ドンドン、と扉を叩かれる音に彩羽は目を覚ました。
目を覚ましても眠気はまだ残っており、体は石を背負っているように重たい。
しかし誰かが自分の部屋を叩いているのに気づき彩羽は眠気が残ってる意識の中ベッドを降りようとした。
その時――――扉が開いた。
「無事か!彩羽!!」
部屋に入ってきたのは金田一達だった。
金田一はベッドに座りこちらに振り向いている彩羽の姿にホッと安堵の息をついた。
しかしその横を通り彩羽の元へ駆け付けた人物がいた。
その影に目をやれば紫色のスーツが目に入る。
「大丈夫ですか?」
そのスーツを見に包む人物、ローゼスは誰よりも早く彩羽に駆け付け、ベッドに座りぼうっとしている彩羽を見上げる様にしゃがんで声をかける。
その声色は心配そうに聞こえたが、その違和感に気付いたのは金田一だけだった。
「―――」
彩羽が小さい声で何かを呟いた。
その声は金田一達には聞こえなかったが、近くにいたローゼスには聞こえたらしく、言葉が返ってきたことにローゼスは安堵の息を吐く。
ローゼスは頬に手をやったり額に手をやったりと熱があるか見てみるが熱を感じることはなく、眠そうに虚ろな目をしているところから純粋に眠たいだけなのだと察した。
「ただ眠っていただけみたいですね…」
ローゼスは彩羽をベッドに戻し掛け布団を賭けてやる。
眠気は残っているためか彩羽はすぐに目を瞑り眠りについた。
駆け付けた金田一達は彩羽が死んでいなかった事に安心したように胸を撫で下ろした。
「こんなときに眠ってたなんて…図太いのねぇ」
梅園は人が大勢いるにも関わらず関係ないと言わんばかりに静かに寝息を立て眠る彩羽を呆れたように見つめた。
「よかった…宝田さんの次は彩羽ちゃんかもって不安だったから…でも珍しいわね…彩羽ちゃんが寝坊するなんて…」
実は、彩羽が眠っている間に事件が起きていた。
2人目の被害者は誰もが予想していた通り、2番目に背の低い人形と同じ楽器を持つ宝田。
彼は刺し殺され時計塔の応接間のソファに座らされていた。
見つけたのは金田一達だった。
どうやら彼の部屋の扉には仕掛けがあり、鍵がなくても扉から侵入できるようになっていた。
不気味がった幽月がローゼスに頼み部屋を見てもらい、全員見て回ったところ、彩羽の姿がないことに気付いたのだ。
最初はまだ寝ているのかと思って起こさなかったが、宝田の事があり、金田一達は慌てて彩羽の部屋に駆け付け合い鍵で部屋の鍵を開けた…ということである。
(彩羽のこの反応…どこかで…)
金田一は安心したように呟いた美雪をよそに既視感に襲われる。
彩羽は寝汚いわけではなく、ちゃんと朝起きれるタイプの人間だ。
その人間が寝過ごすのは珍しい。
何より彩羽は金田一達が探検していた間仮眠を取っていたはずなのだ。(本当は実兄に会っていたのだが)
疲れて寝過ごしていた、とは到底思えなかった。
「恐らくどんなに騒いでも簡単には起きないでしょう…寝ている間に襲われる可能性もあります…今の内に見ておきましょう」
勝手に見るのは悪い気はするが、ローゼスの言う事も間違っていない。
仕掛けがあるかだけ見て回ることになり、ローゼスは…高遠は妹の宛がわれた部屋を見渡す。
「ここですかね…」
そう言って彩羽の部屋に備え付けられていたクローゼットを開いた。
クローゼットは使われておらず空だったが、高遠は壁を軽く押す。
するとキィと音を立て扉のように壁の板が開いた。
「隠し部屋のようですね…隠し通路はないようです」
出てきたのは隠し部屋。
とは言えここに住んでいた桐江たちも気づかなかった仕掛けなため最近の私物は置かれておらず、今では価値があるであろう当時の書物が多く残っていた。
それ以外にはなく、彩羽の部屋は特別危険な事もない事が判明し友人達である金田一達は安堵の息を吐く。
「じゃあ、もう出ましょう…いつまでもここにいたら巴川さんが目を覚ましちゃうわ」
隠し通路もないということでこの部屋の安全は保障された。
それならもうここにいる理由にはならず、眠っている彼女の邪魔はしない方がいいと幽月の言葉に誰もが賛同し部屋を出て行こうとした。
「「待ってください」」
幽月の言葉に全員が部屋を出ようとした。
するとローゼスと金田一が言葉を重ねる様に幽月たちを引き留める。
幽月達は金田一とローゼスに振り向き、金田一とローゼスは意識して合わせたわけではなかったためか、お互い顔を見合わせた。
じっとお互い目を合わせた後、ローゼスと金田一がまた『どうぞ』とお互いを譲る。
それにまたジッとお互い目を合わせたが、ローゼスが『君からどうぞ』と譲ってくれた。
その言葉に甘えて金田一はお礼を言いながら美雪に声をかけた。
「美雪、悪いんだけどさ…彩羽の傍にいてやってくれないか?」
「え?彩羽ちゃんの傍に?」
「私もそれをお願いしようかと……この館には殺人者がいますからね…眠っているとはいえ一人にさせるのは少々不用心かと思いまして」
金田一は美雪に彩羽の傍にいてやってほしいと頼むが、それはローゼスも同じだったらしい。
美雪は二人の頼みに2つ返事で頷いたものの、このやり取りに少し既視感を覚えたのだが…気のせいにすることにした。
なんだか言ってはいけない気がしたのだ。
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