夕方となり、金田一は旧校舎にいた。
授業や休み時間の時もずっと考え込んでいていつもより勉強に身が入っていなかった。
授業を終えると帰るのではなく、旧校舎…それもミステリー研究会の部室にいた。
夕焼けに染まる部室で机に座る金田一の背に美雪は恐る恐る声をかける。
「はじめちゃん?何を考えてるの?」
「……ないんだ」
「え?」
「見つからないんだ…会報が」
「「会報?」」
探しに来た彩羽と美雪は金田一に声をかけるか迷っていた。
桜樹の死は流石に金田一も堪えているようで落ち込んでいるようにも見えた。
いつにもまして真剣な表情の金田一の言葉に彩羽と美雪はお互い顔を見合わせ首を傾げる。
会報、というのはミステリー研究会に誘われた帰りに桜樹が見せてくれた活動記録の冊子と、フロッピーだった。
それを持って桜樹は謎の解明をすると行き込み、そして…それが桜樹と話した最後の会話であった。
その会報とフロッピーが部室にはなかったのだという。
「あの時先輩は亡くなる間際までワープロを打っていたはずだ…最後になにかフロッピーに書き残した可能性だってある…なのに消えていた…二つとも…」
考え事とは消えた二つの物。
そして事件の推理。
それを金田一はずっと考えていたのだ。
「はじめちゃんは真壁さんの推理信じてないのね」
彩羽も美雪も正直に言えば、真壁の推理を信じてはいない。
美雪は今まで誰よりも一番金田一の推理を見てきた。
そして彩羽は金田一が巴川家の騒動を収めてくれたと感謝さえしていた。
だから二人は誰よりも金田一を信頼していた。
「あんな大掛かりな犯行をやってのけた犯人がワイヤーなんて安っぽいトリックを使うなんて思えないんだ…あんな大きな傷を残すなんて…多分犯人はわざとトリックを見つけてほしかったんだよ…なぜそこまで七不思議を演出したんだ?なぜ脅迫状まで出して旧校舎の取り壊しを止めさせようとするんだ?美雪、彩羽…犯人の狙いは底知れないほど深い所にあるんだよ…」
ぐるぐると考えが纏まらず、まさに迷宮に入り込んでいるようだった。
考えても答えは見つからない。
だけど、ちょっとした物が終わりの見えない迷宮に出口が生まれるのだから不思議である。
考えても仕方ないと、日も沈みかけているのもあり今日は帰る事にした。
その帰り、金田一達はある事実を知る。
「え!?本当ですか!?」
「ああ、10年前、やはり七不思議を調べていて行方不明になった女子生徒がいるんだ」
帰りにパトカーに乗っていた剣持に呼び止められ、10年前に同じく七不思議を調べて行方不明となった女子生徒がいることが判明したと教えてくれた。
「青山ちひろ…やはりミステリー研究会の部員だった」
「青山ちひろ…」
「知りたがりの彼女が放課後の魔術師の餌食になった…当時そう噂になったそうだ」
「なんだか似てる…今度の事件と…」
美雪は桜樹の死と似ていると不安げに呟き、金田一は嫌な予感が拭えなかった。
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