「I have a bad feeling about this.」
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27

下に行くメンバーが決まった所で、全員で降りる。そこには二宮さんを中心にすでに全員が集まっていた。


「レイジさん」
烏丸君が木崎さんに声をかけている。

「とりまるイエーイ!」
佐鳥くんが烏丸君と腕を合わせた。同い年で同じクラスだから仲が良いんだろう。


頼さんはそれを見てさっと私の後ろに隠れた。そんなことしなくてもきっと気付かれていると思うのだが、黙っておく。



「おっ、二宮隊ウチが揃った。これは助かる」
犬飼くんが降りてきた辻君を見て言うが、何故か双葉ちゃんの頭を撫でていた。


相変わらず距離感がおかしい。それを見ている藍ちゃんも若干驚いていた。双葉ちゃんは藍ちゃんにそっけないから余計にだろう。


「頼さん、尚美さん」
嵐山さん達と一緒に行動していたであろうカンナがやってくる。

「カンナ!」
「これでうちも3人揃いましたね」
カンナがいれば気心知れているのでやりやすくなると喜んだ。





「たがいに援護出来る距離を保って左右に展開。角度をつけて火力を集中させ、敵を確実に減らす。銃手ガンナー射手シューターは防御重視の包囲射撃。攻撃手アタッカーはそれを援護。狙撃手スナイパーは敵の射程外から攻撃だ」


二宮さんが全員に指示を出すのを黙って聞く。
射手は二宮さん、加古さん、私の3人。メインの火力戦を担当する。
二宮さんを真ん中に右に加古さん、左に私が位置どりすることになった。二宮さんには犬飼くんと辻君が、加古さんには嵐山さんと藍ちゃんが、そして私にはカンナがそれぞれフォローに入る。


カンナと建物の上に登って高い位置から攻撃を仕掛けることにした。
横の道路には諏訪隊の3人と来馬先輩がいてくれている。


『左の敵を狙います!』
『諏訪了解。どんどん行けよ!』
『来馬了解。援護は任せてね』
2人の隊長がいる安心感はかなり大きい。


『前に出すぎるな。二宮の指示通り守り重視だ。一度に一体ずつ減らせればいい』
木崎さんの指示が飛ぶ。


『頭数はまだむこうがこっちの3倍はいる。こっちが一人でも落ちれば火力差はさらに広がる。相手の火力は動いて散らす。こっちの火力はまとめて叩き込め』
『了解です』

二宮さんの言葉通り両攻撃フルアタックはせずに周りの味方と火力を集中させて、一体ずつ削っていく。
次々とトリオン兵が減っていき、このままいけそうだと思ったとき。


「……!」
またきた。嫌な予感がする。
『何かきます!気をつけてください!』

 
咄嗟に内部通話を全体に飛ばす。
それに1番先に反応したのは笹森君だ。
来馬先輩を狙った動きの早い人型トリオン兵に食らいつく。

笹森君は一撃を食らったが、急所では無い様だ。人型トリオン兵はそのまま私とカンナのところにくる。メインの火力戦を担っている者を狙うつもりか。



『敵一体近づかれました!宮木、紫応戦します!』
カンナが話しながら、突撃銃アサトライフルでトリオン兵を攻撃する。


『気ぃつけろレイジ!やる気なのが出てきたぞ!』
『こっちもだ』 


諏訪さんと木崎さんの会話からどうやら同じような人型トリオン兵が右側の陣営にも出ている事がわかる。今のところ二体だけのようだ。


しかし、ここまで近づかれると分が悪い。
カンナは片手にスコーピオンを出して切り合う。
カンナのフォローをするように、素早くキューブを出す。


変化弾バイパー!」
カンナに当たらない様にしっかり弾道を引いて放った。
しかし、相手にひらりとかわされる。


先ほどまでの人型トリオン兵とは動きが違う。強敵だ。
諏訪さんと堤さんが援護をしてくれているが、こっちばかりにかまっていられない。
このまま撹乱された状態だとこの左側から抜けられてしまい、他の隊員が囲まれる。なんとかしなければ。


そこで横に動きがあることに気づいた。

追尾弾ハウンド!」

相手の逃げ場を誘うように両手から放つと、狙ったようにトリオン兵がそこに動いた。
そこには彼がいる。


「……旋空弧月」
辻君がトリオン兵めがけて斬撃を放った。

トリオン兵はなんとかかわして致命傷を避けたようだが、攻撃を喰らって後退する。

「尚美チャン、フォローするよ」


犬飼くんが横に並び、銃弾を放った。

「え、あっ、ありがとう」
どうやら二宮さんが二人とも援護に送ってくれたらしい。手厚すぎる。二宮さんは一人で中央にいて大丈夫なのだろうか。
人型は分が悪いと思ったのか、距離を取って下の方に移動していった。それを諏訪さんと堤さんが対応する。



「二宮さん今一人?こっちは大丈夫だから早く戻って」
二宮さんの事が気にかかり、お礼もそこそこにすぐに戻るように促す。


「え〜せっかくきたのに?こんな機会なかなか無いよ」
犬飼くんは戯けて話す。緊張感のない話し方に力が抜ける思いだ。


「私がいるから大丈夫でーす」
カンナが私と犬飼くんの間に割り込んだ。


「犬飼先輩は二宮さんのフォローでしょ?」
しっしっと追い払う動きをする。


「あらら残念。辻ちゃん戻ろっか」
そういうと犬飼くんと辻君は二宮さんの元に戻っていった。
「尚美先輩の事心配で来ちゃったんでしょうね」
銃弾を撃ちながら隣でカンナが話しかける。


「二宮さんの指示でしょ。助かったけど」
「そうでしょうけど〜あーあ、私も防衛任務入ってなかったらなぁ」

2人で話しながらまた正面のトリオン兵を狙い始める。
先程の速いトリオン兵はあちこちに移動しているようだ。
右の方は双葉ちゃんと藍ちゃんが相手をするらしい。


『日佐人!速ぇーやつを止めろ!気張れよ!』
『任せてください!』
こちら側は諏訪さんの指示で笹森君が動くようだ。


『辻、笹森を援護だ』
『了解です』
すぐに二宮さんが辻君に指示を送る。


攻撃手を2人。これで対処するようだ。
4人に任せて、私は射撃戦に集中することにする。


しばらくした後に、三輪隊のオペレーター、蓮さんから通信が入った。


『あと数分で決着が付くと迅君から伝言よ』


「予定通りランク戦行われそうですね」
「そうだね、久しぶりの依織さんの解説聞けそうだね」
「あ!そうですね!作戦室で見ましょうよ」


話していると、レーダー上のトリオン兵が一気に減り始めた。

「右側すごいですね」
「ほんとだ……あれだ、玉狛の二人だ」
玉狛の木崎さんと烏丸君の二人が玉狛の独自トリガーで攻撃し始めたのだと推測する。
あれは短期的にすごい火力を発揮するのだ。


「もうあと数分だから、トリオン消耗気にせずに済みますもんね……ん?」
カンナがレーダーを見てまた気づく。


「これ、街の方に行こうとしてますよね」
「ほんとだ……今更なんで……そんな嫌な感じはなかったんだけどな」
私の勘も当てにならない。
隊長達の判断はどうかと耳に集中する。


『いまさら市街地狙いだと……?』
『こっちを手分けさせたい感じですかね?』
二宮さんと犬飼くんも気づいたようだ。


『大規模侵攻の時にもトリオン兵を街に差し向ける敵の戦術があったそうだけど、今回のもそれかしら?』
『迅の予知だと今回は街に被害はでないはずです。敵が市街地を襲うなら迅から何か指示が入るでしょう』
加古さんと嵐山さんも街への侵攻は否定的なようだ。


『私も市街地への攻撃はなさそうな気がします』
『宮木が言うならそうなんだろう』
私の根拠のない意見を二宮さんは当たり前のように肯定する。


『んじゃこっちを釣り出すためのハッタリか。スルーしてOKだな』
『万が一敵が市街地を攻撃しそうな時は俺のワープで先回りできるぜ〜〜』
『役に立つじゃねーかおっさん!』
諏訪さんと冬島さんの話で、もし市街地での戦闘が始まりそうな場合も問題なく対処できる事がわかった。


『じゃあ今俺らがやることは目の前の敵をボコることだな!』
諏訪さんの言葉を皮切りに一斉に攻撃を再開した。




それからしばらく通常弾を打ち続けていたが、急にトリオン兵が後退したと思ったら、レーダーから反応が消えた。


『トリオン反応が消えたな』
二宮さんからの通話が入る
『撤退したんじゃない?三輪くん達が捕らえた近界民も姿を消したそうだし』
『とりあえず今回は俺たちの勝ちって事だな』
加古さんと諏訪さんがそう判断し、三輪君と米屋君の所に合流する事になった。



「お疲れ様です」
私達は1番距離が離れていたため、最後になったようだ。下で戦っていた隊員がすでに全員集まっている。



「あははははは!」
この場に相応しくない楽しそうな声が聞こえる。この声は犬飼くんだ。


「何してるの……?」
見てみると犬飼くんが米屋君の槍を持って、米屋君ごと振り回していた。米屋君の足と手には何やら見慣れないものがついている。それによって滑りが良くなり、振り回せているのだろう。


「尚美、カンナ!お疲れ様」
狙撃手組で固まっていた頼さんがこちらへやってくる。


頼さんの避けるべき相手は先ほど緊急脱出ベイルアウトしているのでここにはいない。余裕の表情だった。


「頼さん、犬飼先輩はあれ何やってるんですか?」
カンナが訊ねる。

「なんか、三輪と米屋が戦った相手のトリガーらしいよ」
「近界には色々なトリガーがあるんですね」


前の大規模侵攻の時も様々な能力をもったトリガーがあった。初見だとかなり厳しいかも知れない。気をつけないと。


「四人ともよくエース機を押さえてくれた、助かったぞ」
嵐山さんが辻君、笹森君、双葉ちゃん、藍ちゃんに話しかけていた。
それを聞いてそちらへ向かう。


「笹森君、辻君ありがとうね、ほんと助かった」
辻君は特にピンチの時に来てくれた。あれがなかったら落とされていたかも知れない。改めてお礼を言う。


「いえ、宮木先輩の力がなかったら、俺も来馬先輩を助けに入るのが間に合わなかったかもですし」
笹森君は謙遜して話してくる。なんてできた後輩だ。


「いやいやそれでも反射神経とかやっぱり笹森君すごいよ!前より強くなってると思う!」
「そうそう、日佐人君すごかったよ!」
「……あっ、ありがとうございます」

カンナが褒めると顔を赤くして照れてくれた。ますますこの後輩が可愛く思えてくる。


「辻君は上の時でも助けてもらっちゃったね、ほんとありがとう」
「いえ、上も下も二宮さんの指示で動いただけですから」
「それでも助かったよ!依織さんにも伝えとくからね」
「……はい、ありがとうございます」


淡々と話していたのに依織さんの名前を出した途端、辻君は表情を和らげる。
辻君は師匠の依織さんに褒められるのが好きなのだ。


「辻ちゃんこっちおいでよ!一緒にやろ!」
犬飼くんに呼ばれて辻君はそちらにいく。2人で米屋君を押して遊び始めた。二宮隊は見かけによらず隊長を筆頭にお茶目なところがある。



「三輪くんあれ私もやりたい!頼も一緒にやりましょ」
加古さんは同い年の頼さんを呼んで真似をしようとしていた。


「陽介でやってくれ」
三輪君は呆れたように答える。
「いや望……私は良いよ」
頼さんは引いていた。


「えーつまんない」
「私はやってみたい!」
カンナは加古さんと一緒に米屋君の方に向かって行った。


とりあえず無事に防衛できた事に隊員みんなが一息つくのだった。








「結局、依織さんの解説はお預けか〜」
近界民とトリオン兵が撤退した後も司令部の指示で警戒区域内で待機することになり、その日のランク戦は見ることができず、依織さんの解説も聞くことはできずにいた。


「仕方ないね.。また攻めてくるかもしれないし、警戒しとくことに越したことはないよ」
頼さんがイーグレットを片手に持ちながら話す。
私達3人は比較的高い建物の上にいた。


「あ、結果が出てる」
カンナが携帯をいじり、ランク戦結果の表示を見る。
「玉狛が7得点だって、すごい」
携帯の画面を2人にみせてくる。
「中位でそれはすごいね。前回の動きを見る感じそこまで大量には取れなさそうだけど」

頼さんは驚いていたが、私は三雲君と千佳ちゃんの新しいトリガーを知っていたため、あまり驚きはなかった。
きっと新戦術がうまくいったのだろう。


三雲君は前回の上位での戦いでかなり落ち込んでいた。少しでも自信につながったのであればいいなと思う。


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