(4 / 9) ああ やっぱり我が家が一番だわ (4)
妙の手にあるパンツ、それは雪の物だった。
スケスケなパンツも、可愛いパンツも…雪のだった。
だから近藤が妙がパンツを掲げても何の反応もなかったのである。
妙ではなく雪のパンツだと分かりそれにすぐに反応したのは銀時・沖田・土方…そしてやっぱり男連中である真選組だった。
地味仲間である山崎も頬を赤くしていた。


「か、返してください!」

「やーよ。これはおとり作戦よ?どうして返さなきゃいけないの?」

「じゃあ私のじゃなくてもいいじゃないですか!姉上が協力してるんだから姉上のパンツにしてくださいよー!!」

「あら、でも確実に雪ちゃんのパンツの方が銀さん達のやる気が上がるんですもの」

「上がりません!そんなの上がりませんよ!!地味な女のパンツをおとりにしても誰もやる気なんて上がりませんンン!!」


雪は姉の握っているパンツを奪おうと手を伸ばすもあと少しで届かない。
2センチの差があるため雪がつま先で立ち妙もつま先で立てば間は埋まらず一定の距離を保っていた。
ぐぬぬ、と一生懸命姉の手にある自分のパンツを捕ろうとしている雪の姿は可愛らしく、妙はご機嫌だった。
仕事とは言え3日間離れていた寂しさもあったらしい。


「え…ちょ、ま…え!?それお前のなの!?」

「そ、そうですけど…あ、あんまり見ないでくださいよ!!」

「いやァ、そりゃァ無理ってもんだろィ…ねェ?土方さん?」

「……………」

「何で黙ってるんですか!?否定してくださいよ!!期待してたのに!!」

「す、すまん」

「謝るなー!こっちが惨めになっちゃうから謝るなーー!」


銀時も、土方も、沖田も…妙と雪以外妙の持っているパンツは妙のだと思っていた。
しかし本当は恋するあの子のパンツで、銀時達は呆気にとられる。
銀時は雪の可愛いクマさんのパンツを指差し、雪は姉に敵わないため自分のパンツを凝視する銀時に駆け寄り銀時の目を手で塞いだ。
『ちょ、見えん!見えないから!雪ちゃん手外して!クマさん見えないから!!』と雪の手を放そうとするも恥ずかしさで死にそうな雪の力に敵わなかった。
…と、いうよりも勢い余って密着する形のため銀時の胸元ら辺に雪の柔らかな胸が当たっているから外すにも外せないのかもしれない。(結局はエロオヤジという事である)
『見るな!』と言っても女性のパンツをつい見てしまうのは男の悲しい性であり、真選組の男達は目を逸らしつつもチラチラと可愛くクマさんのプリントをされているパンツを見ていた。
しかし部下がチラチラ見ているのに上司である沖田は表情ひとつ変わらず堂々と雪のクマさんパンツを凝視し、土方に話を振るも土方は無言で見ていたクマさんパンツから目を逸らした。
唯一の常識人だと思っていた雪は無言の土方にショックを受けたように叫び、何故か謝られた雪は無性に泣きそうになった。


「お前あんなんつけてたわけ!?あんな可愛いクマさんパンツから女王様パンツまで持ってて今までその袴の下に穿いてたわけ!?お前どんだけストライクゾーンが広いわけ!?そんなお前に俺がドストライクだわ!!」

「あ、あああれはち、ちがうもん!」

「違うだァ!?じゃあ妙のか!?違うだろ!?なぜならあそこに突っ立ってるゴリさんが鼻血を吹いて気絶してないからな!!」

「どういう基準だ!!近藤さんでも流石に姉上のパンツか分かるわけが――…」

「え?分かるけど?」

「分かるんかいィィィィ!!」


やっと雪の手を放した銀時はその手を掴んだまま雪に問い質す。
手首をギュッと握られ鼻息荒く捲し立てる銀時に雪は必至に首を振った。
本人から自分のだと言っていたのだが必至すぎているのか言っていたことも忘れ違うと言いだし、銀時には『"もん"とか言うな!!これ以上俺を萌えさせるな!!お前は俺を萌え殺す気か!!』と何故か怒られてしまった。
雪は銀時に叱られぐっと言葉を飲み込み泣き出したいのを我慢し涙を溜めながら銀時を見上げる。


「わ、私だって…私だってもっと普通のが良かったんだもん……あんな子供が穿くようなパンツとかじゃなくて、あんな男遊びしてますみたいなパンツとかじゃなくて…普通のが良かったんだもん…」

「あ?じゃあなんであるんだよ…あれお前のパンツなんだろ?――あと"もん"とか言うな、萌え死にするから。俺が。」


叱られ雪は興奮状態も収まったのか親に叱られた子供のように大人しくなり涙を溜めて俯きもそもそと話し始める。
まるで自分のパンツじゃないような言い方を並べる雪に銀時は今度は優しく声を掛けてやった。
雪は銀時の問いに頷く。


「わ、わたしの、だけど…買ってきてるの……姉上なの…」

「はぁ!?妙が?――あと"なの"もやめろ、萌え殺されるから。俺が。」


雪の言葉に銀時をはじめとする雪以外の全員が妙を見た。
妙は相変わらず笑みを浮かべており、みんなの視線に妙は笑みを深め答えた。


「だって雪ちゃんの選ぶもの普通すぎて可愛くないんだもの、仕方ないでしょう?」

「いやいやいや、お姉さん?流石にシスコンだって自他共に認めているとはいえ妹の下着にも口に出すのはちょっとやりすぎなんじゃ…」

「あら、だって雪ちゃんったら最近パンツだけ別売りなの買ってきてるのよ?女はね、外見だけ磨けばいいってものじゃないの。下着含め皮膚含め細胞含め全て含めて完璧でなければならないの。時にネコパンチで相手をノックアウトするほどスケスケパンツを穿いて勝負に勝利して、時に倒れこみで大胆に弱みを相手に見せ純粋さをアピールしつつ自分の都合のいい方向へと持っていかなければならいの。なのに雪ちゃんったら安売りのパンツばっかり買って…確かに安売りのパンツもダサくはないわよ?でも色気というものが足りないの。下着はね、戦場へ赴く兵士の命を守る甲冑なの…上下揃ってこそ意味を成す物なのよ?それなのに雪ちゃんは最近ブラジャーを買ってないのよ?ノーブラなのよ?姉としては見過ごせないでしょう?」


銀時は流石に妹の下着を管理するような妙に顔を引きつらせていた。
銀時も妙に負けず雪に過保護なのは認める。
雪と兄弟ではないし銀時は男だからかもしれないが、流石にやりすぎだと銀時は思った。
雪は妙の言葉に顔を赤くして鼻を啜っていた。
今、一番恥をかいているのは雪である。
それを耐えられるほど雪の心は強くはない。
姉に守られてきた雪は姉のような鋼どころか鎖やら棘やらが仕掛けられる心ではないのだ。
銀時は赤裸々に妹の恥を話し始める妙から守るように雪の肩を抱きしめ、雪は抱き寄せた銀時を驚いた表情で見上げた。
しかし、目を見張る雪に安心させるように笑みを浮かべるよりも前に、銀時は聞き捨てならない言葉を聞き固まった。
それは銀時だけではないようで、誰もがギギギ、と油を差していない機械のように雪を見た。


「え、お前…ノーブラ、なの?」

「は、はい…」

「薄々感じてたけど……お前の胸の大きさからしてノーブラはないと思って誤魔化してきたけど……え、なんでノーブラなの…」

「だ、だって……だって、神楽ちゃんがブラしてたら触り心地が良くないって言ったから…」

「いやいやいや!!ブラジャーしようよ!女の子でしょ!?」

「だって…ブラしたら神楽ちゃん怒るし…」


ノーブラと聞き、誰もが驚くだろう。
しかし原付でニケツするときに触れる雪の胸に、歩いているときに柔らかそうに揺れる雪の胸に、しゃがんだり屈んだ際に必ず胸を寄せる形になる雪の胸に…銀時はなんとなく気づいていた。
雪はノーブラだと。
しかしそれを認めるという事、イコール雪の貞操の危機であるからして…銀時は雪に嫌われたくないという女々しい感情で狼である男の本能を抑えていた。
ノーブラ…それは男の夢が詰まっているモノである。
それが今まで無法地帯の歌舞伎町で放置されていたとは…銀時は一瞬気が遠くなるような感覚が襲った後、今で無事だった雪の幸運に敬服した。
怒られ拗ね気味の雪の言葉に銀時は狼の本能より呆れが来てしまう。


「お前なぁ…少し神楽を甘やかしすぎだぞ…明日からブラしてこい」

「いやアルー!!雪がブラしてきたら明日から誰のおっぱいを揉めばいいネ!?」

「揉むな!!何おっぱいを揉んでも正当化される的に言ってんだ!!おい神楽知ってるか?強制わいせつ罪ってーのは同性でも通じんだぞ!!」

「わいせつじゃないネ!!雪のおっぱいは立派な私のおっぱいネ!!」

「きゃー!か、神楽ちゃん!!こんなところで揉まないで!!」

「揉まなきゃいつ揉むアルか!?――今でしょ!!」

「それもう古いから!!――って神楽お前…!言ってる傍から雪のおっぱい揉むな!!」


銀時は雪に注意しながらも心の中で『じゃねえと俺の身が持たねぇ…特に息子』と付け足した。
口にしないのは雪を出来るだけ無警戒で手に入れたいのと、最大の理由は後ろで自分達の会話を目を光らせにこやかに見つめている妙の存在があったからである。
妙の顔には『てめェら何雪ちゃんのおっぱい口論してんだ?だから言ってんだろ、雪ちゃんのおっぱいは姉である私のモンだってなァ…これ以上雪ちゃんに恥かかせたら一生うちの敷居跨げなくしてやんぞゴラ』と書いてあり、それを見た銀時は顔を青くして『恥かかせてんのお前も一緒だろうが!』という文句を呑みながら、後ろからいきなり雪の胸を揉む神楽を離そうとする。
しかし夜兎族の力に銀時が敵う訳なく、離れんとしている神楽が力を入れてしまい雪からは悲鳴が上がった。
ノーブラ発言は意外にも男連中には刺激的だったらしく、一発KOだった。
ただ流石真選組の要と言うべきか…隊士達は地に崩れているのにも関わらず、山崎は崩れ落ちてはいないが座り込んで若干前かがみで鼻を抑え、土方は背を向けるだけであり(しかしチラリと見える耳やら首が真っ赤になっていた)、沖田は神楽に揉まれている雪を見つめた後己の手の平をジッと凝視していた。


「おいてめェらいつまで私の前で雪ちゃんのおっぱいを揉みやがってんだ?」


ぎゃんぎゃんと言い争う銀時と神楽を黙らせたのは雪ではなく…妙だった。

鬼を背負う、妙だった。

その場は一瞬にして静まり返る。


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