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駄々っ子無双状態のマリエールはエマとヘンリエッタの二人で何とか落ち着かせた。
落ち着いたマリエールはついでに直継の事も説得され納得したのか涙をぬぐいながら『二人ともお腹空いてるやろ?持ってくるからちょっと待っとき!』と言い部屋から出ていき、マリエールだけでは心配だとヘンリエッタもついていく。
そのため残ったのはエマと直継だけとなる。
「…なんつーかさ…」
「うん…」
「嵐のような人だな…」
「うん、まあ…悪い人ではないんだけど…」
「それは分かる。あの人、エマの事すごく大事にしてるんだって…じゃなきゃ俺を敵視しないしな。」
三人座れる長椅子に座る二人はうなだれていた。
と、いうよりかは疲れ切っていた。
マリエールが去った後はものすごく静まり返っており、この静けさがとても癒しとなっていた。
いや、マリエールが煩いとか鬱陶しいとかではない。
確かに慌ただしい人ではあるが、直継はエマが懐いているのが十分に分かり、だからこそ悪い人ではないのだと直感で分かった。
エマは動物に例えるならば『猫』だ。
初対面の人には警戒心が高く、しかし気を許した者には甘々な猫。
綺麗で愛されてちょっぴり不器用な可愛い飼い猫。
だから直継はマリエールやヘンリエッタ、そしてここのギルドの人達が悪い人ではないと思った。
直継の言葉にエマは姉と慕う人を褒められ照れた笑みを浮かべ、そんなエマに直継も笑いエマの頭を少しだけ乱暴に撫でる。
「もう…なに?」
「いんや、なんとなく」
「なにそれ」
エマに対しての感情は仲間以上はない。
だが、マリエール同様直継はエマを妹のように思っていた。
参謀として頼れるエマだがちょっとだけズレていたり天然だったりと放っておけないのだ。
兄として守ってやりたい、と直継は思っている。
妹とのコミュニケーションを取っていると、背後からガシャーンと何かが落ちる派手な音が二人の耳に届く。
その音の大きさに驚き二人は同時に振り返った。
振り返った先には…
「や…やっぱり…やっぱりそうなん!?二人はそんな関係なん!?いやや!いややで!!うち認めへんで!!エマを嫁に貰いたかったらうちを倒してからや!!直継やん!表出ぇや!!エマをかけたデスマッチや!!」
「なんでだよ!ただ頭撫でただけだろ!?」
「――っは…!やっぱりそうなんやな!!やっぱエマが念話に出ぇへんかったのも一週間くらいログインしんかったのも直継やんのせいなんやな!直継やんがエマの可愛さに思わず拉致監禁してあれやこれやしてうへへして純粋無垢なエマを調教して自分好みにしたんやな!!おまわりさーーん!こいつでーーす!!」
「ちがーーう!!断じて違う祭りだコラ!!だから!俺は就活かつ会社に慣れるまでエルダー・テイルにログインしてなかったの!おまわりさーーん!!俺は無実でーーす!!」
マリエールとヘンリエッタがいた。
二人分の食事を持ってきていたマリエールは直継に撫でられるエマの光景を見て衝撃を覚え思わず持っていたトレイを落としてしまう。
エマに関して過保護なスタイルなのか、頭を撫でていただけで妄想が膨らんでいた。
どこか適当な方へ叫んでお巡りさんを呼ぶマリエールに負けじと直継もお巡りさんに無実を叫んでいた。
もうそれに関してはエマもヘンリエッタも好きにして状態なためエマは苦笑いを浮かべ、ヘンリエッタは呆れたようにため息をついた。
「エマ様、申し訳ありません…うちのマリエがとんだご無礼を…」
「いいえ、そんな…マリ姐の呑気さはいつもの事ですし、それでよく助けられていますから…」
「そう言っていただけるとありがたいですわ……―――ところで…」
「はい?」
「噂の件、本当なんでしょうか?」
「…!」
呆れたようにため息をつきながら騒ぎに駆けつけたギルドのメンバーの一人に落ちた食事の代わりに新しいのを持ってこさせるよう指示をする。
エマがいる時は大体こんな感じなのかギルマスが変貌したというのに誰も突っ込まず『あの男の人大変だなぁ』程度で見ていた。
マリエールの暴走を直継の犠牲で引き留めながらヘンリエッタはエマに謝罪したが、エマは慣れているし、マリエールのあの能天気さや明るさには何度も助けられてきたため気にもしていなかったため首を振る。
気にしていないエマにほっと胸を撫で下ろしながらもヘンリエッタ自身も気になった噂の真偽を聞き出そうとした。
エマの名前は伝説の茶会のメンバーというのもあり、結構知られている。
そんなエマが《D.D.D》の副総統に…ギルドを敬遠していたはずなのに入ったという噂が気になって仕方なかったのだ。
マリエールがエマを妹として可愛がっているのと同じく、ヘンリエッタもエマを妹として可愛い。
やはり大手とはいえ戦闘系ギルドに入っているという噂が本当なら心配にもなるだろう。
エマは一瞬息を呑み表情を強張らせたが、それを悟られないよう困ったような笑みへと変える。
「違いますよ…確かに《D.D.D》のギルドにいたときもありましたが、臨時メンバーという形で、です。そこのギルマスに何度も引き留められたのでそういう噂が出来たのでしょう」
「では一週間ログインしてなかったのは…」
「リアルが忙しかったので」
「なるほど…分かりましたわ。マリエにはそう伝えておきましょう。」
エマの言葉を信じたヘンリエッタにエマはチクリと胸が痛む。
『嘘、は言ってないし…』と心の中で汗だくになりながら呟きいつまでも駄々を捏ねるマリエールにそれを説明するためエマから離れた。
ヘンリエッタが背を向け、エマは息をつき肩の力を抜く。
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