(3 / 20) 蝋人形城殺人事件 (3)

金田一は幼馴染の美雪と、先ほど知り合ったドイツ警察の最年少監察医のマリアと薄暗い廊下を歩いていた。
照明はなく、蝋燭の光だけで照らされているため、真っ暗ではないにせよ視界が悪く不気味さを感じ、三人はまるでお化け屋敷に来ているような不安を感じていた。


「ん?」


ふと歩いていると左右に置かれている何かに気付く。
蝋燭の火が風に揺れ、蝋燭の明かりがそれを微かに照らす。


「うわあっ!」


金田一はそれが人型をしているのだけはハッキリと見えた。
しかしそれがまるで幽霊のように視界に入ったため、驚いた声を上げ、思わず傍にいたマリアに抱き着く。
マリアも同じくソレに驚き、金田一と同様顔を青ざめていた。
金田一の叫びに美雪も驚いたが、ふと何かに気付きソレを観察する。


「これ…蝋人形だわ!」

「蝋人形?」


美雪の言葉に金田一は怪訝とさせ、ソレをじっくりと見る。
美雪の言葉通り、ソレは蝋人形だった。
幽霊かと思ったソレは、ただの蝋で出来た人形だと分かり金田一は安堵の息を吐く。


「んだよ!驚かせやがって…」

「本当…びっくりしましたね…」


幽霊でもないと分かってしまえばもう怖さなど皆無である。
悪態つく金田一にマリアも頷き、美雪はジト目を金田一に向ける。


「…それよりはじめちゃん?いつまでマリアさんにくっついているつもり?」

「あだだだ…!ひ、引っ張るなよ!」


まだマリアに抱き着いている金田一の耳を美雪は思いっきり引っ張って離させる。
それはいつもの光景だが、マリアは金田一と美雪のやり取りにクスクスと笑った。


「さ!行くわよ!」


スケベな幼馴染にプンスカと怒る美雪に急かされながら、金田一とマリアは先を進む。
その廊下には分かれ道はなく、真っすぐ伸びている廊下を歩いていると行き止まり…正確にはどこかに繋がっている扉の前にたどり着く。
扉の隙間からは光が漏れ、何やら話し声も聞こえ、金田一はそっと耳を立てる。
その声は男女が談話している声だが、何を話しているかは聞き取れない。
扉を開けて入れば、男4人、女2人がいた。
6人の目線が自分達に集まり、静まり返って金田一は気まずさに顔を引きずった笑みを浮かべた。


「ど、どうも!こんにちは!俺達もミステリーナイトに参加するんです!どうぞよろしく…」


気まずい…、金田一はまずそう思った。
部屋にいた男女は、先ほどまで談話していたのと、入ってきたのが高校生くらいの子供というのもあり誰もが口を閉じてしまう。
それがまた気まずくて金田一はとりあえず笑顔を浮かべるしかなかった。


「あっ!多岐川かほるだっ!」


そんな静まり返る中、美雪が何かに気付き顔に喜色を浮かべ、椅子に座る細身の女性を見つめた。


「多岐川さんですよね!私大ファンなんです!」

「どうも」


美雪は芸能は勿論、小説も好んで読んでおり、多岐川の小説も読んだことがあった。
楽しく読ませてもらっていますという美雪に多岐川は笑みを浮かべて返した。


「へえ…女子供には人気があるようですなぁ」


憧れの人の一人である女性作家と出会えた事で、先ほどの不機嫌さも吹き飛び嬉しそうな笑みを浮かべていたが、そんな美雪と多岐川の間に横やりを入れる人物がいた。
そちらへ目をやれば40代ほどの眼鏡をかけた男性がこちらをニヤついた笑みで見つめていた。
その男の言葉は誰が聞いても嫌みにしか聞こえず、美雪は思わず顔を顰めてしまう。


「私のファン層は幅広いのよ坂東さん」

「ほう…それは知りませんでした」

「あなたも人の作品を貶してばかりいないで、ご自分でミステリーの一つでもお書きになってみたらいかが?」

「どういう意味でしょう?評論も立派な創作活動ですよ?」


静まり返った気まずい空気はなんとか緩和したが、何故かギスギスし始めた。
金田一は戸惑う美雪を手招きで呼び戻していると、傍に坂東の隣に座っていたふくよかな女が金田一の傍に歩み寄ってきた。


「あの男、推理小説の評論家なのよ…昔多岐川かほるの作品を滅茶苦茶に貶したことがあるの」

「へえ、詳しいんですね」

「ミステリーファンなの、よろしくね金田一君」

「どうして俺の名前を?」


女は当麻恵と名乗った。
当摩は何故か名乗っていない金田一の名を知っており、それを聞けば当摩は探偵社の社長をしており、金田一とその祖父であり名探偵として名を馳せた金田一耕助の事を良く知っていると答えてくれた。
金田一の祖父は言わずもながらだが、金田一は警察に協力しているためそれなりに名が知られているらしく、探偵業を営んでいる人間には有名らしい。
苦笑いを浮かべて返した金田一は部屋を見渡す。


「あの…みなさん、ここで何を…」

「あれよ」


金田一の問いに答えたのは、先ほどまで話していた当摩だった。
当摩は金田一達が入ってきた扉とは別の場所を指さし、そちらを金田一、美雪、マリアが見れば入ってきた扉とは別の扉に何か紙のようなものが張り付いているのが見えた。
それは横に長細く、左から『NOOW』と文字だけが書かれていた。


「開かずの間よ」

「ミステリーナイト最初の関門ってわけだ」


どうやらこの部屋に集まっていたのは先に進めなかっただけだったようで、当摩達が試したが鍵が掛かっているのか開かず、鍵を探しても一つも見つからなかったらしい。


「あんたが金田一耕助の孫かい?俺は犯罪ジャーナリストの真木目、よろしくな」


祖父の名は探偵業の人間だけではなく、犯罪ジャーナリストという探偵とは程遠い職業の人間にも祖父の名は広まっていたらしい。
真木目が自己紹介を終えると、周りの人間も続けて自己紹介を始めた。
そこにはマリア同様外国人もおり、金田一と同じ、身内が有名な人物もいた。


「NOOW…なんの暗号でしょうかねぇ」

「流石の犯罪心理学の権威もお手上げですか?」


ミステリーツアーに参加するのだから皆推理好きで負けず嫌いだった、
金田一達の登場で止まっていた推理大会を再開させ、それぞれ人の腹を覗き込むように『NOOM』という文字が何を意味するのかを推理しはじめる。
ざわめきが戻り、金田一は『ふむ』とその紙が貼られている扉に近づきジッと凝視する。
そして…


「な〜んだ」

「はじめちゃん、分かるの?」

「ああ、これは…」


考えるまでもない、と金田一はすぐに分かった。
パチンと指を鳴らす金田一とその言葉に、隣にいた美雪はもう解いた金田一に声をかけた。
金田一が美雪の言葉に説明をしようとしたその時―――


「逆さまですね」


新たな人物の声に遮られてしまった。
金田一は美雪に説明しようとしたそのままの言葉で遮られ振り返る。
その声の主は先ほど金田一達が入ってきた扉の傍におり、その横には自分達と同じ年頃の美少女が立っていた。
金田一は声の主よりもその美少女に目を奪われる。
美少女は一目見れば誰もが見惚れるほど美しい容姿を持っており、その雰囲気は儚げで小説に出てくる深窓の令嬢のよう。
美雪でさえ『うわぁ…綺麗な子…』と小声で呟くくらいその美少女は美しかった。
勿論、その容姿にも目を奪われるが…何より金田一はその少女を見てまず既視感を感じた。
しかし思い出せない。
首を傾げていると、声の主である少女と同等の容姿を持つ美形の男が歩み寄ってきて扉に貼ってある紙を手に取って周囲に分かりやすいよう見せる。


「MOON…つまり月です」

「月?…でもそれってどんな意味があるの?」


『NOOM』だったと思ったその文字は、紙を逆さにした『MOON』だった。
『MOON(ムーン)』とは日本語で『月』を意味する。
それは美雪にも分かったが、だが、だから解いてそれが答えだとしても何を意味するのかが分からない。


「ヒントはこの部屋の中にあるよ」

「部屋の中?」

「蝋人形ですよ」

「え?」


金田一にそう言われ部屋を見渡しても月らしき物は見当たらない。
首を傾げる美雪に男がある一体の蝋人形へと歩み寄り、人形が持っていた弧を描く物質を下向きから上向きに変える。
すると月を両手で掲げるような像ができあがったり、それと同時に扉が開かれる。
男の傍にいた美少女が中を覗けばここまで来た道とは違い蝋燭の明かりもない真っ暗闇が広がっていた。


「中々やるじゃーん!あんたもミステリーナイトの参加者かい?」

「ええ、私は明智健悟…警視庁捜査一課の警視です」

「え…!じゃあ、剣持のおっさんの上司なの!?そんなに若いのに!?」

「金田一君、君の活躍は警視庁でも評判ですよ」

「いや〜!それほどでも〜!」


金田一は警視が警部の上司にあたるのは一応協力者として知っていた。
とは言え剣持の上司が剣持よりも年下というのは予想はできておらず、驚いて見せる。
恐らくその反応は見慣れたものなのか、明智は軽く流す。
褒めるとすぐに調子に乗る…というのは嘘ではないようで、明智はデレデレに照れる金田一に目を細め、美少女…彩羽を紹介する。


「彼女は連れの彩羽です…彩羽、挨拶を」

「はい…初めまして、巴川彩羽です」


小さく頭を下げる彩羽はお嬢様そのものだった。
その雰囲気に金田一と美雪は釣られ、頭をさげてそれぞれ自己紹介をしたが、ふと…金田一は絡まっていた糸が突然一本の糸に繋がったように思い出した。


「彩羽って……もしかして明智彩羽か!?」


下げていた頭を金田一は弾かれたように上げ、声を上げる様に問う。
突然の言葉に彩羽は目を瞬かせ首を傾げたが、興奮しているのか金田一はズイッと彩羽に詰め寄る様に近づき自分を指さした。


「ほら!俺だよ!俺!幼稚園と小学の時一緒だった金田一一だよ!」

「え?えっと…」

「覚えてない?俺と美雪の事!」


金田一は自分を指を指すが、彩羽は全く覚えていない。
しかしかと言ってピンと来ないと言う訳でもない。
後ろから美雪が『ちょっとはじめちゃん!』と叱る声と、明智が『近すぎです』と金田一と彩羽の間に入り背に庇うのをよそに彩羽は明智の身体から顔を覗かせ金田一を見る。


「もう!なにしてるのよはじめちゃん!初対面で失礼でしょ!」

「お前も覚えてねえのか?」

「何を?」

「ほら、彩羽だよ!彩羽!幼稚園と小学一緒だっただろ!4年になってすぐに引っ越しちゃって音信不通になったあの彩羽!」

「小学4年に引っ越して音信不通……って…彩羽ちゃん!?」


金田一はよく想定外な行動をすることが多い。
幼馴染として慣れてはいるが、美少女に迫るような金田一の勢いに流石に顔を赤くして首根っこを掴んで離した。
まあ、そこには嫉妬心もあるのだろう。
ムッとさせる美雪だったが、金田一の言葉で今まで奥にしまい込んでいた記憶が一気に蘇り、金田一が何が言いたいのか全て理解した。
金田一がハッとさせて思い出す美雪に頷いているのを彩羽は従兄越しにジッと目を凝らすように見つめていた。


(金田一…金田一…金田一…はじめちゃん…美雪………)


ここに来るときも二人の背を遠目で見て既視感を感じ、そして今もどこかもやがかかったように何かが引っかかっていた。
モンモンとさせながらも考えこみ思い出そうとしたその時……


「もしかして…あのはじめちゃんと美雪ちゃん!?」


彩羽も金田一と美雪と同じく、もやがかかった記憶が晴れたように鮮明に思い出した。
気のせいかと思ったそれは気のせいではなく、金田一と美雪は確かに彩羽の記憶の中に存在していた。
幼稚園年中の時途中で通うことになった幼稚園に金田一と美雪がおり、彩羽が引っ越すまで三人で行動を共にするほど仲良しになった…いわば幼馴染である。


「そうそう!はじめちゃんと美雪ちゃん!」

「わあ!久しぶりーっ!元気にしてた!?」

「うん!彩羽ちゃんも元気だった!?」


幼馴染と知れば彩羽は大人しい少女という印象が一変させるような満面の笑みを浮かべ、従兄の背から二人に駆け寄った。
同性の美雪に真っ先に向かい抱きつき、二人は再会にピョンピョンと跳ねて喜びを表していた。
美雪との再会を噛みしめた後は…と金田一はニマニマとニヤつきながら彩羽が抱き着いてくるのを両手を広げて待った。
…が。


「何スタンバイしているんです?彩羽に抱き着かせるなんてさせませんよ、そんな事」


金田一の肩にポン、と手が置かれ、金田一は背後から冷気のようなものを感じ固まる。
顔をニヤつかせたまま恐る恐る振り返れば、そこには明智がおり、明智はにっこりと笑みを浮かべていた。
美形の明智の笑みは恐らく女性を魅了するほど美しいのだろう。
だが、今の金田一からしたら悪魔の笑みにしか見えなかった。


「剣持警部から君の事は色々と聞いていますよ……ええ、色々と、ね…」

「………」


金田一はその笑みと言葉にゾクリと背筋に冷たい何かが走った。
金田一は明智にどんなにむごい事件や恐ろしい犯人に会った時とは比べられない恐ろしさを感じた。
聞けば従兄妹の間柄だというではないか。
悔しまぎれに『シスコンかよ』と呟けば意味ありげに笑みを浮かべた。
しかしその笑みには先ほどのような背筋が凍るような恐ろしげではなかった。
その笑みに違和感を感じた金田一は何か言いかけたが、彩羽がこちらに来て口を閉じた。


「はじめちゃんも久しぶり!」


そう言って笑みを浮かべる彩羽は金田一の手を握った。
抱きついてくれないのは惜しい気持ちはまだあるが、保護者が怖いので何も言わないでおいた。
先ほどの明智の笑みの意味を一先ず置いて、今はただ幼馴染との再会を噛みしめる事にした。
話が弾み、美雪も含めた三人が盛り上がっていた時…ふと先ほど謎を解き開けた扉の向こう側から気配を感じ、三人はそちらへ目をやる。
するとぬっと暗闇から突然現れたように一人の男性の姿が見えた。


「「ひい!」」


金田一と美雪はその男性に小さい悲鳴を上げ、彩羽は悲鳴こそ上げなかったが目を丸くする程度には驚く。
そんな高校生二人をよそに、現れた男は静かに口を開く。


「ミステリーナイトの参加者の皆さま…バルト城にようこそいらっしゃいました…さあ、どうぞこちらへ…レッドラム様がお待ちです」


その男の風貌はまるでフランケンシュタインの怪物のようだが、服装からして世話係で、口調も風貌とは真逆の丁寧で落ち着いた様子を見せていた。
レッドラム、というのはパンフレットにも名前が書かれており、この古城の持ち主である。
世話係の男…南山駿三を先頭に一同は廊下を進む。
真っ暗だと思ったが、あの部屋に入る前に続く廊下と同じく蝋燭の火が灯っており、暗く見えたのは明るい所から見ていたかららしい。


「なんで野郎と肩ならべて歩かにゃならんのだ…」

「当たり前でしょう…君は女性に弱いというのも聞いています…彩羽は叔母から預かった大切な娘です…君に手を付けられて傷物にされてはたまりませんからね」


ふ、と笑う明智に金田一は『ケッ』と悪態をついた。
その後ろには彩羽と美雪がおり、先ほどからキャッキャと愛らしい声で楽しく会話を広げているのが聞こえる。
勿論最初は金田一も参加しようとは思った。
美雪と彩羽を左右に侍らせ両手に花状態を作ろうと思った。
…が、それをいち早く気づいた明智に邪魔をされたのだ。
二人の間に入ろうとした金田一の腕を明智は掴み、美雪と彩羽の前方を歩くよう追い抜いて…今に至った。
どうやら金田一は彩羽を後ろから見るのも許されないらしい。
ムスッとさせる金田一に明智は詫びれもなく答える。


「明智さん、あんた、歳はいくつ?」

「28です」

「28歳と17歳の従兄妹ねえ…」

「叔父夫婦は子供に中々恵まれませんでしたからね」


いつまでも不貞腐れていても面白くないと金田一は両手に花は諦めた。
長い廊下を歩いている間、暇なので問えば意外と素直に答えてくれた。
すぐに答えたところを見ると、よく質問されるのだろう。


(まあ、従兄妹っていうよりは伯父姪だもんな…そりゃみんな聞くわ)


28歳と17歳…11歳差の従兄妹が珍しいと言う訳ではない。
探せばもっと歳の差がある従兄妹や兄妹が居たって不思議ではない。
だが、やはり11歳も離れているのは人から見たら興味本位に見られるのだろう。
特にこの従兄妹は顔が整っているから余計に。
無理な詮索もトラブルの元だとそれ以上突っ込まず、しかしこれ以上の会話も思い浮かばず、明智と金田一はお互い口を閉ざし南山の後に続いた。


「この大暖炉の間でレッドラム様がお待ちです」


ついた先は他と変わらない扉。
その先にあるのは大暖炉の間と呼ばれる部屋らしく、開けられた扉から中に入れば、確かに大きな暖炉があった。
暖炉にはすでに火が着けられており、扉からは暖かな空気が冷たい廊下に流れる。


「!!」


暖炉を見た後、反対側へ目をやった金田一達はその光景に目を丸くした。


「こ、これは…」

「俺達そっくりの蝋人形じゃないか!」


その光景とは数体の蝋人形だった。
それも彩羽や金田一、美雪、明智を含めた参加者全員の蝋人形。
その蝋人形には現代では劇団でしか見ることのない中世ヨーロッパ風の衣装が着せられており、彩羽のそっくりな蝋人形も緑色で統一されたロココ調のドレスを着せられていた。


≪ミステリーナイトの参加者の諸君、ようこそ我が蝋人形城へ…私の心ばかりのプレゼントは気に入っていただけたかな?≫


彩羽は自分の蝋人形へ近づきまじまじと見ていた。
その出来栄えは素晴らしく、本当に目の前に鏡があるのではないかと思う程本人から見てもそっくりだった。
じっと見過ぎたのか明智に呼ばれ、彩羽は明智の傍に戻った。
その時――どこからか聞き慣れない老人のような男性の声が部屋に響いた。
その声の主はこの古城の主であるレッドラムだった。
同時に古城のどこかにある鐘が鳴り響く。


≪只今よりバルト城所有権及び、移築費用2億円を賭けバルト城ミステリーナイトを開始する―――世界中の応募者の中から選ばれた11名の名探偵諸君の健闘を祈る≫


どこかのスピーカーから流しているのか、レッドラムの姿はない。
レッドラムの言葉についにゲームが開始されたと誰もに緊張が走った。
しかし、どこからかガラガラと音がし、美雪が何かを見たのか窓へと駆け寄った。
そんな美雪に彩羽も金田一も明智も気づき、後を追い、その場にいた者たちも気づき窓に駆け寄った。


「あ!」

「跳ね橋が…!」


美雪に続き彩羽も美雪の隣で窓の外を見れば、自分達がこの古城に足を踏み入れた際通った橋が少しずつゆっくりと上がっているのが見えた。
跳ね橋が完全に上がり、唯一外に繋がる橋は一変し壁となった。


「門が閉まったぞ!?」

「大変だ…!」

「ど、どうなってるの!?」


多岐川が世話係の南山にそう振り返り問う。
その多岐川の声に窓に集まっていた参加者全員が多岐川と同じく南山に振り返った。


「皆さまには推理に集中していただくため、この四日間城の外に出られないようにさせていただきます」

「四日間もこの城に缶詰になるのか!?」


確かに、パンフには三泊四日と書かれてはいたため、それほど驚きはないが…流石に城に閉じ込められるのは予想しておらず驚いてしまう。
更には外と連絡を取りクイズを解こうとする不正を防ぐためにと携帯を没収するよう言われているらしく、流石にそれは徹底しすぎではと彩羽は思わず明智を見た。
明智も彩羽の目線に気付きこちらを見たが、肩をすくめて返しただけだった。
しかし彩羽はそれを『仕方ない、従うしか他にない』という意味だと理解し、従兄がそう言うのなら…とカバンから携帯を取り出し南山に渡した。


「では皆さまのお部屋へ案内いたします」


全員の携帯を受け取り、南山は参加者に客室を案内する。


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