その日、彩羽は出掛けるため朝から家を出て駅へ向かっていた。
今日は休日というのもあり通勤時間である時間帯でも人は少なかった。
「えっと…隣の市まではどの電車に乗ればいいんだろう」
彩羽は携帯を使い電車の乗り継ぎや電車賃、時間などを調べる。
彩羽はこの日不動市の隣の市へ1人で向かう予定だった。
「一応電話しておいたけど…緊張するなぁ…」
隣の市へは高遠が言っていた父が残した彩羽の家に行くためである。
彩羽は、一応、とその家に住み込みで働いてくれている兄が雇った人達と顔合わせをしようと思った。
なぜこの日なのか…勿論従兄が朝から仕事だったからだ。
従兄を煙たがっているわけではないが、高遠との繋がりはまだ従兄は知らない。
金田一達にも千里にも黙ってもらっているため、よほどでなければ気づかれないはず。
だから従兄が仕事のこの日を選んだのだ。
学校がある日は時間が遅すぎるし、そもそも平日は稽古があるため無理である。
休日もいつも従兄が休みだとは限らない。
それに顔合わせ程度でも早めの方がいいと彩羽は思った。
信用がないというわけではなく、まあ、正直に言ってしまえば彩羽は父が残してくれたという家を見るのがとても楽しみだったのだ。
携帯で出発の欄と到着の欄にそれぞれ近くの駅名を入れ、そうして得られた情報を元に彩羽は早速駅の方向へと歩きだす。
その時彩羽は見慣れた男性の姿を見つけ立ち止まった。
その姿は朝別れたばかりの明智だった。
「あれ、兄さん?何か事件かな…」
警察の仕事内容は詳しくは知らないが、事件が起きない限り多くはデスクワークだ。
特にエリートの警視となるとデスクワークが多い。
そんな兄が外に出ているということは、何か事件が起こったという事になる。
今日は休日のため、金田一も事件に巻き込まれているかもしれないとつい幼馴染の姿を探すが、そこに居たのは――女性だった。
それも親しそうに明智の腕に絡みぴったりと体をくっつけ、更には明智はそれを嫌がらず受け入れていた。
「………」
彩羽はその光景を見て自分も驚くほどいっきに感情が冷え切っていくのを感じる。
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