「おい、準備出来たんだろうな……」
「うん」
「塩は持ったな?」
「うん、ここに」
「上着と靴下はちゃんと裏返しにしただろうな?」
「うん、でも、何で?」
「お前の頭は帽子か何かか? 少しは頭を使ったらどうだ。勉強しろ」
「してるよ毎日。リュード君に後ろでガミガミ言われながら」
ソラが少しいじけたように言いました。
「口ごたえはいいんだよ。それより何でかと聞いたな。――行けば分かる。」
「へ?」
リュードはさっさと歩き始めました。
ソラたちは今ディウォルナ先生に頼まれて砂漠に向かっています。
***
頼まれたのは砂漠にすむ妖精、ジミーを捕まえて来てほしい。というものでした。
「あたしもいろいろ忙しくってね、というわけでソラちゃんに行ってほしいんだけど」
「ひとりでですか!?」
「ううん、リュード君と一緒に」
「はぁ!?」
ちょうど部屋から出てきたリュードが声をあげました。
「なぜ、俺まで」
「お願いできないかな?」
「……分かりました。仕方ないから俺も行きます。」
「ありがとう! 南の砂漠にいるっていうし……あたしも昔行ったことあるから大丈夫だよ。歩いて三日ぐらいじゃない?」
「三日!!?」
***
「このあたりの道のはずだな。」
「え、何が?」
「ピクシーの出る道だよ。ここらはピクシーの土地だからな、気をつけたほうがいいだろう」
そう言ってリュードが歩き始めました。でもこれといって何も起きません。
「リュードくん。何にも起きないよ?」
「当然だ。上着を裏返しに着ているんだからな」
「?」
「上着を裏返しに着るのはピクシーのいたずらから助かるため。靴下を裏返しにするのは妖精からのいたずらを避けるため」
「そうなんだ……!」
その時でした。やぶの中から、とんがり耳のボロボロの服を着た茶色の小人妖精、ピクシーが、勢いよく出てきました。
「おい! お前らぁ! 俺たちの土地に勝手に入ってきやがって! でていけ!」
「そうだそうだ。」
「でていけでていけ!」
いっせいにピクシーたちが騒ぎ始めました。
「あぁ?」
リュードが睨みつけた瞬間、少しびくっとした後にまた騒ぎはじめました。
「黙れよ、妖精ごときが、俺に何の用だってんだ?」
「妖精って言うな!!」
「人間の分際で!」
「消えろ! 呪われた紅い目の一族め!」
(呪われた紅い目の一族……?)
ソラは疑問に思いました。
「何が呪われた紅い目の一族だ」
そう言ってリュードはピクシーの一匹をつかむと
「お前ごときなら……今ここで消すことだって簡単なんだぞ」
そう言って睨みつけました。そしてピクシーをさっとはなしました。はなされたピクシーは苦しそうにしながら地面に落ちました。
「大丈夫? ごめんね。勝手にあなたたちの土地に入ったりして」
ソラが手にピクシーを乗せて言いました。ピクシーは「大丈夫だ」と小さな声で言うとそのまま仲間を連れてやぶの中へ帰って行きました。
「行くぞ」
そう言ってリュードは歩き始めました。
(何なんだろう?)
そう思いながら、ソラはリュードについて行きました。