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あの後簡単な自己紹介を終えた後、エマは重要な情報をマリエールから聞いた。
どうやらこの世界での死というのは、イコール終わりではないらしいのだ。
エマ達が町はずれでアカツキと対面している時に、ある一人の男がモンスターとの戦いで死亡し蘇ったという。
死んだはずの彼はアキバの大神殿で蘇り、今もピンピンしているとマリエールから聞いた。
大神殿、というのはエルダー・テイルがゲームだった頃、なんらかの原因で死ぬ…つまりHPが0になると自動的に蘇る場所の事である。
それを聞きエマはぞっとさせる。
死というものは現実世界では終わりを意味する。
死んだらもうその体は何の意味も持たない。
ただ腐っていくだけ。
だが、この世界での死は終わりではなくゲーム同様の意味を持っているらしい。
今の状況からその話を聞いたとき、エマも直継もアカツキも、何も言えなかった。
そして、簡単な自己紹介も新たな情報の衝撃もそこそこにアカツキはあてがわれた部屋へと向かった。
お邪魔しているのはアカツキ達なのだが、部屋が余っているからという理由で三人個室を貸してもらっていた。
解散する前にエマから『明日はモンスターがいるエリアに行こうと思う』と告げられ、三人は明日に備えすぐに眠りについた。
ベットに潜り込んでいつの間にか眠っていたアカツキは久々にゆっくり眠れたような気がした。
男の時だった時も宿屋のベットで眠ってはいたが、あの時は体が異変をきたしていたため今のように心安らぐときは全く皆無と言ってもいいほどだった。
エマに外観再決定ポーションを貰い本来の自分と同じ背丈や性別に変えて初めて周りを冷静に見回すこともできるようになった。
エマについていき三日月同盟というギルドに部屋を借り、朝を迎えるとアカツキはベットから起き上がり着替える。
ヘンリエッタの趣味なのだろう…アカツキに用意されていたパジャマは可愛いフード付きのウサギパジャマだった。
それを着ないという選択肢はあったが、やはりいつもの服のまま寝るのは寝にくいし体も休まらないと判断し、そして部屋から出なければいいという考えもありパジャマを着て寝ていたのだ。
「アカツキさん、おはよう」
「お、ちみっこ、起きたか!おはようさん!」
「…ちみっこ言うな……おはよう、エマの主君。」
着替えて部屋を出てアカツキはエマと直継を探す。
正直一匹狼とは言え見知らぬギルドホールに一人でいるのは心もとないというか気まずいというか…とにかく今、アカツキはエマと直継と合流したかった。
気配を探しているとエマと直継がいた。
そこは昨日の夜案内された部屋で、どうやらギルマスの部屋だった。
ギルマスの部屋というのもありそこには当然マリエールがおり、その隣にはヘンリエッタもいた。
もう一人、昨日は会っていない狼牙族の男が一人立っていた。
アカツキに気づいたエマと直継は起きたアカツキに笑顔で出迎えてくれて、アカツキは『ちみっこ』とまだそう呼ぶ直継を睨みながら、照れたように視線をそらしエマに、そしてついでに直継に挨拶を返す。
照れて頬を赤らませるアカツキにエマも直継もふと微笑んだ。
「アカツキちゃんっ!おはようございますわ!!」
「お、おはよう…ござい、ます…わ…」
「昨日のパジャマ!!着ていただけたでしょうか!!!」
「…………」
「昨日私アカツキちゃんのウサギさんパジャマを見たくてお伺いしようかと思ったんですけどエマ様と直継様に止められてしまい無念にもこのヘンリエッタ、アカツキちゃんのパジャマ姿を写真に収めることができませんでしのっ!!もう!!本当!!なぜお止めしたのです!?お二人ともっ!!!」
「どうしてって言われてもダメなものはダメだからですけど…」
「散々エマのパジャマ姿写しておいてまだ撮り足りないとか…どんだけなんだ…」
ヘンリエッタはアカツキの姿をとらえた途端、某改造人間のような瞬間移動でアカツキの目の前に立ち鼻息を荒くする。
ふんふんと興奮状態のヘンリエッタにアカツキは無意識に刀を手に取るが、理性がそれを留めていた。
アカツキはヘンリエッタの勢いに押されながらエマと直継の傍に避難し、慌てて避難してくるアカツキを守るようにエマはアカツキの前に出る。
同時にエマの傍にいた直継も同じくアカツキの盾となってやり、さりげなくエマより前に出てエマの盾にもなる。
ヘンリエッタの獲物は何もアカツキだけではないのだ。
自分特製のパジャマ姿のアカツキを撮りたかったとぐっと拳を握り涙を呑むヘンリエッタに責められエマも直継も呆れたような目線を送る。
それも気にせずヘンリエッタは更に拳に力を入れた。
「まーだまだ足りないくらいですわっ!!いいですか!エマ様はエマ様の愛らしさが!アカツキちゃんにはアカツキちゃんの愛らしさがありますの!!可愛いにも部類があるんですのよ!!」
「そうやなぁ…エマは可愛いもんな〜」
「マリ姐…話に入ってこないで…ややこしくなるから…」
「えー」
「そう!!エマ様は一見パッと見見るからに可愛い物には程遠く見えるでしょう!!しかし!それがギャップという形で生かされているのです!!なんたってエマ様の可愛い物を与えたときのあの顔!!あの仕草!!あのギャップ!!たまりませんわッ!!興奮物です!!そもそも――…」
「まだ続く祭り…」
「というか…与えたときって…餌付けじゃないんだから…」
ヘンリエッタの興奮状態はエマは慣れっこだが、慣れているから呆れないというものではない。
慣れてるからこそ『はいはい』と流せるのであり、アカツキはまだ慣れていないから警戒する…ただそれだけである。
ため息をついているとくいっとローブを引っ張られエマは引っ張った方へと振り向く。
そこには直継とエマで壁を作り守っていたアカツキだった。
アカツキは身長差のせいもあってか上目づかいでエマを見上げていた。
どこか真剣な表情にエマも自然と釣られてしまう。
「どうしたの?」
「エマの主君…エマの主君は私が守るから安心してくれ」
「え…え?」
「今はあの者に敵わないが…いつか必ず魔の手からエマの主君を救い出して見せる!」
「あ、え……あ、ありがとう…」
首を傾げて聞けばアカツキからはぐっと握った拳を貰った。
何かを決意したアカツキの表情にエマは思わずお礼を言ってしまう。
アカツキはエマで興奮するヘンリエッタを見て主君の危機を本能的に察したらしい。
エマは真剣な表情を浮かべるアカツキに『アカツキさんも標的の一人なんだけどな…』と思ったが、ここは空気を読んで言わないでおいた。
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