(16 / 17) 学園七不思議殺人事件 (16)

的場は死んだ。
立花は的場を殺した殺人犯としてその場で逮捕され、連行される事になった。
すでに夜も更けたという事で金田一達は剣持が呼んだパトカーで送ってもらうことになった。
救急車もまだ到着していないため、的場の死体はミステリー研究会の部室に布をかぶせて放置され、金田一達はパトカーが来るまで別の教室に待機していた。


「………」


金田一はずっと黙り込んでいた。
立花は抵抗や逃亡の恐れはないとは分かっているが一応殺人犯であり、自殺する恐れがあるからと金田一達とは別の教室で剣持と一緒に待機している。
この教室には的場、立花、剣持以外の全員がいるのだが…その空気は酷く重かった。
しかしあんな事が起こったばかりなのだから当たり前である。
彩羽も暗い表情を浮かべており、的場が差されたのを見てからずっと脳裏には弟の死に際が離れなかった。


「………」


チラリと隣にいる金田一を見る。
みんな落ち込んでいるが、そのなかでも一番金田一が落ち込んでいるようにも見えた。
…否、見えたのではなく、落ち込んでいるのだ。
もっと配慮していれば立花が殺人犯にならずにすんだと。
そして、的場も死ぬこともなかった、というのも。


「はじめちゃん…ミステリーツアー、覚える?」

「え…?あ、ああ…ドイツの城のやつだろ?」


慰めたいと思ったが、慰めの言葉が見つからなかった。
こういう時明智にばかり甘えていた自分が憎らしく思う。
だから何も考えず、思っていた事を伝えることにした。
ただ金田一は突然事件とは無関係の事を話し出す彩羽に困惑した表情を浮かべたが、頷いて返す。


「犯人…多岐川さんに言った言葉も覚えてる?」

「ああ…」

「あれのおかげで私殺人犯にならなずにすんだんだよ」

「え…?」


彩羽の言葉に、思わず金田一は彩羽を見た。
先ほどから脈略のない内容に困っていると突然の告白に驚いた。
それも手に取る様に分かり、彩羽は笑みを浮かべる。


「多岐川さんを説得したあの言葉…あの言葉で私気づいたんだ…お母さんとあいつ(義父)を殺したって私に残るものは何もないんだって…残されるのは隼人の惨めな人生だけだって気付いて私お母さんとあいつへの復讐をやめたの…だからね、はじめちゃん…私はじめちゃんに感謝してるんだ」


彩羽は自分の両手の手の平を見た。
この手が血で穢れていないのは金田一のおかげなのだ。
こうして幼馴染と同じ高校に通えるのも金田一のおかげ。
そして従兄である明智と共に暮らせるのだって金田一のおかげだ。
彩羽は金田一に感謝してもしきれない恩があった。


「立花さんの事は残念な結果になってしまったけど…でも、私のようにはじめちゃんに救われた人もいるって覚えていてほしいの」

「彩羽…」


彩羽は金田一への感謝していた。
それを今伝えたのは、謎を暴くのは何も悪い事ばかりではないと教えたかったのだ。
金田一のあの言葉は多岐川には届かなかった。
否、届いたがすでに遅かった。
だけど彩羽にもその言葉は届き、そして思い止まった。
それを聞いて金田一は彩羽の言葉に胸が締め付けられた。
彩羽が自分にそんな事を思っているとは思っていなかった金田一は視界がゆらぐ。
目頭が熱くなり、金田一は自分は泣きそうになっているのに気づく。
だけど彩羽に見られたくなくて金田一は俯いた。
そんな金田一に気付きつつも彩羽はなにも言わず黙って彼に寄り添った。

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