(5 / 14) 親子ってのは嫌なとこばかり似るもんだ (5)
祭りへ行く前に志村家へ寄り、雪と神楽は楽しそうに浴衣を選んでいた。


「お茶でもどうぞ」

「……それ、飲めるの?」

「はっ倒しますよ?」

「…すみません……」


まだ仕事に行く前なのか、妙もおり祭りに行くという雪を微笑ましそうに見つめ『よかったわね』と雪の頬を撫でる。
何故か銀時も浴衣を着る事になり、一度は断ったが雪と神楽に押され着る羽目となった。
小さな抵抗、というよりは嫌々着るのだからと銀時は雪に浴衣を決めてもらい、今、銀時はその雪が選んだ着物を身にまといまだきゃっきゃ言っている女性陣を待っている最中だった。
銀時は机に肘をつき胡坐をかいて寛いでいると妙からお茶を差し出される。
しかし妙は料理をダークマターに変えるのが得意なため、一見普通のお茶を見下ろしながら警戒したが、笑顔の妙に即座に謝った。
自分の淹れたお茶を口にする銀時を見送った後、妙はマジマジと銀時の浴衣姿を見る。


「それにしても…銀さんって全然全くこれっぽっちも塵ほども似合ってませんね…不愉快なのでそれ脱いでいただけません?」

「これおたくの妹さんが選んだもんだけど」

「あら、素敵。とってもお似合いですよ、銀さん」

「…………」


銀時が着ている浴衣は無難なグレーの浴衣。
これは唯一志村家で男性だった雪の父親のらしい。
未練がましく捨てきれなかったと雪は銀時に渡しながらそう呟いていたのを今でも思い出す。
そんな父の着物をマダオの代表その2(その1は長谷川)が着ているというのは腹立たしいのかいつも以上に毒づくも銀時が親指で雪をさせば妙の態度はコロッと180度変わり、銀時はもう何も突っ込む気にもなれなかった。


「でも…あなたがお祭りに行こうだなんて…大変だわ、明日は矢が飛んでくるかもしれないわね…雪ちゃんをお休みさせなきゃ」

「それどういう意味?……俺だって行きたかねーよ。金ねえし。でも金貰った手前行かなきゃ損だろ?それにあいつらのあんな嬉しそうな顔を曇らせられる人間この世にいるか?」

「いませんね、特に雪ちゃんを悲しませるなんて私には…もしそんな輩がいたらそいつをタコ殴りした上で市中引き回し介錯なしに切腹させ雪ちゃんを悲しませた事を後悔しながらこの世からおさらばしてもらいます。」

「…ソーダネ」


妙は出不精な性格を知っているため銀時が祭りに行くと言ったときは耳を疑った。
それを素直に言えば『お前俺を何だと思ってるの?』としかめっ面を送られた。
銀時の問いに妙は銀時から神楽と浴衣を決めている雪を見つめクスリと目を細め微笑む。
妹に注がれているその目(だけを見れば)は慈愛に満ちてどんな男だろうが今の妙を見れば心を奪われるだろう。
だが生憎と銀時には雪という(本人も周りも認めていないが)心に決めた未来の奥さんがいる。
そして更に生憎と銀時は妙の本性を知っているためどうも惹かれない。
黙ってればいい女のに…銀時は心底勿体ないと心の中で呟き相変わらず妹に向ける過保護さには呆れを通り越しすでに感服していた。
突っ込みどころ満載な妙の言葉に銀時は『雪ってすげえんだな、実は…』と今までこれらをさばいでいた突っ込み族の雪を尊敬する。
そうこうしている間にも2人は浴衣を決めたのか各々着る浴衣を持って別の部屋へと移動した。
女の支度は遅いと知っている銀時は終わるまで仮眠を取る気なのか片肘を立て横になる。


「ねえ、銀さん」

「あ?」


暫く静まり返っていたが、妙が目を瞑る銀時に声をかけ、銀時は目を瞑ったまま返事だけを返した。
雪がこの場にいれば『ちゃんとしてください!』とオカンな事を言われるだろうが、雪は只今着替え中なため銀時を咎める者はいない。
妙はすでに我が家のように寛ぐ銀時などどうでもいいのか目を瞑ったまま返ってきた銀時を気にする様子もない。


「あの子、あなたのもとで楽しくやっていますか?」


銀時は妙の言葉に閉じていた目を開ける。
しかし目を開けただけで横になったままだった。
返事が返ってこないのを不思議に思わず妙は続ける。


「あなたあの子を苛めてませんよね?あの子ばかり働かせてないですよね?あの子ばかり苦労かけさせてないですよね?あの子の肌に傷なんてつけさせてないですよね?あの子にセクハラしてませんよね?あの子を無理矢理――」

「だーーッ!!うっせェェ!!お前何!?何なの!?ねえ何が言いたいわけ!!?」

「…あの子、笑ってますか?」

「…………」


無視を決めつけ狸寝入りを続けようとした銀時だったが、しつこい妙の質問攻撃についに根を上げた。
これ以上言わせればいずれ自主規制の『ピー』さんが仕事しにくると思い銀時は起き上がる。
声を上げる銀時に顔色一つ変えず妙は零した。
妙の言葉に、妙の真っ直ぐな目に、銀時は――


「当たり前だ」


そう答える。
迷いのない言葉、そして真っ直ぐ逸らすことなく見つめる赤い瞳に妙は一瞬間を置いた後『そう、よかった』と笑みを浮かべた。
妙は微笑んだまま机で銀時から見えない拳を握った。


5 / 14
| back |
しおりを挟む