高遠の件は平行線が続き、結局は逮捕できなかった。
その理由は周囲の安全を優先したためである。
殺人犯を野放しにするよりも逮捕した方が安全ではあるが、相手は金田一や明智と同等の頭脳を持つ男である。
簡単に脱獄した男が簡単に捕まるわけもなく、更には明智と金田一は彩羽を人質に取られているのと同じだった。
下手に彩羽と離した場合、彩羽が怪我を負うと考え強行できなかった。
「おかえり…あれ、英二さんも一緒に来たんだ」
仕事も終え、見張りも兼ねて三人で戻ってきた。
英二が高遠と思いもしない彩羽は仕事から帰ってきた高遠に笑顔を向け、マスクを被り直した高遠はその笑みに微笑みを浮かべた。
それに対し、金田一は顔を引きつらせているが、流石と言うべきか明智は涼しい顔を保っている。
「お嬢様、紅茶のお代わりを淹れて来ましょうか?」
「うん、おねが…」
「私が行こう」
「え、でも…」
「最近紅茶を淹れるのに凝っていてね…練習させてほしいんだ…もっと美味しい紅茶を彩羽にも飲んでほしいしね」
「兄さんの淹れる紅茶やコーヒーはいつだって美味しいよ」
「ありがとう、彩羽」
丁度戻って来た時美雪達のティーポットには紅茶がなくなっていた。
それに気づき、ついでに自分達にもと高遠が席を立ちかけたとき明智がすかさず遮り、ティーポットを奪う。
明らかに高遠を警戒している明智の演技に金田一は内心『おっ、上手い!』と褒めた。
そんな金田一をよそに彩羽に褒められて嬉しい明智と、お嬢様の世話を取り上げられた英二こと高遠は密かに見えない火花を飛ばしていた。
2人の見えない火花に美雪は金田一に小声で話しかける。
(ねえはじめちゃん)
(なんだよ)
(2人、何かあったの?)
(あー……修羅場はあったな…二つの意味で…)
(修羅場って…じゃあ佐藤さんも彩羽ちゃんの事…って二つの意味ってなに?)
(深い意味はないから気にすんな)
(…?)
美雪といつきに高遠の事を教えようかとまだ迷っている。
このまま高遠と美雪達を関わらせるのはどうかと思っており、出来る事なら彩羽にも高遠の事を教えたかった。
が、下手に連続殺人犯が潜伏しているのだと教えるとパニックが起こるためそれを防ぐために口外しないのが安全だろう。
(っていうか捕まえるのが一番の安全策なんだが…)
一番安全なのは高遠を警察に引き渡すのが一番の安全策である。
だが、高遠は彩羽を盾にしており、それは得策ではないと明智と金田一は判断した。
ただ、金田一は正直な所本当に高遠が彩羽を盾にするのか疑問ではあった。
金田一はチラリと高遠を見る。
マスクを被り直したので高遠とは別人だが、気づいてしまった金田一と明智からしたら英二の顔でも高遠は高遠にしか見えなかった。
お茶菓子を食べながら盗み見見ていると丁度高遠が彩羽と話ている姿が見えた。
その姿は慕う少女と話す嬉しそうな世話係の姿があり、金田一の目には、その笑みは本物のように思えた。
(本気なのか…?本当に高遠は彩羽に一目惚れを…?)
高遠が彩羽に一目惚れしたという言葉は今も半信半疑である。
高遠と彩羽は6つの年の差あるし、何より接点が舞台裏しか見当たらない。
高遠は顔だけはいいから恋愛をしたいのならその辺の美女に声を掛ければ一人二人と選び放題のはず。
それなのに高遠はわざわざ17歳の女子高校生という未熟な少女に一目惚れをしたという。
『一目惚れ』という言葉があるくらいだから、一目で惚れてしまう事もあるのだろうが…高遠は犯罪者…それでも人を欺くマジシャンである。
あまり信用は出来なかった。
(歳の差か…)
一瞬ロリコンという言葉が思い浮かんだが…その言葉に当てはまる人物が味方に一人いるので言うのを控えた。
無謀だと言われている金田一だって命は惜しい。
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