土方の刀を近藤は慌てて避け、鷹臣は表情一つ変えずに避ける。
避ける2人を土方は本気で殺しにかかっているのか再び切りかかろうとするもハチミツだらけの部下に止められ断念するしかなった。
甘いモノがあまり好まない土方はハチミツだらけの部下に触れられ、甘いにおいがどうしても鼻をかすめるために今絶好調に不機嫌である。
「これじゃぁ将軍のペットなんていつまでたっても探せやしねえ…ちょっとは真面目に考えろ」
「十四郎さんのマヨネーズ決死行は真面目なんですか?」
少しでもイライラを抑えるため、土方は煙草に火をつけた。
煙を吐き出しながら愚痴るも兄とにらみ合いをしていた鷹臣がすかさず突っ込む。
実は真選組がこんな森に来たのはバカンスでもなく、立派な仕事だった。
将軍はこの森にある別邸で静養に来ていたのだが一緒に連れてきたカブトムシが脱走してしまい、そのカブトムシを探し出し捕まえろと命令されていた。
普通のカブトムシなら難易度が果てしなく高いが、将軍のペットであるカブトムシ…瑠璃丸は日に当たると黄金色に光るカブトムシであるため、多少は難易度が下がる。
だがそれでも広大な森の中瑠璃丸一匹を探し当てるのは難しいだろう。
土方はこの話を聞き多少なりとも長期戦を覚悟していたが…まさか万事屋がいるとは計算外だったらしく銀時と会ってからずっと苛立ちが抑えられなくなってきていた。
『ほんっと、アイツ本気で豆腐の角で頭ぶつけて死ね。』と天パと会ってから何百回も思っているほどだった。
「まあ、万事屋達はどうやらカブトムシを捕りに来ているようだし……あらかた捕っていけば満足して帰るんじゃないですか?――そしてお雪さんだけ置いて帰ればいい」
「そうだな…何せ瑠璃丸は日の下で見れば黄金色に輝く生きた宝石のような出で立ちをしているがパッと見は普通の奴と見分けがつかないらしい…何より俺たちがハチミツまみれになっても見つからないんだ…あいつらが瑠璃丸を見つける確率は低だろうからな…万事屋など放っておけばいいだろ。――そして俺は今猛烈にお妙さんのところへと駆けつけたい。」
「もう俺は何も突っ込まねえからな。………黄金色に輝く生きた宝石、ねぇ…そんなもんほんとに…―――」
「銀ちゃん!雪!!見て見て!アレ!!あそこに変なのがいるアル!!」
「「「…!」」」
苛立ちを抑えている土方に鷹臣は苦笑いを浮かべ宥めるように零すも、ポツリと小声で呟かれた言葉で台無しになっていた。
弟の言葉に近藤も頷き続くがこれまた弟同様最後のポツリと零した言葉が台無しにしていた。
もうこの兄弟に何言っても無駄だと察した土方は聞きたくないところを省き、怪訝そうな声を零す。
しかし、土方の言葉を丁度話していた万事屋の一人、神楽が遮り、雪と銀時を呼ぶ神楽に不意に土方は視線をやる。
神楽の声に近藤も、神楽もいるなら雪もいるだろうと鷹臣も全員声のした方へと目線を向けた。
そこにはやはり神楽と、銀時、雪がいた。
しかし問題はそこではない。
何故こんなに広いのにこうも遭遇してしまうかは問題にもなるが、今はそこではないのだ。
その理由、それは神楽が指差す方向にあった。
「あー?変なのってお前…またマヨネーズを塗りたくったゴリラとかじゃねえだろうな?変なモンばっか見つけんだもんよぉお前は。」
「違う違う!アレ、金ピカピンのカブトムシアル!」
(エエエエーーー!!?)
(あっさり見つけやがったァァ!!)
神楽が見つけ指差している先には…まさに先ほど話していた黄金色に輝く瑠璃丸だった。
遠目でも見えるほど瑠璃丸は光り輝き、むしろなぜ今の今ままで気づかなかったのかが不思議である。
土方と近藤は自分でも見つけるのも苦労したというのになぜ一番厄介な相手が簡単に見つけられたのだと思う。
万事屋の手に瑠璃丸が渡る思った近藤は慌てて神楽達の元へと駆けつけようとするもそれに気づいた土方に手首を掴まれ止められてしまう。
だが、ハチミツを塗りたくっているため滑る滑る。
近藤は無残にも茂みを飛び越え地面一直線に倒れてしまう。
「あれ?今何か変な音しませんでした?」
「森にはなぁ人類が知らない謎の生物がまだまだ沢山いるんだよ、一々気にすんな。」
幸いにもまだ雪達と近藤の間に茂みがあったため、雪達には気づかれずどうやら雪は銀時の言葉でかは不明だが気のせいと思い視線を瑠璃丸へと向ける。
その間に土方と鷹臣が近藤を引っ張って戻し、茂みを通って戻ってきた近藤は全身ハチミツだらけというのもあり全身を覆っているモノがハチミツから葉っぱへと変わった。
丁度鷹臣と土方に挟まれるように戻ってきた近藤が唸りに似た声を零し、土方は声を抑えながら近藤に『落ち着け!』と呟く。
「ここで騒ぎ立てれば奴らが瑠璃丸の価値に気づくぞ!様子を見よう!」
人差し指を立て声を抑えるように伝えれば痛みから涙目になりながら近藤も同感なのか頷いた。
近藤を挟み土方の隣にいる鷹臣は茂みの隙間からジッと万事屋を監視している。
雪はともかく、楽して金儲けをしようと常日頃から考えている銀時は金ぴかのカブトムシを見ても金目になるとは思っていないのか表情は何一つ変わっていない。
「おもちゃかなんかじゃないですか?」
「ちげぇよ。あれはあれだよ…銀バエの一種だ。汚ねぇから触るな」
(ほらみろ!馬鹿だろ!?馬鹿だろ!!)
(お馬鹿なお雪さんも素敵だ…女性はちょっとお馬鹿の方が愛嬌があっていいと俺は思う…でもお雪さんなら俺はなんでも構わない。)
(馬鹿はてめェだ鷹臣!何度も言わせんな!盗撮は犯罪だ!)
銀時の言葉に嘲笑めいた言葉を投げかけるもジッと万事屋を監視している鷹臣のポツリとした呟きに土方はすかさず突っ込みを入れる。
鷹臣は別に万事屋を監視していた訳ではなかった。
鷹臣は雪だけを見つめていた。
監視という名の視姦をしていた。
すでに鷹臣の視界には邪魔なだけの神楽と銀時は映っていない。
しかも最近買ったばかりだという最新式のカメラを手に雪だけを映していた。
そんな鷹臣に土方はカメラを没収し、地面に叩き付け壊すことで犯罪を防ぐ。
ガシャーンと粉々になるのを見ながらも鷹臣は何故か『あーあ…』と零すだけで表情一つも変えていない。
それもそうだろう。
ここにはいないが雪の周りには常に鷹臣の部下達がついて先ほどから写真に収めているのだから。
むしろここで撮るよりもいいアングルで撮れるため騒ぐこともしなかったのだ。
正直近藤よりストーカーしていてぞっとする。
土方一人、ストーカーと戦っているのも知らず神楽は物欲しそうに瑠璃丸を見上げていた。
「えぇー…でもかっけーアルヨ、キラキラしてて…」
「ダーメだって!ウンコにブンブンたかってるような連中だぞ?自然界でも人間界でもああいういやらしく派手に着飾ってる奴にロクな奴はいねえんだよ。」
銀時の言葉に不服そうな神楽は振り返り雪を見た。
困ったときはお母さんに頼め、というやつだろう。
実際惚れた弱みで多少の我儘は雪を頼めば銀時は無碍にすることはないと経験済みである。
子供はいい意味でも悪い意味でも計算高い生き物である。
しかし今回はお母さんもお父さんの味方なのか『雪〜』と悲しげに自分の名を呟く神楽に困ったように笑うだけで助け舟は出してくれる気配はなかった。
「ごめんね、神楽ちゃん…銀バエって汚い生き物だから私は御免こうむりたいな。むしろ近寄ってほしくない生き物ベスト10に入る生き物だから。」
「えー…」
「ほら、母ちゃんもこう言ってんだろ。あんまり我儘言うとおやつ抜きにしますよ!」
「別に雪におやつ買ってもらうからいいしなんか銀ちゃんから貰うと悪い事起きそうでいらないネ」
「誰が誰の母ちゃんですか?ボケるのはまだ早いですよ銀さん」
「……てめぇらなぁ…」
雪も黄金にも見えるあのカブトムシに似ている生き物を見て珍しいと興味が注がれた。
しかしどんな根拠かは知らないが銀バエと断言する銀時の言葉を信じ、雪は興味が微塵にも感じられなくなった。
縋り付くように見つめる神楽に雪は首を振り、首を振った雪に神楽は肩を落とし残念そうに声を零す。
銀時は調子に乗って雪を『母ちゃん』と呼び肩を抱くもいつものからかいの言葉に雪はいつもの突っ込みを返し、ついでに肩に置かれている銀時の手の甲を抓って手を放させる。
銀時は『けちー』と零し、雪は銀時と歩きはじめ、2人が歩き始めたため神楽はまだ諦めきれないのか後ろ髪を引かれる思いで振り返りつつも2人に置いて行かれないよう追いかける。
三人があらかた遠くへと言ったのを確認し、鷹臣以外の真選組たちは一斉に茂みから飛び出し瑠璃丸へと一直線に掛ける。
「今だ!早く瑠璃丸を…――!」
鷹臣以外の真選組全員が一つの木に向かって走り出すその光景は滑稽そのもの。
土方は服を着ているが、周りがハチミツだらけのパンツ一丁のため同類に見られても何らおかしくはない。
しかし…瑠璃丸を捕まえるよりも、瑠璃丸が羽根を羽ばたかせ木から離れる方が早く、鷹臣は雪がいなくてやる気ゼロなためただそれを目で追うだけだった。
しかも最悪な事に、瑠璃丸の向かった先はなんと―――
「うっわ!汚ね!!お前頭に銀バエ乗ってんぞ!!」
「え?」
「ちょちょちょ!動くな!動くなよ!?」
瑠璃丸が向かった先…そこは神楽の頭の上だった。
羽根音をさせながら瑠璃丸は何故か周りに生えている木ではなく、神楽の被る麦わら帽子の上に止まってしまった。
それを見た銀時は瑠璃丸を銀バエと勘違いしているためか、銀時が自分の麦わら帽子を手に追い払おうとする。
ぶんぶんと容赦のない払いに近藤と土方達は一瞬にして顔を真っ青に染める。
「やめてェェェ!!それ将軍のペットよォォォ!!!」
知られず密かに捕まえ将軍へと返す手はずだったが、思いもしない展開に近藤達は慌てて銀時達の元へと走った。
土方達が万事屋の元へと走り出したのを見て傍観を決めつけ暇そうにしていた鷹臣もようやく動き出し、土方達とは遅れて走り出す。
近藤達に気づかず銀時は神楽の頭の上に乗っている銀バエもとい瑠璃丸を払おうと思いっきり麦わら帽子で払おう。
「おら死ね!!ちくしょう!すばしっこいな!!」
「いたい!痛いアル!!」
「動くなって!お前銀バエ乗ってんだって!!お前はウンコと見なされてんだぞ!!」
「神楽ちゃん、帰ったら即お風呂行きね?」
力尽くで振り払おうとする銀時に近藤は必死に止めた。
もし瑠璃丸に何かあれば自分の首と胴体が『ばいばいさようなら』となるから必死も必死だった。
しかし、必死すぎて足元をおろそかにしていた。
近藤は躓いてしまい、そのまま瑠璃丸がいる神楽の頭へチョップする形で倒れてしまう。
「ギャアアア!!るり瑠璃丸がアアアア!!」
自分で自分の首と胴と別れることをしでかした近藤は悲鳴を上げた。
瑠璃丸は近藤のチョップの衝撃からかコロン、と転がり仰向けになってしまう。
幸いにも手足を動かしているため死んではいない。
どうやら近藤の首と胴体はまだ繋がったままのようである。
「いったいなー!ひどいヨみんな!!銀バエだって生きてるアルヨ!!可哀想と思わないアルか!?」
チョップを貰った神楽はしゃがみこみ痛む頭を擦る。
そして生き物を汚いか綺麗か、そして可愛くないか可愛いかで判別する大人たちをキッと痛みで出た涙をためながら睨み、じたばたと起き上がろうとする瑠璃丸にそっと手の上に乗せてやった。
「あーよかったアル!大丈夫みたい!」
「待って〜〜!!銀バエじゃないんだ!それ実は…!」
「この子私を慕って飛んできてくれたネ!この子こそ定春28号の跡を継ぐ者ネ!!」
「おい!ちょっと!聞いてる!?」
「今こそ先代の仇を討つ時アル!行くぜ!定春29号!!」
仰向けになっているのを元に戻してやればゆっくりと動く瑠璃丸に神楽はほっと安堵の息をつく。
どんな生き物でも平等に扱う神楽に本来なら『優しい子になってホロリ』とする場面なのだが…その相手が銀バエだと思うと雪は褒める気力を失っていく。
台所に立つ立場としてあの世界一嫌われ者のGと戦う事は必須な雪も慣れているといえ正直アイツとは会いたくないというのが本音。
あいつがいるだけで空気が汚れついでに世の中の暗い影はアイツらのせいだと雪は濡れ衣を掛けるほどGは嫌いだった。
そして、当然一応女性なため虫は苦手な類である。
雪は出来る限りもし飛んできてもこっちに来ないよう願いながらちょっとずつ神楽から距離を置く。
その傍にストーカーもいることに気づかずに。
近藤の話も聞かず29代目の定春を瑠璃丸に決めた神楽は虫かごに瑠璃丸を入れて意気揚々と1人別行動の沖田を探しに向かった。
「オイィィ!!待てーー!!それ将軍の―――、ッ!!」
土方は瑠璃丸を虫かごに入れて沖田を探しに向かった神楽に慌てて追いかけようとする。
だが土方は首根っこを捕まれ引き止められてしまった。
誰が引き止めたのか、誰が自分の首根っこを[D:25681]まえたのか……見なくても想像つく。
恐る恐る振り返ればやはりそこには――…
「将軍の……なに?」
いつもは死んだ目をしているのに今はとても怪しく輝いている銀時の姿があった。
ニヤリと笑う銀時に土方はポロリと咥えていたタバコを落とす。
避ける2人を土方は本気で殺しにかかっているのか再び切りかかろうとするもハチミツだらけの部下に止められ断念するしかなった。
甘いモノがあまり好まない土方はハチミツだらけの部下に触れられ、甘いにおいがどうしても鼻をかすめるために今絶好調に不機嫌である。
「これじゃぁ将軍のペットなんていつまでたっても探せやしねえ…ちょっとは真面目に考えろ」
「十四郎さんのマヨネーズ決死行は真面目なんですか?」
少しでもイライラを抑えるため、土方は煙草に火をつけた。
煙を吐き出しながら愚痴るも兄とにらみ合いをしていた鷹臣がすかさず突っ込む。
実は真選組がこんな森に来たのはバカンスでもなく、立派な仕事だった。
将軍はこの森にある別邸で静養に来ていたのだが一緒に連れてきたカブトムシが脱走してしまい、そのカブトムシを探し出し捕まえろと命令されていた。
普通のカブトムシなら難易度が果てしなく高いが、将軍のペットであるカブトムシ…瑠璃丸は日に当たると黄金色に光るカブトムシであるため、多少は難易度が下がる。
だがそれでも広大な森の中瑠璃丸一匹を探し当てるのは難しいだろう。
土方はこの話を聞き多少なりとも長期戦を覚悟していたが…まさか万事屋がいるとは計算外だったらしく銀時と会ってからずっと苛立ちが抑えられなくなってきていた。
『ほんっと、アイツ本気で豆腐の角で頭ぶつけて死ね。』と天パと会ってから何百回も思っているほどだった。
「まあ、万事屋達はどうやらカブトムシを捕りに来ているようだし……あらかた捕っていけば満足して帰るんじゃないですか?――そしてお雪さんだけ置いて帰ればいい」
「そうだな…何せ瑠璃丸は日の下で見れば黄金色に輝く生きた宝石のような出で立ちをしているがパッと見は普通の奴と見分けがつかないらしい…何より俺たちがハチミツまみれになっても見つからないんだ…あいつらが瑠璃丸を見つける確率は低だろうからな…万事屋など放っておけばいいだろ。――そして俺は今猛烈にお妙さんのところへと駆けつけたい。」
「もう俺は何も突っ込まねえからな。………黄金色に輝く生きた宝石、ねぇ…そんなもんほんとに…―――」
「銀ちゃん!雪!!見て見て!アレ!!あそこに変なのがいるアル!!」
「「「…!」」」
苛立ちを抑えている土方に鷹臣は苦笑いを浮かべ宥めるように零すも、ポツリと小声で呟かれた言葉で台無しになっていた。
弟の言葉に近藤も頷き続くがこれまた弟同様最後のポツリと零した言葉が台無しにしていた。
もうこの兄弟に何言っても無駄だと察した土方は聞きたくないところを省き、怪訝そうな声を零す。
しかし、土方の言葉を丁度話していた万事屋の一人、神楽が遮り、雪と銀時を呼ぶ神楽に不意に土方は視線をやる。
神楽の声に近藤も、神楽もいるなら雪もいるだろうと鷹臣も全員声のした方へと目線を向けた。
そこにはやはり神楽と、銀時、雪がいた。
しかし問題はそこではない。
何故こんなに広いのにこうも遭遇してしまうかは問題にもなるが、今はそこではないのだ。
その理由、それは神楽が指差す方向にあった。
「あー?変なのってお前…またマヨネーズを塗りたくったゴリラとかじゃねえだろうな?変なモンばっか見つけんだもんよぉお前は。」
「違う違う!アレ、金ピカピンのカブトムシアル!」
(エエエエーーー!!?)
(あっさり見つけやがったァァ!!)
神楽が見つけ指差している先には…まさに先ほど話していた黄金色に輝く瑠璃丸だった。
遠目でも見えるほど瑠璃丸は光り輝き、むしろなぜ今の今ままで気づかなかったのかが不思議である。
土方と近藤は自分でも見つけるのも苦労したというのになぜ一番厄介な相手が簡単に見つけられたのだと思う。
万事屋の手に瑠璃丸が渡る思った近藤は慌てて神楽達の元へと駆けつけようとするもそれに気づいた土方に手首を掴まれ止められてしまう。
だが、ハチミツを塗りたくっているため滑る滑る。
近藤は無残にも茂みを飛び越え地面一直線に倒れてしまう。
「あれ?今何か変な音しませんでした?」
「森にはなぁ人類が知らない謎の生物がまだまだ沢山いるんだよ、一々気にすんな。」
幸いにもまだ雪達と近藤の間に茂みがあったため、雪達には気づかれずどうやら雪は銀時の言葉でかは不明だが気のせいと思い視線を瑠璃丸へと向ける。
その間に土方と鷹臣が近藤を引っ張って戻し、茂みを通って戻ってきた近藤は全身ハチミツだらけというのもあり全身を覆っているモノがハチミツから葉っぱへと変わった。
丁度鷹臣と土方に挟まれるように戻ってきた近藤が唸りに似た声を零し、土方は声を抑えながら近藤に『落ち着け!』と呟く。
「ここで騒ぎ立てれば奴らが瑠璃丸の価値に気づくぞ!様子を見よう!」
人差し指を立て声を抑えるように伝えれば痛みから涙目になりながら近藤も同感なのか頷いた。
近藤を挟み土方の隣にいる鷹臣は茂みの隙間からジッと万事屋を監視している。
雪はともかく、楽して金儲けをしようと常日頃から考えている銀時は金ぴかのカブトムシを見ても金目になるとは思っていないのか表情は何一つ変わっていない。
「おもちゃかなんかじゃないですか?」
「ちげぇよ。あれはあれだよ…銀バエの一種だ。汚ねぇから触るな」
(ほらみろ!馬鹿だろ!?馬鹿だろ!!)
(お馬鹿なお雪さんも素敵だ…女性はちょっとお馬鹿の方が愛嬌があっていいと俺は思う…でもお雪さんなら俺はなんでも構わない。)
(馬鹿はてめェだ鷹臣!何度も言わせんな!盗撮は犯罪だ!)
銀時の言葉に嘲笑めいた言葉を投げかけるもジッと万事屋を監視している鷹臣のポツリとした呟きに土方はすかさず突っ込みを入れる。
鷹臣は別に万事屋を監視していた訳ではなかった。
鷹臣は雪だけを見つめていた。
監視という名の視姦をしていた。
すでに鷹臣の視界には邪魔なだけの神楽と銀時は映っていない。
しかも最近買ったばかりだという最新式のカメラを手に雪だけを映していた。
そんな鷹臣に土方はカメラを没収し、地面に叩き付け壊すことで犯罪を防ぐ。
ガシャーンと粉々になるのを見ながらも鷹臣は何故か『あーあ…』と零すだけで表情一つも変えていない。
それもそうだろう。
ここにはいないが雪の周りには常に鷹臣の部下達がついて先ほどから写真に収めているのだから。
むしろここで撮るよりもいいアングルで撮れるため騒ぐこともしなかったのだ。
正直近藤よりストーカーしていてぞっとする。
土方一人、ストーカーと戦っているのも知らず神楽は物欲しそうに瑠璃丸を見上げていた。
「えぇー…でもかっけーアルヨ、キラキラしてて…」
「ダーメだって!ウンコにブンブンたかってるような連中だぞ?自然界でも人間界でもああいういやらしく派手に着飾ってる奴にロクな奴はいねえんだよ。」
銀時の言葉に不服そうな神楽は振り返り雪を見た。
困ったときはお母さんに頼め、というやつだろう。
実際惚れた弱みで多少の我儘は雪を頼めば銀時は無碍にすることはないと経験済みである。
子供はいい意味でも悪い意味でも計算高い生き物である。
しかし今回はお母さんもお父さんの味方なのか『雪〜』と悲しげに自分の名を呟く神楽に困ったように笑うだけで助け舟は出してくれる気配はなかった。
「ごめんね、神楽ちゃん…銀バエって汚い生き物だから私は御免こうむりたいな。むしろ近寄ってほしくない生き物ベスト10に入る生き物だから。」
「えー…」
「ほら、母ちゃんもこう言ってんだろ。あんまり我儘言うとおやつ抜きにしますよ!」
「別に雪におやつ買ってもらうからいいしなんか銀ちゃんから貰うと悪い事起きそうでいらないネ」
「誰が誰の母ちゃんですか?ボケるのはまだ早いですよ銀さん」
「……てめぇらなぁ…」
雪も黄金にも見えるあのカブトムシに似ている生き物を見て珍しいと興味が注がれた。
しかしどんな根拠かは知らないが銀バエと断言する銀時の言葉を信じ、雪は興味が微塵にも感じられなくなった。
縋り付くように見つめる神楽に雪は首を振り、首を振った雪に神楽は肩を落とし残念そうに声を零す。
銀時は調子に乗って雪を『母ちゃん』と呼び肩を抱くもいつものからかいの言葉に雪はいつもの突っ込みを返し、ついでに肩に置かれている銀時の手の甲を抓って手を放させる。
銀時は『けちー』と零し、雪は銀時と歩きはじめ、2人が歩き始めたため神楽はまだ諦めきれないのか後ろ髪を引かれる思いで振り返りつつも2人に置いて行かれないよう追いかける。
三人があらかた遠くへと言ったのを確認し、鷹臣以外の真選組たちは一斉に茂みから飛び出し瑠璃丸へと一直線に掛ける。
「今だ!早く瑠璃丸を…――!」
鷹臣以外の真選組全員が一つの木に向かって走り出すその光景は滑稽そのもの。
土方は服を着ているが、周りがハチミツだらけのパンツ一丁のため同類に見られても何らおかしくはない。
しかし…瑠璃丸を捕まえるよりも、瑠璃丸が羽根を羽ばたかせ木から離れる方が早く、鷹臣は雪がいなくてやる気ゼロなためただそれを目で追うだけだった。
しかも最悪な事に、瑠璃丸の向かった先はなんと―――
「うっわ!汚ね!!お前頭に銀バエ乗ってんぞ!!」
「え?」
「ちょちょちょ!動くな!動くなよ!?」
瑠璃丸が向かった先…そこは神楽の頭の上だった。
羽根音をさせながら瑠璃丸は何故か周りに生えている木ではなく、神楽の被る麦わら帽子の上に止まってしまった。
それを見た銀時は瑠璃丸を銀バエと勘違いしているためか、銀時が自分の麦わら帽子を手に追い払おうとする。
ぶんぶんと容赦のない払いに近藤と土方達は一瞬にして顔を真っ青に染める。
「やめてェェェ!!それ将軍のペットよォォォ!!!」
知られず密かに捕まえ将軍へと返す手はずだったが、思いもしない展開に近藤達は慌てて銀時達の元へと走った。
土方達が万事屋の元へと走り出したのを見て傍観を決めつけ暇そうにしていた鷹臣もようやく動き出し、土方達とは遅れて走り出す。
近藤達に気づかず銀時は神楽の頭の上に乗っている銀バエもとい瑠璃丸を払おうと思いっきり麦わら帽子で払おう。
「おら死ね!!ちくしょう!すばしっこいな!!」
「いたい!痛いアル!!」
「動くなって!お前銀バエ乗ってんだって!!お前はウンコと見なされてんだぞ!!」
「神楽ちゃん、帰ったら即お風呂行きね?」
力尽くで振り払おうとする銀時に近藤は必死に止めた。
もし瑠璃丸に何かあれば自分の首と胴体が『ばいばいさようなら』となるから必死も必死だった。
しかし、必死すぎて足元をおろそかにしていた。
近藤は躓いてしまい、そのまま瑠璃丸がいる神楽の頭へチョップする形で倒れてしまう。
「ギャアアア!!るり瑠璃丸がアアアア!!」
自分で自分の首と胴と別れることをしでかした近藤は悲鳴を上げた。
瑠璃丸は近藤のチョップの衝撃からかコロン、と転がり仰向けになってしまう。
幸いにも手足を動かしているため死んではいない。
どうやら近藤の首と胴体はまだ繋がったままのようである。
「いったいなー!ひどいヨみんな!!銀バエだって生きてるアルヨ!!可哀想と思わないアルか!?」
チョップを貰った神楽はしゃがみこみ痛む頭を擦る。
そして生き物を汚いか綺麗か、そして可愛くないか可愛いかで判別する大人たちをキッと痛みで出た涙をためながら睨み、じたばたと起き上がろうとする瑠璃丸にそっと手の上に乗せてやった。
「あーよかったアル!大丈夫みたい!」
「待って〜〜!!銀バエじゃないんだ!それ実は…!」
「この子私を慕って飛んできてくれたネ!この子こそ定春28号の跡を継ぐ者ネ!!」
「おい!ちょっと!聞いてる!?」
「今こそ先代の仇を討つ時アル!行くぜ!定春29号!!」
仰向けになっているのを元に戻してやればゆっくりと動く瑠璃丸に神楽はほっと安堵の息をつく。
どんな生き物でも平等に扱う神楽に本来なら『優しい子になってホロリ』とする場面なのだが…その相手が銀バエだと思うと雪は褒める気力を失っていく。
台所に立つ立場としてあの世界一嫌われ者のGと戦う事は必須な雪も慣れているといえ正直アイツとは会いたくないというのが本音。
あいつがいるだけで空気が汚れついでに世の中の暗い影はアイツらのせいだと雪は濡れ衣を掛けるほどGは嫌いだった。
そして、当然一応女性なため虫は苦手な類である。
雪は出来る限りもし飛んできてもこっちに来ないよう願いながらちょっとずつ神楽から距離を置く。
その傍にストーカーもいることに気づかずに。
近藤の話も聞かず29代目の定春を瑠璃丸に決めた神楽は虫かごに瑠璃丸を入れて意気揚々と1人別行動の沖田を探しに向かった。
「オイィィ!!待てーー!!それ将軍の―――、ッ!!」
土方は瑠璃丸を虫かごに入れて沖田を探しに向かった神楽に慌てて追いかけようとする。
だが土方は首根っこを捕まれ引き止められてしまった。
誰が引き止めたのか、誰が自分の首根っこを[D:25681]まえたのか……見なくても想像つく。
恐る恐る振り返ればやはりそこには――…
「将軍の……なに?」
いつもは死んだ目をしているのに今はとても怪しく輝いている銀時の姿があった。
ニヤリと笑う銀時に土方はポロリと咥えていたタバコを落とす。
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