「で、どうすればいいのかな?」
「お前はそんなことも知らずに言ったのかよ」
「すみません」
「悪いな。俺もどうすればいいのか分からん」
「えぇー!!」
ソラはがっくりと肩を落としてしまいました。
リュードならきっといい方法を思いつくと思ったからです。
「あっ! そうだ。ジミーに頼んだらいいんだよ!」
「無意味に使うな」
「無意味じゃないよ!」
「お前、さっきのこと全然反省していないだろ。自分が言った事なんだ、自分で責任をもってやり遂げろ。ほかの方法を考えるんだな」
「……はい」
結局どうしたらいいのかソラには分かりませんでした。
なので、とぼとぼと歩いたいたときでした。
ササ……サ―
(砂……?)
「おい! ちょっと待て!」
「……へ?」
ザザザザ――
ソラの足の下が少しずつ穴に吸い込まれるように砂が落ちていきます。そのうち穴はだんだん広くなっていき
ザザザザザザーーーー!!
「わぁぁあ!」
ソラは足から吸い込まれてしまいます。
「出れない!」
「魔法を使え! 早くしろ!」
「どの魔法をどうやって!?」
ソラはパニック状態です。そのうちに穴はだんだん広がっていきます。リュードも足から吸い込まれていきます。
「あぁぁぁぁああぁぁああ……」
***
気がついたとき、まわりは砂がなだれ落ちている洞窟のようなところでした。
暗い中を上からさす光が優しく照らしているそんなところです。
「気がついたか」
「あ、リュード君だ」
服は砂まみれで髪もがさがさとしていました。
運動場の小さな砂嵐に巻き込まれてしまった後のようです。
「ここは?」
「蟻地獄(ありじごく)にのまれたのを憶えてるだろ?」
「うん。で……」
「砂漠の下に町が埋まっていたということだな。さすがに……お手上げだな」
「お手上げ?」
そうだよ、と低い声で機嫌悪そうに答えたあと
「どうやって、外に出る気だ?」
「……魔法で瞬間移動!」
「あほめ。感じないのか? ここはまわりに結界がはってある。そう簡単には出られないな」
ソラの表情がどんどん曇っていきます。
「とりあえず、歩いてみるか」
ソラとリュードはてくてくと歩いて行きました。
するとリュードの言っていたように町がありました。
もとは繁栄した素晴らしい都市だったのでしょう。丸い屋根、鮮やかな彩色、そして何よりソラの目についたのは正面に堂々と構える昔のお城のような建物でした。そして、街の至る所から水はあふれだし、もう人は住んでいませんが、潤った都市です。
「まさに、水の都だな」
ソラとリュードは都市の中心から城の中へと行きました。
城の中も古かったですが、学校と同じような感じで大きな石の冷たさを肌で感じます。中はひんやりとしていてまだ人が住んでいてもおかしくはなさそうです。
そのある一部屋の前でリュードが足を止めました。
「ここ、触ってみろ」
「へ?」
ソラが手を伸ばすと電流が走ったようにビリビリっとしました。
「リュード君、ここビリビリするよ」
「強い結界がはってある。少し離れてろ」
リュードはぶつぶつとなにか呪文を行った後、取っ手をひねるように右手を動かしました。
「開いた」
中に入ってみると、中央に蒼く光るしずくの形をしたきれいな石が置いてありました。
「リュード君、この不思議な石は何?」
「これは――水の宝玉だな」
「水の宝玉?」
「魔界創生時代――大地を潤し、雨を降らすために、強い水の元素を持った魔法使いリー・ラーグが自分の水の元素の魔力を強い願いを込めて、玉にした。そしてそれを魔界の各地に置いた。そのひとつだな。」
「雨を降らすために、つくったんだよね。でも水は……」
「水の宝玉に強力な術がかけられてる」
リュードが石に向かって人差し指をつきだしました。すると、そこから黒い大きな魔法陣が浮かび上がりました。
黒い魔法陣を見て、ソラはぞっと背筋が凍るような感覚を覚えました。
暗くて深い闇に飲み込まれていくような、恐ろしさを感じたのです。
魔法陣を見た瞬間、リュードの目つきが深刻なものに変わりました。
「見えるな? この魔法陣」
「うん」
ソラの返事を確認したあとリュードは再び魔法陣に向かい合いました。
「この魔法陣……。そういうことだったのか、妖精のせいにしてはおかしいと思ったんだ」
「どうしたの?」
リュードの様子がいつもとは明らかに違います。ソラもだんだん心配になってきました。
「この魔法陣……――悪魔のものだ」
「あ……くま?」
「この魔法陣なら、解き方はわかる。離れろ」
「うん。大丈夫?」
「あぁ」
リュードが大きく息を吸いました。
「風の扉、月夜の闇に映るもの 導かれぬ 黒きもの 汝の術を 解いて見せよう」
リュードの体を黒い光が包み込みました。そのあとに赤い光が飛び出して、打ち消し合います。赤い光が一瞬強くなって、そこからまたやわらかな光に戻りました。
「……解けた」
リュードとソラが安心したのも束の間。
ゴゴゴゴゴゴ――――――!!
「あれ、何の音かな?」