(6 / 9) ああ やっぱり我が家が一番だわ (6)
それから何だかんだで結局は雪の努力も空しく地雷は庭一面に埋められることになった。
雪は手伝う気はないのか塀の壁に戻り一生懸命土木作業のように地雷を埋める銀時達を見守るだけである。
呆れた目線を全員に向けていると、雪はふとある人物がいない事に気づいた。


「あれ…そういえば鷹臣さんは?」

「鷹臣なら仕事だ」


雪は今更になってストーカー2がいないことに気づいた。
雪の下着も盗まれているのだからいても何ら疑問はないのだが、雪は普段から空気として扱っているからか気づくのが遅かった。
その雪の疑問に答えたのは土方であり、土方は捲っていた裾を直しながら雪の隣に腰を下ろす。
『あいつ泣きながら部下に引きずられていたな。』と続く土方に雪はその姿が想像できて思わずくすくすと笑ってしまう。
小さく笑う雪に土方は雪へと視線を移す。


(小さいな…)


改めて雪を見下ろせば小柄さが目に映った。
平均な身長をもつ雪は身長が170を超えている土方にとってみれば小さく小柄に見える。
少し俯き加減の雪の横顔に雪の髪がさらりと流れ、土方は雪の髪で顔が隠れたのを見て土方は顔が見たいと思った。
あの地味だと思われがちだが愛らしい雪の顔が。
あの大きな瞳で自分を映してほしいと思った。
だから土方は手を伸ばし顔を見ようとした。

しかしその瞬間―――薙刀と蹴りが土方を襲う。



「ひ、土方さんンンンン!!!?」



雪は自分と土方の間に薙刀が刺さったあげく土方が壁にめり込んだことに驚きの声を上げた。
驚きをそのままに雪は舌打ちが聞こえ薙刀の主である妙へと恐る恐る振り返る。


「姉上何してんのォォ!!?」

「あらごめんなさい?手が滑っちゃった☆」

「滑っちゃった☆じゃないから!!エヘ☆でもないから!!明らかに殺そうとしてたよね!?土方さん殺そうとしてたよね!?今舌打ちしてましたよね!?」

「気のせいよ」

「気のせいで片づけられるほど偶然に刺さる方向に姉上向いていなかったでしょうが!!背を向けてたでしょうが!!思いっきり振りかぶった位置にいたでしょうが!!」


薙刀は姉である妙が槍投げのように投げ雪と土方の間に刺したものだった。
偶然を装っている姉に雪は思わず突っ込みを入れる。
今まで姉は薙刀を手に雪に背を向け振り回していた。
もし本当に偶然にも手が滑ったというのなら、雪達の方へと飛ばないはずである。
それを姉は堂々と顔色一つ変えずに可愛い子ぶって誤魔化そうとする。
いや、誤魔化そうとする姉は可愛い。
だが、今はそれとこれとは別である。


「おいおいてめぇよぉ…なに雪に手を出そうとしてんだ?雪は俺んだって言ってんだろうが!マヨ厨はお呼びじゃねえんだよ!」

「お前も何してんだァァァ!!」


姉に突っ込みを入れていた最中、雪はぐりぐりと踏みつぶしそうな勢いの音を聞いた。
雪が振り返ればそこには土方の顔面を足蹴りし踏みつけていた銀時がいた。
薙刀は妙が、蹴りは銀時が放ったようで、銀時は壁にめり込んでいる土方の顔面を遠慮なく力いっぱい踏みつけながら見下ろし睨み付ける。
そんな銀時に雪は振り返りざまに突っ込んだ。


「何勝手に私を私物化してんだ!!俺のだもなにも本人があんたのモンだって認めてねえんだよ!!あんたこそ何勝手に彼氏面してんだーー!!」

「はあ?だって俺彼氏だろ?お前の。」

「なんでだーー!私だって彼氏を選ぶ権利くらいあるわー!!」

「ちょ、それ酷くね!?だってしょうがないじゃん!!この小説の相手俺なんだもん!しょうがないだろ!?」

「何『仕方ねえから彼氏になってやるよ』面してんだ!!何仕方ねえ空気だしてんだ!!あんた今片想い設定だろうがアアア!!!」


銀時は雪と口論している間もグリグリとまだ踏みつけており、雪は『っていうか早く土方さんの顔から足退けろよ!』と続けるも銀時からは『えー』と不服の声を貰った。
言っても退かないのなら、と雪は銀時の足を退かそうと土方に駆け寄ろうとした。
しかし雪が土方に駆け寄る前に銀時の足を土方自身が掴み、雪は立ち止まる。
グググ、と力を入れ土方は己の顔面を踏む銀時の足を放そうとする。


「てめェ…何しやがんだ!」

「おやおやぁ〜?なんだ、生きてたの?」

「当たり前だ!!なんで顔面に蹴りつけられて死ななきゃならねえんだ!!」

「そりゃあ、人の女取ろうとするからだろ?」


銀時の足を押しのけ土方は銀時を睨む。
押しのけられた銀時は片足でも器用に後ろへと下がりニヤニヤと憎たらしい笑みを浮かべていた。
ニヤニヤと腹が立つ笑みに土方の堪忍袋ゲージは上がっていく一方だった。
その上雪を自分の彼女扱いに土方の苛立ちはピークを迎える。
だが、不思議と土方は怒り狂うこともなく意外と冷静だった。
土方はいつものように喧嘩しそうな2人を慌てふためいて見ていた雪の腕を掴み自分の方へ引き寄せた。
雪はまさか土方に引き寄せられるとは思っていなかったため無抵抗に土方に肩を抱かれてしまい、銀時は土方が雪の肩を抱くのを見て笑みを消しピクリと片眉を上げる。
表情を消し視線を鋭くさせる銀時を見て今度は土方がニヤリと笑う番だった。


「人の女を取るだァ?なに勘違いしてんだ…雪はお前のモンじゃねえだろ!」

「はあ?何言ってんのお前。俺言ったよな?ちゃんと言ったよな?『雪は俺と寝てる』って。何、お前そういう遠回しとか効かねぇお子ちゃまなわけ?」

「ハッ!何言ってんだは俺のセリフだ。お前の寝てるは普通にお布団並べておねんねだろうが。誰がそんな嘘に騙されるかよ!知らねえようだがな、俺は雪に告ったぜ?」

「告白ゥー?たかが告白でドヤ顔ですかーそうですかーお疲れ様ですねェー。でも残念ながら俺はとっくの昔に告白済ませてますけどねーちゅーもした仲ですけどねー」

「そうか。だが残念だったな、俺も告白と同時にキスした仲だが?」


お互い気に入らない相手だからか2人の額には青筋が何個もできており、挟まれている雪は自分を取り合っているらしい2人の口論に居たたまれなくなり俯く。
何だか自分は二股している悪女のように思えてきていたのだ。
真選組の隊士達も銀時だけではなく土方の言葉にぎょっとしたように雪を見つめ、その視線は今の雪には槍のようで痛い。
物凄く、痛い。
穴があったら入りたいとはこのことだ、と本来ならパンツ晒しの刑とノーブラ発覚事件でいくつもそう思う機会は余るほどあったというのに雪は今この瞬間に思った。
しかし…


「ちょいとお二人さん待ちなせェ」


にらみ合い自分の方が進んでるんですけど?と言い合いしている2人に挟まれ居たたまれなかった雪に救世主が現れた。
恥ずかしくて俯いていた顔を上げればそこには沖田がおり、雪は沖田が間に入ったことに仲裁に来てくれたのかと大いに喜ぶ。
だが…


「俺ァ乳を揉みましたけど、何か?」


どういう訳か沖田も乱入し、まさか話しに入ってくるとは思ってもいなかったため雪は思わず『お前も参加すんのかいィィィ!!』と心の中で突っ込む。
雪の心の突っ込みをよそに沖田は手をワキワキとさせ2人よりもドヤ顔を見せる。
しかし沖田に啖呵を切ることせず銀時と土方は固まったかと思えばギギギと油を差していない機械のようにゆっくりと雪に振り返る。
雪は2人に振り返られビクリと肩を揺らした。


「……おい雪」

「は、はい…」


周りも沖田の言葉に黙り込んでしまったのかその場は静けさだけが残った。
その中で最初に言葉を発したのは銀時だった。
銀時へ視線を移すと自分を見る銀時の目は血走っており雪はその恐怖から『ひっ』と小さく悲鳴を上げた。
そしてマジ切れ5秒前な銀時に雪は助けを求めるように肩を抱く土方へと見上げるも…土方も銀時同様瞳孔が更に開きマジ切れ5秒前だった。
雪は本気ギレな2人にとりあえず何故キレかかっているかは分からないが謝ろうとするも2人が怖すぎて言葉すら出ない。


「旦那ァ、雪を怯えさせるのは関心しないでさァ」


銀時が何か問おうとすると沖田が割って入ってきた。
謝罪すら出てこない雪に沖田は手を伸ばし、土方から雪を奪い後ろから抱き付く。
沖田が雪を後ろから抱きしめたその瞬間、確実に2人から殺気が放たれた。
しかし沖田はあからさまな2人の殺気にニヤリと笑い、雪の腹に手を回し指を組んで引き寄せ密着感を見せる。
その瞬間2人からの殺気が強まった。


「2人はまだキスどまりで?そりゃァ可哀想でさァ……勘違い野郎的な意味で。」


そう呟き沖田は勝ち誇った顔を2人に向け、見せつけるかのように雪と密着する。
見せつけるかのようというよりは確実に見せつけているのだろう。
沖田が憐れんでいるのは、キスどまりだからではなく、自分より進んでいないからでもなく……雪の彼氏の席が空いていると思っている勘違い男達への憐れみだった。
本来なら沖田の戯言に刀を抜いていた土方だが、今回は違い睨む強さを深めながら低い声を絞り出す。


「おい…総悟……お前さっきの本当か?」

「何がですかィ?」

「あ?惚けてんじゃねえぞ…てめェが一番勘違い野郎じゃねえの?雪のおっぱいを揉んだだァ?何言ってんだお前。雪が男におっぱい揉ませるわけねえだろうが。男におっぱい揉ませるビッチじゃねえんだよ、俺の雪はなァ」

「やれやれ…現実を見ないで妄想ばかりのモテないオッサンたちはこれだから困りまさァ……なら本人に聞いてみやすかィ?」


そう言って沖田はなんと雪に丸投げしてきた。
雪は最前線ともいえる恐ろしいトライアングルの中心に立たされ出来るだけ2人を刺激せず共倒れになるのを待つため空気になろうとした。
空気だ、お前は空気なんだ。近藤ブラザーズなんだ。、と自分で言い聞かせ出来るだけ無き者として過ごそうとした。
それって突っ込み属性としてどうなの、という周りの突っ込みさえ今の雪には届いていない。
しかし沖田はやってくれた。
沖田はやった。
Sはやりやがった。
見事雪を戦いの渦中へと放り出してくれやがった。
雪は『へ』と呆気にとられたが、沖田、土方、銀時に見つめられ顔がサーッと青くした。
銀時も土方も目が怖い。ヤンデレ属性キャラのように怖い。ものすごく怖い。


「どうなんだ、雪」

「本当に総悟に胸揉ましたのか」

「え…あ、えっと……あの…」


雪は否定の言葉が咄嗟に出なかった。
今の2人に嘘は通じないと本能が察したのだろう。
いつもなら『何言ってるんですか!!揉まれてません!揉ませてもいません!!純潔です!!』とよく分からない誤魔化しが出てくるのだが、今はそれが出てこない。
雪は些細な抵抗として目線を泳がせ2人を見ないようにした。
そんな雪の反応に2人はその意味を察し、衝撃を受けたように目を見張る。
沖田は土方と銀時の反応に口端を上げ、スッと腹で組んでいた手を雪の胸元へと伸ばした。


「おき…ッ!?」

「雪−、ちゃんと2人に答えてあげないといけねェだろィ…『私はもう沖田さんと乳繰り合う仲です』ってな。じゃなきゃ勘違い野郎達はいつまでもお前に付きまとうぜィ?」

「そん―――」


ここで一つ言わせてもらおう。
沖田は雪に告白すらしていない、と。
いや、告白は一応しているが何分沖田は土方や銀時のように改まって告白していないだけである。
冗談にとらえられるタイミングばかりだったため、雪はそれを真に受けていなかった。
沖田は雪の耳元に息を吹きかけながら呟き、そしてゆっくりと2人を挑発するように雪の襟元に手を忍ばせる。
その瞬間土方と銀時の殺気が更に強くなり2人が動いたのと同時に、土方の時同様沖田に向かって薙刀が飛んできた。
沖田は難なく避け、避けられた薙刀は塀の壁に綺麗に突き刺さった。
雪は塀の壁に並んで突き刺さっている二つの薙刀を見た後顔を真っ青にさせながら薙刀の主へ振り返る。
そこには、やはり笑顔の姉が立っていた。


「おいてめェらいい加減にしておけよ?こっちが泳がせるために黙って聞いててやりゃぁいい気になりやがって…私から言わせりゃてめェら全員が勘違い野郎なんだよ。よくもまぁ公衆の面前でいい年した野郎どもがキスしただの告白しただの乳揉んだだのと騒いでいられるよなぁ?いいか、雪ちゃんのおっぱいは私のなんだよ。雪ちゃんの全ては私のなんだよ。8年も離れ離れになってた溝の深さ舐めてんじゃねえぞ!」


今まで黙っていたのは三人がボロを出さないか見ていただけだった。
ストーカーに加え妹はここ最近モテているのが妙の最近の悩みのタネでもあった。
だから丁度いい機会だと泳がすことにしたらしい。
妙の目論見通り三人はここぞとばかりに雪争奪戦を起こし自爆していく。
誰が雪に何をしたのかを頭の中でインプットした後妙は新たな薙刀を可愛い可愛い妹の襟に手を入れようとした沖田に向かって投げた。
沖田は難なく避けたが、それも妙は予想ついていた。
ニッコリと笑っているのに声が地を這うように絞り出した怒りボイスの妙に三人は…



「「「……ご、ごめんなさい…」」」



土下座するしかなかった。
土下座する男達に妙はつばを吐きながら『後で面かせや、薄鈍ども』とこれまた低い声で呟き男達は『あ…俺死んだ…』と三人揃ってそう心の中で呟いたという。


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