「I have a bad feeling about this.」 7
数日前に、会議に出ていた依織さんから告げられた、近いうちに近界民による大規模な侵攻が起こるかもしれないと言う事。
それが私が以前から感じている嫌な予感の原因なのか、そう思いながら本部までの道を歩いていた。
今日は2時から防衛任務が入っていて、午前の授業が終わったタイミングで早退していた。
友人に午後からの授業のノートを後日写させてもらえるように頼んだし、プリントも机の引き出しに入れておいてもらえるように、隣の席の子にお願いしておいた。本部基地についたら食堂でお昼ご飯を何を食べようかと考えていると、ゾクっと背筋に寒気が走った。
かなり嫌な予感がする。
急に空が暗くなり、地響きの様な音がする。見上げると門が次々空に現れていた。それは4年前の大規模侵攻の時を思い出すようで、心臓の音がうるさいほど聞こえていた。
トリガーによる緊急呼び出しが制服のポケットで鳴っており、迷うことなくトリガーを起動させ、トリオン体に換装する。
『真野隊、各自今の状況報告』
内部通話で依織さんの声が聞こえた。事前に近界民の大規模侵攻の際は本部で合流し、真野隊は本部防衛を行うと指示を受けていた。
『宮木、本部に向かっている途中です。警戒区域に今入りました』
『こちら紫。まだ学校です。今、米屋と出水と一緒です』
『こちら目黒。私もまだ学校です。』
『元村、本部に着くところです』
『了解。じゃあ、カンナとまことは本部においで。誰か他に本部に行く隊員がいるなら一緒に来ると良い。オペレーターがいないと始まらないからね。南西の方にはトリオン兵が多く侵攻してるようだから、カンナがまことをしっかり守るんだよ』
依織さんは二人に指示を飛ばしていく。
『紫了解。まこと、うちのクラス前集合』
『目黒了解』
『頼は本部で私と集合だよ。急いで』
『元村了解』
私の通っている 六頴館高等学校は東南東にあるが、カンナとまことが通っている三門市立第一高等学校は西南西にあり、ほぼ正反対の位置にある。走りながら辺りを伺い依織さんからの指示を待つ。
『尚美』
『はい』
『今日は射手のトリガーだよね?』
依織さんに言われて尚美は戸惑いながら答える。
『はい、そうですが…』
今日は狙撃手のトリガーはイーグレット一つのみであとは射手用にしてある。前に出水君たちと戦った時のままのトリガーだ。依織さんの指示でそうしていた。
『そのまま西の方に向かって、トリオン兵を見つけ次第撃破。東隊と柿崎隊がいると思うからまず合流』
『……宮木了解』
依織さんから私に来た指示は本部合流ではなく、他部隊との連携だった。
しばらく見つけたトリオン兵を倒しながら西へ走ると、東隊の3人が見えた。
東隊は隊長の東さんと攻撃手の小荒井君、奥寺君にオペは摩子ちゃんで構成されている。
3人は何やら見たことのないトリオン兵と対峙している。新型だろうか。すると、トリオン兵が素早い動きで腕を振り、奥寺君を吹っ飛ばした。あまりの動きに驚き、やばいと思った。
横目でトリオン兵を確認しながら急いで奥寺君のフォローに行く。
「奥寺君!立てる?」
崩れた建物からよろめきながら出てくる奥寺君に手を差し出す。
「……あ、宮木先輩……」
「ほら、つかまって」
同じ場所にずっといるのもよくない。向こうを見ると新型に小荒井君が向かっていき、攻撃をしかけた。こちらに来ないように足止めをしてくれたようだ。
小荒井君の動きは簡単に見破られ、動きを止められ、捕まってしまった。新型が飲み込むような動きを見せ、小荒井君が思わず叫ぶ。
「うわあぁぁぁぁ!」
「小荒井!」
「っっ!!」
捕獲用のトリオン兵なのか?奥寺君を支えながら立ち上がる。小荒井君がトリオン兵に取り込まれそうになった時に、東さんが小荒井君を打ち緊急脱出させた。
流石の判断力だ。しかし、
「東さんが、危ない」
奥寺君が食いしばる様に言う。東さんは狙撃手だ。今はトリオン兵との距離が近すぎる。確かに危ない。
「まかせて」
私は奥寺君を支えていた手を放して両手にトリオンキューブを出す。今ならトリオン兵は自分達に気づいていない。
東さんは私の師匠の大事な人だ。守らなければならない。それよりなにより、この非常事態には欠かせない人だ。いてもらわなければ困る。
「誘導弾+炸裂弾」
ギュン
少しでも隙を作れば東さんはそれを活かすはず。
「誘導炸裂弾!」
時間と方向を調節して合成弾を放つ。半分はトリオン兵に半分は地面に。トリオン兵は煙に包まれる。
「よし、奥寺君行くよ!」
「はい!」
煙で相手が動けないうちにゴリ押す事にする。
攻撃手に射手、それに狙撃手。バランスもいい。奥寺君は私の言葉に素早く隣で抜刀し、動き出す。流石東さんの弟子、周りをよくみている。
『東さん、宮木です。奥寺君と一緒です』
『……宮木か助かった。』
東さんは先ほどの攻撃でトリオン兵から距離を取れたようだ。話しながら、通常弾を放つ。
『真野隊長から、東さん達と合流するように言われました』
『そうか心強い。本部からB級は全員合流する様に言われている。その前にこの新型をどうにかしないといけないが……先ほどアイビスを弾かれた。かなり硬いぞ』
『了解です、合成弾で相手の装甲崩しますので、止めお願いします』
確かに今トリオン兵に通常弾を放ったが、びくともしていない。合成弾にする必要がある。
『柿崎隊だ、フォローするぞ。文香と虎太郎もいる』
そこに柿崎さんが内部通話に入ってきた。
柿崎隊は隊長の柿崎さんに、照屋ちゃんと巴君、オぺには宇井ちゃんがいる。
『柿崎さん!ありがとうございます!』
戦力が増えた、ありがたい。
『本部、こちら東隊東。真野隊宮木と柿崎隊と合流した。引き続き新型と交戦中』
東さんが本部オペレーターに状況報告する。
『よし、みんな宮木の一発でスタートだ。距離を保って攻撃。お互いのフォローをしつつ、新型をやるぞ』
『了解!!』
東さんの指揮で全員が動き出す。
「追尾弾!」
私は奥寺君を伴って、新型と交戦を始める。こちらに意識が行くように攻撃するが、新型はガードをし攻撃を防ぐ。
奥寺君は攻撃手のため迂闊には近づけない。隣で機会を窺う。追尾弾を時間差で当たるように調節し再度放った。左右から柿崎隊の3人によって銃撃の集中砲火を浴びて、新型の動きが止まる。
私の横にはいつの間にか照屋ちゃんがきており、柿崎隊の陣形で攻撃が行われていた。
「誘導弾+炸裂弾」
自分の手元でキュンと音がする。
「誘導炸裂弾!」
トリオン兵と対峙し素早く合成弾を作成し放つ。隣には奥寺君と照屋ちゃんがいるので被弾の心配をせず、安心して作れる。トリオン兵は腕でガードしようとするが、合成弾はガードが持たないだろう。腕が削られ、そこにさらに柿崎隊が集中砲火する。
本部から来た情報によると、新型のトリオン兵はトリガー使いを捕獲できる能力を持っているらしい。実際諏訪隊の諏訪さんがすでに捕獲されて、トリオンキューブにされたらしい。
今は風間隊が新型を撃退し諏訪さんを奪取。本部にそれを持っていき、解析中とのこと。
トリオン兵の動きが鈍ったところで奥寺君と柿崎さんの横にいた巴君が飛び出した。弧月でトリオン兵の目を狙って切りつける。トリオン兵は完全に動きが止まって、崩れ落ちた。
まずは一体。
「これはなかなか厄介な相手だね」
「数で攻めないと厳しいですね」
照屋ちゃんと分析する。
「照屋ちゃんフォローありがとう、おかげで安心して撃てたよ」
「いえ、宮木先輩の合成弾が必要不可欠でしたから」
照屋ちゃんはいつも通りのしっかりした受け答えだ。流石新人王を争っただけあって実力も申し分無い。
今回の敵の狙いは戦力を分散し、分散したボーダー隊員を新型のトリオン兵が捕らえる事なのだろうか。確かに、ボーダー隊員はみんなそれなりのトリオン量を持っている。その考えに納得もするが、何かひっかかっていた。
危なくなれば緊急脱出すれば捕まることはない。それを相手は知らないのか。
戦力を削げは一般市民をまた捕まえられるから良いのか。今回新型は倒せたが、B級部隊単体で新型とやるには分が悪い。やりすごして、警戒区域外に出ようとしているトリオン兵を倒していった方がいい。
『依織さん、宮木です。東隊と柿崎隊と合流しました。新型一体撃破』
『了解、こっちは頼と合流してるよ。そのまま尚美は行動して』
『わかりました』
ひとまず依織さんに連絡を取る。あちらも問題ないようだ。
「じゃあ、照屋ちゃん行こう」
「了解です!」
2人はB級部隊との合流を急ぐ事にした。出会うトリオン兵を次々に撃破しながら進むとB級の隊員達が集まってくる。東さんは次のポイントに進むたびに本部へと通信を行なっていた。
『こちら東隊…』
『ガガガッ ガッ ザーザーザー』
先ほどまでなんともなかった通信が乱れていた。ハッとして、本部の方を見る。
「大きい……」
空で巨大なトリオン兵が複数体、本部に攻撃しながら向かって行っている。
『おい見ろあれ』
柿崎さんも気づいたようでみんなが本部を見た。
『あれはやばいんじゃねえの?』
「……」
あれは爆撃型のトリオン兵だ。前にも出現し、その時の情報は周知されているはずだ。
大丈夫。依織さんと頼さんがいる。カンナとまことももう本部についてるかもしれない。
不安は感じなかった。だって、嫌な予感はしなかったから。
2体本部の壁に激突し、すごい衝撃がこちらまで伝わる。まだ壁は大丈夫のように見えるが、次は持たないかもしれない。トリオン兵が一体本部の攻撃によって爆発した。残り二体。
すると、その二体が空中で爆発した。爆発の前一瞬太刀筋が見えた気がした。誰かが切り落としたのだろう。本部にはまだまだ戦力がいる。
『太刀川と真野が、爆撃型を落としたようだ』
東さんが通信を入れる。
「依織さん……流石……!」
あの人は隊を組まなくても一人でもかなり強い。攻撃手ランク1位の太刀川さんに引けを取らないくらいに。
依織さんの活躍が自分のことのように誇らしかった。
『村上が新型を一人で対処しているのか?』
その後鈴鳴第一と合流したが、村上君の姿が無く来馬先輩と太一君だけだった。
まさかあの村上君がやられるわけがないと思い、東さんが訊ねてみると、
新型が行く手を邪魔して合流が出来なかった為、村上君が一人残って対処してるとのこと。
本部からの指示では、一人では新型には当たるなと言っていた筈。きっと来馬先輩と太一君の事を思って行動したんだろうなとわかる。村上君は自分が所属する鈴鳴第一の事をとても大事に思っているから。気持ちは充分と言っていいほどわかる。私でもそうするだろう。
『助けに行きますか?』
柿崎さんが東さんに聞く。B級合同部隊は現在、東さんが指揮を取っている。
『そうだな、一人は危ない。どっちみち南に進む予定だ』
『そうしていただけると助かります』
来馬先輩が心配そうに話す。やはり一人置いてきた村上君が心配なのであろう。東さんがまず本部に連絡を入れる。すると、帰ってきた返答は「そのままトリオン兵を殲滅しろ」との事だった。
『村上のところへは太刀川が行くそうだ。俺たちはこのままトリオン兵を削っていく』
『了解』
東さんの指示に全員が返事をした。
太刀川さんが行くなら安心だ。なんせ彼はボーダーNo.1攻撃手なのだから。
その後すぐに、荒船隊の三人も合流した。
荒船君には「A級のお前がなんでいんだよ。つか、本部防衛は?」と、もっともな事を言われたが黙って「隊長の指示」とだけ答えておいた。
確かにこんな非常時に本部防衛をしなくていつするのか、私もそう思っているのだ。
『……なんか、きますね』
B級合同部隊は周りのトリオン兵をおおかた倒したところだった。次のポイントに行こうとしていた時、また背中がぞくりとする。すると少し離れた場所にいた東さんと太一君の近くで門が発生した。そこから人型の近界民が出てくる。大柄な男の近界民で、これはなかなかのやり手だ。直感でそう思った。
『こちら、B級合同部隊の宮木です。人型近界民が出現!交戦します』
東さんの代わりに余裕のある私が通信をとる。狙撃手の二人にあの位置。危ない。それは東さんも同じ考えのようで太一君に指示を送る。
『距離を取れ太一。この間合いはまずい。下がって警戒区域に誘い込むぞ』
私が一番2人に近い距離に行くので助けに行こうと近づこうとした時、人型に銃弾が浴びせられた。
茶野隊の2人だ。しかしすぐに人型の反撃に遭い、緊急脱出させられてしまった。
東さんと太一君が走るが、人型の更なる攻撃に太一君が緊急脱出。
東さんがやられるのはやばい、そう思ってトリオンキューブを出して対抗しようとした時、荒船君からの内部通話が入った。
『宮木、手出しするな。俺たちが狙撃する』
『宮木了解』
そのまま物陰に身を隠しながら状況を確認する。荒船隊の3人が人型を狙撃した。
東さんが上手く釣って、3発とも不意をついて当たったかと思ったが人型の方が上手だったようだ。防御を張られており、結果的に3人の居場所が知られた事になる。
そのまま背中から何十もの弾丸を人型が放ち、3人がいると思われる方向へそれぞれぶつかる。
『荒船君!』
尚美はあわてて通話をする。
『俺は大丈夫だ。2人はやられた』
ドドンと二つ緊急脱出の光が飛んでいった。
穂刈君と半崎君のものだろう。
『お前たち、これは分が悪い。手出しせずに身を隠すぞ』
東さんからB級合同部隊全体に指示がとぶ。東さんは今の間に上手く退避できたようだ。
その後、しばらく人型との膠着状態が続いていた。
人型は手当たり次第ビルなどを打ちこわして行くが、こちらは手出しが出来ない。
先ほどからこちらを挑発して炙り出そうとしている。
手を出すと居場所がばれてこちらの戦力が削られる可能性がある。
チャンスができるまで耐えるしかない。
そこに本部から指令が届く。
『近くにいる隊員は可能な限り、烏丸、三雲両隊員を援護してください』
敵の狙いは怪しんでいた通り、A級やB級の隊員ではなかった。緊急脱出機能のないC級隊員だとわかった。C級隊員は危険区域外で一般市民の避難誘導をしている。そこにはあのトリオン怪獣と呼ばれる、雨取さんもいるはずだ。
あのトリオン量は近界民にとってかなり魅力的なもののはず。すぐに助けに行ってやりたい。
しかし、この人型を放置して行くのは危険すぎる。助けに行った先にこいつも来たら大変なことになる。
こいつはここで倒しておくべきだ。自分の勘がそう言っていた。
『東さん、出水です』
そこに聞き慣れた声が通信で入る。
『米屋と緑川も一緒です。角付きとやるんでサポートお願いします』
出水君なら人型とも十分にやれるだろう。実力はわかっている。頼もしい限りだ。肩の荷が降りた気がする。私もサポートに回ろう。
『……わかった!』
A級の隊員が3人もきてくれたことに東さんの声も心なしか明るい。この3人だと近距離、中距離の火力がかなり強くなった。いけるかもしれない。
『相手の射撃トリガーは性能が段違いだ。射程、威力、断速。速射性も高い。打ち合うなら足を止めるなよ。火力勝負になると厳しいぞ』
東さんが的確なアドバイスを送る。
『だいじょぶです。弾避けが二個あるんで』
出水君が冗談を言って場を和ませた。いつも彼はそうだ。厳しい状況でも変わらず明るい。
『敵はイーグレットを止めるレベルのシールドを持っている。ブレードも防がれるかもしれない。単発で崩すのは難しいぞ』
荒船君も続けて話す。流石よく見ている、
『荒船さん了解です』
出水君は相手を崩して、味方に取らせるのが上手いタイプだ。きっと米屋君と駿君のサポートも上手くしてくれるだろう。
『そこの建物のデータがあったから送るね』
太刀川隊のオペレーターである柚宇ちゃんが全員にマップを送ってくれた。
私もさっと確認する。旧三門市立大学。
『そうだ出水。宮木も来てるんだ。まだ相手にバレてないから使え』
東さんがふと私の名前を出した。
『え?尚美さんいるんですか?』
出水君が急に大きな声を出す。
『はい、一応います……』
先ほどからほとんど役に立っていないこともあり、気まずさから返事の声が小さくなる。
『ラッキー!尚美さん今から送る地点に合流!4人で突っ込みますよ!』
『……宮木了解。向かいます』
どんな無茶をやらされるのか、もしくは弾避けの一つにされるのか。恐る恐る返事をした。
合流地点に向かうと、出水君、米屋君、駿君がいた。
「おっ、尚美さんきたきた!」
出水君が駆け寄ってくる。
「尚美先輩、本部防衛じゃなかったんだね」
駿君に指摘される。痛いところをつかれた。
「隊長命令。予定では本部にいるはずだったんだけど」
「まぁ、おかげで俺らは一緒に闘えるってことじゃん?」
米屋君は嬉しそうに言う。前々から思っていたが、米屋君は戦闘バカだ。それもかなりの。
「で?作戦は?」
私は気を取り直して3人に聞く。
合流する前に大方3人で立てているに違いないが、相手の背後を取ってるとは言え、距離もだいぶ近い。手短に済ませる必要がある。
「まぁ、俺と尚美さんで1発ぶっぱなすから、後は臨機応変に」
出水君があっけらかんと言う。これが作戦といえるのだろうか。
「結局それな」
「了解」
米屋君と駿君はそれで納得したようだ。
「……了解」
作戦はアレだが、3人とも腕は確かだ。信頼することにした。
米屋君のすぐそばに立ち
駿くん、米屋君、私、出水君と一直線に並ぶ。
「炸裂弾+変化弾…」
「誘導弾+炸裂弾」
出水君が合成弾を作り出し始めると同時に私も合成弾を作り出す。
「変化炸裂弾!」
先に出水君が放った。
それと同時に駿君と米屋君が飛び出した。駿君と米屋君が一撃与えて、人型から少し離れたのを確認し、
「誘導炸裂弾!」
私も少し遅れて放つ。火力を維持して、相手に有利に攻撃をさせないようにするためだ。
「誘導弾!」
出水君と相手に位置を気取られないように、変化弾や誘導弾を組み合わせて攻撃していくのだが、出水君のペースを見て合わせる。これが意外と難しい。
出水君のように素早く弾道は引けないからだ。
「白兵が2人……新手の火兵も2人!」
人型が言うと同時に出水君の横に強力な砲撃が来た。
『っ危ない!!今のところ場所は正確にはバレてないみたいだね』
『うおー、こえー、アレ食らったら即死だな』
出水君と二人顔を見合わせてヒヤッとした。一息ついて、次の攻撃を始めようとしたとき。
ゴオッと何かが飛び上がる音がした。
パッと上を見ると、人型が空を飛んでいた。
「やばい!」
素早く通路に逃げ込む。人型の空からの集中攻撃だ。くらったらひとたまりもない。少し遅れて出水君も通路に入ってきた。通路で攻撃をやり過ごしているが、味方同士が分断された。米屋君と駿君は大丈夫だろうか。
ドォン!
向こうの校舎の方で破壊音がする。
米屋君は確認できた。すると駿君が狙われているということになる。
「「緑川!」」
「駿君!」
すぐに次の破壊音がして、駿君が出てきた。そして、同じ場所から人型も出てきて再び高く飛び上がった。私は素早くトリオンキューブを出す。
「誘導弾!」
ここで撃ち落とす!
同じことを出水君も考えていたようで、私より早く鋭い弾が人型に向かう。
2人分の誘導弾を掻い潜るように飛ぶ人型に別の2つの銃弾が当たる。
相手の背中の飛行部分に当たったようで、落ちていく。東さんと荒船君の狙撃だろう。
流石の腕前だ。しかし、落ちながらまた人型は攻撃を仕掛けてきた。
私は両防御して走り、避ける。
攻撃の雨が止んだところで東さんから通信が入る。
数で押す時だ、と。
囮を使って相手を誘き寄せ、攻撃手が攻撃する。
こちらに数の有利があるから使える技を使う。
相手は余裕が少しずつなくなってきている今だからこそ出来る方法だ。
私は各自配置につけるように、適当に人型を狙って追尾弾を打っていく。
狙撃手の東さん、荒船君も相手の意識を逸らすように攻撃をしかけていた。
『攻撃手配置完了』
そこに米屋君の通信が入る。きた、作戦開始だ。
『弾で獲物を追い込んでくれ!』
『OKしっかり仕留めろよ槍バカ!』
出水君が米屋君に檄を飛ばす。
『尚美先輩こっちにおねがい!』
『了解!期待してるよ!』
私も駿君の合図で両手にトリオリンキューブを出して、追尾弾を放つ。比較的近くには照屋ちゃんと柿崎さん、駿君がいる。駿君は自分が仕留めたいようだ。心強い。
『よねやん先輩の方か』
『みたいだね、行こう!』
しかし、人型は米屋君の方にいる来馬先輩を狙いに行ったようだ。
それに気づいた隊員たちは一斉にそちらへ動く。
米屋君がビルの窓から飛び降りるのが見えた。それを合図にそれぞれが米屋君に向かって両手をかざす。
人型が気づいて米屋君を攻撃するのはあらかじめ予想していた。
「両防御!」
相手の砲撃の威力はかなりある。その連射をガードするにはかなりの数のシールドが必要だ。
私も欠かさず張る。相手に米屋君の槍が刺さるまでシールドが持つか。
米屋君は怯まず攻撃体制を取り、落ちていく。
そして、人型に刃は届いた。人型は地面に倒れ、換装が解かれた。
そのまま動かない。米屋君が人型と何やら話しているようだ。その途中でピリッと何かを感じた。
「米屋君!避けて!」
咄嗟に米屋君に叫ぶ。米屋君も気づいていたようで空中に現れた門から出る棘を飛んで避けた。
小さな門のようなものがあり、その一つが大きくなって今度は女の人型が現れた。
この門は彼女のトリガーによるものなのか。そうなるとどこにでも敵が出てくることになり、非常に厄介だ。
「あ、逃げる」
男の人型がその門をくぐって行こうとするので、駿君が追いかけようとする。
『相手が引くなら今はそれでいい。深追いするな。戦果は十分だ』
東さんが止めに入った。おそらく、換装が解かれたらしばらくトリオン体にはなれない。
今回の戦闘では男の人型はもう出てこれないだろう。
『え〜せっかく倒したのに』
駿君がそういっている間に人型二人は門の中に消えていってしまった。
『みんなよくやった』
東さんが全員に労い言葉をかける。
『だが、まだ終わっていない。B級合同部隊は南部地区の防衛にもどるぞ』
『了解』
東さんと荒船君が出水君、米屋君、駿君と顔を合わせた。私もそこに向かう。
「出水、お前たちはどうする?」
「逃げてるC級のサポートに行こっかなーと。今フリーなの俺らだけみたいなんで」
A級は個人で動いていいと許可が出ているらしい。
「そうか、わかった。宮木はどうする?真野から指示はないのか?」
東さんに訊ねられ、私は一人では判断が出来なかったので、依織さんに連絡を取る。
『依織さん、宮木です』
なにやら後ろが騒がしい。依織さんは今基地にいるはずだが、向こうでも何かトラブルが起こっているのだろうか。
『尚美良かった。無事みたいで安心したよ。人型をやったらしいね、お疲れ様』
走りながら喋っているようだ。声が少し乱れている。
『ありがとうございます。ですが、黒トリガー使いと思われる女の人型に門を介して倒した人型を取られました』
『門を使うトリガーのようだね。厄介だ。気をつけた方がいい』
侵入警報?依織さんの後ろでアラートが聞こえている。
『私も本部に戻った方が??』
本部に侵入者があれば、それこそ真野隊の出番だ。
『いや、尚美は戻らなくていい。迅にもそう言われている」
私が今本部にいないのは依織さんの指示ではなく、迅さんの指示だったのか。
これは何かわけがあるんだろうと察する。
『真野さん!尚美さん借りてもいいですか?』
そこに出水君が割って入ってきた。
『やぁ出水。人型撃破お疲れ様。どう言うことだい?』
依織さんは非常事態にも関わらず落ち着いた声で出水君と話す。
『今から俺と米屋と緑川でさっき通信にあったC級のサポートに行くんです。尚美さんにも来て貰えたら心強いと思って』
『なるほど。あそこにはなかなか強敵がいるみたいだね。いいよ使ってやって』
依織さんはあっさり許可を出してしまった。
『尚美は外で動き回ってた方が良いって迅も言ってたし、それが良いよ。尚美しっかりやるんだよ。こっちは心配要らないから任せてね』
『……宮木了解』
依織さんとの通話を終える。侵入警報は気になるが、依織さんが良いと言っているのなら信じる。迅さんも未来を見た上で私が外にいた方がいいという判断をしているのなら尚更従うまでだ。
「じゃそう言うことで、尚美さんは俺らと向かいます」
「そうかわかった。助かったよ、今度3人ともなんかメシ奢らせろ」
東さんから魅力的なお誘いが。しかし、3人となると私は頭数に入っていない。
「東さん私は……?」
「宮木を誘うとうるさい奴がいるからな」
東さんは言いにくそうに頭を掻く。
「そりゃそうだ。やめといた方が良いですよ、東さん」
荒船君も頷く。
「えっ、どういう……!?」
一人だけ話が理解できなくて戸惑う。
「ラッキー!」
駿君は私の事はお構いなしで、東さんに嬉しそうに言う。
「「じゃあ焼肉で!」」
出水君と米屋君もすでに頭の中は焼肉でいっぱいのようだ。私の事を無視して話が進んでいった。
「尚美さん俺らもそろそろいきますよ!」
出水君に急かされる。
「そ、そうだね!急がないと」
急な事に慌てていたが、気を取り直して烏丸君と三雲君の元に急ぐのだった。
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