「それがこの組織の始まり。活動がどんどん大きくなって、いまじゃこーんなことになったんだよね」
とカルマディオは笑い飛ばした。
子供たちを拾い集めては、育てた。その費用に要人の護衛を行った。
活動を知った人間が手伝うようになり、子供たちの面倒を見る大人も増えていった。
そうして、闇の要人を護衛するようになり「G.G.」の後を追った。
組織の名前を考える時に、「G.G.」を引き付けやすいようにと自分たちの組織の名前を「G.G」とした。
ロクは頭のなかで情報を整理する。
カルマディオは自分と同じように数字で呼ばれ、人体実験されていた。そこから逃げ出し、復讐かなにかをしようとしている……のだろうか。
そして自分を人体実験していた組織の名前は「G.G.」
ロクは息を呑んだ。知りたかったことが少し分かった。ただ根本的な問題がわからない。なぜ自分は人体実験されていたのか、その目的だ。しかし、それはカルマディオにも分からないという。
そんな会話をしていると、着信音が室内に響いた。ロクの知らない着信音だから、カルマディオのものだろう。カルマディオが懐を探り、タブレットを見て苦笑した。ポンと画面をタッチして陽気な声で話し始める。
「はいは〜い! パパですけどー」
『ふっざけるなよ!!」
と電話口からロクにもはっきり聞こえるほどの怒声が響いた。
『今、どこにいやがる!?』
「う〜〜ん、今ねえ、日本支部!」
カルマディオは怒声とは真逆に脳天気な返事をしている。
そのような取引を繰り返した後、カルマディオは電話を切ってやれやれと大げさなジェスチャーをした。
「ミケのお叱りを頂いたわけだ」
「そうそう。ミケに怒られちゃった〜」
桐也の言葉に、カルマディオは悪びれもなく笑った。
「俺のタブレット、GPSついてるんだよね。フトシに頼んで隠してもらってたんだけど、バレちゃったみたい」
「そりゃあ本部にいなかったら、勘がいいあいつなら気づくわな」
桐也もカルマディオも苦笑しているが、ミケが誰なのかわからないロクは首を傾げた。
「まぁでも、今日の夜帰るからさ」
「きょう……かえるのか。はやいな」
ロクが少し残念そうにそう言うと、カルマディオは笑った。
「まあね、俺が本部にいないとミケがこわ〜い顔しちゃうから」
桐也が鼻で笑った。
カルマディオがそうだ、と呟き、桐也に飲水を要求した。
桐也が水を持ってくると、カルマディオは懐から取り出した薬を飲んだ。
「からだのぐあい、わるいのか?」
「うーん、年寄りだからね……」
ロクが尋ねると、カルマディオは適当に流した。薬を飲んで、一段落したところでカルマディオは口を開いた。
「ロクくんは自分の能力、知っているかい?」
「……しらない」
「桐也や雪梛から聞いていないんだね?」
「ああ」
桐也はきまり悪そうに顔を背けた。
そうか、と呟いてからカルマディオは腕を組んだ。
「君の能力は『大量殺人』相手の顔や名前を知らずとも、ある程度の条件付けだけで人を殺すことができる……そういう能力みたいだよ」
「そう……か」
彼にとって予想していないわけではなかった。
レモンの追手を倒している中で、レモンが爆発してからロクの意識は途切れた。
次に気がついた時には、黒いねじられた何かわからないおのが血の中に浮かんでいた。
雪梛が駆け寄ってきてから、また意識が途切れた。
あれは何だったのだろう、彼はなんとなく分かっていた。
自分には血が付いていなかった。
しかし、自分だけが血の中に立っていた。
嫌な予感はあたっていたわけだ。