見る限り砂漠だった景色がだんだん変ってきました。
「あ! 町が見える! リュード君、もしかして」
「あぁ、やっと着いたな。」
ソラの顔がパァーっと明るくなります。
「ついたーー! 水が飲める〜おいしいご飯が食べられる〜ベッドがある〜♪」
「黙れ。無意味に暑くなる」
リュードが言いましたが、ソラの気持ちは盛り上がるばかりです。
町は活気があり道端にはたくさんの出店がありました。人も行きかっているし、果物や色とりどりの野菜などが並べて売ってあります。ソラとリュードはリンゴを二つ買って食べました。
そして水を買おうとしたときです。
「これは……ちょっと高くない?」
「あぁ、おかしい。砂漠だからといっても、高すぎるな」
買おうかどうかためらったとき
「仕方がないんだよ。お水がなくなっちゃったんだもん」
と小さな女の子の声がしました。身長と声から判断して、七歳くらいでしょうか?
「なくなった……?どういうことだ」
リュードがきくと女の子は
「わかんないの。だから、みんな困ってるんだよ」
「……よくあることなの?」
ソラの質問に
「珍しいことではない。よくあることだ。大体は、井戸が枯れたか、妖精のいたずらか……だな」
(そうなんだ……)
とソラが思っていると
「あなたたち、旅の人? にしては子供ね」
「旅……そんなところだな。今日泊まる宿がまだ決まっていないが」
とリュードが言うと、女の子がにこっと笑って
「それなら、うちに来るといいよ。あたしはスミレ。よろしく」
「あっ、うん。よろしく、スミレちゃん」
***
スミレの家は昔から宿屋をやっていて、お父さんは単身赴任でいないんだとか。
お母さんのお手伝いをしているというスミレにソラは感心してしまいました。
スミレのお母さんはとても優しい人で家の中もすみずみまでピカピカにふきあげてありました。
「いらっしゃい。ゆっくりしていってね」
「あ、はっ、はい!ありがとうございます」
とソラが言った後にリュードが本題に入ります。
「俺たち、ジミーを探しに来たんです」
「あら、そうだったの。それならうちにたくさん、ジミーが入っていそうなランプとつぼがあるわよ」
「ありがとうございます。お気遣いに感謝します」
リュードは礼儀正しく頭を下げました。
***
スミレに案内されて入った部屋にはたくさんのランプやつぼが置いてありました。
「がんばってね」
とスミレは部屋を出て行きました。
「ジミーをお前は知っているか?」
「ジミー……あ、聞いたことある」
ソラが小さいころお母さんに読んでもらった絵本にジミーというランプの精霊が出てきて、どんな願い事でもみっつまでなら叶えてくれる。というお話があったのを思い出しました。
「ランプの精霊さんだよね」
「正確には術によってランプに閉じ込められた妖精のことだがな」
「え……」
「ジミーを捕まえる方法は大きく分けてふたつ。ひとつめは、ジミーをランプかつぼに閉じこめる方法。ふたつめ。これが今から俺たちがやる方法、ランプやつぼに閉じこめられたジミーを探す方法」
「ジミーってランプでもつぼにでも、閉じこめられるの?」
「ふたがあれば基本的にできる。……ま、砂漠にしかジミーがいないのもあってランプが多いな」
「そうなんだ!」
「俺たちが今からやるふたつめの方法について、説明してもいいか?」
「お願いします」
ソラは勢いよく頭を下げました。
「先に言っておく。非常に危険だ」
「え、そうなの?」
「当然だ。ランプから出てきたらまず、暴れだすからな」
「うそ! もっとフレンドリーな優しい性格だと思ってた!」
「アホか。本来は確かに比較的温和な性格ではある。だが……――もしお前なら、何百年も長い間、狭い所に閉じ込められたら、起こるだろう?」
ソラは考えてみました。
確かに、たった一人でいきなり何百年も狭いところに閉じ込められたら……と考えるとぞっとします。
「それと同じだ。いきなり閉じ込められて、ほったらかしにされてるんだからな。無理もない。だから、開けたらすぐに間を取って対抗呪文を唱えなくてはいけない。攻撃をされる前にな」
「そっかぁ」
ソラはなんだか寂しい気持ちになりました。こっそりランプの妖精と友達になれるのではないか、と期待していたからです。
リュードは近くにあったランプを一つ取りました。
「これが怪しいな……。離れろ、今からふたを開けてみる」
「う、うん!」
ソラが離れるとリュードが構えてふたを開けました。
青い煙がもくもくとでてきました
(くるっ!)
リュードが身がまえをしました。
その時
「ヘ〜イ! ベイビーたち♪ 俺様の名を知っているかぁ〜〜? ジミ〜様だぁ〜!!」
場は沈黙に包まれました。
「なにこれぇ〜」
ソラの大声で沈黙は破られました。
リュードはあいた口がふさがりませんでした。