――朝。
郊外にある屋敷は静かな朝を迎えるはずだった。
しかし…
「た…大変です!!ま、また蝶が壁に…!!」
使用人の竹蔵が慌てた様子で屋敷に入っていく。
その騒ぎに起きていた人達が出てきて竹蔵が見たという蝶の元へと向かった。
金田一達も騒動に気付き蝶が磔にされているという場所へと向かう。
「はじめちゃん!また蝶が磔にされてたって聞いたけど…」
暫くすると彩羽と、彩羽と一緒にいたらしい明智が駆け寄ってきた。
その後ろを英二も続く。
金田一達と共に彩羽もその蝶を見に向かった。
「黒死蝶じゃない…?」
その蝶は最初に黒死蝶が磔にされていた場所とは違い、木に磔にされていた。
磔にされていた蝶は死の予告と言われている黒死蝶ではなく…
「この蝶は『オオルリシジミ』ですね…」
オオルリシジミという名の蝶だった。
一見何の意味のない蝶だと思ったのだが、彩羽はある事に気付く。
「オオルリシジミって…確かお母さんがパーティーで着ていた着物の柄だった気が…」
その蝶をイメージして作った着物を母が着ていた事を思い出す。
金田一はその言葉を聞き辺りを見渡した。
「…オバさんの姿が見えないな…」
「こっちに来られてる最中じゃないかしら…昨日も来るの遅かったし…」
金田一は何となく、嫌な予感がした。
彩羽の母親とは言葉を交わさないが、姿がない事に不安がよぎる。
それは彩羽も同じなのか、金田一と同じく周りを見渡して母を探す。
周囲には滞在している客と使用人、明日香、蓮、千里…そして隼人がいた。
しかし母の姿はない。
「はじめちゃん?どこへ?」
「ちょっとオバさんを探しに…」
金田一の声で彩羽はハッと我に返った。
金田一も嫌な予感がし、初音を探そうと屋敷へ戻ろうとしていた。
どこにいるのか分からないが、屋敷から探そうとしている金田一に彩羽もそれに続ける。
「南さん!」
「一体何の騒ぎなんですか?」
屋敷へ入ると丁度外に出ようとしていた使用人の南と鉢合った。
騒ぎに気づいてはいたが手が離せなかった南の問いに金田一は答えるよりも前に初音の居場所を聞き出そうとする。
しかし…
「それが…私達も奥さまを探しているのですが…」
「いないのか!?」
「はい…お部屋にもいらっしゃいませんでした」
南は初音を数人の使用人と共に屋敷内を探していたようだった。
しかし初音の姿は屋敷にはなく、外に探しに行こうとしたところ、金田一達と鉢合ったらしい。
「屋敷内は全て探したのですが…」
「じゃあ外か…」
屋敷の全てを探しても初音の姿はないという南の言葉に彩羽はそのまま外へ引き返し、母を探しに向かった。
「彩羽!」
「お嬢様!!」
一人探しに向かった彩羽を明智と英二が慌てて追いかける。
金田一達と南も手分けして初音を探しに向かった。
「南さんはあちらを!俺達はこっちを探します!」
「は、はい!」
どうして必死に探すのかは説明できない。
だが、どうしてか初音を探さなければと思った。
嫌な予感を気のせいだと片付けられたらと思いながらも不安を抱えながら金田一は初音を探す。
そして…―――
「!――おば様…!」
初音を見つけたのは金田一と美雪だった。
初音は屋敷内にいた。
しかし…――生きてはいなかった。
初音は蝶塚と呼ばれた場所に横たわっていた。
積み重ねられている木の葉の上に横たわり、着物の袖に杭が打ち付けられていた。
それはまるで蝶の標本のようだった。
「そんな…おば様が…っ」
初音の死に美雪は唖然とし、その場に崩れ落ちそうだった。
そんな美雪に金田一は慌てて支えてやりながら座らせる。
「美雪…ここにいてくれ…」
「はじめちゃん?」
「俺は明智さんにこの事を知らせてくる…」
金田一の言葉に美雪は何も言わずただ頷いた。
初音は彩羽の母親だ。
彩羽は美雪や金田一達の友人で、その母親の死に美雪もショックを受けているのだろう。
金田一も多くの事件に巻き込まれ、そして多くの人の死に直面してきた。
だけど嫌味な人間だったとはいえ、友人の身内の死は何度死人を見ても慣れる事はない。
それでも金田一は取り乱さず冷静さを保ち、未だ母を探している彩羽の元へと向かった。
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