怒鳴る雪に三人は喧嘩など忘れ慌てて雪をなだめようとする。
『いや、そういうわけじゃ』やら『誤解だ!』やら全く意味の分からず話がつながらない言い訳を並べる三人に雪は更に睨みフイ、とそっぽを向き三人に背を向ける。
「お、おい…雪…?」
「もう知りません!私先に戻ってますから!!カブトムシ取るまで戻ってこないでください!!」
「え゙、銀さん一人で!?ちょ、ま…雪ちゃん!?」
背を向け歩き出した雪に銀時達は慌てて引き止めようとした。
しかし振り返らずの雪の言葉に唖然としてしまう。
引き止めようにも引き止めることを許さない雪の空気に三人は何も言えず、その場に立ちつくしかなかった。
そんな男達を余所に神楽は『これだからマダオは…』と心の中で毒づきながら雪の背を追いかけ2人は三人(プラス真選組)の前から姿を消す。
「まあ…なんだ……頑張れ。」
取り残されていた近藤一同真選組は凍り付く三人に同情の目を向け、近藤は代表で傍にいた銀時の肩に手を置いて慰めになるか分からないが、慰めの言葉をかけてやる。
いつもなら『うっせぇゴリラ』と言えるのだが、今の銀時には言えなかった。
某ストーカーは3人とも完全になかったこととし、その話題には一切触れない。
『見つかりませんね〜』とそろそろ本気で帰りたくなってきた雪は2人が諦めるようにそう何度も呟くもやはり二人は全く相手にする気はないようで、雪は肩を落としとぼとぼと2人の後ろを歩いていた。
すると上から物音がし、雪はふと顔を上げる。
そこには…文字通り巨大なカブトムシがいた。
「ひっ―――ギャーー!!なんじゃありゃアアア!!」
虫は嫌いだがどちらかと言えば平気な方だ。
だが平気とはいえ流石に雪もあれほど大きなカブトムシに背筋をひやっとさせた。
雪が叫び銀時と神楽も気づけば2人は嬉々として取り網を放り捨て巨大なカブトムシがいる木をけり始める。
「うそぉ!!嘘だと言ってよ!!とんでもねェ大物じゃねえか!!」
「お、大物すぎでしょーが!!きもちわるっ!」
「んなこたァいいんだよ!!何もたもたしてんだ!早く落とせオラァ!!」
「オラオラァ!!死ねオラァ!!」
神楽と銀時は自ら進んで木を蹴ってカブトムシを落としに掛かり、雪は鳥肌が立っている腕をさすっていたが銀時に言われ渋々一緒に木を蹴ってカブトムシを落とそうとしていた。
3人によってカブトムシはポロリと地面に落とされる。
「これで定春28号の仇が討て――…」
ぽろりと落ちていった巨大なカブトムシに神楽は大喜びで駆けつけた。
これで死んでしまった定春28号の仇が討てる、と。
しかし…
「何しやがんでィ」
巨大なカブトムシだと思ったソレは…巨大なカブトムシの着ぐるみを着た沖田だった。
沖田は落ちた衝撃から鼻血を出し駆け寄った神楽を睨む。
「お前こんな所で何やってるアルか!!」
巨大なカブトムシさえ捕まえればあのサド野郎をギャフンと言わせれる!!、と神楽は大いに喜んだ。
そして銀時はこんだけでかけりゃ大金になる、と大いに喜んだ。
更には雪は巨大すぎて若干引いていた。
しかし実際には沖田が着ぐるみ着ているだけで生き物は生き物でも売れない生き物だった。
そして生き物は生き物でも、対戦相手だった。
神楽は期待させられた分怒りはその倍である。
その怒りを込めて雪以外の2人は動けないのをいいことに沖田をボッコボコのフルボッコにしていく。
裏返しにされ仰向けになりフルボッコで鼻血を更に流しながら睨む神楽に沖田は相変わらずの無表情で答える。
「見たら分かるだろィ。」
「分かんねえよ!!お前が馬鹿ということ以外分かんねえよ!!」
「ちょっ、ごめ、起こして…1人じゃ起きられないんでさァ……仲間のフリして奴らに接触する作戦が台無しでィ」
仰向けにされあわあわと手を振って起きようとするも着ぐるみの形から1人で起きられずにいる沖田は誰に言うでもなく起こしてほしいと零した。
誰に言うでもなく、とは言ったが神楽が万が一でも手を差し出されても決してその手は取らないだろう。
雪は体を起こそうとしても起きられない沖田を見ながら『なんでそんなん選んだんすか』と呆れたように突っ込んだ。
「おい、何の騒ぎだ?」
沖田を2人でリンチしていた音に気づいた真選組が集まってきた。
黒い制服の中に光り輝くハチミツ漬けの男が異様に目立っている。
雪は流石に姉のストーカーとはいえ居たたまれなくなってそっとゴリラの妖精、近藤から目を逸らした。
「あ!お前ら!!こんな所で何やってんだ!?」
「何やってるだって…全身ハチミツまみれの人に言う資格があると思ってんですか…」
「これは職務質問だ!いくら将来の義妹になるお雪ちゃんとはいえ仕事は仕事だ。さあ!ちゃんと答えなさい!」
「誰が義妹だ!!私は姉上との交際も結婚も許さんぞ!!」
「なにを言う!お雪ちゃん!!確かにお妙さんは将来の俺の奥さんだが…今のは鷹臣の奥さんになるよね的なニュアンスだ!」
「どんなニュアンス!?どうしたら聞き分けできるの!?」
会うごとに『義妹』だ『将来の妹だ』だと付ける姉のストーカーである近藤に雪は声を上げた。
指差す雪に土方は怒る気力はない。
むしろ『もっと言ってやれ。再起不能になるまで。』と思っていた。
そんな土方など露知らず隣にいるハチミツまみれの上司、近藤は『な!鷹臣!』と賛同を得ようとちょっと離れた場所に立ち頭に包帯を巻いている鷹臣に振り返った。
兄に振り返られた鷹臣はハチミツに包まれふんどし一枚の兄から目を逸らしながら『そうですね、ゴリラの妖精…あ、間違えた…兄上。』と呟く。
鷹臣は『え、ちょ…なに!?今ゴリラの妖精って言った!?ゴリラの妖精ってなに!?ねえ鷹臣くん!!なんなの!?』とわめく兄など放置し、雪の前に歩み寄りそっと壊れ物を触るように優しく雪の手を握った。
「お久しぶりですね、お雪さん…」
「は、はあ…」
「こんな広大に広がる森であなたと会えるなんて、やっぱり俺とお雪さんは結ばれる運命なんだよ。だから俺の奥さんになろう!」
「「だからでなんで奥さんになんだーー!!!」」
ストーカーは、鷹臣は、仕事が忙しくどこかのストーカーのように毎日はこれない。
それには助かっている。
例え仕事内容が血生臭くて引きつった笑みしか返せなくても。
手をギュッと握りキラキラ輝く鷹臣はまさに王子そのもの。
どこかのハリウッド映画でもイケメン俳優として名が上がりそうなほど光輝きイケメンだった。
だが姉がイケメンな雪にはそのイケメンオーラは通用せず生返事しか返せない。
更に生返事しか返さなかった雪に調子に乗った鷹臣は結婚を迫るも土方に首根っこ掴まれ、雪は銀時に脇に手を差し入れられ抱き上げられてしまった。
「何するんですか!十四郎さん!!」
「何するんですか!じゃねえよ!!お前会って早々何言ってんだ!!」
「だって最近お雪さんと会ってなかったんだから仕方ないじゃないですか!!写真で我慢するしかないじゃないですか!!」
「写真っておま…それ盗撮だろうが!!警察が盗撮してんじゃねえぞ!!お前を逮捕すんぞ!!」
「トシ!!よせ!!」
「――!」
首根っこ掴まれた鷹臣は土方を睨み、土方もそんな鷹臣にギロリと睨む。
ここで銀時やら沖田やらが手を握ればセクハラだと言って切って捨てれるが、土方は鷹臣に甘いため首根っこ掴む事で収まっている。
ムッとさせる鷹臣に土方が怒鳴りつければそれを見た兄の近藤が弟を怒鳴る土方に声を上げた。
土方はまさか近藤に止めれるとは思ってもみなかったのか目を丸くし近藤を振り返る。
格好はどうあれ腕を組み怒号を止めた近藤に雪は少し見直した。
「何で止めんだ近藤さん…こいつ盗撮してんだぞ」
「確かに、盗撮はいかんな…だが、鷹臣はそれほどお雪ちゃんを想ってるっていうことだ…許してやってくれないか?」
「いやいやいや!許さんよ!?そこ許しちゃダメだろ!?どうしてそこで許されると思ってるの!?盗撮だろ!?なあ盗撮って犯罪だったよな!?そこは兄であるあんたが正さなきゃいけない道だよな!そこは警察である俺らが正さなきゃいけない道なんだよな!?ほんとあんたどんだけブラコンなんだよ!!」
しかし出てきた言葉はその見直した気持ちを粉々に砕け散らせ雪を裏切る言葉だった。
盗撮された本人を目の前に許せと抜かす近藤に雪は眉をピクリと上げる。
土方が突っ込んでくれているだけ救いはあるだろう。
そんな真選組のコントを見ていると横から隊員に起こしてもらった沖田が『そういやァ』と何かを思い出したように呟く。
「俺ァ見たんですがねィ……近藤さん、あんたこの間タッキーから姐さんの写真貰っていやしたっけねェ…ありゃどう見ても隠し撮りでさァ」
「え、マジで…近藤さん、マジか」
「……………」
沖田の情報に土方は思わず目を丸くさせ近藤を見た。
鷹臣も釣られて兄を見上げ、周りも近藤へと視線を集中させる。
周りの目線を感じながら近藤は土方の視線から逸らすように目線を外す。
その態度が黒だと知らしめた瞬間だった。
「神楽ちゃん」
「おっけーネ!!『何私と姉上の写真を無許可で撮ってんだ!てめぇらの股間をブチ潰すぞワレェ!!』」
「「ギャーー!!」」
目を逸らす近藤に土方は『おいおいおいおい…』と返すしかなく、自分だけではなく姉の写真も盗撮していた近藤兄弟に雪は静かにキレた。
すっとゆっくりと近藤兄弟へと指差し、雪は神楽の名を呟いた。
神楽は雪の声掛けに何が言いたいのか察し、銀時に動きを封じられた雪の代わりに地面に転がっていた石を持ち思いっきり振りかぶる。
雪の言いたい言葉を叫びながら投げられたその石は見事に2人に当たり、近藤兄弟は撃沈する。
夜兎族の力も加わったその石はもはや凶器ではなく弾丸だった。
俯き嫌に静かな雪を銀時は顔を引きつらせながらそっと降ろしてやり、その場に静けさが重く落ちていく。
「まったく…タッキーも近藤さんも諦めが悪いでさァ………雪には俺という婚約者がいるっていうのに。」
「「はあ!!?」」
沈黙を破ったのは良くも悪くも空気を読もうともしない沖田だった。
そっと降ろされた雪の肩に手を置いて自分の方へ引き寄せ勝ち誇った笑みでそう呟く。
問題発言どころではない言葉を吐いた沖田に反応したのは銀時・土方・鷹臣・神楽だった。
雪は本人なのに全くもって聞いたことのないその事実に目を真ん丸にさせ沖田を見上げ、そんな雪に沖田は目を細め優しく微笑み『あんたを不幸にはさせねェぜィ…俺を選びな』、と雪の耳元で呟き更に肩に置いている手の力を強める。
ポツリと低い声で呟かれた雪はその瞬間顔をボッと真っ赤に染め上げた。
「ちょっと待てエエエ!!なんだそれ!聞いてねえぞ!!なん…え!?お前らそういう仲なわけ!?そういう感じなの!?いつから!?」
「雪ーーッ!!!おま…お前…!!銀さんを弄んでたのか!?あどけなく処女みたいな顔しながらも男を手玉に取る小悪魔系淫乱女子なのお前ー!!何それ萌えるんだけど!!!手玉に取ってほしいんだけどーー!!」
「ばっかお前…!雪!こんな糖尿予備軍でいつ死んでもおかしくねえ奴より俺を手玉に取ってくれ!!俺ならお前が満足するほど従順だから!!お前しか見えないから!お前が言えばこんなストーカーだらけの職場なんてやめて一生お前に尽くすから!!」
「はあ!?何言ってんだお前!雪は俺の助手だぞ!!昼は俺に従順だけど夜は俺が雪に従順なんだよ!!てめぇはお呼びじゃねえんだよ!!誰が好き好んでニコチンマヨネーズ臭い奴隷欲しがるかボケ!!」
「2人とも違いまさァ。昼は俺のMだが夜は俺がMにならァ。そこんとこ間違いないでくだせェ。」
「「だから一般人をMに仕立てんな!!!」」
真っ赤になった雪を見て更に信憑性が湧いた男2人は顔を真っ青にさせる。
鷹臣はすでに気を失っており、彼の信者である部下達が『た、隊長オオ!!』と無駄に叫んで介抱していた。
近藤も沖田の言葉を信じ込み『ええ!!?た、鷹臣のお嫁さんが総悟のお嫁さんンン!!?お兄ちゃんどうしたらいいの!どっち応援したらいいの!!』と一人叫んでいた。
雪は三人のヒートアップする言い合いに顔を更に真っ赤に染めた。
人を悪女みたいに言い到底16歳の女の子に向ける言葉とは思えない事を三人は雪に向けているのに全く気付かない。
だから神楽に今も軽蔑の眼差しで見られる挙句に日頃から『だからマダオネ』と言われるのだ。
雪は我慢の限界が来たのかギャーギャー騒ぐ三人にキッと睨み付け、ダン、と思いっきり地面を蹴る。
ぎゃあぎゃあと騒いでいた三人だったが、雪の地面をける音にハッとさせ固まった。
三人同時に雪に振り向けば雪は俯かせていた顔を弾かれたように上げ、キッと顔を赤くして涙目で三人を睨み、そして…
「三人ともいい加減にしてください!!!人を悪女みたいに!!」
妙のようにキレたわけではないが、涙目で睨み叫ぶように怒鳴る雪に三人は喧嘩など忘れ慌てて雪をなだめようとする。
『いや、そういうわけじゃ』やら『誤解だ!』やら全く意味の分からず話がつながらない言い訳を並べる三人に雪は更に睨みフイ、とそっぽを向き三人に背を向ける。
「お、おい…雪…?」
「もう知りません!私先に戻ってますから!!カブトムシ取るまで戻ってこないでください!!」
「え゙、銀さん一人で!?ちょ、ま…雪ちゃん!?」
背を向け歩き出した雪に銀時達は慌てて引き止めようとした。
しかし振り返らずの雪の言葉に唖然としてしまう。
引き止めようにも引き止めることを許さない雪の空気に三人は何も言えず、その場に立ちつくしかなかった。
そんな男達を余所に神楽は『これだからマダオは…』と心の中で毒づきながら雪の背を追いかけ2人は三人(プラス真選組)の前から姿を消す。
「まあ…なんだ……頑張れ。」
取り残されていた近藤一同真選組は凍り付く三人に同情の目を向け、近藤は代表で傍にいた銀時の肩に手を置いて慰めになるか分からないが、慰めの言葉をかけてやる。
いつもなら『うっせぇゴリラ』と言えるのだが、今の銀時には言えなかった。
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