「I have a bad feeling about this.」
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13

「ただいま戻りました」
「おかえり」
「早かったね」


作戦室に戻ると依織さんと頼さんが出迎えてくれた。


「玉狛の圧勝であっという間に終わりましたから」
「そっか。まぁ、そうだろうね」
依織さんも玉狛第二の強さは良くわかっている。

テーブルの前のモニターにはまことが今実況しているであろう諏訪隊、鈴鳴第一、柿崎隊の戦闘の様子が映っている。
自分もテーブルにつき、それを見る。


「どんな感じですか?」
「諏訪隊が上手く村上を避けてる」
「鋼とまともにやり合ったら分が悪いからね、良い選択だよ」
依織さんは攻撃手と交流が多いので、村上君の事を親しく「鋼」と呼ぶ。
諏訪隊は笹森君をガードさせる事に集中させて、銃手の2人がガンガン攻撃をしている。
それを村上君がレイガストでガードしながら来馬先輩が応戦しているが、火力の差で押され気味だ。

「太一〜!先に落とされちゃだめでしょーが!」
頼さんは弟子の太一君がすでに落とされた事に不満げだ。
「ここで太一がいたら、狙撃で展開も変わってくるのに」

三部隊の中で唯一遠距離攻撃ができるのが狙撃手の太一君だった。
おそらく中距離戦で挑もうと諏訪隊が考えた時に、真っ先に狙われたのだろう。


「あれは狙われてたから仕方ない。柿崎隊もマークしてたし」
依織さんがフォローする。


「あ、柿崎隊動いたね」
依織さんの言うとおり柿崎隊の照屋ちゃんと巴君が諏訪隊を横撃した。
諏訪隊の3人が諏訪さん1人と堤さんと笹森君の二手に分かれて、退避する。
諏訪さんが柿崎隊を攻撃して、2人が鈴鳴第一の相手をするようだ。


「あれ、柿崎さんは?」
「さっき、村上と来馬にやられたよ」
頼さんが教えてくれる。

「文香が上手にフォローしたんだけど、少し遅かったね」
依織さんが残念そうに話す。
これは三つ巴になりそうだ。


「鈴鳴第一、引きましたね」
「このまま中距離で打ち合うのは不利だからね、来馬良い考えだね」
「そうなると、柿崎隊は……」
照屋ちゃんが前に出て攻撃をしかけているところだった。

「うーん、日佐人が出ないといけなくなるね」

依織さんと頼さんがあれこれと戦術を話し合う。
いつも作戦室でランク戦を見るときはこんな感じだ。2人とも普段でも解説をしているように話すので聞いてる私はとてもわかりやすい。
やはり、今シーズン依織さんと頼さんが解説に出ないのは勿体ない気がする。


「あの……」
おそるおそる2人に話しかける。
「ん?何?」
「どうした?」
依織さんと頼さんがこちらを向く。

「やっぱり私より、2人が解説した方がボーダーの為にはいいと思います」
私の言った言葉に2人が目を丸くする。


「そんな事ないよ、尚美の解説は聞いてて面白い」
「まだ初戦だよ?何かあった?」

頼さんが立ち上がって横にくる。

「いえ、私は特に………けど私なんかが……この間の大規模侵攻の時だって、迷惑かけたし、真野隊のイメージが」

元々自分は評判は良くないのだ。それを知ったうえで依織さんは隊に入れてくれた。

今回自分が怪我をした事で、依織さんの隊長としての素質を疑われるような事になったかもしれない。解説もうまくできなかったら、隊の評判が、また。



「こら、尚美!」
頼さんがぎゅっと抱きしめて、私を黙らせる。


「私なんかが、とか言わない!尚美の悪い癖だよ!」
「そうそう、尚美は本当に自分に自信がないね」


依織さんも横にくる。

「この間の怪我のことは尚美は悪くない。たしかに心配かけた事は事実だけどね。ランク戦の解説は元々今回は尚美に話がきてたんだよ」

私の肩に手を置き、優しく言い聞かせるように話しかけられた。



「解説も立派な真野隊の仕事。今回私は他でやらないといけないことが多くてね、自信を持って尚美に頼む事にしたんだよ」
「……はい」
「だいたい、苦手だ〜っていつまでも逃げられると思わないこと!」

頼さんにビシッと言われた。

「……はい」
2人に甘えるなんていつぶりだろう。

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