(5 / 24) 薔薇十字館殺人事件 (5)

明智さんが生理用品を買うだけの話です

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血の付いたタオルを袋に入れてゴミ袋に入れた後、手を洗って彩羽の部屋に向かい下着やパジャマを持って脱衣所にいる彩羽に届けた。
勿論裸を見ないように扉を少しだけ開けさせてその隙間に入れて渡した。
彩羽は従兄(それも自分に好意を持っている男性)に下着を見られたが、それは緊急だと諦めてもらうしかない。
明智自身好意うんぬんよりも女性の下着を見る趣味はなく、気を使いあまり見ないようにしたので安心してくれと一応は自分と彩羽にフォローしておいた。
彩羽が着替えている間に明智も外に出るためラフではあるが服を着替え、彩羽に一言言ってから外に出る。


「いらっしゃいませー」


どこで買えば分からず、とりあえずドラックストアに向かった。
まず頭に浮かんだのはコンビニだが、コンビニはまずいと思いやめた。
まだ時間的に開いており、女性の店員の声が明智の耳に届く。


(うわっ!すっごいイケメン!)


店員は滅多にお目に掛かれないレベルの美形の男である明智を見てまずそう感想を漏らす。
明智は店員だけではなく回りの目線を受けながらも気にする様子はなく、彼の頭の中は今彩羽に早く生理用品を与えて安心させたいという気持ちで埋まっていた。
携帯で『初めての生理 用意する物』と検索して必要な物を物色する。


(必要な物…ナプキン、生理用ショーツ…とポーチとカレンダーか……とりあえず今はナプキンと生理用ショーツにするか…)


明智は恋人がいたが、全員成人し自立しているしっかりとした女性達だった。
だから生理が来たとしても彼女達は自分で何とかしていたし準備だってしていた。
だから生理用品を用意することは一生ないとばかり思っていた。
しかしこうして自分には一生縁のない生理用品を購入しにドラックストアに来店し決して男は立たないであろう生理用品の棚の前に立っているのだから世の中分からないものである。


(しかし…ナプキンといっても種類が多すぎてどれを購入すればいいのか分からないな…)


ドラックストアに立ち寄っても生理用品の棚は近寄る事さえない明智からしたらどれも同じに見える。
それも昼用、夜用というのがあり、昼用でも多い日用から普通の日用があり、更に多い日でも特に多い日用というのもあり、更に更に、羽つきや羽なしというのもあった。
明智はそれを見て『羽とはなんだ?多い日は昼と夜とではどう違うんだ?』と首を傾げる。
彩羽が待っているというのを頭に入れつつどれがいいのか明智の頭の上には『?』ばかりが浮かぶ。


「あ、あの…」


『彩羽が使う物だしやはり高い物の方が肌を傷つけずいいのではないだろうか』ともう訳が分からなくなり一番高い物を選ぼうとした時、後ろから声をかけられ振り返った。
振り返れば最初にお決まりの挨拶をしていた女性の店員がおり、恐る恐ると明智を遠慮がちに上目で見上げていた。(身長差の問題で)


「なんでしょうか」

「え、えっと…そちらは女性用品なのですが…何かお探しでしょうか?」


首を傾げていた明智だったが、店員の言葉に『しまった』と思う。


(確かに男性が生理用品の棚の前にずっと立っていたら確かに可笑しいか…)


世の中彼女にパシられ生理用品を買う男性だっているが、大体は商品名を聞いてから買いに行くもので、明智のように棚の前で立ったままの男はそうそういないだろう。
明智は店員の様子から怪しまれたかと思い、素直に話した。


「いえ、その…親戚の子が初めて生理になりまして…誰も手が離せないので私が買いに来たんですがどのメーカーを購入すればいいのか分からなくて…」


素直に、と言っても従妹が、とは伝えず親戚と伝えた。
従妹ならば最悪自分と同い年か年上だと思われる可能性がある。
年下だとしても『イトコ』になると差があっても大抵は明智と近い年齢を思い浮かべるだろう。
しかし親戚であれば、もしかしたら姪かもしれないと思わせることができる。
まあ普通は母親が買いに行くものなのだが、まあ『両親は旅行中で預かっているんですよ』とでも言っておけばいいかと考える。(それも苦しい言い訳だが)
しかし店員は信じてくれたのか、怪しんでいた表情を笑顔に変えた。


「そうだったんですね!おめでとうございます!」


店員は自分がイケメン男性客の親戚の初潮を祝うのはどうかと思ったが、イケメンに好印象を持たせたいというどうしようもないミーハー根性でつい口走ってしまった。
余計な事を言ってしまったと思ったが、イケメンからは『ありがとうございます』と笑顔を頂いたので良しとしよう。


「初めてでしたらタンポンではなくナプキンの方がいいですね…」


店員の言葉に明智は『タンポン…?まだ種類があるのか…』と種類の多さにげんなりしながらも『ふむふむ』と耳を傾ける。


「どの商品が人気ですか?」


種類が多くて分からないため人気商品を購入することにした。
人気商品ならまずはハズレはないだろうと思ったのだ。
明智の問いに店員は『そうですね…』と視線を棚に向け人気商品を探す。


「これですね…羽つきと羽なしがありますがどちらにしますか?」

「……すみません…分からないのであなたのおすすめを…出来ればショーツなどの必要な物も全て揃えたいんですが…」


『だから羽つきとか羽なしって何』と思いながら明智は自分が決めるよりも同じ女性である店員に決めてもらった方が確実だと思い巻き込むことを決めた。
『すみません』と思いながらそう告げれば店員は嫌な顔ひとつせず『かしこまりました』と頷いてくれた。


「では、初めてですし羽つきにしましょう…羽つきの方がズレる心配はありませんから」

「分かりました…ではそれをお願いします」


ひとまず一つだけ購入し、気に入ればそのまま買いだめ、気に入らなければ肌に合う物を探せばいいと明智はやっと一つ決めた。
店員は近くに置いていた籠を一つ持ってナプキン一個を入れる。


「ではショーツですがサイズは分かりですか?」


ナプキンが終えると次はショーツ。
店員の問いに明智は事前に聞いていたサイズを告げる。
店員の手はまっすぐ子供用のショーツに伸ばし、それを止める。
明智は懸念していたのだ。
初潮を迎えるのは個人差はあるものの大体10才〜13才が多い。
彩羽は遅い方で、常識的に考えれば明智が述べた親戚を店員は小学生〜中学生と考えても仕方ないのだ。
『こちらでおねがいします』と言って明智が手に取ったのは大人用のショーツ。
店員はキョトンとさせ明智と商品を見比べた。


「えっと…でも、初めての生理なんですよね…」

「その…初潮が遅かったらしくて……その子は高校生なんです…」


当たり前だがショーツにも子供用と大人用がある。
全く懸念していた明智は、こうなるなら素直に言っておけばよかったと後悔した。
通報されたらどうしようかと思っていたが、店員は『そうでしたか』と笑った。


「初潮が遅い方がいますからね…気づかなくてすみません」

「い、いえ…はっきり言わなかった私が悪いんです…すみません、騙すような事を言ってしまい…」


結局高校生だと話すのなら初めからそうすればよかったと思いながら謝ると、店員は苦笑いを浮かべて許してくれた。
『男性が生理用品を買うのは勇気がいりますからね』と笑って流してくれる店員に心からのお礼を言いながらショーツを籠に入れる。


「あとは痛み止めとカイロですね」


これで会計し一刻も早く彩羽のところへ戻ろうと思っていると店員の言葉に明智ははっとさせた。
ずっと生理用品を買わなければと思いに駆られていたから気づかなかったが、生理に痛みは切っても切り離せない関係にあり、温めるといいと明智は思い出した。
すっかり頭から消えていたそれに明智は明智でテンパっていたのだろう。
痛み止めでも生理痛に聞く痛み止めを選んでもらい、カイロもショーツからはみ出さない物を選んでもらってやっとレジに進めた。


「色々ありがとうございます…一人ではここまで気を回れませんでした…」

「いえ!初めてでしたら分からなくて当たり前ですよ…お役に立てたのなら良かったです」


お金を払い、最後にお礼を言うと店員も笑顔で首を振った。
明智はもう一度お礼を告げた後店を後にし彩羽の元に急いだ。


(親戚って高校生だったのかぁ…でも普通こういう時って母親が買いにいくものなんじゃ……まあ、いっか!イケメンに変態はいないし!)


多少怪しまれた所があったものの、明智は顔に助けられたのだった。

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