人魚。
それは幻や物語上の存在であり、誰もが聞いた事があるだろう。
リィリンはその人魚であり、そしてベイゼルと呼ばれる老人に妹と共に飼われている。
リィリンの容姿はとても美しく、どんな美人でも霞むほどだろう。
しかしそれは何もリィリンだけではなく、リィリンの妹も美しく、そして人魚ならば誰もが美しい姿形で生まれる。
醜い者もたまに生まれるが、人魚は自身の見た目に執着はない。
仲間が醜かろうが美しかろうが仲間は仲間として認識し、爪弾きすることは一切ない。
しかし、人間が人魚を食べると不老不死になるという噂を信じはじめた頃から人魚の数は減っていった。
更に言えば人魚には欠点があった。
興味、好奇心などの感情が薄いのだ。
特に仲間意識は薄く、家族を除いた人魚が目の前で人間に攫われたり殺されたり犯され、食べられても助けれるのなら助けるが、助けられないと判断してしまうとバッサリと切り捨ててしまう。
薄情だと思われるが、そのお陰で乱獲で数を減らしながらも今まで絶滅せずいられたというプラスな部分でもあった。
捕まった人魚は観賞用として買われるが、その多くは観賞に飽きて食用として殺されていった。
人魚の伝説は、人魚の存在を信じていない人間でも知っているだろう。
人魚を食べると不老不死になる―――これは嘘ではない。
ただし、人の形はしていない。
人魚を食べた人間(または異界人)は確かに不老不死になる。
だがその肌は爛れ少々骨も溶けることもあり、人の形、または元あった形は大きく崩れてしまい、その姿はまさに異形な化け物となる。
それも多くは死んでいくのだ。
不老不死になると言ったが、正確に言えば形が変形し始めた時、または化け物となった時にすぐに海や水に入れなければソレはその場に対応できず魚が陸で呼吸できないのと同じように、すぐに死ぬ。
すぐに海や水に入れれば人魚になったり元の形に戻る事はないが、化け物のままで不老不死となり生き続けるだろう。
しかし多くがなんの知識もなく伝説だけを信じて食べてしまい、そのまま息絶えたり、化け物と化してしまい殺されたりと数は多くはない。
皆、人魚はひ弱だと思われがちだが、そうではない。
実は人魚は海の王者と呼ばれ、海の生物たちに恐れられているほど狂暴だった。
その凶暴さは荒々しい性格もあるが、何より人魚にしかない特殊能力も海の生物たちに恐れられていた。
人魚は下僕となる生物を創り出す事が出来る。
それがリィリンの水槽にいた化け物達なのだが、彼等に名はない。
あるとすれば人魚達が勝手に呼んでいる『眷属』という奴である。
そもそも、人魚という生き物は人間が抱くような存在ではない。
見た目が美しいというのは合っているが、まず、人魚姫が王子に恋をする物語のような甘く切ない恋物語はない。
決して、と言えないのは何事にも例外があるということだ。
一度だけ人魚と王子が恋に落ちた事がはるか昔だがある。
しかし結果は悲劇だった。
前にも言ったが、人魚は薬が効かない体質である。
そのため王子に恋した人魚姫が海の魔女の薬で人の姿を得るなどというのは本当に夢物語でしかなく、人間の妄想だ。
更に言えば、王子と恋に落ちるが王子が隣国やら同盟国やらのお姫様と結婚し、王子を得るためにその姫を殺さなければならなくなった人魚が結局殺せず泡となる事自体あり得ないのだ。
そんな女々しい人魚など存在しない。
本当の人魚ならば王子が欲しいなら奪うだろう。
姫を殺す?OKOK大丈夫、串刺しにしてやんよ。
NTR?上等じゃボケェ。
下剋上も人魚は怖くはない。
というか自分が持てるテクを使って王子を快楽のドツボに陥れ自分にしか立たないようにし既成事実を作り王子と共に幸せに暮らす…―――それが本当の人魚である。
そもそも、人魚が肉食でないと誰がいったのだろうか。
全く人間の考える事は理解不能である。(全人魚談)
人魚は色々な意味でも肉食である。
人魚に男性はいない。
生まれる人魚全て女性の姿で生まれ、男性の人魚は奇形児が生まれても一度として生まれたことはなかった。
しかしだからと言って流石に人魚でも女性同士では子孫は作れない。
人魚が生むのは女性しか生まない。
ならばどうやって孕むのかという質問は愚問中の愚問である。
人魚はどうやって孕むのか…それは―――他種族から種を貰うのだ。
幼い男から老人まで好みであれば人間であろうと動物であろうとパクッと(性的にも食事的にも)食らうのが人魚なのだ。
そんな『わたくしそんなはしたない事できませんわ』などと言っていたら狩られた分の人魚を生むなんてできやしない。
では、どうやって異種の間と子を成すかというと…大前提に人魚が欲情しなければならない。
人魚は人間にはなれないが、その代わりその相手に発情すれば魚の尾が人間の足に変化する。
そして人間のように股に性器が現れ、性行為して孕むのだ。
だから相手がどれだけ求めようが、人魚がその気にならなければ性行為などできない仕組みになっている。
だからこそ観賞から食用に変わる人魚も多く、食べた者は対処法を知らずそのまま死ぬ…というわけである。
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