(8 / 24) 薔薇十字館殺人事件 (8)

毛利が運転する車で向かったのは山道に逸れた場所。
しかし薔薇のアーチが施されている場所があり、そのアーチの前に車は止まった。


「わあ!すごい薔薇のアーチ!」

「すっげー!」


車から降りた金田一達はアーチを見上げ驚いて見せた。
使用されている薔薇は一般的に知名度がある赤い薔薇。
ここまで見事な薔薇のアーチは見た事がなく、美雪はともかく金田一もつい声をもらすほどだった。


「この薔薇のアーチの向こうに薔薇十字館があるのです」

「ここからは徒歩ですか」

「はい、恐れ入ります…ただアーチに使われております薔薇の棘は大変鋭いのでどうぞお気を付けくださいませ」


そう注意されて見てみれば確かに薔薇の茎の部分には棘がいくつも着いており、触っていないが如何にも痛そうである。


「美しい薔薇には棘が付き物…行きましょう、金田一君」


高遠はそう言葉を零しながら、アーチを見上げていた金田一に声をかけ先にアーチを潜って進んでいく。
金田一と美雪はお互い顔を見合い、まだ警戒心が高い様子で高遠の後に続いた。


「こちらが薔薇十字館にございます」


毛利を先頭に三人は少し長めのアーチを進むと薔薇十字館が三人の目の前に現れた。
薔薇十字館、と言うだけあって周りは薔薇が咲き乱れており、扉も上半分のガラスに十字架が中央にほどこされているほど徹底していた。


「暫くこちらでお待ちを…」


そう言って毛利は金田一達を正面にある玄関ホールに案内する。
扉を開けるとそこにはすでに客人達が集まっており、全員新たな来客の金田一、美雪、高遠に振り返った。
玄関ホールには金田一達を覗いて9人もの客が集まっていた。
そのうち6人は知らない人達だったが…


「彩羽ちゃん!?」

「なんで彩羽がここに!?それに千里さんと…先生まで!!」


誰もが初対面の人達だったが、そのうちの3人は見知った顔だった。
1人は学校の生物教諭の白樹紅音も客として招待されており、更には巴川家の長女である巴川千里…そして―――彩羽の姿もあった。
彩羽がなぜこの館にいるのかは分からないが、今日あえて呼ばず高遠と接触した金田一の気遣いが無駄だった事を知った瞬間だった。
金田一と美雪は顔見知りが三人もいた事に驚きが隠せない様子だったが、それはあちらも同じ。


「どうしてあなた達がここに!?」

「それはこっちのセリフっすよ!先生こそなんでここに?」

「私は招待状が届いたから来たの…もしかして2人とも巴川さんと同じで付き添いできたの?」

「彩羽もって……そうだよ!なんで彩羽と千里さんがここにいるんだ!?」


まさかこんなところで三人もの教え子に会うなんて思ってもみなかった白樹は驚きのあまり椅子に座っていたが立ち上がった。
金田一もまさか学校の教師にローゼンクロイツからの招待状が届くとは思ってもみなかったため驚いたが、それ以上に驚いたのは彩羽である。
彩羽を見れば、彩羽は金田一ではなく高遠を見つめていた。
その顔はまさに絶句、と言わんばかりの驚愕の表情で、金田一はその表情に『しまった』と思う。


「彩羽!あのさ…」

「なんであなたがここにいるんです!!」


高遠と彩羽の関係は、被害者と加害者。
しかしそれ以前に身を偽っていたが世話役として高遠は彩羽の傍にいて心の支えになっていた存在だった。
彩羽としては弟の事もあり複雑な思い、又は憎しみの感情を持っているはず。
絶句し言葉を失っているのももう会う事もないだろうと思っていた高遠と再会し処理が追いつかないからだろうと金田一は思う。
慌てて彩羽に声をかけフォローをしようと思ったとき、千里が彩羽を背中に庇い高遠を睨みつけて叫んだ。
その顔は正に『怒り』。
明らかに敵対心を持つ千里に周囲も驚きが隠せない顔を浮かべ、千里と高遠を見ていた。


「あなたは―――」

「紹介が遅れて申し訳ありません…私はフラワーアレンジメントをしております『遠山遙治』と申します」


千里は『あなたは逃亡犯のはず』と続けようとしたが、高遠が先に遮り言葉を切る。
高遠は顔は隠さなかったが、流石に本名を名乗る事はせず偽名を使う事にした。
千里と白樹に渡した名刺も偽って作った物である。
白樹はすぐに受け取ったが千里は高遠を睨んだまま名刺を受け取ろうとせず、しかし高遠も笑みを浮かべ手を引かせるでもなく名刺を差し出したまま千里と向かい合っていた。
その場は緊迫した空気が流れ、美雪は困ったように金田一へ目線を送り、美雪から無言の『何とかしてよはじめちゃん』という抗議に渋々間に入ろうとした。
その時…


「遠山さんですね…名刺をありがとうございます…私は巴川彩羽と申します…義姉が招待され、その付き添いで来ました」


千里が背中に隠したため、隠れていた彩羽がひょこりと顔を出し差し出された高遠の名刺を代わりに受け取った。
初めて会ったと言わんばかりに自己紹介をする彩羽の顔には笑顔が見え、彩羽が弟を殺した相手に笑顔を見せる事に金田一達は驚きが隠せないという表情を浮かべていた。
しかし高遠は一瞬彩羽の反応に驚いた素振りを見せたがすぐに笑みを浮かべ『彩羽さんですか、よろしくお願いします』と名刺を渡して挨拶をした。


「ちょっと彩羽さん…!」

(多分、何か事情があるんだと思います…でなければはじめちゃんと美雪ちゃんが一緒なんておかしいですし…それにあまり騒ぎになるのも千里さんにとってまずいのではないですか?)

「…………」


殺人犯…それも弟を殺した人間がいるのに敵意もなく接する彩羽に千里が怒鳴る様に声を上げかけた。
しかし小声の彩羽の言葉に千里は納得してしまい黙り込む。
確かに巴川家で起きた事件を解決した彼が犯罪者といるのはおかしいので何かあるのだろうと思うが…それでも千里は納得はいかなかった。
だが、騒ぎになるとまずいという言葉に納得して千里は黙った。
黙り込む千里は先ほどより高遠に敵意を見せなかったが、その視線は変わっていない。


「あの…金田一君達とあなたのご関係は…」


彩羽が何とかその場を収め、今度は白樹が高遠に声をかけた。
聞いたのは高遠と金田一達の関係。
3人の通う教師であり教えている生徒である以上、見過ごすことは出来なかった。
そんな白樹の問いに高遠は笑顔をそのままに答える。


「金田一君と七瀬さんとは古い友人です」


金田一はその言葉を聞いて『よく言うぜ』と思った。
そして彩羽は『まあ…確かに長い付き合いみたいだもんね』と自分がいない間に起こった事件として後から高遠の起こした事件を聞いていた彩羽はそう思う。
美雪も何とも言えない表情を浮かべていると、ふと耳にシャッター音が聞こえそちらに目をやる。
そこには玄関の両脇に飾られている青薔薇のプリザーブドフラワーを写真に収めている男性がいた。


「綺麗な薔薇ですね」

「ええ、このプリザーブドフラワーがあまりにも見事な物で…」

「本当、青い薔薇」

「俺は佐久羅京、写真家です…薔薇をモチーフに写真を撮ってるんですよ」


写真を取っている男は『佐久羅 京(さくら きょう)』と名乗った。
写真家だとも名乗り、それで写真を取っていたのかと美雪も納得した。
佐久羅の薔薇が綺麗だという言葉に高遠も賛同して頷いた。


「なるほど…確かに綺麗な青薔薇だが…」

「そう!あの青は染めたものです」


青薔薇は見事だったが、その青は自然の物ではないと恐らく金田一達以外は知っているだろう。
というよりは薔薇に興味がある若い世代の人間以外は青色の薔薇が作れない事はすでに常識になっている。
高遠の言葉を繋げたのは眼鏡を掛けた男性だった。
男はバイオ・フェスという会社の社長を務める祭沢 一心(まつりざわ いっしん)と名乗った。
彩羽はバイオ・フェスと聞いてもピンと来なかったが、その疑問に答えてくれたのは本人ではなく白樹だった。


「バイオ・フェスと言えばバイオテクノロジーで次々に新種の花を開発して話題になってるところですよね?」

「ご存知の方がいらっしゃるとは…嬉しいですね…あの青薔薇の青は確かに美しいが内側から醸し出される真の青に比べればやはり安っぽい色だ」

「――安っぽいとは失礼ね!!」

「こ、これは言葉が過ぎました…」


祭沢の言葉に怒鳴り上げた女性がいた。
腹を立てたような表情で祭沢に迫る彼女に祭沢は慌てて自身の失言を撤回する。


「あなたは?」

「私はブリザードフラワー・アーティストの冬野 八重姫…これは私の作品で手土産として持って来たんです…」

「我が社も青薔薇の開発には苦労しているものでね…ご容赦を…」


佐久羅が撮っていた青薔薇は冬野 八重姫(ふゆの やえひめ)と名乗った女性が手土産に持って来たものらしい。
確かに青く染めた物ではあるが、それを安っぽいと評価され腹を立てたのだ。
祭沢は頭を下げ謝るが、まだ腹の虫は収まらないのか怒鳴る事はなかったが冬野はむすっとさせそっぽを向いた。


(また青い薔薇か…)


金田一は青薔薇という言葉を最近よく耳にする。
最初は白樹の授業とその反応。
高遠に送られた招待状と共に入っていた青薔薇。
そして佐久羅と祭沢と冬野の会話。
ふと青薔薇の話題が多い事に気付いた金田一の耳に少女の声が届く。


「青薔薇の花言葉は『不可能』…この館に招かれた人達はみんなその不可能を見に来ているのですわ」


突然の意味ありげに囁く少女に金田一達はその少女を見る。
少女は金田一や美雪や彩羽と近い年齢で、ゴスロリを着ていた。
少女は自分に目線が集中しているのに気づきゆっくりと一礼した。


「花詠みの歌人、月読ジゼル…こちらで公開される青薔薇を呼んでみたくて蝶のように飛んでまいりました…」

(うわぁ…こういうタイプ超苦手…)

(まあまあ)


月読ジゼル(つくよみ)と名乗った少女は見た目同様少し変わっていた。
金田一が美雪に小声でそう呟く。


「いやいや!花は薔薇ばかりではありませんなぁ〜!私、薔薇園を経営している小金井睦と申します!薔薇の香りがするワインをお持ちしました!」


ジゼルの言葉を継いだのは、小金井 睦(こがねい むつ)と名乗った薔薇経営の男だった。
すでに飲んでいるらしく、赤い顔をしてワイングラスで持参したというワインを飲んで陽気な様子を見せていた。


「今夜は美女と青薔薇!二つの花に酔いしれようではありませんか!」


傍から見ても小金井は相当酔っていると分かる。
顔が真っ赤で足はふらつき少し離れている彩羽からもお酒の匂いが漂ってきていた。
人に絡むタイプの酔っ払いらしく、近くにいた高遠に向けてワインを差し出したが断られてしまった。
絡むタイプではあるが逆上するタイプではないようで断った高遠に怒るでもなく『あっそ』と別の人に絡みだす。
目立つタイプの酔っ払いに美雪は合い金田一に『私はこっちの方が駄目』と伝えた。


「そちらはいかがですか?私のワイン…」


別のターゲットは薔薇の着物を着た女性だった。
しかしその際ワインが手から滑って落ちてしまい、危うく着物に掛かりかけた。


「ちょっと!!」


女性は着物が汚されそうになり怒りの声をあげようとしたが、何故か何か言いかけて言葉を呑み込んだ。


「き、着物にかかったらどうするの!?これ私がデザインした加賀友禅で300万円もするんですから!!」


女性は着物デザイナーをしている禅田 みるく(ぜんだ)と名乗った。
その着ている着物は自分がデザインした着物らしく、値段は300万だという。
着物自体高いものだが、その中でも高級な着物が汚れればクリーニング代も相当なんだろうなと彩羽は何となく思う。


「この中の何人かは顔見知りのようですね…」

「ああ」


怒る禅田に小金井が気まずそうに謝る姿を見ながら高遠はそっと金田一に歩み寄り小声で話す。
金田一も高遠と同じことを思ったのか頷いて返した。


「君も薄々感じているのではありませんか?彼らが各々口にしている…ここに来た理由に違和感を…」


高遠の言葉に金田一は無言で返した。
それは金田一が同じように感じていたからだ。
高遠と金田一が誘われた理由が物騒な物だったからか、金田一は注意深く彼らを見渡していた。


「おい肝心のこの館の主はどうして顔を出さないんだ?」

「それは…」

「―――ローゼンクロイツ」

「「「!」」」


金田一達は今来たところだが、他の人達は相当待ってたようで痺れを切らしたように祭沢が世話係の毛利に声をかける。
毛利が困ったように何かを言いかけた時、高遠がそれを遮るように言葉を発した。


「皆さんの招待状の差出人も同じ名前ですか?」


高遠がそう問えば、全員が頷いて返した。


「私はそう名乗る人物に全く心当たりがない…ここに来た皆さんも同じなのではありませんか?」

「何が言いたいんだ!あんた!」

「私も見えざる薔薇の棘を恐れている者の1人です」


周囲の何人かは顔見知りだと反応で分かった。
しかしどうにも何故呼び出されたのか知らない様子でもあった。
含みがある言葉を向ける高遠にカメラマンの佐久羅が怪訝とした顔を浮かべた。


「何訳分からない事言ってるんですか…俺は薔薇専門カメラマンの第一人者として…」

「薔薇ばっか撮ってて儲かるの?」

「そういう禅田さんの着物こそ高いだけで全然売れてないって話じゃない!」


なぜ招待されたのか、と問われ答えようとした佐久羅だったが、そんな佐久羅の言葉を禅田が遮る。
その言葉には棘があり、それにムッとさせた佐久羅が言い返してその場の空気は千里と高遠の時再来と成りかけていた。


「まあまあ、揉め事はやめましょうよ〜皆さん仲良く…」

「君は?若い男の子が薔薇とかに興味あるわけ?」

「えっ、いや…俺は…」


ギスギスした空気はもう沢山だと金田一が止めに入るが、逆に怪しまれてしまった。
確かに金田一の見た目で薔薇に興味があるようには見えない。
冬野の問いに金田一はどう答えようかと思っていた時、金田一と冬野の間に高遠が入ってきた。


「ご紹介しますよ…彼は金田一一君…みなさんご存知の名探偵のお孫さんです…隣のお嬢さんは金田一君の助手的な存在、七瀬美雪さんです……私も何者か分からない招待に一人で参加するのは少しばかり不安を覚えましてね…そこでおじいさん譲りの名推理を見せる高校生探偵コンビを誘ったわけです」


高遠が助け舟を出してくれたようだが、金田一は一度として自ら高校生探偵と名乗った覚えもなければ、コンビとして活動しているわけではない。
美雪も勝手に助手にされてしまったが、両者ここで違うと言えば『じゃあ何?』と問われても答えられないと分かっているのか黙り込むことにした。


「…………」


しかし、あれだけギスギスとしほぼ全員がいがみ合っていたその場が突然静けさに包まれた。


(俺の事を知って急に静かに…どうやら高遠が感じたようにどいつもこいつも何か後ろ暗い事を抱えてるみたいだな…)


金田一が探偵だと知り、すでに知っている千里と彩羽以外の誰もが驚いた表情を浮かべ金田一を見つめていた。
白樹も教え子が探偵をしているとは知らなかったようで驚いた顔をしていたが、それ以外の人達は気まずそうに金田一から顔を逸らしており、金田一は彼らの反応を見て何かあると確信した。
チラリと高遠を見れば、高遠も同じことを思ったのか薄く笑みを浮かべて返す。


「皆さま、そろそろお部屋にご案内を」

「案内なんていらんよ〜!これ見て自分でいくから!部屋番号と鍵だけくれ!」


時計を見て時間になったのか、静まり返る中毛利は部屋を案内すると告げた。
しかし酔っている小金井が壁にある屋敷全体の設定図を見て自分で部屋を探して行くと言い出した。
それに美雪と金田一も設計図に気付く。


「わあ!十字の形なのね!」

「名前の通りって事か…」


設計図を見ると名前の通り十字の形をした建物なのが分かる。
ふと美雪とは反対の位置が寂しく感じて横を見ると彩羽がいないことに気付く。
最近彩羽が不動高校に転校してから自分の左右が美雪と彩羽の定位置になっていることに今更ながらに気付く。
正に『両手に華』だが、美雪はまだしも彩羽の背後にいる舅を思い出すと素直に喜べない。
彩羽とは別々に来ていたし、彩羽には相手がいたから隣に彩羽がいないのは当たり前だが…ついチラリと彩羽の方を見てしまう。
彩羽は同行者である千里の隣に立っていた。
しかし、その目線は千里でもなく、話題に上がった設計図でもなく…―――高遠へ向けられていた。
彩羽の目線を伝って金田一も高遠を見れば…高遠も彩羽を見つめているのが見えた。


(彩羽…?)


高遠が彩羽を見る目線はあからさまに愛情深いものではなかったが、優しさは感じられた。
高遠が嘘を言っていなければ、金田一は高遠の気持ちを知っており、彼の彩羽に向けるその目線に違和感はない。
だが彩羽が高遠に向けるその目線に金田一は引っ掛かりを覚えた。
彩羽が高遠に向けるその目線には嫌悪がなかったのだ。
それどころか好意すら感じる。
高遠に弟を殺されている彩羽は彼を見る視線は千里のように嫌悪を見せるはずなのだが…それが一切感じられなかった。


「申し訳ございません…この館は形が少々変わっていますうえに鍵が失われるなどして構造上通過できなくなっている区域などがあり、地下に降りねば入れなくなった部屋もございます…ご注意くださいませ」

「まあ!薔薇のラビリンスそのものだわ!」


設計図で見る限りそれほど難しい構造ではないように見えるが、実際は鍵がなかったり塞がれたりで迷う事もあるのだという。
そう言われてしまえば勝手に部屋に向かうなどできず、案内されることになった。
人数分の鍵を持ち、毛利はここから一番近い部屋へと案内する。
案内され全員が歩き出し、金田一はふと思い出す。


(そうだ…この中に高遠の妹がいるんだ…まさか先生が?それとも…)


ここに来たのは高遠の妹を守るため。
それを思い出し周りを見渡す。
人間、特に女性に関しては年齢は見た目で判断できない。
大人であればなおの事難しい。
厚化粧の人もいれば、薄化粧でも上手い人は年齢を誤魔化せる人がいるからだ。
高遠の年齢は23歳。
美雪と巴川家の長女である千里は除外するとして、この中での女性と言えば白樹、月読、冬野、禅田…そして…――彩羽を見た。


(彩羽…は…ないだろうな…施設出身だし…施設にいた時の年齢は3歳だったし…高遠の話じゃ彩羽が3歳の時にはあいつイギリスにいたしな……でも…腹違いであの招待状が送られるまで妹の事知らなかったとか言ってたし離れて暮らしてたって事も考えられる…それに…)


彩羽は自分達より後ろに歩いていた。
恐らく千里が高遠を警戒しての事だろう。
すでに彩羽は高遠を見ておらず、千里と何か楽し気に話していた。
正直それを見ていると、高遠の妹かもしれないという疑いが薄れていく気がした。


(なんていうか…高遠と彩羽って結びつかないんだよなぁ…)


それは犯罪者の高遠と身内に溺愛されて育った彩羽が兄妹だと思いたくないからかもしれない。
金田一がそう願っているからかもしれないが、友人には平穏で幸せな人生を送ってほしいと金田一は心から願っているのだ。
だから一応候補ではあるが…認めたくないというのも本音である。

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