(5 / 9) ああ やっぱり我が家が一番だわ (5)
妙のマジ切れ1秒前のお蔭でその場は何とか収拾した。
(妙曰く)戦場は庭へと移り、雪のパンツを洗濯ハンガーの一つに吊るす。
銀時はモテない男とみなされた挙句に雪のパンツも盗まれた事から変態を捕まえようと燃えていた。
変態は夜に現れるためそれまでの間それぞれ鍛錬をして過ごし、雪は姉やら神楽やら真選組やらの鍛錬している声をバックに不自然に一枚だけ干してあるパンツを見上げていた。
そのパンツは確かに自分のである。
しかし、何故かスケスケおパンティではなく、クマさんおパンティではなく…純白パンツだった。


「っていうか…何でまた別のパンツなわけ…?しかも純白…」


妙が提供したパンツは全て雪。
だから目の前にぶら下がっている純白パンツも雪の物である。
もう何を言っても聞いてくれないと諦めた雪は抗議もする気はないが、小さくは突っ込む。
――が、やはり空しいだけなため、それぞれ獲物を振る真選組や妙や神楽を横目に通り過ぎ塀の壁を背もたれて座る。


「みなさーん、下着泥棒くらいでちょっと殺気立ちすぎじゃないんですかー」


雪は目の前の彼らを見て今更彼らのように素振りしようが瓦割りをしようが無駄なような気がして結局何もしていない。
今回は銀時ではなく雪がやる気がないらしい。
一応殺気立つ彼らに声をかけるもやはり殺す気(と書いてヤルキ)の彼らには届かなかった。
ぶんぶんと刀を振る彼らを見ながら雪は溜息をつき、雪はそばで神楽のように瓦を積んでいる近藤に声を掛ける。


「あの、なんか姉上だけで事がすみそうな気がするんですが…やっぱり真選組いらないんじゃないですか?」

「何を言うか!俺だって!!―――!!」


雪は正直今すぐに真選組の人達だけでも帰ってほしかった。
それは地味だと揶揄されていても雪が女の子だという事である。
地味だろうが美人だろうがブサイクだろうが女性というのは男性に下着を見られたくないのだ。
しかし残念ながら今、この場に雪の本心を見抜ける者はいない。
雪の言葉に近藤は心外だと言わんばかりに厳しい表情を浮かべる。
半信半疑な愛する彼女の妹に近藤は瓦を割って信じてもらおうと思いっきり瓦を割ろうとしたが、神楽のようにはいかず、結局一枚も割ることなく手だけを腫らせただけで涙を流しながら痛みにあちこち走り回っていた。


「……やっぱ、真選組いらないんじゃない?」


真選組は決して弱いとは思っていないが、トップのあの姿を見てしまえば信頼は崩れていくだろう。
というか志村姉妹の中にある真選組の信用度はとてつもなく低いだろう。
まあ自業自得である。


「まあまあ、そう言わないでくだせェ」


雪は半目で近藤を見送りポツリと呟いた。
そんな雪に沖田が宥めるように声を掛けながら歩み寄り、振り返れば沖田だけではなく土方もいた。
雪は2人の姿にバツが悪そうに笑う。


「聞こえちゃいました?」

「バッチリ。」

「あはは…ごめんなさい……姉上を見てたらつい…」

「ま、姐さんに掛かれば俺らはお払い箱だろうから本当っちゃ、本当でさァ。」


雪は謝りながら姉へと視線を送る。
そこには巻藁を次々に真っ二つする妙がおり、雪は背中からでも感じる妙の殺気に顔を引きつらせた。
我が姉ながら恐ろしい、とでも思っているのだろう。
妙の怖さを知っているのは雪だけではなく、沖田は肩をすくめて答え、持っていた風呂敷をおろし結び目を開く。
雪は沖田が持ってきた物に興味があるのか座っていた腰を上げ沖田の傍へと歩み寄って後ろから除き見た。
しかし雪は次の瞬間覗き見たことを後悔することになる。


「ま、こんな事もあろうかとお城の倉庫から持ってきやしたから泥棒もイチコロでさァ」

「……なんですか、それ…」

「なんていうか……『地雷?みたいな』」

「みたいなじゃなくてそのものズバリでしょうが!!そりゃこんなん仕掛けられてたら泥棒もイチコロだわ!!!むしろ瞬殺だわ!!」

「持ち出すの結構苦労したんですぜィ?管理厳しいんでね。」

「蛇の道は蛇だな」

「そんなあっさり!?」


沖田が持ってきたのは地雷だった。
みたいな?、とつければ地雷ではないと誤魔化せるとでも思っているのか、その表情は自信に満ち溢れていた。
それでも突っ込み族並びに常識人設定の雪には通用せず突っ込まれている。
自分の家に地雷を埋められそうになり慌てふためいて突っ込む雪などよそに沖田は庭を見渡す。


「これを庭一面に敷き詰めればこのボロ道場も完全無敵堅牢無比な立派な要塞になりまさァ」

「ボロ道場のままでいいわァァ!!っつか違法でしょうが!!思いっきりジュネーブ条約に違反してますよ!!」

「他所は他所、うちはうち。」

「そんなオカンルール持ち出されても!地雷って言ったら兵器ですよ!?戦争ですよ!?」

「違う。」

「え…」

「正式名所――『地雷?みたいな』」

「えええー…」


沖田が持ってきたこの量からして庭に埋め込んでも余るほどである。
城の蔵に地雷がある事も問題だが、市民の庭に地雷が埋め込まれているのもまた問題である。
沖田達は他人事だから地雷を持ち出せるのだ、と雪は土方もまた沖田に乗っかるのを見て脱力する。
すると妙が薙刀を手に近づいてきた。


「雪ちゃん、あなたが言った通りここは戦場なのよ?遊び気分なら帰りなさい。」

「……姉上、ここが私の帰るところなんですけど…」

「戦場が帰るところとはよく言った!」

「え、いや、そういう意味じゃなくて…」

「不逞の輩と難癖つけて問答無用でたたっ斬る!久しぶりだ。」

「え、あの…難癖って…」

「いいえ!どうせなら刺し貫くの方が!!」

「もっといいのはすり潰すだな!」

「掻き毟り引きちぎるわ!」

「ちょっとー!!あんたら怖すぎるわァァ!!!」


妙は雪に叱るも、帰れと言われても帰る場所にはすでに地に足を付けている雪はどこに帰ればいいのか分からなかった。
というよりは言われてもそこに向かう気は全くない。
何だか見てないと家がどんな要塞になるのか想像もしたくないからだ。
土方は雪の言葉に感心した様子だったが、妙とのコラボレーションに雪は軽く引いた。
というかドン引きしていた。
興奮してはしゃぎ距離が近い2人に雪は慌てて間に割って入る。
妙もシスコンだが、雪もまたシスコンであった。


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