「I have a bad feeling about this.」
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入隊日の翌日の2月23日、朝から真野隊と加古隊とでチームでの模擬戦を行っていた。

一時間ほどで終わり、各チーム反省会をした後で加古さんがお昼にチャーハンを作ってくれるというので、加古隊の作戦室に行き、みんなでご飯を食べた。
以前二宮さんから「加古のチャーハンは絶対食べるな、死ぬぞ」と言われていたが、
加古さんと同い年で仲のいい頼さんが「そんなことない、二宮は一度も望のチャーハンを食べたことがないから美味しさを知らないだけだ」
というので恐る恐る食べたところ、頼さんの言った通りすごく美味しくて感動した。
カンナはお代わりをしていたくらいだ。

加古隊の作戦室でそのあとしばらく雑談をして、狙撃手スナイパーの合同訓練のため一人部屋を出た。
頼さんは今回は不参加だ。別の用事があるらしい。
歩いていると携帯が震える。メッセージだ。


――今日本部にいる?会いたいんだけど――
内容を見てみると犬飼くんからだった。会いたいと言われて、思い当たることが一つ二つ浮かんだ。
――今から狙撃手の合同訓練です――
素早く返信する。色々考えた結果、会いたくなかった。

――訓練終わったら一緒に晩御飯どう?――
――宿題が残っているから――

本当は宿題はもう終わらせてあるが、体のいい断り文句として使う。
しかし彼の方が一枚上手だった。

――二宮さんたちもいるんだけど――
――行きます――

その一文を読んでうっかり了解してしまった。
ひょっとして二宮さんから誘ってくれたのかもしれないと思ったのだ。
そうなると断るなんてありえない。最近一緒に食事に行けていなかったのだ。
チャンスがあれば是非とも行きたい。
犬飼くんと二人であればご遠慮申し上げるところだが、二宮隊のみんなであれば行きたいと思えるのだ。
メッセージで時間と場所が送られてきたので、それを見て遅れないようにしようと思いながら携帯を閉じる。



「おい」
後ろからいきなり話しかけられて、驚きのあまり飛び跳ねた。
「……影浦君、村上君」
そこには影浦君と村上君がいた。

二人でいるということは今から個人ランク戦でもしに行くところだったのかもしれない。
この2人は仲がいいのだ。

「おまえこんなところで突っ立ってんなよ、邪魔だ」
「うん…ごめんね」

影浦君は相変わらずで、私にきつい言葉を掛ける。


「こらカゲ、そんなこと言うなよ。宮木この間はお疲れ様」
村上君がフォローしてくれた。この間とは近界民ネイバーの計画的侵攻のことだろう。


「村上君もお疲れ様。侵入者を撃退したんだって?すごいね」
村上君は侵入した人型近界民が遠征艇を狙って地下のドックに来たところを、太刀川さん、小南ちゃん、風間さんと一緒に撃退したらしい。

さすが攻撃手ランク上位陣だ。侵入者はかなりの実力者だったと聞いた。


「宮木のおかげで来馬隊長が無事だったって聞いたよ。ありがとう」
「え!私は何もしてないよ、守ったのだって笹森君だから」
村上君にお礼を言われて、あわてて否定する。

「笹森に礼を言いに行ったら、宮木のおかげだと。それに太一も守ってもらったと聞いたから」

鈴鳴第一はメンバー同士が本当に仲がいい。わざわざメンバーの事でお礼を言うなんて。

「守ったって大げさだよ・・・私は適当に言っただけだし」
「いや、宮木はすごいよ」
村上君のそのまっすぐな目で言われて、うつむいて照れる。


「お前も相変わらずめんどくせーもん持ってるよな」
「影浦君に言われたくないよ」
影浦君はゲラゲラ笑いながら言うのでついキツい返答をしてしまう。


「とにかく宮木ありがとう」
「うん、どういたしまして」

村上君はとても誠実だ。彼よりも誠実という言葉が似合う人はいないだろうと思っている。
それに比べて……
隣にいる影浦君をチラッと見た。

「おい尚美、そういやこれどうしたんだよ」
楽しそうに影浦君が自分の携帯を見せてよこす。


「…なんで雅人君がそれを持ってるの?」
見てみるとそれは昨日の私の写真だった。おそらく太刀川さんが撮ったものだろう。

「懐かしいなぁ?お前のこの格好見るなんてよぉ」
影浦君と私は私の方が入隊は早いがほぼ同じ時期に入隊している。当然私がC級だったころを知っているのだ。


「そっか、カゲと宮木は同じくらいに入ったんだもんな、俺は初めてみたよ」
村上君は1年ほど前に入隊しており、同じ年の正隊員の中では一番遅い。


「村上君も持ってるの?」
「ああ、グループで送られてきた」
誰だ最初に送った奴は。
しかし、仲間を売るようなことをしないのがこの人たちだ。
当然グループチャットを見せてはくれないし、元凶を教えてはくれなかった。

「みんな見たの・・・いやだな、恥ずかしい」
コスプレのような感じがしていまさらだが、恥ずかしかった。それにこの格好をしていた自分をみると一緒に失敗したことを思い出してしまい少し辛いのだ。

昨日の事は依織さんに報告した。
怒られるかと思ったら笑って許してくれた。
忍田さんもそんな感じだった。
ヒュース君本人にバレなかったからだろうか。
それでも期待に応えられなかったと言うことが自分に重くのしかかっているのだ。
平気そうにしていてもすこし考えてしまうとこのことばかりを思い出してしまう。


「髪型はあれだろ?真野さん」
「村上君よくわかったね」
「みんな見ればわかるよ、ボブも似合ってるね」


村上君にさらりと言われてすこし気持ちが浮上する。男の人に似合っていると褒められるなんて。
村上君は少し天然なところがあるのか、こういうことを照れもせず言ってのける。
ちなみに犬飼くんはこっちが照れるだろうと分かっていていうことがあるので、信用ならない。


「ありがとう…大学生になったら染めようと思ってて」
依織さんのような髪型に前々からあこがれていたのだ。


「今の宮木もいいと思うけどな、黒髪きれいだし」
また村上君に言われて照れて俯いてしまう。
となりの影浦君にこの天然をどうにかしろ、と視線を送ると当然その視線に影浦君は気づいた。


「鋼、あんまりこいつ調子のらすな、うぜーから。そろそろ行くぞ」
そういって村上君を引っ張る。

「そうだな行くか。空閑を待たせたら悪いな」
どうやら2人は空閑君と待ち合わせをしていたらしい。3人で個人ソロランク戦をするのだそうだ。

「じゃ、またお店行くね」
「俺に言わなくても勝手にしろ」

私は手を振って2人と別れ、訓練室へと歩いた。


結局元凶は誰か聞けずじまいだった。





時間が早かったのか、訓練室の人はまだまばらだった。
いつもとだいたい同じ場所をとって、開始時間を待つ。


「あれ、宮木先輩一人ですか?」
「隠岐君」
隠岐君も一人のようで話しかけてきてくれたので二人で話す。


「前回の試合、玉狛にしてやられたみたいだね」
昨日入隊式が終わった後に三雲君と千佳ちゃんが気になり記録をみたのだ。隠岐君は最後千佳ちゃんに撃たれた後に空閑君に取られていた。



「それ言いますか?俺めっちゃ気にしとんのに」
「え?そうなの!?」
「そうっすよ、あんなちっちゃい子撃ちにくいわ…」
ちっちゃい子とは千佳の事だろう。
「ちっちゃくてかわいい子は撃ちにくいって?」
「まぁ、そんなとこっすわ」
確かに女性隊員は数が少ないので、やりにくいと思う人もいるのだろう。
辻君なんかは女の子が苦手なことで有名だ。


「あ、そのかわいいってのはカンナに言わんとってくださいよ」
隠岐君にあわてて口止めされる。


「え〜どうしよっかな」
「言わんとってくれたら、これ俺も内緒にしときます」
隠岐君が携帯をちらっと見せてくる。
「隠岐君・・・どこからそれを」


先ほど影浦君に見せられたものと同じ写真を見てため息をつく。


「うちの隊長からっすわ」
「イコさん…」
ひょっとしたら先ほどの影浦君の写真はイコさん水上君ルートではないかと考える。


「ほんまはこれ高2男子グループに載せようかと思ってたんすけど、どないしよっかな〜」
隠岐君は悪そうな表情でこちらを窺う。


「この写真、出水君は載せてないんだね」 
そもそも最初は太刀川さんが出水君に送ったことから写真が流出した。
下手したらもうその年代はみんな知っているかと思っていた。


「出水は載せへんと思いますよ、独り占めしたいタイプやろうし」
「…なにそれ」
「とにかく、カンナには黙っといてくださいね」
「そもそも、私の写真を保存しているのがばれたらカンナ怒るんじゃ?」
「宮木先輩のは見てもカンナは怒りませんって、大丈夫大丈夫」
隠岐君が言う根拠がわからないが、そうなのだろう。


「…わかった、黙っとくから」
「ほな、そういうことで交渉成立」
隠岐君はニコニコしながら自分の場所に戻っていった。
隠岐君はどことなく犬飼くんにタイプが似ているよなと思った。
あの底が見えない笑い方というかなんというか。
敵に回さないようにしよう。





その後本日の訓練が始まった。
「レーダーサーチ訓練」
レーダーで指示された的を探して撃つ。指示された的以外は撃っても意味がない。
一つ当てると次の的が指示される。制限時間内にいくつ当てられるかで成績が決まる。
終わって成績を見てみると私は9位だった。今日は正隊員はあまり見かけていないが、まずまずといった順位だ。
時計を見ると、二宮隊のみんなとの待ち合わせの時間が近づいてきている。
いったん家に戻って着替えてから集合場所に行くとなると少し急がないといけない。



小走りで歩いていると声を掛けられた。
「尚美先輩!アタシ自己ベスト取ったんすよ!」
出穂ちゃんだ。嬉しそうな後輩を見て思わず足を止める。
「ほんと〜!?出穂ちゃんやったね!」
そこには出穂ちゃんの他に、千佳ちゃん、当真君、ユズル君、隠岐君、茜ちゃんがいた。


「千佳ちゃん、この間のランク戦見たよ、鉛弾自分のものにできてたね!」
千佳ちゃんに話しかける。


「ありがとうございます。尚美先輩のおかげです」
「そんなことないよ〜追尾弾ハウンドもいい感じだったし、またなんかあったら教えるから言ってね。ごめん、今日急いでるからまたね」
それだけ言って、みんなと別れる。
普段ならもう少しみんなと話したいところだが、今日は予定がある。
遅刻などもってのほか。恰好もきちんとしたい。
二宮さんの事であれば何よりも優先させるのであった。

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