「I have a bad feeling about this.」
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『試合終了後!最終スコア3対2対2対1。二宮隊の勝利です!』


玉狛の敗戦は初めてではないだろうか。三雲君が落ち込んでいなければ良いが。



『そして本日の試合がすべて終了!暫定順位が更新されます!二宮隊、影浦隊、東隊は順位変わらず。玉狛第二は8位にダウンという結果になりました!それでは時間も押してきてますので、ざっくりと総評をお願いします』
遥ちゃんが促す。


『……今回は全ての得点を各部隊のエースが上げているが、重要だったのはエース以外の動きだ。エース以外の隊員の能力差がそのまま得点に現れていると言える』
『そうね、影浦くんなんかは雪でいつもより動きが鈍かったけど、ゾエくんとユズルくんのアシストで2点獲れてるし、早めに犬飼君を落とせたのも大きかったわ』
風間さんと加古さんがまず話す。


『影浦隊は雪MAPだろうがいつも通りの動きだったと思います。ブレないですよね。二宮隊もいつも通りの形で点を取れていました。この2チームはいつも自分たちの形が作れているので、安定感がありましたね』
私はB級上位2部隊チームの動きを見ていてそう思った。もともとこの2部隊はA級レベルだから当然だろうが。


『たしかに……東隊の二人もMAPを使ってチャンスを作り、二宮隊の二人は積極的に動いて隊長をフリーにした……となると、三雲隊長がほとんど動けずに落とされたことが玉狛の敗因になったということでしょうか?』

『落ちたことをどうこう言うつもりはない。落とされて学んでいくのがランク戦の存在意義だ。犬飼との1対1も完全な悪手というわけじゃない。新しいことをやろうとする姿勢は見えたし、鍛錬による成長も感じられた。だが当然三雲以外の人間も日々鍛錬を積んでいる。当たり前のことをやっていては先を行く人間には追いつけない。本当に部隊を勝たせたいなら「自分の成長」という不確かな要素だけじゃなく、もっと具体性のある手立てを用意する必要があった』
風間さんはいつも厳しい事を言う。だが、的確な意見だ。


『それはつまり……「もっと自分の能力に合った戦い方をしろ」……ということですか?』
『違う。隊長としての務めを果たせということだ』
しかし、相変わらず優しい人だと思った。





ランク戦が終わり、観客が次々と出ていく。

「ありがとうございました!」
遥ちゃんは解説の3人に挨拶をして、すぐに帰っていってしまった。
よほど忙しいんだろう。今度差し入れを持っていくべきか。


風間さん、加古さんと一緒に作戦室までの道を歩く。


「尚美、体はすっかり良いようね」
「はい、ご心配おかけしてすみません」
「いいのよ、うちに来てくれたらそれでオッケー」
いつものように加古さんに勧誘される。

「……私、イニシャルKじゃありませんよ?」
「そうなのよね、それが問題……わかった!風間さんと結婚したら良いわ!良い考え!」
「え?!」
加古さんのとんでもない考えに驚く。

「いや、加古さんそれはいくらなんでも」
風間は聞いてないふりをしてるのか、話に入ってこようとしない。


「あら?年上は嫌だ?それなら同い年だと蔵内くんか、北添くん……影浦くんでも良いわね!」
「加古さん、それはちょっと……」
影浦君なんて特にまずい。

「尚美ったら年下が良いの?それなら、ほら!前に噂になってた烏丸くんは?風間さんの隊なら菊地原くんもいるわよ、彼優秀だわ。ね?風間さん」
「たしかに菊地原は優秀だ」
「風間さん……」

何故そんな時だけリアクションを返すのだ。部下はやはり可愛いのか。


「加古さん、それはちょっと勘弁してくださいよ〜」
「あら犬飼くん、お疲れ様」
「お疲れ様です。解説ありがとうございました。それよりダメですよ、抜け駆けです」
「え〜二宮くんは尚美のこと取らないって言ってたわ」
「そっちじゃなくて……」
「犬飼くんはだめね、Kじゃないもの」

二宮隊の4人がいた。ランク戦後の反省会でも終わったのだろうか。


「二宮さん!お疲れ様です」
二宮さんに駆け寄る。

「久しぶりに二宮さんの両攻撃フルアタック追尾弾ハウンド見ました!かっこよかったです!流石の火力でしたね!惚れ惚れしました」
「……ああ、お前解説だったのか」
「はい!」
久しぶりに二宮さんの試合が見れたのが嬉しく、興奮気味に感想を伝える。
やはり自分の元とは言えど師匠が活躍してしているのは嬉しいものだ。


「尚美先輩、最初実況やってましたよね?」
「うん、頼まれてやったんだけど難しいね、やっぱりオペのみんなはすごいよ」
氷見ちゃんとも話す。

「辻お前、空閑を止めたところ流石だったな」
「ありがとうございます、風間さん」
「最後の東さんに撃たれたところは、爆風に紛れてるからと油断していたか?」
「そうですね、不覚でした」
風間さんと辻君は攻撃手アタッカー同士話をしている。
二人とも表情があまり顔に出ないタイプだからか、淡々と話していた。



「尚美チャン、随分ウチの隊長贔屓だったらしいじゃん、相変わらずだね」
犬飼くんが加古さんと話し終えたらしく、2人ともこちらへやってきた。


「師匠の事話して何が悪いの?」
「悪くないけどさ〜おれは?」
「…玉狛狙いすぎじゃない?」
「え〜そう?」
犬飼くんはニヤニヤしながら話す。


相変わらずいやらしい攻め方だったとでも言ってやろうかと思ったが、後が怖いのでやめておく。

「でも三雲君、尚美チャンの特訓の成果でてたんじゃない?」
「尽くガードしておいてよく言うよね」
「だって、尚美チャンならこうするだろうな〜ってわかるんだもん」
やっぱりそうだったか。

「なんだ宮木、お前三雲に教えてやってたのか」
二宮さんに意外そうに聞かれる。

「はい、烏丸君に頼まれて」
「そうか」
「あら、尚美そんな事解説の時に全然言ってなかったじゃない」
加古さんも話に入ってくるが、露骨に二宮さんが嫌な顔をした。
この二人は前からあまり相性が良くない。相性というか二宮さんが一方的に苦手意識を持っているといった感じだ。

「二宮くんの弟子やめて、ついに弟子をとるようになっちゃったわけ?」
「いや、そんなわけじゃなくて……」
「三雲は遠征部隊を目指してるから、いろんなやつに話を聞きたかったんだろ」
「あらそうなの?」
「そうなんですか?」
私も二宮さんの言葉に驚く。


三雲君が早く強くなりたそうに焦ってたのはそれだったのかと気づく。
それなら今日の敗戦はよりショックだろうなとも。


「尚美チャン知らなかったの〜?三雲君と一緒にいといて」
犬飼くんに揶揄われる。
「コミュニケーションちゃんと取れてる?それじゃまだ弟子は取れないねぇ」
私の肩をポンポンと叩きながら、自分は若村君という弟子がいるからって偉そうに。

「もう絶対教えない……」
「ん?三雲君に?」
「違う!犬飼くんに!私が何しようとも教えない!」
「え〜それは困るなぁ」
「何を困るの!私もう行くね!……二宮さん失礼します」
「ああ」
「風間さんも辻君も!失礼します」
「ああ」
「はい、ありがとうございました」

私はイライラしながら真野隊の作戦室へと歩きだした。




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