(15 / 22) 魔術列車殺人事件 (15)

「ごめんなさい」


朝、彩羽は明智と顔を合わせるとまず朝の挨拶よりも謝罪をした。
ネクタイを締めていた明智は目を丸くさせて彩羽を見る。
彩羽は自分のベッドに座り項垂れていた。
どうやら昨日の夜の事を気にしているようで、明智は苦笑いを浮かべる。


「気にしていないよ」

「気にしていないとか気にしてる以前の問題だよ…昨日は兄さんに八つ当たりしちゃったし…ごめん…兄さんは何も悪くないのに…」


はあ、と重い溜息のような息を吐く彩羽に明智は『気にしてないよ』と同じことを言いかけたが、それではイタチごっこだと経験上分かっており、彩羽と向かい合うように明智も自身が寝ていたベッドに座る。


「実際警察が捜査不足で片付けてしまったんだし…彩羽がそう思ってしまうのは無理もないさ」

「違う…警察は好きじゃないけど…だけど兄さんに当たるのは間違いだった…あの時兄さんが捜査していたわけじゃないのに…」


あの時、彩羽は感情的になっていたという自覚はあった。
事故に見せかけて殺されたと聞いて、つい感情的になってしまったのだ。
彩羽も同じだったから。
だけどそれを明智に当たるのは間違いだと彩羽も分かっており、だからこそ罪悪感が強く残り、自分を責めた。
だが明智としては本当の事だから彩羽が気にする事はないと言うもそれだと余計に気にするので言えなかった。
明智は彩羽に腕を広げて見せる。
明智から言葉がなくてもそれが『おいで』と言っている事を分かっており、彩羽はそんな明智の仕草にのそのそと動き出す。
腕を広げる従兄の膝の上に座り、首に腕を回して顔を埋めた。


「証拠はないからすぐに逮捕は出来ない…だけど私が必ず証拠を見つけてみせる…だから我慢しろというのは彩羽には辛い事かもしれない…ただ耐えてほしいとしか言えない事を許してほしい」


従兄は自分を甘やかすのが上手い。
彩羽は明智に頷いて返しながらも、自分の甘えたな性格がたまに嫌になる事がある。
だけど今の環境で明智以外の味方がいない今…彩羽が自分を出せる明智に対してどうしても弱かった。

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