「今頃どうしてるのかなー?」
ソラが何げなく言うとリュードが
「何のことだ?」
と聞いてきました。ソラは
「ほら、あのこだよ」
と言いました。
「グロゥレイトのことか?」
とリュードがわかった、という風に言ったので
「そう! グロゥのこと!!」
とソラは明るく答えました。
グロゥレイトというのはこの間の実習のときにソラが初めて会った小さな妖精グロゥレイトのことです。
ソラは少しずつその時の冒険のことを思い出しました。
***
「えー! 何でまた居残りの後に、さらに実習って、私たちにだけあるんですか?」
「仕方ないよ。だってソラちゃんこの間のテスト……妖精魔法何点だったか言える?」
そのディウォルナ先生の言葉にソラは口を閉じてしまいました。
「俺が代わりに言ってやろうか?」
「言わなくっていいよ!!」
とリュードの言葉をソラが遮り、少し暗い顔になりました。
「実習、何をするんですか?」
リュードの言葉にディウォルナ先生が
「ああ、花の精(フロラリエール)に会ってもらおうと思って」
と言いました。
「フロラリエール!?」
ソラの暗かった顔はどこへ行ったのやら、あっという間にいつもの明るい笑顔に戻りました。フロラリエールというのが妖精のことだというのはソラでもわかりました。
「会って、何をしたらいいんですか?」
リュードが本題に戻しました。
「あー、行ったら分かるんだけどね」
「え? 先生、どういうことですか?」
ソラがきくとディウォルナ先生が返事に困った後
「大丈夫。私も前にルーと行ったことがあるし、私の知り合いがいるからその子に聞くといいよ」
「え!? ルーさんも行ったことがあるんですか?」
ルーさんというのはリュードのとても優しいお兄さんで、ソラを魔界に連れてき
てくれた人です。
「うん。フレアンブレを探して。ごめん! 私もう行くね!!会議だ」
そう言うと先生はどこかへ走って行きました。
少ない情報を頼りに、ソラとリュードは妖精たちの住む森に出かけて行きました。
***
「人がいるわよ!!」
妖精たちが騒いでいます。
妖精たちはすごく小さくてソラのてのひらほどの大きさでした。
しばらくして、妖精の群れをまっすぐに割るように道ができました。
その道から歩いてくるのはひときわ目立つ美しい金髪に透き通った蒼い目を持つ妖精でした。髪の毛には小さな花が編みこまれていてお人形さんのようにかわいらしいのです。
ソラたちの前に出てきて一礼すると、透き通った高い声で自己紹介を始めました。
「私の名前はフレアンブレと申します。仲間達はフレアとも呼びます」
ソラは興奮する気持ちを抑えながら
「も、もしかして、ディウォルナ先生のこと知ってますか?」
と聞きました。するとフレアンブレは少し首をかしげてから
「もしかして、アオイ=アリウス・ディウォルナのことでしょうか?」
と言いました。アオイ=アリウス・ディウォルナというのはディウォルナ先生のフルネームです。
「はい! そうです」
「じゃあ、貴方方が今回の……! アオイは元気かしら?」
「はい。先生はとっても元気です」
フレアンブレはとてもうれしそうに笑いました。リュードが
「今回の……っていうのはどういうことだ?」
と聞きました。
するとフレアンブレの後ろから、黒い髪を後ろでひとつで結んで、あまりきれいとは言いがたいはねをもったすこしきつい目つきの女の子の妖精が出てきました。
「フレアンブレ様に対してその言葉使いは何なの!? 人の分際で!」
「グロゥレイト、言葉がすぎます」
「ですが!」
グロゥレイトと呼ばれた妖精は高い声をさらに高くしましたが、フレアンブレに止められました。
「すみません、紹介いたします。この子の名前はグロゥレイト、仲間内ではグロゥと呼んでおります。この子にはあなた方に道案内も兼ね同行していただきます」
「そういうわけよ」
フレアンブレは少し苦笑しました。
「わぁ〜! よろしくお願いします。えーっと、グロゥレイトさん?」
ソラはにっこりとグロゥレイトに笑いかけました。
「ええ、よろしく! 私のほうが年上だけどグロゥでいいわ。敬語もいらないわよ」
「うん! 私はソラ・フローレイっていうの」
ソラにはグロゥが小さい妖精なので、どうしてもグロゥが年上には見ませんでした。
「俺はリュード、リュード・シリル」
リュードもいやそうに自己紹介をしました。
でもグロゥレイトは「あらそう」と言っただけでした。
「ねぇ、グロゥ。私たちは何をしたらいいの?」
「あぁ、私の魔力じゃ出来ないから力を貸してほしいの」
「なにをするんだ?」
リュードの問いにはフレアンブレが答えました。
「『宝玉』を妖精の夜(フェアリー・ナイト)の前に治していただきたいのです」
「『宝玉』?」
ソラは聞き返しました。
「そうよ、『光の宝玉』をね」
グロゥがツンとした声で答えました。