(3 / 5) さくらんぼってアレ桜の木になるの? (3)
銀時達は回覧板を持ってヘドロの家に来ていた。
その間に色々な事があった。
と、いうか茶番が、あった。
回覧板を渡された時、銀時と雪は家族会議した。
抵抗は諦めた神楽はずっと泣いていたため家族会議は2人でしていた。
結局色々話し合い、時にお互い回覧板を渡す役目を押し付けあいながらみんなで行く事になった。
しかしやはり近所の人達はヘドロを怖がり通行人など一人もおらず、雪達は思わず身を隠すよう近くにあった看板に隠れた。
そこでもう一度神楽を加え家族会議を再開し、話し合った結果、じゃんけんで公平に渡す役目を決める。
じゃんけんをすれば負けたのが雪で、雪は自分の運の悪さを呪う。
銀時達もここまで着いて来たからと通行人AもBもCもいないその場を何とかしてやるとドヤ顔で言っていたのだが……雪はその言葉に期待していたのだが………銀時は何を思ったのか某時代劇の親子を装い通子人Bと通行人Cを演じた。
それを見た瞬間雪はこれまでの人生の中で一番に力を籠め突っ込みをしたという。
母を亡くしたと言うわざとらしく説明口調で語り始め誰がどう見てもコントにしか見えない2人なのに、ヘドロは予想外に感動したのか目を手で押さえ涙をこらえていた。
結局感動している間に渡せ!と、雪は投げやりになりヘドロに回覧板を持っていったのだが…雪が穿いていた草履の鼻緒が突然予告なく切れたのだ。
草履の鼻緒が切れ転び、その拍子に手からスポーンと回覧板が雪の手から抜け、見事に回覧板がヘドロの顔面にめり込んでしまったと言う。

その時、雪は―――『あ、私達終わった』と思ったと言う。


そして、それは今現在も進行中である。





シャリシャリ、、、と包丁を研ぐ音がやけに大きく聞こえる。
雪達はヘドロに招き入れられ今、ヘドロの家にいた。
3人は銀時・神楽・雪、と囲炉裏の前に座り台所で包丁を研ぐヘドロの背を見つめていた。


「ヤバイよ…めっさヤバいよ…ごっさヤバイよ……包丁研いでるよ…日本昔話みたいになってるよ…!」

「ちゃーん、私達食べられちゃうの?ちゃーん。」

「……………」

「いやー、回覧板ぐらいで、わざわざ3人で来ていただいてすいませんねぇ…ゆっくりしていってください……―――今軽く、つまめる物を用意いたしますので…」


その間その場は静まり返っていた。
そのせいで嫌に包丁を研ぐ音が大きくて更に三人の危機感を煽っていた。
包丁を研ぐその後姿を見ながら雪は昔読んでもらった日本昔話を思い出していた。
すぐに思い浮かべるのは、やはり山姥だろう。
偏見だろうか…おばあさんというキャラクターはよく包丁を研いでいる印象しかない。
しかしそんなおばあさんも裸足で逃げ出しそうな顔のヘドロの言葉に、万事屋一同は心を一つにしてこう思った。


―――つままれる…このままでは確実につままれる…!


と。
雪はこのままではやられる、と思ったのか意を決してヘドロに声を掛けた。


「あ、あああ、あ、あの、ヘドロさん?い、いやヘドロ様!」

「いや、ヘドロでいいですよ」

「っ、あ、あの…さっき、すみませんでした…か、回覧板ぶつけちゃって……ぞ、ぞ、草履の鼻緒が切れてしまって…言い訳くさいですけど本当で…」

「いやあ、いいんですよ…事故ですよ、事故。それより鼻緒が切れるって不吉の予兆というではないですか…―――何かよからぬ事が起こらなければいいのですが…」


雪は意を決して何か話題を出そうとした。
そしてさっき怯えすぎて回覧板をぶつけた事を謝っていないのを気づきそれを持ち出す。
ぶり返す確率は高いが、謝罪をしておけば少しだけでも罪は軽くなるだろうと言う何とも都合のいい事を思っていた。
というか、罪ってなんぞよ、と誰も突っ込まない。突っ込めない。
天人であるヘドロは草履は穿かないが、地球に来るとき色々調べていたらしく、草履の鼻緒が切れると不吉の予兆という話も聞いていたらしく、雪を心配している様子だったが…雪達は……


―――よからぬ事をしようとしている!!不吉を起こそうとしている!!!


やっぱりこう思った。
雪は失敗し、今度は銀時が決意した。


「あ、あのヘドロ様?い、いやヘドロ伯爵!」

「いやヘドロでいいですよ。」

「あの…おもてなししてくれるのは嬉しいんですが…さっき父が危篤との連絡が入りましてスグ帰らなきゃ……」

「!、なんですって!!?」

「「「ひ―――っっ!!!」」」

「どうして早く言ってくれないんですか!!あの心配なので僕も行っていいですか?」


銀時も雪に遅ればせながら意を決死何とかここから脱出しようと試みた。
だが、やっぱりヘドロには通じず、銀時の父が危篤と言う話を聞きついていこうとしていた。
そして銀時達は…


―――ついてくるつもりだ!地獄の底までついてきて私達を危篤にするつもりだ!!


とやっぱり思った。
ついて来てしまうと逃げ出すも逃げ出せず、ウソだとばれると更に怒りを買うため、銀時は『どうでもいい親だったので』と死のフラグを何とか回避する。
ヘドロはその嘘を信じたのか少し心配そうにしながらも納得した。


「えー?そうなんですか…せっかくうちの花を持ってお見舞に行こうと思ったのに…」

「いやっ!本当もうどうでもいいです!!むしろ早く葬式上げたいなーくらいで…」

「そうですか…お葬式の際はぜひうちの花を使ってください……―――精魂こめて育てた花なのできっとお父様を極楽浄土へ導いてくれるはずです」


父親とは不仲説を流し込み何とか無理矢理だが納得してもらったのだが…
ヘドロにとって親切心なのか、不仲でもせめて葬式の花くらいは…と自分の花を使うよう伝えるが…ヘドロの最後の言葉に当然…


―――導かれる…!!お父様だけでなく地球全員が…!!極楽浄土へ導かれる!!!


お約束のように思った。
そして雪はようやく気づく。
この流れは駄目だ…、と。
その為流れを変えようと話題を変えた。


「あ、あの…ヘドロさんって…どうして花屋さんなんか…」

「ハハ、似合わないでしょ?」

「い、いえ…そうゆう意味じゃ…」

「いいんです、自分でも分かってますから…こんな見てくれじゃあね…僕はね、花になりたいんです」


雪は何を言ってもマイナスの方へ導かれそしてあっちの世にも導かれると思ったのか何でもいいからこの空気を変えようとした。
それが、花屋になぜなったか、である。
何を言ってもマイナスに行くならこの話題もなるんじゃね?という常識人はいない。
ここにいたとしても、多分雪達のようになるのだろう。
雪の問いに答えるヘドロの言葉に三人は首を傾げた。
首を傾げる三人に気づかずヘドロは傍に置かれていた鉢の花へ歩み寄る。


「昔からこんな外見のために他人から恐がられていたものでね……せめて心だけでも花のように綺麗になりたいと…だから少しでも花と近くにいられる仕事がしたくて…でもやっぱり向いてないみたいだ…お客様なんて1人も来ないもの……坂田さん達だけですよ、恐がらずに僕と接してくれた人達は…」


ヘドロは花を愛している。
それも心から。
同じ星で生まれながらもヘドロの顔つきは他の人よりも強面らしく、同じ星の人にも怖がられていた。
だからせめて心だけでも花のように美しく、そして強くありたいと思ったのだ。
振り返ったヘドロの言葉は心に響いた。
どの星にもヘドロのような人はいるのだと、感動した。
だが…



―――すみません、めちゃめちゃ怖いんですけど



場違いながらも、三人はまた心を一つになった。
会話だけではなくやはり見た目が怖いため感動する話も恐怖で感動という感情回路がいかれてしまった。
ここが薄暗いせいもあるとも雪は考え無理矢理そう整理したが……結論が全て何をしても怖い、と出てしまうためもう考えるのをやめた。
もうやめて、良い方へ考えることにした。


「ねえ銀さん…ひょっとしてヘドロさん本当は良い人なんじゃ…」

「違うな、あれはギャップルールだ。」

「「ギャップルール?」」


そもそもマイナスに考えるからダメなんだ。そうだ、花は愛さなければ芽も出ないし蕾も出ない。きっと本当にいい人で外見だけ見るからいけないんだ…と雪は思い決して視界にヘドロを写さず銀時にヘドロに聞こえないよう小声で話しかける。
だが雪のもしもの話を銀時は一刀両断した。
ギャップルールと断言した銀時に意味を知らない神楽は首を傾げ、意味を知っているがなぜ今ここにその単語が出るのかが分からない雪も首を傾げる。
ギャップルールとは、例えば学園一の不良の生徒がいるとしよう。
不良=悪が雨の中捨て犬を見つけたとする。
そして不良は犬を拾う。
それを偶然発見したのなら、その瞬間から不良=悪というイメージが崩れ、その不良がいい人に見えてくる。
そして逆にいつも真面目で大人しい生徒がいるとしよう。
皆に慕われ真面目=善の生徒が強面の生徒を引きつれ暴れ回るとする。
どうしてそうなったかは考えるのはよそう。
そしてそれを見れば誰もが真面目な生徒=不良の類となるだろう。
悪だと思った人物がちょっといい事をすればいい人に思われ、善だと思った人物がちょっと悪い事をすれば悪い人に思われる…それがギャップルールである。
尚、この説明で分かるかボケ、という人は自分でお調べください。
しかしその法則でいくと悪の塊であるヘドロ=実はいい人になってしまう。
もちろん素直で純粋な神楽は同じことを思った。
だが神楽の考えていることが分かった銀時は神楽のヘドロが猫を抱いている想像図に『ちがーう!!どう見ても食う絵にしか見えねえだろ!!今夜のディナーはニャンバーグだ!!』という突っ込みに一瞬にして地獄絵図と変わった。
簡単に騙される2人に銀時は溜息をつく。


「大体てめえらは外見とちょっと落差ができたからってころっと騙されすぎなんだよ!人は見かけによらねーなんて言葉は世間知らずの妄言だ!大事だよ!第一印象は!!信じるんだインスピレーション!感じるんだイマジネーション!!第一印象が良かったから銀さんは雪ちゃんっていう可愛い幼な妻がいるんだからな!!俺の第一印象がよくなかったら娘(お前)なんて生まれてないんだからな!!」

「あの…すみません…私、銀さんの奥さんになった覚えないし神楽ちゃんを産んだ覚えもないんですけど…そういう冗談やめてもらえません?」


勝手にいつの間にか銀時の妻にされている雪はすかさず思春期特有の冷たさで突っ込んだのだが、雪の突っ込みなど無視する銀時は『はーい神楽』と神楽を名指しした後、ビシッとどこかを指をさす。
その指を伝っていけばそこにはかまどがあった。


「あのお釜の中!数時間後どうなってると思う?」

「えーっと…ほくほくご飯で一杯ヨ!」

「ちっがーーう!!これだから困るんだよ!お子様は!!!」


お釜の中といえばやっぱり白米。
本来ならそれが正解である。
だが銀時からは不正解を貰い、更には『今から正解見せっから!!』と怒鳴りながら数時間後、あのお釜の中がどうなっているかを想像させた。


そう…数時間後、あのお釜の中には――――白骨となり釜で美味しく調理されている自分達の姿があった。


その瞬間想像豊かな2人の顔は思いっきり青ざめる。
もう良い方へ考えようとその想像をしただけで良い方向どころか悪い方向しか思い浮かばなかった。


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