それから妙と銀時の間に会話はなかった。
妙は出勤時間が迫り雪と神楽の浴衣姿を見る前に家を出ていった。
その際『これ、私からです』と言いお金を入れた封筒を銀時に渡していった。
しかしいくらゴリラと揶揄している銀時だが、流石に自分同様金欠な志村家のご長女からお金はもらえないと一度は断ったが、『受け取らねえと川に沈めんぞ』と笑顔を浮かべながら脅され受け取るしかなかった。
その際カメラを取り出し『これで雪ちゃんと神楽ちゃんの浴衣写真写しておいてくださいね?万が一写ってなかったり枚数が少なかったらどうなるか―――銀さんなら分かっていますよね?』とも脅される。
「どうアルか!銀ちゃん!!」
「おーおー似合ってる似合ってる。まさに馬子にも衣裳。」
「…殴っていいアルか」
妙が家をでて10分弱。
着替え終えた2人が戻ってきた。
神楽は赤色の生地に大きな桜が散りばめられており、雪は紺色の生地に朝顔が描かれている。
髪型も整えうっすらと化粧をしているのか2人とも贔屓目などなくとも十分絵になっていた。
雪は妙の姿がない事に疑問に思いまだ横になってだらけている銀時に『銀さん姉上はどこに?』と問う。
銀時から仕事に行ったと伝えられた雪はしょんぼりとさせる。
どうやら姉にも浴衣姿を見せたかったらしい。
「お前ら本当にシスコンな。」
「まあ、否定はしません」
突っかかって来る神楽の頭をグリグリと乱暴に撫でながらしょんぼりとさせる雪に銀時は呆れたようにつぶやいた。
妙ばかりがシスコン色が強く見られがちだが、雪の傍にいれば雪もまたシスコンなのだということが分かる。
両親が早く亡くなり離れて暮らしていたらしい事もあり、お互いシスコンになるのは仕方ないのかもしれない。
だが、それでも妙の過保護は異常としかいいようがない。
(あれが良かったって思う顔かよ)
銀時は『ちょっとォォ!せっかくセットしたんですからぐちゃぐちゃにしないでくださいよ!!』と神楽の頭をグリグリと撫でまわす銀時の手から神楽を救出し、また髪をセットし直す。
それを見ながら銀時はほんの10分前の事を思い出していた。
それは妙の笑顔だった。
あの時、雪が笑っているかと聞かれたため自分が頷けば妙は『そう、よかった』と言って微笑んでいたが…どうも銀時から見たその笑みは固く引きつっていたように見えた。
「……嫉妬丸出しじゃねえか」
「え?何か言いました?」
「いんや、なんでも。」
妙は上手く隠せたように思っているだろう。
確かに銀時じゃなければ妙は笑って見えただろう。
妹を案じホッと安堵する姉の顔に見えただろう。
だが、その中に混じる黒く重い嫉妬を銀時は見た。
愛して愛して愛してやまない妹を取られたようで憎いと妙は銀時を見ていた。
だから銀時は断言してやったのだ。
雪はもうお前だけのモノではないのだと。
チラリと雪を盗み見ると雪は銀時の手によってぐちゃぐちゃのボンバーになっている神楽の髪をもう一度やり直しているところだった。
その姿はまさに母と娘で、その光景に思わず銀時は目を細めニヤついてしまう。
まるで本当の家族のような2人のやりとりにニヤついて見続ければ雪に大人しく髪を整えてもらっている神楽からは冷めた目で『銀ちゃんさっきからニヤニヤと私達の事見てるアル。気持ち悪いアル。死ねよお前』と冷たく言われ、更には雪からも『あれはね、妄想してるんだよ。男の人は妄想しないと生きていけないから許してあげて』と冷たく言われ銀時はほんのちょっぴり本泣きした。
それでもそんなやり取りも家族を思わせ、祭りだと浮かれて楽しそうな2人にニヤニヤは止まらない自分は馬鹿な男なのだろうと心底思う。
だがその感情は嫌ではなかった。
(俺ぁ、家族なんざ知らねえが…これが幸せっつーもんか…)
銀時は親の愛情も兄弟の愛情も知らないまま育った。
しかし親の愛情は知らないが、育ての親ともいえる人からの愛情は知っている。
だけど今のこの幸せはそれとは別だと何も知らない銀時でも感じ取っていた。
これが、家族を持つという幸せなのか、と。
冷めた目で見てきても、冷めた言葉を言われても2人は自分を嫌わないという絶対なる自信があるから軽く流せる。
戦争の時には知らなかった感情に銀時の頬は緩みっぱなしだった。
「そういや、おめえら祭り行く前に写真撮るぞ」
「写真…?」
神楽の頭が完成したのを見て銀時は重すぎる腰を上げた。
『よっこらせ』と年寄りくさい掛け声を零しながら立ち上がると机に置かれていたカメラが目につく。
今の今まで忘れていた銀時は『やっべ』と顔を歪ませカメラを手に取る。
写真を撮るという銀時の言葉に雪は首を傾げ、銀時が妙に言われたと雪に伝えれば雪は嬉しそうな笑みを浮かべる。
姉に直接見せることはできないが、写真で残せると嬉しいのだろう。
その笑みを今度は銀時が嫉妬する番だった。
(忘れたと言えばよかったか……あ、いや、忘れたって言った瞬間俺の命が終了するな…)
妙だけが雪の一番でありたいと思っているわけではない。
銀時も、そして神楽も、雪の一番でありたいと思っているのだ。
だから銀時は写真の事を告げたことを後悔した。
しかし口に出たモノは仕方ないと銀時はカメラに雪や神楽の姿を写す。
「銀さん、銀さんも撮ってあげますよ。貸してください」
「いやいや俺はいいって。」
「何遠慮してるんですか」
「遠慮してねえしぜってぇあいつ俺のだけ燃やすし」
「そんなこと姉上はしませんよ」
「いや、するし絶対燃やして塵に返すしむしろ俺を無に返すし」
「そんなんどうでもいいアル。私はさっさと祭りに行きたいネ」
一通り2人の写真を撮ったが、銀時は写真を撮る役ばかりで今のところ一枚も映っていない。
それを雪は気にして代わると言いだし、銀時は断った。
どうせ妙は俺が写ってる写真は捨てるどころか燃やすに決まっているし、ともごもごと言い訳じみた事を呟きカメラを雪に渡さない。
『写真とりましょうよ』『いや、だから別にいいって』と繰り返していると痺れを切らした神楽が切って捨てた。
雪はもう銀時の言い訳など聞くつもりはないのか『私三脚取ってくるね』と神楽をなだめた後奥へ引っ込んだ。
「…………」
「…………」
「…………」
「……なんだよ」
「このヘタレが。」
雪の姿が消え、一向に祭りに行こうとしない雪に銀時は疲れたように座り込み、神楽はそわそわと縁側に座り足をブラブラとさせていた。
雪の気配が消えた途端、神楽がこの家の主のように座る銀時に振り返りジトーッと不躾に見つめる。
その視線を最初は無視していた銀時だったが、あまりにもしつこいため声を掛ければ返ってきた言葉に顔を引きつらせる。
ピクリと顔を引きつらせる銀時を見た後、神楽はフイっと銀時から顔を逸らした。
「何で雪に可愛いって言わないアル」
「雪はいつも可愛いじゃねえか」
「何で雪に綺麗だねって言わないアル」
「雪はいつも綺麗だろ」
「……間男に雪をとられて泣いて叫んで死ねばいい」
「あーもー!!なんだよ!お前!!さっきから意味分からんことばっか言いやがって!!何が言いたいわけよ!!お妙の真似かゴラ!お父さんはあんなゴリラ女になるのは許しませんよ!!」
「嫌な予感がするアル」
「…あ?」
神楽の言葉を銀時は返すも何がしたいのか全くもって分からない神楽の行動に叫んだ。
最後はデジャブを感じ脳裏にゴリラ女を浮かんだ銀時は頭を振ってゴリラを追い出す。
しかし続けられた神楽の言葉に銀時は口を閉じた。
そんな銀時に神楽は背を向けたまま呟いた。
「雪が……どこか遠くにいく気が、するアル」
「……………」
神楽の言葉に銀時は何も言えなかった。
『んなわけあるか』、と本当なら言えるはずなのに、神楽の背中を見てしまえば安い慰めなど向けること出来るはずがなかった。
妙は出勤時間が迫り雪と神楽の浴衣姿を見る前に家を出ていった。
その際『これ、私からです』と言いお金を入れた封筒を銀時に渡していった。
しかしいくらゴリラと揶揄している銀時だが、流石に自分同様金欠な志村家のご長女からお金はもらえないと一度は断ったが、『受け取らねえと川に沈めんぞ』と笑顔を浮かべながら脅され受け取るしかなかった。
その際カメラを取り出し『これで雪ちゃんと神楽ちゃんの浴衣写真写しておいてくださいね?万が一写ってなかったり枚数が少なかったらどうなるか―――銀さんなら分かっていますよね?』とも脅される。
「どうアルか!銀ちゃん!!」
「おーおー似合ってる似合ってる。まさに馬子にも衣裳。」
「…殴っていいアルか」
妙が家をでて10分弱。
着替え終えた2人が戻ってきた。
神楽は赤色の生地に大きな桜が散りばめられており、雪は紺色の生地に朝顔が描かれている。
髪型も整えうっすらと化粧をしているのか2人とも贔屓目などなくとも十分絵になっていた。
雪は妙の姿がない事に疑問に思いまだ横になってだらけている銀時に『銀さん姉上はどこに?』と問う。
銀時から仕事に行ったと伝えられた雪はしょんぼりとさせる。
どうやら姉にも浴衣姿を見せたかったらしい。
「お前ら本当にシスコンな。」
「まあ、否定はしません」
突っかかって来る神楽の頭をグリグリと乱暴に撫でながらしょんぼりとさせる雪に銀時は呆れたようにつぶやいた。
妙ばかりがシスコン色が強く見られがちだが、雪の傍にいれば雪もまたシスコンなのだということが分かる。
両親が早く亡くなり離れて暮らしていたらしい事もあり、お互いシスコンになるのは仕方ないのかもしれない。
だが、それでも妙の過保護は異常としかいいようがない。
(あれが良かったって思う顔かよ)
銀時は『ちょっとォォ!せっかくセットしたんですからぐちゃぐちゃにしないでくださいよ!!』と神楽の頭をグリグリと撫でまわす銀時の手から神楽を救出し、また髪をセットし直す。
それを見ながら銀時はほんの10分前の事を思い出していた。
それは妙の笑顔だった。
あの時、雪が笑っているかと聞かれたため自分が頷けば妙は『そう、よかった』と言って微笑んでいたが…どうも銀時から見たその笑みは固く引きつっていたように見えた。
「……嫉妬丸出しじゃねえか」
「え?何か言いました?」
「いんや、なんでも。」
妙は上手く隠せたように思っているだろう。
確かに銀時じゃなければ妙は笑って見えただろう。
妹を案じホッと安堵する姉の顔に見えただろう。
だが、その中に混じる黒く重い嫉妬を銀時は見た。
愛して愛して愛してやまない妹を取られたようで憎いと妙は銀時を見ていた。
だから銀時は断言してやったのだ。
雪はもうお前だけのモノではないのだと。
チラリと雪を盗み見ると雪は銀時の手によってぐちゃぐちゃのボンバーになっている神楽の髪をもう一度やり直しているところだった。
その姿はまさに母と娘で、その光景に思わず銀時は目を細めニヤついてしまう。
まるで本当の家族のような2人のやりとりにニヤついて見続ければ雪に大人しく髪を整えてもらっている神楽からは冷めた目で『銀ちゃんさっきからニヤニヤと私達の事見てるアル。気持ち悪いアル。死ねよお前』と冷たく言われ、更には雪からも『あれはね、妄想してるんだよ。男の人は妄想しないと生きていけないから許してあげて』と冷たく言われ銀時はほんのちょっぴり本泣きした。
それでもそんなやり取りも家族を思わせ、祭りだと浮かれて楽しそうな2人にニヤニヤは止まらない自分は馬鹿な男なのだろうと心底思う。
だがその感情は嫌ではなかった。
(俺ぁ、家族なんざ知らねえが…これが幸せっつーもんか…)
銀時は親の愛情も兄弟の愛情も知らないまま育った。
しかし親の愛情は知らないが、育ての親ともいえる人からの愛情は知っている。
だけど今のこの幸せはそれとは別だと何も知らない銀時でも感じ取っていた。
これが、家族を持つという幸せなのか、と。
冷めた目で見てきても、冷めた言葉を言われても2人は自分を嫌わないという絶対なる自信があるから軽く流せる。
戦争の時には知らなかった感情に銀時の頬は緩みっぱなしだった。
「そういや、おめえら祭り行く前に写真撮るぞ」
「写真…?」
神楽の頭が完成したのを見て銀時は重すぎる腰を上げた。
『よっこらせ』と年寄りくさい掛け声を零しながら立ち上がると机に置かれていたカメラが目につく。
今の今まで忘れていた銀時は『やっべ』と顔を歪ませカメラを手に取る。
写真を撮るという銀時の言葉に雪は首を傾げ、銀時が妙に言われたと雪に伝えれば雪は嬉しそうな笑みを浮かべる。
姉に直接見せることはできないが、写真で残せると嬉しいのだろう。
その笑みを今度は銀時が嫉妬する番だった。
(忘れたと言えばよかったか……あ、いや、忘れたって言った瞬間俺の命が終了するな…)
妙だけが雪の一番でありたいと思っているわけではない。
銀時も、そして神楽も、雪の一番でありたいと思っているのだ。
だから銀時は写真の事を告げたことを後悔した。
しかし口に出たモノは仕方ないと銀時はカメラに雪や神楽の姿を写す。
「銀さん、銀さんも撮ってあげますよ。貸してください」
「いやいや俺はいいって。」
「何遠慮してるんですか」
「遠慮してねえしぜってぇあいつ俺のだけ燃やすし」
「そんなこと姉上はしませんよ」
「いや、するし絶対燃やして塵に返すしむしろ俺を無に返すし」
「そんなんどうでもいいアル。私はさっさと祭りに行きたいネ」
一通り2人の写真を撮ったが、銀時は写真を撮る役ばかりで今のところ一枚も映っていない。
それを雪は気にして代わると言いだし、銀時は断った。
どうせ妙は俺が写ってる写真は捨てるどころか燃やすに決まっているし、ともごもごと言い訳じみた事を呟きカメラを雪に渡さない。
『写真とりましょうよ』『いや、だから別にいいって』と繰り返していると痺れを切らした神楽が切って捨てた。
雪はもう銀時の言い訳など聞くつもりはないのか『私三脚取ってくるね』と神楽をなだめた後奥へ引っ込んだ。
「…………」
「…………」
「…………」
「……なんだよ」
「このヘタレが。」
雪の姿が消え、一向に祭りに行こうとしない雪に銀時は疲れたように座り込み、神楽はそわそわと縁側に座り足をブラブラとさせていた。
雪の気配が消えた途端、神楽がこの家の主のように座る銀時に振り返りジトーッと不躾に見つめる。
その視線を最初は無視していた銀時だったが、あまりにもしつこいため声を掛ければ返ってきた言葉に顔を引きつらせる。
ピクリと顔を引きつらせる銀時を見た後、神楽はフイっと銀時から顔を逸らした。
「何で雪に可愛いって言わないアル」
「雪はいつも可愛いじゃねえか」
「何で雪に綺麗だねって言わないアル」
「雪はいつも綺麗だろ」
「……間男に雪をとられて泣いて叫んで死ねばいい」
「あーもー!!なんだよ!お前!!さっきから意味分からんことばっか言いやがって!!何が言いたいわけよ!!お妙の真似かゴラ!お父さんはあんなゴリラ女になるのは許しませんよ!!」
「嫌な予感がするアル」
「…あ?」
神楽の言葉を銀時は返すも何がしたいのか全くもって分からない神楽の行動に叫んだ。
最後はデジャブを感じ脳裏にゴリラ女を浮かんだ銀時は頭を振ってゴリラを追い出す。
しかし続けられた神楽の言葉に銀時は口を閉じた。
そんな銀時に神楽は背を向けたまま呟いた。
「雪が……どこか遠くにいく気が、するアル」
「……………」
神楽の言葉に銀時は何も言えなかった。
『んなわけあるか』、と本当なら言えるはずなのに、神楽の背中を見てしまえば安い慰めなど向けること出来るはずがなかった。
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