「I have a bad feeling about this.」
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9


視界が白でいっぱいだった。



しばらくぼーっとしていたが、自分が何故ここにいるのかと考える。

私、寝ている?天井?どこだここ?
目を開けて、しばらく考える。
日が明るい。今何時だ?
そうだ、私、戦闘で……

「尚美!」
「尚美、気づいたのね!」

自分の名前を呼ばれた。大好きな声だ。

「お父さん……お母さん……」
自分の声が驚くほど掠れていた。
良かった。2人とも無事だった。

父と母はボーダーに勤めている。
父は人事部で、母は食堂で。
ここにはいないが兄は技術者エンジニアだ。

本部に侵入者と言われて、家族のことが気がかりだった。
けど、自分の信頼する隊のメンバーがいるから大丈夫だと、そう思って考えないようにしていたのだ。

「貴女は……本当に……」
まだ体が上手く起こせなくて、母がそっと寝たままの私を優しく抱きしめてくれた。
父はナースコールで話している。

「お母さん……」
喋ることも上手く出来ない。
「心配かけて……」
母は涙に耐えた話し方だった。
「よく、頑張ったな」
父も近くにきてくれた。頭をそっと撫でられる。


私頑張れたのかな?
父も母も顔が疲れている。心配をかけてしまった。
「心配かけてごめんね……」
また瞼が重たくなっていった。起きていたいのに、体がいうことを聞かない。




次に目を覚ました時には部屋が夕焼けで、赤かった。

病院ということはわかるが、頭が混乱していて何がどうなっているのかわからない。
また目を開いて考える。頭はまだぼーっとする。さっきよりはマシだが。

「尚美、気がついた?」
優しい声で話しかけられる。
依織さんの声だ。
依織さんはベッドの近くに立って私の顔を覗き込んできた。

「……依織さん」
「みんなもいるよ」
依織さんにそう言われ、ゆっくり見ると、依織さんの後ろに真野隊の3人が立っていた。


「無茶して!」
「心配したんですよ!」
「全然目も覚さないし!いつまで寝てるんですか!」
頼さん、カンナ、まことに次々怒られる。

「ごめんなさい」
自分でも無茶したと思う。
「尚美起きれる?」
依織さんに訊ねられて、少し体を起こす。
それに合わせてベッドも起こしてもらった。

「えっと、今は何時ですか?」
「何時というか、1月23日の17時過ぎです!3日も寝てたんです!長すぎです!」
まことは目に涙いっぱい溜めて、文句を言う。
そんなに寝てたのか。通りで体が上手く動かない。

「三雲君は……?」
「まだ意識は戻ってないよ、けど命に別状はないって。そのうち目が覚めるよ」
私を安心させるように依織さんがゆっくり教えてくれる。

「そうですか……」
「尚美は基地前で三雲くんと一緒に倒れているのが発見されて、本部にとりあえず運ばれた」
依織さんがあの日の事を説明し始める。

「ただ、少し時間が経ってたから出血が多くて、危なかったんだよ。意識もなかったから、すぐにここ三門市立病院に運ばれてたんだよ」

と言うことは、ここは市立病院だ。
ようやく今いる場所がわかった。

「尚美の腕と足の傷は幸いにも神経は無事で、縫ったくらいだよ。傷跡は少し残るかもね」
そう言われて、包帯の巻かれている右手と右足を見る。


「私が屋上から見て、どれだけ怖かったか……」
頼さんがベッドに座る。
頼さんは私が倒れた時に屋上にいたらしい。
スコープから動きがみえていたのだろう。

換装を解いて走ったことも。三雲君を助けようとして傷を負ったことも。

「……すみませんでした」
たくさんの人に心配かけてしまった。

「あまり、無理はしちゃダメだよ。私達はチームメイトなんだから」
頼さんはそばに来て、ギュッと抱きしめてくれた。
「よく頑張ったね」

父と同じことを言われた。
「次はもっと強くなります」
「まずは早く元気になるんだよ」
頼さんはもう一度ギュッと抱きしめて離れる。


「尚美さんのお見舞い、沢山きてたんですよ」
ほら、とカンナが机に置かれた花やお菓子などを指さす。
「みんな心配してたんです。元気になったら覚悟しておいてくださいね!」
笑って話すカンナは涙で頬が濡れていた。

「うん、覚悟しておく」
「ご両親は、尚美が目を覚ます少し前に出られて、尚美の着替えを取りに帰られたよ。
明日また来るって。お兄さんはまだ本部に缶詰で、意識が戻ったって言ったら喜んでたよ」

依織さんが家族のことも教えてくれた。


「じゃあ、疲れてるだろうから私たちは帰るね」
「はい。ありがとうございました」
4人がゾロゾロと出口に行く。



「そうだ、尚美先輩」
カンナが最後に振り向いて言う。
「もう1人連絡しておいたんで、そのうち来ると思いますよ」
にっこり笑って帰っていった。



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