(10 / 16) 子作りは計画的に (10)
「はあ?泊まる?」


風呂から出た銀時は雪からの言葉に目を丸くした。
驚いた表情を浮かべる銀時に雪はケロッとした表情で『はい』と頷いた。
タオルを肩に掛けたまま驚く銀時をよそに雪は定春のご飯を用意し食べさせた後、人間の食事の用意を着々と進める。


「オイオイオイオイ…お前その意味分かってんのか?銀さん、結構前からお前に惚れてるって言ってたじゃん。告白だってしたじゃん。キスだってしたじゃん。宣戦布告だってしたじゃん。なのに覚えてねえとか抜かしたら無事に帰す自信ないんだけど…」

「それは…知ってます……でも、もう姉上に泊まると言ってありますから。」

「ちょっ、まっ、おま…ッお前何言っちゃってくれたわけ!?お妙に言ってあるって…!来るじゃん!!魔王来るじゃん!!地球の最終兵器来るじゃん!銀さん潰しに来るじゃん!!」

「大丈夫ですって。……多分」

「多分って言った!?お前今多分って言ったよな!?そりゃお前はいいよ!?お前最終兵器の妹だもん!愛する妹だもん!!溺愛してやまない妹だもん!!でも俺!俺の立ち位置思い出して!!俺!お前に桃色片想いしてるんだけど!!魔王が最も抹殺したいリストの上位なんだけど!!銀さんまだ死にたくないんですけどォォォォ!!」

「だから大丈夫ですってば!!ちゃんと姉上には納得してもらいました!!姉上はちゃんと『分かったわ』と言ってくれました!!」

「その後あいつなんて付け足した?」

「『もし何かあったらいけないから雪ちゃん、ちゃんと潰しておくのよ?玉を』、と。」

「アウトオオオ!!ハイ!アウトオオオ!!俺!即死!!俺!生涯独身!!ハイ!決まりィ!!グッパイ息子!ハロー新たな世界!!」

「あーもう!!いい加減にしてください!!私決めましたから!!もう泊まるって決めましたから!!四の五の言わずに黙って髪乾かして飯食え!!」

「ハッ…ハイ…スミマセン…」


机におかずを並べながらの雪の言葉は銀時に取って死刑宣告のように聞こえ、顔どころか身体中の血と言う血が引いていくのを感じた。
雪がどういう嘘をついたかは知らないが、あのシスコン魔王最終兵器閣下が可愛い可愛い雪を連泊させるわけがないのだ。
納得したと雪は言ったが銀時はいつ『てめぇよくも私の可愛い妹を誑かして連泊させてくれたな!!!てめえの命で清算できるほどてめえの命は重くはねえんだよ!!雪ちゃんに手を出そうとしたどころか懸想した己の罪味わってから死にさらせやボケェェェ!!てめえの息子引きちぎらせろやアアア!!』と殴り込んでくるか分からない怖さに怯えていた。
顔を真っ青にしてまで姉に怯える銀時にイラッと来たのか雪は思わず持っていたおかずの皿を乱暴に置き、怒鳴ってしまった。
怒鳴られた銀時はビクッと肩を揺らし、弱弱しく頷く。
この瞬間、銀時は雪と妙の血の繋がりを感じたと言う。
とぼとぼと肩を落とししおれながらソファに座り髪をタオルでぬぐう銀時に雪は溜息をついたが、少し言い過ぎたと反省し、銀時が髪を吹いているタオルを奪う。
タオルを奪われ銀時は目を見張り、後ろに回った雪に振り向いた。
二度目の驚く表情に雪は思わず吹き出してしまう。


「今日は私が髪、拭いてあげます」

「い、いや、いいよ…そんな事までさせたら俺、本気で君のお姉さんに存在を潰されるからさ…銀さん1人でできるよ?いや、1人でできるもん!」

「いいからやらせてください。私がやりたいだけですから…」


銀時の髪を勝手に拭いてやれば元々短いというのもあり神楽と比べて早く乾いた。
そう思ったら最後…神楽の事を思い出し、思わず雪は手を止めた。


「雪?どうした?」

「あ…いえ…何でも…」


なるべく神楽の事は思い出さないようにしていた。
そうしないと寂しいと自覚してしまうし、何より一番辛いのは銀時なのだ。
今は決して辛さを見せない銀時の前で寂しがっていると何だか銀時に申し訳なく思っていたのだ。
しかし思い出してしまった雪はつい神楽の事ばかり脳裏に浮かんでいた。
手を止めた雪に気づいた銀時が不思議そうに声を掛ければ雪はハッと我に返り『何でもないです!』と首を振って髪を拭き直す。
当然銀時はそんな雪に気づいているのだろう。
だが、あえて気づかないふりをしているのか、『はい、終わりです』とある程度乾きタオルを置いた。


「もう夕飯も出来てるんで、ちょっと早いですけど食べちゃいましょう」


気を取り直すように終わった合図に銀時の肩を叩く。
その合図に『はーい』と良い返事し、雪もご飯を食べようと向かいのソファに座り食事に取り掛かる。
いつもはテレビを消しているが、今日は消さずつけていた。
それでも神楽がいないだけで静かなものだった。
それでも一言二言なく2人は黙々と食事を続ける。
食事も終え、何もする気がない2人は寝ることにした。
食事も寝るにも、今日は色々と早い日だなぁ、と雪は思いながら布団をいつもの事務所兼居間に一組敷く。


「銀さん」

「んー?」


テレビも見る気にもならず銀時は寝る気なのか布団が引いてある部屋へと足を運ぶ。
そんな銀時の背中に雪がふと声をかけ、名前を呼ばれた銀時は何気なしに返事を返す。
振り返る事もなく布団に歩み寄る銀時の背を雪はジッと見つめていた。


「私、絶対何を言われようが、何があろうが…絶対に、万事屋を辞めませんから」


布団を捲ろうとしゃがもうとした銀時は、雪の言葉に動きを止めた。
ゆっくりと雪に振り返れば雪の表情は真剣そのもので、真っ直ぐ見つめてくるその瞳は今の銀時にとって眩しすぎた。


「……そりゃあ…熱烈な告白でこって。」


眩しすぎる雪の瞳から逃れるように、銀時はただそう返せず雪から顔をそらし布団を頭まで被るしかなかった。
『おやすみー』といつもの声のトーンで呟く銀時に、雪は小さく返事を返した。


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