(9 / 14) 親子ってのは嫌なとこばかり似るもんだ (9)
「もー!2人ともいい加減にしてよ!!」


かれこれ数十分…彼らは長谷川という名の的を撃ち続けた。
競い合っている2人は楽しいだろうが、正直見ているだけの雪はつまらない。
既にリンゴ飴も食べきり見ているのも飽きてきた雪は2人を止めに入る。


「何で止めるアル!雪!!」

「そうでぃ、せっかく俺が優勢だっつーのに」

「違うネ!私の方が上だったネ!」

「ああ?なに寝ぼけてやがんでィ、俺の方が点数が多かった。」

「いいや!私ネ!!――雪!私の方が数倍勝ってたネ!」

「いやいや、雪、俺の方が高得点だったよなァ?」

「どっちもどっちだーー!!なんだよ優勢とか上とかって!!せめてそこだけは統一させろ!!!っていうか長谷川さんが可哀想な事になってるからもうやめてあげなよ!また長谷川さん無職になるよ!!」


止められたためか2人はムッと雪を睨むが、長谷川が狙われ過ぎて可哀想な事になっていたため負けじと雪も言い負かそうとした。
しかし言い合いも止まらないため雪は持っていた神楽のとうもろこしと沖田のイカの姿焼きをそれぞれもとの持ち主に返した。
結果、2人は口を塞がれあっという間に大人しくなる。
もそもそと食べて大人しくなる2人を見た長谷川は『も、猛獣使い…』と小さく呟く。


「長谷川さん、すみません…神楽ちゃんと沖田さんが…」

「あ、ああ、いいよ…うん、いいよ、もうなんかどうでも…」

「…本当…すみません、本当…」


サングラスは奪われ、上着も奪われ、ズボンも奪われ…長谷川に残ったのはパンツ一丁だった。
身体はコルク玉が当たった痕が痛々しく残っており、雪は謝ったが遠い目とちょっぴに涙目の長谷川に物凄い罪悪感を感じたという。
奪った物を返し雪と神楽は長谷川と沖田と別れた。

そう、別れたはずである。


だが―――


「あの…何でついてくるんですか、沖田さん」


何故か沖田が雪の隣に並び一緒に歩いていたのだ。
雪は気づかないふりをしようと思った。
某ストーカーのお蔭で人を空気として扱うのに長けた雪は沖田を空気として認識していた。
しかし最初からそこにいました顔をされてしまえば突っ込み族の一人として突っ込まずいられず、立ち止まり沖田を見る。
沖田はイカを口に入れながらもごもごと何かを言っていたが、口からイカの足を出しながら食べている姿に普段のイケメンが崩れていた。


「……飲み込んでから喋ってください」

「ん゙。―――、サボリでさァ」

「…………」


雪の言葉に頷きごくりとイカを飲み込んだ沖田はやはりいつも通りのセリフを吐く。
予想通りな回答に雪は頭を抱えた。


「なについて来てるアルか!!サボリならサボリでさっさと別の場所にいくヨロシ!目障りネ!その顔!」

「ざーんねーんでーしたー。俺が用があるのは雪だけでチャイナ、てめェにはないんでィ。お前なんか最初から空気だ、空気。」

「ムキー!!じゃあ私も雪に用があるアル!!さっさとどっかいくネ!この空気が!お前と同じ空気吸ってると雪がSになるからとっとと消えろヨ!」

「いいんじゃね?それいいんじゃね?Sな雪もまた魅力的でさァ」

「キーー!!なんて前向きなやつアル!!キャラ被りを恐れもしないとは…!!」

「…………」


食べ終えればこれかよ…、と雪は呆れてしまう。
何故会うたびに喧嘩するのか全くもって理解できずにいる雪はもう突っ込むのも面倒で放置していた。
すると突然沖田に手を取られ雪は歩いていた足を止め沖田を見る。
沖田は突然手を取られキョトンとする雪に目を細め、手に取っていた雪の手の甲に唇を寄せた。


「―――!!」

「浴衣姿の雪も素敵でさァ…普段男装しているから余計に光り輝いて見える…それに女物の柄が余計雪の魅力を引き立て役になって更に俺を惹かれさせる……雪、綺麗ですぜ?」

「ぁ、え…な、ん…っ」


なんの予告もなく突然手の甲に口づけを落とされた雪は顔を真っ赤に染めた。
手の甲にキスする沖田はまさに王子様のようで様になっており、ボン、と言った効果音が聞こえるような気がするほど雪の顔はあっという間に真っ赤に染まった。
周りの客たちも突然の王子様の登場に立ち止まり、女性達は頬を染める。
だがこの場の中で雪が目の前の王子降臨に一番テンパっていた。


「雪!」

「へ、」


口をパクパクと開けたり閉じたりを繰り返し顔を真っ赤に染める雪に沖田は目を細めた。
手を持ったまま沖田は微笑みを浮かべ雪の頬へ手を伸ばそうとする。
しかしその沖田の手を叩いて落とし、横から白く小さな手が雪の両手を握りしめた。
手の持ち主は神楽だった。
神楽はズイッと雪に迫り雪は若干身を引かせながら目を丸くさせる。


「雪!雪は可愛いアル!!綺麗アル!!」

「あ、ありがとう」

「駄眼鏡で地味で巨乳でちょっと天然で眼鏡掛け器で16歳なのに料理洗濯掃除縫い物と主婦じみてて平気でおばちゃん軍団の中に飛び込む姿はまさに主婦の鏡だし主婦が板に付きすぎてたまに憐れんでしまうけど私雪が好きアル!!――マミーみたいで!!」

「………ああ…そう…」


何故か神楽も沖田も褒め殺しを仕掛けてくるが、今の雪は混乱しておりどうしてこうなったかは考えられなかった。
しかし神楽のどこかずれた褒め言葉が逆に雪を冷静にさせ、雪の真っ赤だった顔が一気に冷めていくのを沖田は見た。
そして我慢できなかったのか吹き出し腹を抱えて笑う。


「チャイナざまぁ!てめえの負けですぜィ?」

「ま、負けてないネ!!雪は私の方が嬉しかったアル!!」

「いいや!俺でさァ!」

「あの…何がなんだか…なんの勝負してたわけ?」

「「雪を落とした方が勝ち」」

「……………」


沖田も神楽も雪の手をそれぞれ掴みながら言い争う。
全く話が見えにない雪は両側で自分を挟み言い争う2人に聞いた。
しかし返ってきた答えに雪は言葉さえなく、とりあえず沖田が握る手を上げて沖田の勝利を知らせる。
その瞬間神楽が『何故アルかァァァァ!!』と崩れ落ちこれでもかと天へと叫び、沖田からは『っしゃぁ!』とガッツポーズが見えた。
泣き崩れた神楽は雪のおっぱいにダイブし『俺のどこがいけなかったんだ!?直すよ!俺、お前の為に自分のいけないところ全部直すよ!だから俺を見捨てないでくれェェハニィィィ!!』とどこで覚えたか分からないセリフを叫んだ。
そんな神楽を余所に沖田は選ばれた優越感からかドヤ顔で『てめェにたりねェのは全てだ!赤ん坊からやり直してきな!』と雪に抱き付く神楽を剥がし、雪の肩を抱いて見せる。


「あーもう!鬱陶しいィィ!!もう2人とも喧嘩ばっかだから私一人お祭りまわろっかなーー!!」

「「―――!!!」」


耳元でギャアギャアと騒ぐ2人に雪は最初こそいつもの事だと我慢した。
しかし今日は楽しい祭り。
せっかく普段着ない浴衣を着て、普段やらない化粧をしたというのに気分が台無しとなり雪の怒りゲージは上がっていく一方だった。
ついには声を上げてしまい、怒りで周りが見えていない雪は2人の手を振りほどき前を歩きはじめる。
そんな雪に沖田も神楽もショックを隠しきれず唖然となっていた。
暫くして雪の背中が小さくなっていくのを見て2人は同時に雪の名を呼ぶ。
雪がふて腐れた顔のまま振り返ればそこには手を握り合っている2人の姿があり、雪は在りえない2人の姿にポカーンと口を開けた。


「雪!私タチトッテモ仲ヨシネ!」

「ソーデサー。コウシテ手ヲ握リ合ウホド仲ガイインデサー」

「…2人とも冷や汗かきまくりだし手を握ってるって言っても潰し合ってるようにしか見えないし笑顔でも顔引きつってるし瞳孔開きっぱなしだし片言で棒読みになってるし足踏みあってるよ」

「「……!」」

「いや、なんで分かった!?って顔されても私どうしたらいいの?何も言わないであげたらよかったの?突っ込みとしてそれ無理なんだけど。」


1人でまわると言いだすキレた雪に2人は仲がいいよアピールで許してもらおうとした。
この場に銀時達がおれば『明日隕石落ちてくんじゃね?』と言われること間違いなしな2人の貴重な姿だったが…如何せん2人は手を握り合っているように見えるがお互いの手を潰そうと力いっぱい入れており、顔は無理しすぎているのか冷や汗をかいており、顔も若干引きつり笑いを浮かべていた。
上げたらきりがないが、雪の『無理しなくていいから』という冷静な突っ込みに神楽と沖田は本気で『え!?なんで分かったの!?』と顔に書いてあり雪は溜息をつく。


「もういいよ…そんな無理しなくても一緒にまわってあげるから。何が食べたい?姉上からお金貰ってるからまだ遊べるよ」

「そ、そうアルか…私かき氷食べたいネ」

「あ…俺ァイカの姿焼き…」

「さっき食べたのに!?あんたどんだけイカ好きなの!?」


雪の冷静さが逆に恥ずかしくなったのか、いつもの雰囲気もなく2人は大人しくなった。
まるで親に叱られた子供のようで、雪は苦笑いを浮かべ2人の手を握る。
懐から銀時経由で貰った姉からのお小遣いの入った封筒を取り出し、雪は元気のない2人に何か奢ってあげようとした。
神楽は戸惑いながらかき氷を頼み、沖田も頼むのだが、先ほど食べたばかりのイカの姿焼きをチョイスし、雪に突っ込まれた。
その突っ込みがいつもの雪に戻ったようで2人はほっと胸を撫で下ろした。
しかし…


「きゃーーっ!!」

「…!!」


三人仲良くおてて繋いで祭りを堪能しようとした矢先、悲鳴がどこからか上がり辺りは緊張が走った。
異変を感じた雪達は周りを見渡せばどこからか煙のようなものが上がり、祭りを楽しんでいた人達は前方から逃げてきた人たちに釣られたように悲鳴を上げその場を去ろうと誰もが走る。
ただ雪達だけはその場に立ち尽くし、三人を避けるように人達は逃げ惑う。


「い、今の…」

「……………」

「……………」


店の人達も騒ぎで逃げ出し、その場は雪達以外いなくなった。


「これって…沖田さん!神楽ちゃん!!」

「……………」

「……………」

「お、沖田さん?神楽ちゃ―――」

「「ふざけんなああああ!!!」」

「――!!」


雪は自分達しかいなくなり、沖田と神楽を見た。
逃げ出すにしろ、何かをするにしろ呆然と立ち尽くす2人を雪は放っておけなかった。
しかし声を掛けても返事がない2人に不思議に思いもう一度名を呼べば2人は同時に叫び声を上げ、雪は思わず耳を手で塞ぐ。
耳を手で塞ぐ雪など余所に2人は青と赤の謎のオーラを纏い目を光らせる。
それを見た雪は『あ、キレてる』と呑気にもそう思った。


「今から雪と(オマケにサドも許してやんよ)祭りを楽しもうって時になにしてくれとんのじゃァァァ!!」

「だあれが祭りの邪魔しとんのじゃァァァァ!!!雪と(オマケにチャイナも許可してやんよ)楽しい思い出を作ろうとしてたんだぞォォォ!!!」

「ふ、2人ともキャラ!キャラ壊れてるから!!標準語になってるから!!怖いから!!」


雪の目の前にいるマジ切れしている夜兎族の少女と真選組の斬り込み隊長の少年は怒りのごとく煙が上る場所へと走って行った。

その後姿を見送りながら雪はこの場に誰もいなくてよかった、と心の底から思ったという。


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