(25 / 37) 黒死蝶殺人事件 (25)

――夜。
夕食も終わり、まったりとした時間を過ごしていた。
金田一は美雪達の傍を、明智は彩羽の傍を離れないようにしていた。


「夜光蝶が飛んでるわ…」


デッキに出て夜風に当たっていた美雪は淡く光る蝶を見上げる。
美雪の言葉にいつきと金田一も夜空を見上げる。
淡く光る蝶が夜空を我が物顔で飛んでいるのが見えた。


「初めて見た時は綺麗だと思ったけど…今は何だか人魂みたいで気味が悪い…」

「あんなことがあった後じゃな…」


初音の死からまだ日が浅い。
印象が悪い人間だったとは言え、死んで喜ぶほど初音と接していなかったため、恐らく金田一達はこの屋敷の中では最も初音の死を悲しんでくれる人間だろう。


「ん…?なんかあの辺…やたら夜光蝶が集まってないか?」


美雪達の傍についているとしても高遠がいつ気紛れに動くか分からないため意識は高遠の方へ向けていた。
しかしふと夜光蝶がひらひらと漂いながらある一点の方へ向かって飛んでいるのに気づく。


「そ、そういえば…」

「なんかどんどん光りが増えていくぞ?」


目を凝らせば光りがどんどんと大きくなっていくが、その間も夜光蝶は光りに向かって集まっており金田一達が気づいた時よりもその光は大きくなっていく。


「な、なに…あれ…夜光蝶…?」


部屋にいて明智と高遠と話していた彩羽も流石に明るいその塊に気付き席を立ち金田一達と同じデッキへ出てきた。
その後ろを明智と高遠も続き、金田一は光の固まりも気になるが高遠の反応も気になった。
高遠は『おや』と珍しいものを見るような目で見ており冷静だった。
それを流石殺人犯と思いながら金田一は光へ意識を戻す。


「何だあ?あんなところに夜光蝶がうじゃうじゃと…」

「なんか…怖い…!まるで巨大な光る蝶が磔にされてるみたい…!」


光りは綺麗だった。
だけど金田一達からしたら不気味でもあった。
フミは不安なのか美雪にくっつき、美雪はフミを守るよう抱きしめた。
恐々とした美雪の呟きに金田一は一瞬初音が殺された時の事を思い出した。
そしてハッとさせる。


「!――おい!金田一!?」


金田一は突然走り出し、そんな金田一にいつきも続いた。
彩羽も行こうとしたが英二…高遠に引き留められた。


「お嬢様はそこに…!私が見に行きます!」

「え、ええ…お願い…」


金田一が危惧していたものを高遠も感じていたのだろう。
彩羽に"ソレ"を見せないようその場に待機させ、先に行った金田一達を追いかけた。


「七瀬さん達もそこに!!彩羽をお願いします!」

「は、はい!」


明智も金田一と高遠と同じことを思ったのか、女子供が見るべきものではないと七瀬とフミを待機させる。
嫌な予感は美雪達も感じたのか三人は高遠と明智の言葉通りデッキから男性陣達が向かった先を恐々とした目で見つめていた。


「うわ!こりゃあすっげー数の夜光蝶だぞ!!」

「くそ…!散れ!!」


金田一といつきは真っ先に光の下へ向かう。
思った以上の数の夜光蝶が群がっており、何に群がっているのかが分からないほど密集していた。
金田一は上着を脱ぎ夜光蝶を追い払うが、一人では追い払ってもまた新しい夜光蝶が集まってしまい追い払えなかった。
そこにいつきや後から来た明智と高遠も加わり、4人がかりで夜光蝶を追い払うことができたのだが…


「―――っ!!」

「な…!?」


そこには蓮の姿がった。
蓮はまるで蜘蛛の巣に捕らわれた蝶のように蜘蛛の巣状にガラスが割れた温室に磔にされていた。
気を失っているかのように思える彼だが、月光に照らされ露わになっている彼の顔色に血の気はなく…彼の腕は片腕切断されいた。
その姿はまるで片翅を失った蝶のようだった。


「れ…蓮、さん…?」


彩羽は遠目からでも見える彼の無残な姿に唖然とし言葉を失っていた。
金田一も蝶が舞う中すでに息絶えている彼の無残な姿に愕然としていた。


「れ…蓮…ッ!?」

「明日香さん…!?」


ただ一人…高遠を除いた全員が言葉をなくしているなか…後ろから声が聞こえ振り返る。
そこには明日香が立っていた。
明日香は弟の無残な姿に顔色を青くさせ一歩、また一歩と後ろへ下がり弟の死を受け入れられないと言わんばかりに首を振った。


「いや…いやあああッ!!蓮!!嘘よ!!蓮!!」

「明日香さん!!」


弟の死に明日香は叫んだ。
弟の元へ向かおうとしたが、金田一といつきがそれを止めた。


「不死蝶、ですか…」


明日香の弟を呼ぶ声を聞きながら高遠がポツリと呟く。
その声に明智が高遠を見れば、高遠は蓮の死体の近くの木を見ていた。
視線を辿ってみれば、そこには蝶の下に『不死蝶』という文字が書かれていた。
それは初音の時もあったものであり、犯人が残した証拠でもあった。
その証拠が果たして証拠になるかは分からないが、明智は携帯を取り出し石川県警に連絡をした。

25 / 37
| back |
しおりを挟む