(34 / 37) 黒死蝶殺人事件 (34)

明智に案内されるように高遠と彩羽は皆が集まっている場所に向かった。
そこは最初の被害者であり彩羽の母でもある初音が殺害された現場…『蝶塚』だった。
明智と高遠と共に行けばすでに他の人達は集まっており、彩羽達が最後だった。


「姉様っ」

「隼人…」


彩羽の姿に弟の隼人が駆け寄り抱きつく。
隼人も母と主治医の関係にショックを受けているのか、幼いながらに疲労を感じているような表情を浮かべていた。
体を震わせる弟を彩羽は抱きしめ、金田一へ顔を上げた。


「はじめちゃん…犯人が分かったって本当?」

「ああ…犯人は加川じゃない」


不安そうな彩羽の言葉に金田一は深く頷いた。
隼人が抱き着いているため立てず、彩羽は跪き隼人を抱きしめたまま聞く事にした。
金田一の言葉に全員がどよめく。


「馬鹿な!遺書には自供が書かれていたんだぞ!?」

「その遺書は加川が書いたものじゃない…犯人が加川を殺害した後に書いたものだ!」

「…じゃあ…じゃあ!先生は無実だったって事なのね!?」


猪川からしたらこの事件はすでに終わっていた。
しかし、金田一は真犯人を見つけ、そしてトリックも暴いているという。
加川は幼い頃から親しくしていたというのもあり、明日香は金田一に迫る様に問う。
明日香と同じ気持ちなのか、彩羽と隼人以外の巴川家の人間は明日香と同じ目線を金田一に向けていた。
しかし金田一はその問いに口を噤んだが、静かに首を振った。


「残念だが…彼も犯人の1人だ…」

「そんな…!」

「まって…はじめちゃん…犯人の1人ってことは…」

「ああ…この事件の犯人は二人いたんだよ!そして、その加川を自殺と見せかけて殺した犯人はこの中にいる!!」

「…!」


金田一の言葉に誰もが驚きが隠せず、犯人が自分達の中にいると聞くと誰もがそばにいた人達と顔を見合わせる。
彩羽も驚いた表情を浮かべ金田一を見つめており、明智はすでに気づいており、高遠も犯人は分からないまでも動じるほどではないのか二人の表情はピクリとも動かなかった。


「この事件のきっかけは初音さんの死だ」

「お母さんの死が…事件のきっかけ?」

「そう…初音さんを殺害したのは加川だが、トリックを思いついたのはもう一人の犯人…真の『不死蝶』なんだよ!」


金田一曰く、この連続殺人事件は必然だっただろうが、切っ掛けは初音の死だと言った。


「なぜ…母を殺したのが先生だと分かったの?」


彩羽の問いに金田一は彩羽ではなく猪川を見る。


「猪川警部…アレは持ってきてくれた?」

「……ああ」


猪川は金田一の言葉に頷き、部下から『アレ』を受け取り、彩羽達に見せる。


「それは…お母さんの簪だわ…」


それはなんの変哲のない簪だった。
だがその簪はよく刑事ものドラマで見るような証拠品を入れる袋に入れられていた。
さらにはその簪は差し込み部分の一部を除き血だらけだった。
彩羽はその簪を見てすぐに母の物だと気づく。
自分で購入したものではなく貰い物だと自慢していたのを彩羽は覚えており、金田一が見せる簪を見て彩羽は顔を顰めた。


「でも…なんで血まみれなの…」


着いた血が乾いて黒くなっている簪を彩羽は青い顔で見れば金田一は猪川から受け取った簪を袋から取り出し、グッと拳を握り簪を握りしめた。


「こうすると…」

「…!」


彩羽は…いや、彩羽達は金田一の握る簪を見て驚愕した。
金田一が握るその簪はピッタリではないが、丁度血が付いていない部分とほぼ一致していたのだ。


「これは加川の部屋に落ちていた物だ…俺が見つけて猪川警部に調べてもらったところ…この血は被害者初音さんの物と一致し、簪には加川の指紋が残されていた」

「……じゃあ…お母さんは…」

「そう…初音さんはこの簪で刺されて殺害された事になる」

「………」


金田一の言葉に彩羽は黙り込んだ。
黙り込むほかになかった。
加川が初音を殺したのは確かな証拠が目の前にあった。
血は初音の物であり、簪には持ち主の初音の指紋の他にも加川の指紋しかなく、更にはその指紋は初音の指紋の上から上書きするように着いていた。
金田一は猪川が来る前に勝手に現場検証をしていた。
猪川も丁度屋敷にいたのですぐに駆けつけすぐに追い出されたが、その間にこの簪を見つけたのだ。
勿論指紋が付かないようハンカチで回収し、帰り際に猪川に密かに会いこの証拠を見せた。
当然勝手に現場に入り込んだだけではなく探偵のように首を突っ込む高校生に猪川は怒りを覚えたが、結局金田一の真剣な目に負けたのだ。


「待って!加川先生が犯人だっていうのは分かったわ…でも加川先生はアリバイがあったはずよ!?」


初音が殺害された時、金田一が朝7時〜8時までのアリバイを聞いた時、6時半頃から明日香と千里達と一緒にいたのは彼女達二人が証明している。


「俺が言った朝の7時〜8時の時間帯は誰もが起き出して人目に付きやすくなってる…どう考えたって人目につく朝方より犯人が初音さんを殺害した直後…つまり――真夜中に死体を運ぶ方が遥かに都合がよく安心なはずだ!なのにどうして犯人は朝になるのを待ってから死体を移動させたりしたんでしょう?」

「言われて見りゃ確かにそうだよな…」

「どうして犯人はそんなこと…」


金田一も最初の頃は朝方に運んだと思っていた。
しかし一つ一つ謎を解き明かし、やっとその謎が真実へと導かれた。


「その答えはただひとつ…――俺達が『犯人は朝のあの時間に死体を運んだ』と考える事…それ自体が――真犯人の巧妙なアリバイ工作のための『必要条件』だったのさ!!」


そして、金田一はそれに引っかかった。
さぞ犯人は心の中では自分を嘲笑っていただろうと金田一は思う。


「そして…この『不死蝶』の異常なまでの憎悪の矛先は…巴川家の人間に向けられている!」

「わ、私達に…!?」

「ああ…『不死蝶』はこの中にいる!!」

「…!」


金田一の言葉に一番の衝撃が彩羽に走る。
当然自分はやっていない。
金田一や美雪やいつきも当然白だろう。
明智と英二だって動機がない。
隼人といつきは幼いため人を殺すにしても遺体を運ぶのは不可能だ。
彩羽は自然と千里と明日香へ目をやった。
2人も彩羽へ目をやる。
目と目が合うと三人は気まずげに逸らすが、目が合ったということは三人は同じことを思っていたのだろう。


「『アリバイ工作』だと…?――フッ!面白い!この中にいる『真犯人』とやらがどんな『工作』をしたのかぜひ詳しく話してもらいたいね!金田一君!」


まだ高校生探偵と周りに噂されている金田一の実力を猪川は信じていない。
金田一は強気の態度の猪川にゆっくりと頷いた。


「いいでしょう…まず初音さんの死体が発見された朝――7時頃竹蔵さん達が蝶塚のあたりを見回った時に死体がない事から犯人はこの7時から死体が発見された8時までの間に死体を蝶塚に運んだと俺達は考えた…そして…、…佐藤さんを除く屋敷内のメンバー全員にこの時間の完璧なアリバイがあったんだ!」

「ああ!だからそのアリバイを保ちつつ死体を運ぶ『トリック』は何だと聞いてるんだ!」

「――そう考えてるうちは俺達は犯人の掌の上さ!」

「なに!?」


佐藤ではなく高遠と呼びそうになったのを寸前で正し、犯人を暴くよりもヒヤッとさせる。
チラッと高遠を見れば目を細め微笑んでるだけで責めてはいないが、ボロを出しそうになる金田一を面白おかしく見ていた。
いい性格をしている男の反応に表には出さず顔をしかめつつ推理を続ける。


「『発想の逆転』だよ!」

「発想の逆転?」

「そう…そもそも犯人はあの朝死体を運んでなんかいなかった!『犯人が初音さんの死体を運んだのは朝7時以降だ』――と思わせる事自体が犯人が俺達に仕掛けた巧妙な『罠』だったんだ!!」

「な…何だって!?」


金田一の言葉に周囲が騒めく。
金田一の腕前に疑念を持っていた猪川も金田一の推理に目を丸くさせる。


「それじゃあ…犯人は――…」

「ああ!最初からあの『蝶塚』の上に置いてあったんだよ!」

「なっ…何寝ぼけた事言ってるんだ!!君は彼があの死体を見落としたとでも言うのか!?あれだけ派手に着飾った死体を!!」


誰もが竹蔵達が見回った時あの蝶塚には死体はなかったと思っていた。
金田一さえそう思っていたが、それはトリックを使用し竹蔵達の目を欺いたからだった。
それを聞き竹蔵は信じられないと顔色を悪くし呆気に取られていた。


「当然竹蔵さんが『蝶塚』にあんな状態で磔にされた初音さんを見逃すなんて考えにくい…だが犯人は自分のアリバイ確保のためにある『魔法』を使ったんだ!」

「魔法…?」

「そう!真犯人は見回りの竹蔵さんに初音さんの死体を発見されないために奇想天外な『魔法』を使って一時的に死体を消していたんだよ!」

「『魔法』で死体を消した!?そんな馬鹿な…!」


『魔法』と金田一は言うが、現実的に考えて『魔法』なんてゲームやアニメ、映画以外に存在するのはありえない。
海外は黒魔術を信じている国はあるが、この日本では鼻で笑われるレベルだろう。


「これからその『魔法』をみなさんにお見せますよ!『不死蝶はんにん』が蝶塚を舞台に演じた『死体隠し』のからくりをね!」

「『死体を一時的に隠す』だと?馬鹿馬鹿しい!どう考えても不可能だ!」

「それが出来るんだよ…この蝶屋敷に相応しい大胆な『魔法』を使ってね!――これがその『魔法』の"タネ"さ!」


死体を隠す魔法、と聞いても全く信じきれない猪川の言葉に金田一はあるものを差し出して見せる。
差し出したのはハンカチだった。
その上には一枚の枯れ葉が乗せられていた。


「その枯れ葉が…?こんなもんでどうやって―――」


一枚の枯れ葉を見せられ、それが『魔法』と言われ、猪川は怪訝とさせた。
しかし言い切る前に、金田一の手に置かれていた枯れ葉が…―――飛んだのだ。


「飛んだ!?」

「風もないのにどうして…!?」


風はあっても穏やかな風で、到底一枚とはいえ枯れ葉が飛ぶような強さではない。
だが、実際猪川や彩羽達の目の前で、金田一が手に乗せていた枯れ葉は飛んでみせた。
それを見て高遠が思い出したように呟く。


「なるほど…コノハチョウですか…」


高遠は彩羽の世話係になるため蝶の勉強をしていた。
その中に、今の『魔法』の条件に会う蝶を思い出した。
高遠の言葉に金田一は頷き、木に止まった枯れ葉にちょんと触れた。
金田一が枯れ葉に触れるとそれに反応するように枯れ葉は静かに二つに開かれ…―――美しい青い翅にオレンジの模様が入った蝶の姿を現した。


「そう!カリマイナチウス…その和名はコノハチョウ!この蝶は翅を閉じると枯れ葉そっくりになる…『擬態』という能力を持つ蝶なんだ!」

「擬態だと…!?じゃあ…まさか…!」


ここまで言われ気づかない者はいない。
少なくとも巴川家や屋敷にいた人間は気づいただろう。


「そろそろ―――魔法が解ける時間だ」


そう金田一は腕時計を見た。
その瞬間、金田一の後ろを一頭の蝶が…コノハチョウが飛んだ。


「!?」

「蝶塚の枯れ葉の山が…!!」


それを皮切りに、一頭、また一頭と蝶塚に積もっていた枯れ葉からコノハチョウが次々と飛び上がり、彩羽達の目の前に『あるもの』が飛び込んできた。


「これが『不死蝶』が使った『蝶の魔法』…!『死体隠し』トリックの正体さ!!」


そうして蝶に隠されていたのは、一枚の着物だった。
まるで初音の死体が見つかったように袖が広がれていた。


「犯人はこうして枯れ葉そっくりのコノハチョウで死体を覆い隠す事でこの蝶塚に降り積もっている木の葉に紛らせ初音さんの死体を一時的に見えなくしていたんだ」

「だ…だが…これだけの蝶がどうして揃って大人しく…?」

「…麻酔ですね」

「麻酔!?」


子供ならまだしも、初音は大人の女性だ。
男性よりは背は低いが、大人故に蝶の量もそれなりに必要となる。
だが先ほど見せてもらったトリック同様、なぜ蝶が大人しくしているのか分からなかった。
その疑問を高遠が答えた。
全員の目線が高遠に向けられ、高遠は続けた。


「蝶の撮影を行う際に麻酔を掛ける事があります」

「そう…俺はたまたま佐藤さんが撮影のため麻酔をかけられた蝶を見たことがある…その蝶は時間通りに一斉に目を覚ましたんだ」


それは佐藤が高遠だと見抜き本人に認めさせたものだろう。
あの後高遠の言う通り蝶が時間通りに目を覚ましたのを覚えていたからこのトリックを暴くことが出来た。


「恐らくあの夜…犯人は加川が殺害した初音さんをすぐさま『蝶塚』に運び着物を着替えさせてから麻酔をかけたコノハチョウで死体を覆った…朝7時半頃目覚めるよう量を調節して麻酔をかけた蝶をね!」


7時半に目覚めるようにしたのは、犯人が7時に竹蔵達が見周りに来るのを知っていたからだ。
その思惑通り竹蔵達は何も気づかず通り過ぎ、その30分後に蝶の麻酔が切れて先ほどのように一斉に飛び上り隠していた初音の死体が出現したのだ。
そして、その間に犯人である加川は死体に近づきもせず食堂で千里達と同じ行動を取れば勝手に千里達がアリバイを証明してくれる――という計画だった。


「これが竹蔵さんの毎朝7時に屋敷内を見回る習慣を利用した極めて巧妙なアリバイトリックの種明かしだ!」

「なるほど…そう考えると犯人がなぜ初音さんの着物を地味な茶色から派手な色のモノへ着替えさせたのも説明できますね…」

「茶色の着物だと…発見が遅れるから…お母さんをわざわざ着替えさせた…」


金田一の推理に明智が納得した声を零し、彩羽も気づいた。
自分が覚えているあの夜の着物は茶色で目立たない。
だが、着替えさせられたあの着物は蝶をイメージしているため派手で誰かが気づくものだった。
彩羽の呟きに金田一は頷き、自分の考えが間違いではないと彩羽は顔を青ざめた。


「で、でも…はじめちゃん……この屋敷には人を殺すのには問題点があるわ…」

「ああ…この蝶屋敷"ならでは"の問題点を犯人はクリアしなければならなかった」

「はじめちゃん…彩羽ちゃん…その問題点って何なの?」


計画的にしか思えない母の殺害に彩羽は恐怖した。
震わせる体を隠すように彩羽は抱き着いている弟を強く抱きしめる。
彩羽と金田一の言葉に美雪は首をかしげ、その問いに金田一は小さい飼育ケースを取り出して美雪達に見せる。


「それはこの世界中でここにしかない幻の蝶―――この黒死蝶の存在だ!」


そのケースには二頭の黒死蝶が入れられていた。
彩羽と金田一の言う問題点が黒死蝶と聞き美雪達は怪訝とさせたが、蝶に詳しい山野、六波羅、千里、明日香はハッとさせその問題点に気付き、明智と高遠も気づく。


「思い出してほしい…蓮さんの死体が発見された時の状況を…」


そういうと流石に美雪達も気づき、駆け付けた猪川達も気付く。
蓮の死体に気付いたのはこの黒死蝶の存在で気づいた。
黒死蝶は夜光蝶と同一だった。
そのため光る蝶に群がられ蓮は金田一達に発見された。
そして捜査をしているときも蓮の死体には夜光蝶が群がっていたのだ。


「夜光蝶と黒死蝶――このイメージが全く違う二つの蝶が実は同じ蝶だって事を俺はその時まだ知らなかった…そしてこの蝶が"死体の臭いを嗅ぎつけて群がる習性"を持っていることもね!」

「死体に群がる習性だと!?」


金田一は偶然にヤモリの死体に群がる黒死蝶を見てその習性を知った。
確認のために山野に問えば、頷きが返ってくる。


「蝶というのは実はにおいに非常に敏感な生き物でして…人間が気づきもしないような極僅かなにおいでも反応します…」


つまり黒死蝶、そして夜光蝶合は動物などの死んでそれほど立たない死体でもすぐに嗅ぎつけ飛んでくるのだという。
そのため死を招く蝶として恐れられ、竹蔵が語っていた『黒死蝶伝説』が生まれた。
『黒死蝶伝説』は、黒死蝶の死体に群がる習性と、疫病で死んだ死体に触れることで病原菌の媒介となった事から生まれたものだと考えられていると山野は語った。


「そう…この蝶はこの奇妙な習性ゆえ『死の蝶』として恐れられた…そしてもしこの『死臭』に敏感な蝶がコノハチョウに隠された初音さんの死体に無数に群がってたとしたら…?」

「それじゃいくら何でも死体は竹蔵さんに見つかっちまうハズだ!ところが死体には黒死蝶は一匹もたかってなかった…一体なんで…!?」

「その答えも『臭い』にあるのさ!」


黒死蝶は珍しい習性をもつ。
しかし外で死体を置いておくとその習性のせいで黒死蝶で見つかってしまう。
そうなると計画は狂い、アリバイも無駄になってしまう。
六波羅の疑問の答えも『臭い』だと金田一はハッキリと答えた。
そして金田一は屋敷を囲む塀を見上げる。


「この屋敷の兵には200年前に一度絶滅したこの『幻の蝶』を逃さないために塀の上に小さな穴の開いたパイプを巡らしそこから"『黒死蝶』が嫌いな臭い"を少しずつ出している…だから犯人は黒死蝶が嫌いなその臭いを初音さんの身につけることで死体に蝶が群がらないよう細工したんだ!!」


その方法は簡単である。
5メートルもある梯子を使い壁をよじ登り、犯人は初音の着物にその臭いをたっぷりとつけたのだろう。
山野が言っていた通り蝶はにおいに敏感で、人間が感じることのないにおいでも感知することができる。


「この人間に感じられない微かな『臭い』の効き目は絶大だ…いったん体についたら風呂に入ろうが何をしようが黒死蝶は一週間以上近づかないと竹蔵さんは教えてくれた」


彩羽が部屋に籠っていた間も金田一は友人のために動き、そして竹蔵から臭いの事詳しく教えてもらった。


「つまり初音さん殺害からまだ一週間も経っていない『犯人』の身体には塀をよじ登った時についた黒死蝶が嫌うその臭いがまだ残ってるはずなんだ!!」


金田一は黒死蝶の入ってるケースを目線の高さまで持ち上げて彩羽達に差し出すように向ける。
一人一人黒死蝶を向ける金田一に、向けられた人物はビクリと肩を揺らす。
しかし山野、六波羅、千里、明日香、高遠、明智…と続けて向けても黒死蝶は何の反応もなかった。
しかし…


「初音さん…蓮さん…そして加川を殺害した人物…それはあんただよ!!―――巴川隼人!!」


彩羽…そして隼人に黒死蝶を向けるとケースの中に入っていた蝶は突然暴れる様に翅をばたつかせてみせた。

34 / 37
| back |
しおりを挟む