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「おいおい。どうしたって言うのさァ〜。久しぶりに外に出た途端、黙りやがって〜」

 陽気な口調で言う青い体の妖精―――ジミーがいいました。

(なんなんだ……こいつ)

 リュードが思っていると

「そこのお嬢さん」
「え、私?」
「お名前は〜?」
「え、えっと、ソラです」
「ソラ! よろしくなァ♪」
「え……うん、よろしく!」

 いままですこしぎくしゃくしていたソラも明るくなりました。


 ***


「おい」

 とリュードが声をかけると

「何? リュード君」

 とソラ。

「お前……何してんだ?」
「え? いっしょにやる? ばばぬき。楽しいよ!」
「そうだぜェイ〜」

 リュードは大きなため息をひとつついたあと。

「やるか。それより、何でそんなに和んでるんだよ」

 リュードが怒った口調で言うと

「旅には、休息も必要なんだよ!」
「そうだぜ〜」
「くそ妖精、貴様は黙ってろ」

 そこまで言う必要あるのかい〜? とぐちぐちジミーが言っているとちょうどソラがジミーのところからトランプを一枚ひきました。

「あ」

 そう、ソラの引いてしまったトランプとは……

「ばばだぁ〜〜!」

 ソラはがくっ、と肩を落としてしまいました。

「あ〜……ショックだよ……」
「おい……!」

 リュードが何かを感じて声をかけましたが、時すでに遅し。

「このばばが、ダイヤの11だったらよかったのになぁ〜」
「お安い御用だァ!」

 ソラの持っていたばば――ジョーカーのカードがダイヤの11のカードに変わりました。

「ひとつめの願い、叶えさせてもらったぜぇぃ」


 ***


「お前、自分のやったことの重さが分かっているのか?」
「ごめんなさい」
「ごめんなさいじゃすまないことだってあるんだよ」
「本当にごめんなさい」

 この調子で謝り続けてソラが80回目のごめんなさいを言ったころリュードがやっと

「この事態の重さ、よく考えておくんだな」

 と吐き捨てるように言いました。どうやら、お説教は終わりのようです。
 ソラは顔を上げたとき、なにやら様子がおかしいことに気がつきました。

「ねぇ、リュード君。何か外が騒がしくない?」
「……たしかに」

 外に出てみるとスミレや町の人たちが困った顔でざわざわと何か話していました。

「尋常じゃないな」

 リュードも感じ取っているようです。ソラもなんだかおかしいな、と思いました。

「どうしたの? スミレちゃん」
「あ……」

 スミレが口ごもったあと、意を決したかのように

「水が……なくなっちゃったの。ぜんぶ。なくって、みんなどうしようって……」
「水が……?」

 ソラは驚きが隠せませんでした。

「どうしよう」

 スミレも事態を飲み込み、「困った」の度を超えてしまった事態に恐れを隠せないでいるように見えました。
 ソラは心を決めました。

(無理なことかもしれない。でも……)

「私、お水探してみるよ!」
「正気か?」

 あきれた声が返ってきました。

「うん!」
「あのなぁ……もう言うのも面倒だ」
「難しいよ、無理だよっ!」

 スミレも心配そうにしています。

「大丈夫!」

 ソラは一歩も譲ろうとしません。

「はぁーーっ」

 リュードが大きくため息をつきました。




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