(2 / 7) 外見だけで人を判断しちゃダメ (2)
翌日…近藤達はある場所に立っていた。
そこには沢山の人で賑わっており、特に子連れが多い。
きゃっきゃと浮かれた声を上げながら人々はある入口へと吸い込まれるかのように消えていく。
鷹臣がチラリと上を見れば大きな看板に『大江戸遊園地』と書かれており、その入り口の傍に多くいる人間達と交じり突っ立っている女性が一人…――それが鷹臣達のターゲットの一人であり松平の愛娘、栗子だった。
茂みの中から栗子の様子を伺うのは栗子の父・松平をはじめとする真選組トップの4人。


「栗子〜!」


そんな恐怖の5人が見張ってるのも知らず、栗子に男が一人声をかけてきた。
栗子はチラチラと時計を見ていたが、男の声にハッとさせ弾かれたように顔を上げて嬉しそうに笑った。
その笑みは鷹臣から見てもとても愛らしい笑みだった―――雪の次の次くらいに。


「七兵衛様!」

「わりぃ、わりぃ、遅れちまって…待った?」


栗子は近寄ってきた男を見て嬉しそうに男の名を呼ぶ。
男は今時なチャラチャラした格好をしており、元々黒髪を持っていたのにかかわらずその黒い髪を何故か金髪に染めている。
男は遅れた事を謝るが、チャラ男の姿では謝罪がとてつもなく軽く聞こえた。
少なくとも、鷹臣を含めた5人はそう思っている。
しかしなんと、栗子は男の謝罪を疑わず信じ、首を振ってみせた。


「いえ、私も今来たところでございまする…全然待ってませんでございまする」

「あ、なんだよ!よかった〜!実は電車がさ〜」


首を振った栗子に鷹臣はギョッとさせ栗子を二度見した。
一時間も待たされ笑顔で許す栗子に驚いたのだろう。
そんな鷹臣をよそに松平は遅れてきた男の言い訳に『野郎ォ…ふざけやがって』と零す。


「栗子はなぁ…てめぇが来るのを一時間も待っていたんだよ…手塩にかけて育てた娘の一時間…てめぇの残りの人生でキッチリ償ってもらおう。――おいトシ!おめぇちょっと土台になれ!」

「待たんかいィィィ!!奴ってあれか!?娘の彼氏ィィィ!?」


松平は額に青筋を立てライフルのを男に合わせた。
しかし標準は安定しないのか、そばにいた土方に土台になれと命ずるが、土方には突っ込みを入れられてしまう。
土方の『娘の彼氏』という言葉に松平は『彼氏じゃねエエエ!!!』と思いっきり反論した。


「あんなチャラ男パパは絶対認めねえよ!!!」

「やかましいわ!!お前こそ警察庁長官なんて絶対認めねえよ!」

「土方さん、俺もあんたが真選組副局長なんて絶対認めねぇよ。」

「おめえは黙ってろ!!」


昨日緊急に呼び出され秘密裏な任務だと思って来てみればただの親馬鹿だった。
蓋を開ければ完全なる私情で呼び出された土方は相手にしてられないとため息をつく。


「冗談じゃねぇ…こっちは仕事休んでまで来てやったってのに…娘のデート邪魔するだあ!?やってられねえ!帰る!」

「おい待て。俺がいつそんなことを頼んだ?――俺はただあの男を抹殺したいだけだよ。」

「もっとできるか!!」


土方は馬鹿馬鹿しいと松平に背を向け帰ろうとした。
しかしそんな土方に松平は『違う』というが、土方からしたら言い方が違うだけで本質は同じである。
その上余計質が悪い。
土方は松平の言葉に突っ込んだ後疲れたように溜め息をつき、隣で携帯をいじっている鷹臣を指差す。


「大体殺しなら鷹臣に頼めばいいだろうが!鷹臣はあんたの部下なんだし」

「俺もそう思ってタッキーに頼んだわけよ…でもなぁ『俺、仕事以外に人を殺さない主義に変えたので他当たってください。』って聞いてくれねえのよォ〜おじちゃんタッキーの反抗期にマジ泣きしちまったよ…なあトシ…俺ァ何処で育て方間違えたんだろうなァ〜…娘は変な男に引っかかり息子は反抗期…あぁ〜あの頃が懐かしいぜェ〜」

「いや、鷹臣は(ストーカー行為以外)正しく育てられてるから。鷹臣が普通だから。あと鷹臣はあんたの息子じゃねえだろ。」


鷹臣は暗部を率いている隊長である。
暗殺部隊は二つあり、ある事情にて幕府と警察と二つに分離してしまったのだ。
寝床と籍は真選組となっているが、鷹臣の正式な籍は松平が立つ警察庁長官直属にある。
その為鷹臣はほぼ常に松平の傍に控えており、松平は鷹臣を本当の息子のように可愛がっている節があった。
松平も一度は土方の言葉通り暗殺に長けている鷹臣に頼もうとした。
しかし鷹臣からは拒否を頂いたのだ。
命令だと言っても『それは長官としての依頼ですか?それとも私情?』とニッコリと笑みを浮かべながら言われれば流石の松平も引き下がる他なかった。
鷹臣は雪に恋してから仕事以外では人を殺さないと強く誓ったという。
顔が整った者ほど怒ると恐ろしいというが、松平はこの年になって身をもって味わった。
松平の言葉に土方はチラリと鷹臣を見た。
鷹臣は携帯で何か文字を打っており、土方はそれに構わず『お前の直属の上司だろ?何とかするのがお前の仕事だろ?』という視線を送る。
その視線に気づいたのか鷹臣は携帯の画面から顔を上げ――


「下らない私情で部下を貸してあげただけよしとしてくださいよ」


そう言い切った。
『俺の部下じゃなかったら絶対この人抹殺命令出してましたよ』と笑う鷹臣はとてつもなく清々しくて鷹臣に突っ込む気も削げた。


「あんなチャラ男が栗子を幸せにできると思うか?いや、俺だって娘の好きになった奴は認めてやりてえよ?悩んで、色々考えた…それで抹殺しかねえなっていう結論に…」

「色々考えすぎだろ!!」


どう考えれば抹殺に辿りつくのか全くもって理解できない。
頼りの鷹臣は先ほどから携帯を弄ってばかりだし、沖田は論外。
もう頼れる者と言ったら近藤以外いなかった。
土方は近藤に振り返り馬鹿な父親を止めるように言った。
しかし――


「誰が近藤だ――殺し屋ゴリラ13と呼べ」


近藤も意味の分からない事を言いだした。
近藤はサングラスを掛け松平のようにライフルを手に構える。
まさかの状況に土方は一瞬言葉を失った。


「…何やってんの、あんた…サーティーンってなんだよ」

「不吉の象徴…今年に入って13回、お妙さんに振られた。」


何を持って13という名がついたのかは分からない。
某スイス銀行厨の人物像が浮かんだとしても分からない。
近藤に聞けばやっぱり思った通りの回答が返され、その上妹のように思ってる栗子をチャラチャラした男にやれんとか隣にいる男と同じ事を呟き2人は殺気を放ちながら遊園地へと入っていった。


「やべえな…あいつら本当にやりかねねえぞ……おい総悟、鷹臣、止めにいくぞ。」


素早い動きで栗子と彼氏(仮)を追いかけて行った2人に土方は冗談抜きで遊園地が殺人事件になると確信した。
警察が警察(しかもどちらもトップ)を捕まえるなどお笑い種である。
只でさえ警察=税金泥棒と言われているのだから余計止めなければならない。
そう思いまだ駄目な大人より冷静であろう少年と青年に声を掛けるのだが…


「誰が総悟でィ」


土方は沖田の言葉にデジャブを感じた。
嫌々振り返ればそこには…


「――俺は殺し屋ソウゴ13!」

「おいィィィ!!」

「面白そうだからいってきや〜す!」


総悟も近藤と同じだった。
土方は今までよりもさらに腹から声を出し突っ込んだ。
しかしソウゴ13とやらは元々土方の命令には従わない性格なため、ソウゴ13の姿はあっという間に遊園地の中へと消えていく。


「土方さん」


誰もが13と付けてライフルを手にチャラ男を抹殺しようと企てる中、土方は正直帰りたかった。
帰って雪に電話して雪に癒されたいと心から思った。
それほど今の土方の精神的苦痛は酷いようである。
しかしそんな精神的苦痛で胃に穴が開きそうな土方に神は慈悲を与えてくれたらしい。
ソウゴ13の登場ですっかり忘れられていた鷹臣が土方に声を掛けたのだ。
土方は鷹臣の存在にまだ常識人がいた!とホッと胸を撫で下ろしていたのだが…


「鷹臣か…お前だけは無事…」

「俺、帰っていいですか?」

「なんでだよ!」


神はやはり見てくださった!土方はそう思った。
が、神は土方を見捨てたらしい。
鷹臣は携帯を閉じた後真顔ではっきりと土方が一番思っている言葉を吐く。
それには思わず土方も強く突っ込んでしまった。
怒鳴るような突っ込みに鷹臣は『いや…』と呟く。


「だって俺、お雪さんに約束しましたし…」

「あ?何をだ」

「仕事以外で殺しはしないって」

「いや、殺さなくていい。お前まで13やらにならなくていい。あいつらを止めてくれさえしてくれればいい。お前だけが頼りなんだよ!鷹臣!!」

「えー、でもあそこってそういう場所なんですよね?」

「は?」

「困ったな〜…俺、本当に仕事以外で人殺したくないんだけどなぁ〜」

「いや、あの…鷹臣、くん?何言ってるんだい?」


困ったように告げる鷹臣に土方は近藤達の真似をするなと言ったが、次に出た鷹臣の言葉に呆気にとられた。
その間も本当に困ったように頭を掻く鷹臣は冗談で言っているようには見えず、そして鷹臣の性格上冗談を言う人柄でもないと知っているため、土方は鷹臣との食い違いに気づいた。


「ちょっと待て。お前…なんかズレてないか?」

「え?」

「ここ遊園地だぞ…そんな物騒な事そうそうあってたまるか」

「でも兄上達…」

「あいつらは馬鹿なの!馬鹿だからあんなんなの!!常識じゃあれを大馬鹿っていうの!!」

「え?だって…あそこって殺戮を楽しむ遊戯場ですよね?」

「なんでだよ!!」

「え?え?だって…サブちゃんがそう言って……」


土方の言葉に今度は鷹臣が困惑した表情を浮かべる。
メル友が、と鷹臣は携帯を土方に見せ、鷹臣が見せるメールを見れば『そこは幽炎血っていう場所だお(´▽`)』とか『下々が娯楽として好んでる殺戮遊戯場だお(●≧艸≦)』やら『たっくんはエリートだから一秒でも早くその場から立ち去ってこっちに帰ってこないと不幸になるどころかノブたす送り付けるお(`・ω・´)キリッ』やら『さっきは言いすぎたお…ゴメソ…怒っちゃった? |壁|ω・`) <ゴメンヌ』とか『そういえばノブたすが大量にドーナッツ買ってきたんだけど食べきれないからたっくんも手伝ってほしいんだお(>人<)今すぐ来て手伝ってほしいんだお(´;ω;`)ブワッ マッハで一秒で来るべきなんだお。』やら『さっきからノブたすが代われってうるさいから代わるお(-"-)』やら『鷹臣様結婚して』やらが永遠と続いていた。
どこから突っ込もうか…ああそうだなんだその当て字は!と突っ込んでやろう――と土方は鷹臣の携帯を見てそう思い鷹臣の携帯を真っ二つに折った。


「あ!!俺の携帯!!!土方さんひどい!!!」

「うっせぇぇ!!!変なメル友作んな!!携帯なら俺が後で買ってやる!!」


鷹臣もいつまでも子供ではないため過干渉にならないよう土方も気を付けていた。
しかし変なメル友に引っかかってるのを見て放っておくほど放任主義でもない。
しかも勧誘臭がプンプンする内容が満載だった。
何がエリートだボケ、と真っ二つに折れた携帯を踏みつける。
鷹臣が『あーあ…』としょんぼりしているのを横目で見ながら土方は『大人でもキッズ携帯って買えたっけな…』と普通の携帯を持たせる気は皆無だった。
そんな土方の頭上にボトリと何かが落ちる。
結構な痛みだったのか頭を押さえ涙目になりながらも土方は足元に落ちた何かを拾えばそれは携帯だった。


「……………」


土方はタイミングのいい携帯の登場にパカリと折りたたんである携帯を開く。
そこには2件のメールが届いていた。


『たっくんとの間を裂こうとかワロスwwテラワロスwwたっくんとの絆はそう簡単に切れない仲なんだおm9(^Д^) プギャー』

『鷹臣様との間に入ってくるお前ブッコロス』


土方はその携帯も破壊した。


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