今日の遊びは下校途中そのまま缶蹴りとなり、元太の知っている穴場へと向かった。
「ほらほら!このビルだよ!このビル!」
そう言って案内したのは、一件の廃墟になったビルだった。
もうすぐ取り壊される事になっているビルはシャッターが下りていたが、二つある内の一つが少し開いていた。
元太は一度この中に入ってみたらしく、誰もいないのは確認済みである。
(確か来週から壊される予定のビルだったよな、ここ…にしてもシャッター開けっぱなしなんて不用心だなぁ…)
廃墟になっているからかずさんな管理に呆れていると、すでに歩美達が中に入っているのに気づいた。
すでに三人は中で缶蹴りをする気満々で、コナンは慌ててランドセルを降ろして抱えながら隙間から入った。
その隙間は小学1年生の子供でもかがまないと入れないほど狭かった。
灰原も仕方ないと溜息を吐き、中に入っていく。
「よーし!隠れろー!」
ジャンケンで負けたのはコナンだった。
入り口入ってすぐ、元太が飲み干した缶を元太が蹴り、遊びは開始された。
元太の元気な声に続き、歩美達もビルの中を走りコナンから身を隠しに向かった。
それを見送ったコナンは元太に蹴られた缶を直し、壁に向かい合わせに立ち目を瞑って数を数える。
その傍には全員分のランドセルが纏まって置かれていた。
(ったく…結局俺が鬼だし……ま、怪しい人や物を見つけたらすぐに知らせろって言ってあるし…一回やればあいつらも気がすむだろ――んじゃあ、ちゃっちゃと片付けるか)
10まで数え終えたコナンは愚痴りながらも子供達に付き合ってやっていた。
何だかんだ言って彼らの事は嫌いではないし、中身は高校生だが、こうした子供のお遊びも楽しんでもいた。
ニヤリと悪い笑みを浮かべながらコナンは早速子供達を探しに向かった。
―――そして数十分後。
コナンは難なく歩美、光彦を見つけ、そして灰原も見つけた。
普通のかくれんぼと違うところは、見つけて缶を踏まなきゃいけないし、尚且つまだ捕まえていない相手からも缶を守らなきゃいけない。
守れず缶を蹴られればせっかく捕まえた相手が全て逃げてしまうという鬼畜のシステムである。
灰原も見つけ、後は元太だけとなった。
「残りは元太君だけだけど…」
「時間の問題ですね」
「あと探してないのは三階と四階か…元太はそのどっちかだな」
意外や意外。
すぐに捕まりそうな元太が一番最後だった。
一階と二階はすでに探し済みで、あとは三階と四階だけとなっている。
高校生の中でもトップに入る頭脳の持ち主であるコナンに掛かればすぐに見つかるだろう。
しかし…
≪おいコナン!≫
ピピ、と機械音が鳴ったと思えば、スピーカー音の元太の声が聞こえた。
コナンは持っていたソレを取り出す。
ソレとは、『DBバッジ』…通称『探偵団バッチ』である。
そのバッジは阿笠博士が作った発明品の一つで、トランシーバーと発信機能を備えた物で、少年探偵団団員の証でもあるのだ。
これを持っているのは少年探偵団のメンバーであるコナン、歩美、灰原、光彦、元太のみである。
そのバッジから元太が連絡を入れてきた。
≪聞こえるか!?コナン!≫
「どうした、元太」
≪このビル誰かいるぞ!≫
元太の連絡にコナン達は目を丸くさせた。
このビルは廃墟のはずだから誰もいないはずで、それは元太が確認済みである。
そのため、元太はコナンに連絡を入れたのだろう。
≪さっきから壁を叩く音がしてんだよ!遠くの方から…!≫
元太も下見に来て誰もいないのは確認済みだが、しかしこういう廃墟ビルや人の住んでない空き家などには浮浪者が住み着いている事も多い。
コナンはそれも視野に入れていたが、どうやら人影ではなく物音を聞いたらしい。
「その音今もしてるのか?」
≪い、今はしてねえけどよ…最初に2回、次に5回、また2回したら止まっちまって…≫
(!―――252!要救助者あり…!)
音が何度も繰り返し聞こえていたらしい。
今はしていないというが、その音には一定の数が繰り返し叩かれているようでコナンはそれを聞いてハッと気づく。
「それって東京消防庁の通話コードじゃないでしょうか!」
コナンが気づいたのと同時に、光彦もその音が何を意味をするのか気づいた。
どうやら姉に教えてもらったようで、何か役に立つかもしれないからと言われメモに取っておいたらしい。
「『252』は逃げ遅れたり助けなきゃいけない人がいた時に使うコードで、『254』はその場で待てという現場待機のコード…」
「じゃあ元太君が聞いた音がその『252』なら誰かが助けてって言ってるんじゃない!?」
「えっ!?ま、まさか…」
通話コードなんて大人でも知らないだろう。
元太が聞いたのは偶然かもしれないのも拭えなかった。
「とにかく元太のところに行ってみよう…話はそれからだ」
コナンはここからではその音が聞こえず、とりあえず元太の元へと向かう事にした。
15 / 24
← | back | →
しおりを挟む