(7 / 9) ああ やっぱり我が家が一番だわ (7)
夜。
作業も終え、雪の朝&昼&夜のご飯も平らげた銀時達はまだ来ぬ泥棒を待っていた。
庭にある茂みの中からこっそりと顔を出し泥棒を待つ。
夏のせいか蚊が先ほどから飛び回り鬱陶しいことこの上ない。


「さっきからなんで俺ばっか…」

「銀ちゃんの血は甘いあるネ」

「糖か」

「銀さんやっぱり糖を抑えた生活しましょうよ…蚊にも分かるほどの血糖って…やばいんじゃないですか?」

「バカ、俺から糖を取ってみろ……イケメンしか残らねえだろ?」

「いや、イケメンも残らないよ?あんたに残るのはマダオだけだよ?あんたどんだけ図々しいの…」


先ほどから飛び回っている蚊のほとんどは銀時に集中していた。
もう何度目になるか分からない蚊の襲撃に銀時は愚痴る。
神楽が言うには銀時は糖を取りすぎだからとの事で、雪は真に受けてはいないものの糖の取りすぎには前から気になっていたため丁度いいと思ったらしく苦言を呈する。
銀時は『へいへい』と適当に相手をするも雪は自信満々にイケメン要因を語る銀時に呆れたように突っ込みぶら下がっている下着に目を移す。


「それより、全然泥棒が来る様子ないんですけど…これ、ひょっとして…今日来ないんじゃないんですか?いや、今日だけじゃなくてむしろ永遠に…」

「大丈夫だよ、来るって。」

「いや、だから何を根拠に今日来るって言ってるんですか?むしろ私的には来てほしくないんですけど」

「あんなこれ見よがしにパンツがぶら下がってるアル!下着泥棒がほっとくわけないヨ!」

「いやいや!あからさますぎるよ!なんか罠まる出しだし…」

「雪ちゃん、泥棒というのは目的までの障害が困難であればあるほど燃えるものなのよ。」

「何勝手にキャラ設定してんの!?気の小さい泥棒だったらどうするんですか!」


正直…本当に正直な話し……雪はもうやめたいと思っていた。
それは泥棒を捕まえると銀時達が躍起になっている間も何度も思っている事で、雪はここが自宅ではなかったら即帰っているとろこだろう。
誰が好き好んで自分の下着を女だけではなく男(しかも知り合いで1人上司)に公開しなきゃならんのだ、と雪は嫌々だった。
明日からどんな顔で銀時達に会えば分からなかった。
しかしここまで恥をかかせたのだから泥棒を捕まえたい気持ちもあり、雪の心は複雑である。


「もう誰でもいいんじゃねェですか?この際手近の奴で済ませやしょうぜィ」

「口裏合わせりゃバレねえか…」

「手近ってなに!?口裏ってなに!!?」

「おいおい、でっけえ声出すんじゃねえよ。泥棒にバレたらお釈迦だぞ」

「あんたをお釈迦にしたいよ!このクソ熱いのによォ!」

「何だとこの野郎!コンタクトにしてやろうか!?」

「いつまでも私がメガネっ子だと思うなよこの野郎!!大体なあんたがその気にならなきゃ私はパンツをみんなの前で公開することもなかったんだよ!!ノーブラだってバレなかったんだよ!!モテないとみなされて施し受けてプライドを傷つけられたか知らねえけどな!あんたのプライドなんて元々ないもんだろうが!!余計な事しやがって!!スケスケパンツ見せられた時の私の気持ちが分かるか!?クマさんパンツ見せられた時の私の気持ちが分かるか!?ノーブラだって知られた時の私の気持ちがあんたに分かるっつーのか!?絶対土方さん達引いてただろ!!それがもとで噂が広まって嫁に貰えなくなったらどう責任取るつもりだ!!」

「責任なら俺が嫁に貰ってやるって結構前から言ってただろうが!!口説いてもいただろうが!!キスもしただろうが!!迫ってただろうが!!お前いつまでもカマトトぶれると思うなよ!?私は純粋無垢ですぅーってアピールできると思うなよ!?夢主=天然鈍感だと思うなよ!!?」

「何抜かしてんじゃクルクル天パァ!!お前がうちの道場に婿に来たら一日も持たずに借金取りに道場取られるに決まってんだろ!!冷蔵庫すべて糖分になんだろうが!大体なお前私の時は何の反応もなかったくせに雪ちゃんの時は即かよ!即殺しにかかるのかよ!!少しは優しさつーもん持てやァァ!!」

「うっせーよ!何でてめェみてえなゴリラに育てられた暴力女のパンツごときで騒がなきゃならねえんだよ!!そんな凶器にしかならんもんで騒ぐのはお前と同じ霊長類のストーカーゴリラしか食いつかねえだろうが!!女と見なされたかったらしおらしくしてみせろってんだ!!」

「はあああ!?何抜かしてんだ!私は立派な女だろうが!雪ちゃんの出来た姉だろうが!雪ちゃんに近づく害虫を駆除する立派な姉だろうが!!雪ちゃんが世界で一番大好きな姉なんだろうが!!」

「なんでだー!どうしてそこに辿りつくんだー!!俺は姉論議してんじゃえよ!女としてもっと御淑やかにしろって言ってんだよ!そうすりゃ地球の平和は9割保てるだろうよ!!あとお前が世界で一番好きな姉だったら俺は雪が世界で一番好きな旦那だボケ!」


最初はあまりの暑さからか、それとも知り合いにパンツを見張られている八つ当たりからか、雪は銀時と口論となるも何故か妙が乱入し、2人は雪を余所にヤンキーのように額で軽く突き合い凄んでいた。
しかもその内容がもはや泥棒など関係ない。
雪は苛立ちも姉と銀時の口論で引っ込んだのか肩を落としため息をつく。
そんな雪の肩にポン、と誰かが手を置き、雪は振り返る。
そこには沖田と土方がいた。


「手を貸しやしょうか?」

「喧嘩は徹底的にやれよ。相手が二度と立ち上がれなくなるまでな。」

「私の拳も暴れたがってるネェー!!誰か俺の拳に血を吸わせてやってほしいアル!!」

「もー!土方さん達もやめてくださいよ!神楽ちゃんもめっ!」


沖田と土方の言葉に雪は即答で『いりません』と答えた。
この2人(特に沖田)に任せたら止める以前に騒ぎが大きくなりそうで雪は断ったのだ。
というか、雪は分かっていた。
この2人は絶対喧嘩を止める気ゼロだと。
それに便乗するように神楽が筋肉漫画のようなセリフを叫び、雪は神楽の頭をペチリと軽く叩く。
叱られた神楽はムスッと唇を尖らせ『何すんだヨー』とふてくされそうになったその時、後ろで口論を繰り広げついには手足も出ていた銀時と妙がこちらに倒れ込むように雪達を巻き込み、血の気の多い沖田・土方・神楽は止められたのも忘れ売られた喧嘩を買った。
雪も暑さから止める役割を放棄し、苛立ちのまま売られた喧嘩を買う。


「あーもう、やめてやめて!喧嘩しない!――暑いからみんな苛々してんだなァ…よし!ちょっと休憩!」


その場は静けさから一転、騒がしくなった。
誰かの手が雪の髪を引っ張り、雪も負けじと誰かの髪を引っ張る。
髪だけではなく服やら皮膚やらともうやりたい放題の子供の喧嘩となっていた。
そんな6人の間に入ったのは唯一冷静?でいた近藤だった。
しかし近藤が止めに入ると返ってきた言葉は『黙れよダメヒゲ!』やら『黙れよケツ毛!』やら『黙れよからまりくん!』やら『黙れよミソパン!』やら『黙れよゴリ。』だった。
銀時や神楽、妙なら分かるが同志であるはずの土方や沖田にまで罵られ近藤勲の繊細な心はものすごく傷ついた。
可愛い弟に癒されたい…近藤はそう思いながらも罵りを暑さのせいにして冷たい物を買ってくることにいした。
相変わらず遠慮を知らない連中は戸惑いもなく各々欲しい物をリクエストする。
雪は罵りには参加しなかったが、欲しい物を声を絞り出すように『お、お茶…』と零す。
どうやら喉が渇いていたようである。


「ったく…しょうがない奴らだな…」


近藤は近くのコンビニに向かうためその場を離れる。
しかし、一歩足を踏み出したその瞬間…ピ、と機械音が鳴ったのと同時に…――

近藤が爆発した。


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