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 どうしたのかと思っていると、リュードが口開きました。

「だめだ、俺たちの力じゃ足りない。グロゥレイト、お前も手を貸してくれないか?」
「えええええっ!? 私が!? 無理よ!」
「頼む」

 グロゥはそんな風に声をかけられると思っていなかったのかとても驚いています。無理よ無理よと断っていましたが、リュードの目が真剣だったのでグロゥはふらふらとソラの肩の上に座りました。
 そして、ぎゅうっとソラの髪の毛に掴まると強い光を発します。優しくて暖かな真っ白の光――光の元素――の輝きです。
 ソラはリュードがグロゥのことをシーリーコートだと断言したことに納得しました。こんなに優しい光を持っているグロゥがアンシーリーコートであるはずがないからです。
 一定時間魔力を放出した後、宝玉がきらきらと輝き始めました。ソラとグロゥの顔がぱあっと明るくなりました。

「これで妖精の夜を迎えるのことが出来るわ……本当にありがとう!!」

 グロゥが笑いながらくるくる回ってお辞儀をしました。

「ううん、違うよ! 私たちだけじゃなくて、グロゥが手伝ってくれたからだよ。グロゥがいてくれたおかげだよ!! 本当にありがとう」

 ソラがお礼を言うと、グロゥは真っ赤な顔で照れていました。


 ***


「本当にありがとうございます。私たちにとって大切な妖精の夜を迎えることが出来ます!!」

 妖精たちが住む森に帰ってきた三人を妖精たちは笑顔で迎えてくれました。フレアンブレはお礼を言った後、グロゥレイトによく出来ましたね、と声をかけていました。

「これは、私たちからのお礼です」
「えええそんな、お礼なんていらないです!」

 フレアンブレの言葉にソラが慌てて答えると、フレアンブレはいいえと首を振りました。

「お礼をしないなんて、花の精(フロラリエール)一族の恥さらしです。それに、これは私たちの森に突然現れて、皆で扱いあぐねていたものです。ぜひ引き取っていただけませんか?」
「は……はい」

 ソラが渋々そう答えると、数人の妖精がえっさほいさと何か丸いものを運んできました。ソラがそれを受け取ると、さっきまで白かったのに赤くなります。

「色が変わった!? これはなんですか?」
「私たちにも、実はよくわかりません。なにか神聖な力をもつものの卵だと思います」
「卵? そう言われてみれば、大きいしちょっと重い」

 五キロ程度の重さで、直径は二十センチくらいです。これが卵だというのならば、産まれてくる生きものは何なのでしょうか。リュードも横で首を傾げています。
 また卵は色を変えて次は青くなりました。なんでも妖精たちの話によれば、時間が経つにつれて色が七色に変化するそうです。
 何が産まれてくるのだろうと、ソラはとってもワクワクしました。


 ***


「ねえリュードくん。聞きたいことがあるんだけど」
「何だ」

 妖精界から学校に戻る途中でソラはリュードに質問をぶつけてみました。

「どうして、グロゥの力も必要だって言ったの? あれは本当は……ふたりだけで大丈夫だったんだよね?」

 それがソラがリュードとふたりで宝玉を治している時に感じた違和感です。ソラはこのままで十分宝玉を治すことができると思ったのに、リュードはグロゥの助けを求めました。

「……あいつは自分のことを邪悪な妖精(アンシーリーコート)だと思っていた。けれど、光の宝玉を治すことに参加すれば自分が祝福された妖精(シーリーコート)だと自覚を持つようになるんじゃないかと思ったんだ。俺たちが言葉で励ますより、あいつが自信を取り戻したほうがいいに決まっているからな」

 リュードがそう言い終わるとソラはくすくすと笑い始めました。

「……何がおかしいんだよ」
「えっとね、ごめんね。リュードくんは優しいなあって思って」

 押し付けられた仕事でも、リュードはきちんとこなしてくれました。それだけではなく、リュードはグロゥのことにまで気を配っていました。
 最初、ソラはリュードのことをとっても怖い人だと思っていました。しかし、一年近い時間を過ごすうちに、リュードが本当はとっても優しい人で、周りのことをよく見ているのだと気が付きました。

(来年もリュードくんとパートナーだったら楽しいかな?)

 そう考えていましたが、現実はどうもうまくいかなかったようです。




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