「I have a bad feeling about this.」 32
ヒュース君の攻撃は真っすぐ影浦君に向かって放たれた。
そして、ヒュース君と空閑君が攻めるために距離を詰める。
しかし近距離戦なら影浦君に分があるようで、空閑君の左腕が切られ、ヒュース君も傷を負う。
攻めきれないかと思ったが、私はずっと先ほどのヒュース君の攻撃が引っかかっていたのだ。
自分と同じ攻め方のような気がして。そしてその勘は当たったようだ。
「うまい…!」
思わず声が漏れた。影浦君にトリオンキューブによる横撃が襲った。
とっさにシールドを張るが防ぎきれない。
『影浦隊長被弾!これは…!?』
実況の結束ちゃんは今の横撃に驚いているようだ。
『これは言うなれば「一人時間差射撃」ですね。弾丸の半分を遅らせて発射することで、擬似的に3対1になるタイミングを作った。「手札を知られていない」という有利があるヒュース隊員が初弾で確実にダメージをとるための工夫ですね』
『A級なら、真野隊の尚美チャンが良くやる手だね。きっとヒュース君は知らないで使ってるだろうけど』
自分の名前が出てきて驚いた。
犬飼くんはなぜここで自分を出したのか。自隊の二宮さんだって時間差攻撃は使うだろうに。何より
「なんで名前で呼ぶ……!!苗字で呼んでほしいのに……!!」
恥ずかしくなって思わずそう呟いてしまう。
たしかに自分が一番よく使う手だ。
自分のは追尾弾を使って、追尾機能の強弱と弾速を調節して時間差を作る。
ヒュース君のは真っ直ぐ飛んでいったから通常弾だと思うが、確証が得られない。
なんとなく影浦君のシールドの当たりをみて、威力が弱いのではないかと思ったからだ。
しかし、ここでそれを言ってしまってはいけない気がした。
隣にはB級所属の二宮さんと辻君がいるからだ。次に戦うことがあったらその情報が不利に働くだろう。
『これはさすがにカゲ死んだかな。もうトリオンも機動力もない』
犬飼くんの言う通り、影浦君はヒュース君の攻撃を食らった際に足をやられて身動きが取れない。
目の前には空閑君とヒュース軍が迫ってきている。
しかし、そこに壁をぶち破ってゾエ君が現れた。そのまま二人に銃弾を浴びせる。
ナイスフォローだ。
しかし、またヒュース君が床に手をやると、今度はゾエ君がエスクードによって囲まれた。
そこに空閑君が襲いかかる。
一瞬でゾエ君の首を落としたが、ゾエ君も咄嗟に炸裂弾を放った。相打ち狙いだろう。
『死に際の炸裂弾は相打ち狙いか!?北添隊員緊急脱出!空閑隊員は……読んでいたかシールドで防御!』
ヒュース君は再度弾トリガーで影浦君を狙う。
やられるの時間の問題かと思ったが、影浦君はスコーピオンを使って、下に開いた穴に落ちる。
『!影浦隊長下のフロアへ落下!?』
そして、トリオン漏出により緊急脱出した。
『影浦隊長もここて緊急脱出!やはりダメージは大きかった!玉狛第二からは逃げ切れず……ん!?いや……違います!得点は鈴鳴第一!鈴鳴第一に1点が入った!』
『トリオン漏出で緊急脱出した場合はそれに至る一番大きなダメージを与えた隊員のは得点になります。今回は村上隊員の一撃が一番重かったということでしょう』
『……あんな逃げ方するカゲは初めて見たね。それだけ玉狛に点を与えたくなかったってことかな?』
「うわー、影浦先輩にやられたな。玉狛」
「玉狛はなかなか点数稼げないな」
出水君と辻君が話す。
点数がほしい玉狛には今の緊急脱出はキツいだろう。
『空閑隊員との相打ち狙いと思わせて影浦隊長の逃げ道も作っていた北添隊員の判断が良かったですね』
『惜しくも影浦隊長は獲り逃がしたが、瞬く間に二人を攻略してみせた玉狛第二!そのままの勢いで鈴鳴第一に挑みかかる!』
鈴鳴第一は来馬先輩の両攻撃で挑むようだ。
『鈴鳴の新陣形再び!影浦隊を追い詰めたこの戦法、玉狛第二はどう戦うか!」
ヒュース君はトリオンキューブを出して攻撃し、中距離でやりあうようだ。
『撃ち合いに応じた玉狛第二!トリオン能力に優れるヒュース隊員だが、来馬隊長の両攻撃とではいい勝負か!?』
「やっぱトリオン多いとエスクードすっげー出せるな」
「私だったらどれくらい出せるかな……」
やったことはないからわからないが恐らく半分も出せないだろう。
ヒュース君が再び床に手をやった。仕掛けるつもりか。エスクードが出てくる。
『ヒュース隊員、三度エスクード!撃ち合いは不利と見て接近する動きか!?』
しかし、村上君の旋空弧月でエスクードは真っ二つに切られて、玉狛の二人は思うように前に進めない。
『村上隊員の剣圧に接近を阻まれた玉狛第二!距離をおいての撃ち合いは鈴鳴第一の思惑通りか?』
『玉狛が来馬先輩のところまで詰めたいのはわかるけど、鋼くんの壁が厚いよね。玉狛の二人がそれぞれA級レベルなのは間違いないけど、守りに徹する鋼くんを攻略するのは骨が折れるはず。さっきの影浦隊みたいに分断して2対1の状況を作れれば……』
『「数の有利」ということなら同じフロアの反対側に三雲隊長が来ていますが……』
三雲君はバッグワームを起動しているので、鈴鳴第一にはまだ気づかれていないはずだ。
『いるにはいるけど、味方のカバーがもらえない位置だからなー。今鈴鳴に居場所がバレたら一瞬で各個撃破されちゃうと思うよ』
『徐々に押し返される玉狛!やはり撃ち合いでは鈴鳴が一歩リードか!』
『この距離だと空閑くんが絡めないのがツラいね』
「メガネくん、出どころが難しいな」
「うまく味方の二人とタイミング取らないと」
三雲君に教えていた出水君と二人で心配する。気分は師匠のようだ。
ヒュース君がまた床に手をやる。
エスクードを起動させるつもりかとみんな思ったはずだ。
しかしそれは釣りで、空閑君が後ろ手にグラスホッパーを起動させていた。ヒュース君はそのままグラスホッパーの勢いで村上君に近づく。
「うわぁ!空閑君かな?使い方本当に上手い!」
カンナなんかは空閑君の使い方を真似するように色々模擬戦でしていた。今回のも真似するに違いない。
村上君は咄嗟に弧月で受け止めるが、ヒュース君は村上君の腕を掴んだ。
ズドン!
村上君の後ろにいた来馬先輩が一瞬にして吹っ飛んだ。
『……!?村上隊員にエスクードを生やした!?』
そして、後ろに吹っ飛んだノーガードの来馬先輩に素早く三雲君が攻撃を放った。
『ここで三雲隊長が動いた!ノーガードの来馬隊長に通常弾が刺さる!』
そのまま三雲君は来馬先輩に向かって攻めようとするが、
村上君がそれを許さない。
右手に持っていたレイガストでスラスターを起動し投げつける。
しかし、それを玉狛は狙っていたようだ。レイガストがない村上君をヒュース君と空閑君で挟んだ。
『挟んだ!2対1!』
二人で同時に村上君を攻撃する。
流石の村上君でも守り切れないと思ったが、
村上君は後ろ手に弧月をやって空閑君をきり、そのまま前に振り下ろした。
『は!?』
先ほどから結束ちゃんは驚きっぱなしだ。
『曲芸』
「うまい」
犬飼くんと辻君の言葉が重なる。
辻君は村上君と同じ弧月使いなので私達よりも今の動きの凄さがわかるのだろう。
ヒュース君もそのまま切られるかと思われたが、先に切られた空閑君が村上君に生えたままのエスクードをスコーピオンを使って横に蹴り飛ばす。
その反動で村上君の剣の軌道がそれ、ヒュース君には当たらなかった。
ヒュース君はそのまま村上君の懐に入り込むと素早く胸に剣を突き刺した。
『個人技を玉狛の連携が上回った!村上隊員は緊急脱出!そしてこれは……来馬隊長も逃げられない!』
ヒュース君が来馬先輩に向かって行こうとした時、来馬先輩が下からの攻撃に合う。天井抜きだ。
『来馬隊長を仕留めたのは絵馬隊員!ここで鈴鳴第一が全滅!』
ユズル君はバッグワームを起動してチャンスを窺っていたのだろう。上には残るは玉狛しかいない。
三雲君もすぐに下からの攻撃に遭い、足を取られた。
『三雲隊長にも大ダメージが入った!しかし……東隊の二人が絵馬隊員をマークしている!』
5階から4階の映像に切り替わる。
『ユズルくんは迎え撃とうにも再充填間に合わないなこりゃ』
ユズル君はそのまま後ろに身を移し、銃を使ってガラスを割った。
迷うことなく身を下に投げる。
『絵馬隊員、吹き抜けを使って階下にエスケープ!』
東隊の二人は攻撃手なのでこれでは攻撃が届かない。
『……いや』
嵐山さんが気づいたようで、ユズル君は空中で撃たれた。東さんによる狙撃だ。
『逃げた先には東隊長が待っていた!絵馬隊員もここで脱落!ということは……勝負の行方は玉狛第二と東隊……残り2部隊に絞られました!』
結束ちゃんが機械操作をして、モニターに全体の得点を表示させる。
『現在得点はご覧の通り。東隊が1点獲って3部隊が並んだ!』
『今の1点は東隊の得意パターンでしたね。攻撃手二人が追い込んで狙撃で仕留める。吹き抜け側に追い込まれた時点で絵馬隊員はほぼ詰んでいたので、奥寺・小荒井両隊員が獲った点と言っていいでしょう』
『なるほど。その東隊は下の階から玉狛を窺う動き。一方6階の玉狛第二は三雲隊長が足を失って動きが取りづらいか』
『三雲くんが落ちそうだね。順位争いはちょっときつくなったかな?』
『ROUND 7開始前の順位と得点はこの通りです』
結束ちゃんがさっと表示させる。
影浦隊は2位、34点。玉狛第二は4位、30点
『これに現在までの得点を加えると……三雲隊長がこのまま落ちれば、影浦隊は36点。玉狛第二とは3点差になります』
『玉狛が目指している遠征部隊選抜の参加条件はB級2位以上。この試合で現在2位の影浦隊を追い越すにはあと4点獲る必要がある……』
『うーん、思ったよりきついね。東隊が全員緊急脱出+生存点2点が最低条件でしょ?東さん落とせるか?っていう』
『確かに。東さん隊長は今期6試合で緊急脱出したのはわずかに1回。ROUND 2で弓場隊・王子隊・香取隊に集中攻撃を受けた時だけです』
結束ちゃんの実況を聞いててすごいと思った。その時はスカウト旅でいなかったはずなのに。全試合の記録を見たのか?頭が下がる。
『……しかしそうなると三雲隊長はトリオン切れで落ちて影浦隊の得点になる前に東隊に落とされた方が点差的には楽になりますね』
『理屈はそうだけど、点数の露骨な調整は流石に罰点あるでしょ』
『敵から60m離れての自発的緊急脱出でも影浦隊に点を与えず退場できますが……モール内で戦う以上はそれも難しいと言えそうです』
『やはりここで三雲隊長緊急脱出!影浦隊に2点目が入った!これで残るは両部隊3人ずつ。この中で空閑隊員のダメージが大きいか。ここからの展開どう見ますか?』
『うーん3対3と言っても布陣が違うよね』
『ですね』
犬飼くんの言葉に嵐山さんが肯定する。
『3人が揃っている東隊が有利なようでもあり、狙撃手の位置が知られていない玉狛が有利なようにも見える。外にいる雨取隊員が浮くか効くかで戦況が変わりそうな気はしますね』
『雨取隊員には戦況を変えることのできる一発がありますからね』
ここで、モニター上に無数の反応が出始めた。
『おっと東隊ここでダミービーコンを起動!レーダー上での撹乱を仕掛けた!』
『にしても結構な数出してるね。かなりのトリオン注ぎ込んでる。モール内で勝負になるのを予期してたのかな?』
『東隊は「建物の中」というのを利用してますね。ビーコンの密度が高い』
『ビーコンのトリオンが切れるまでの数分間は東隊が圧倒的に有利ですね』
『おっ、元東隊も太鼓判だ……さあ玉狛はどう凌ぐ?』
玉狛は千佳ちゃんを使うようだ。今は東さんもモール内にいるので、狙撃の恐れがない。居場所がバレても問題ないと判断したのだろう。モールに攻撃を落とす。これは炸裂弾だろう。
しかし、予想以上に威力がすごかった。
思わず、口に手を当てて驚く。
「相変わらずすっげーなトリオン怪獣!」
出水君は楽しそうに話す。
「想像以上だね、驚いた。これは気をつけないと」
辻君も変わらずクールな表情だが、驚いているらしい。
そして、その爆撃で一人緊急脱出したのが見えた。
『な……なんだこれは!一撃でショッピングモールが半壊!雨取隊員のアイビスでの砲撃は記録で見ましたが……』
結束ちゃんが興奮気味に実況する。
『炸裂弾だとこうなるんだねえ……初めてみた』
犬飼くんも驚いたようだ。
『大爆発に飲み込まれて奥寺隊員がダウン!玉狛第二が追加点を挙げた!……しかし前情報ではたしか「雨取隊員は人を撃てない」という話だったはずですが……』
結束ちゃんも千佳ちゃんのことはしっかり調べていたらしい。
『そうなんだよね。その弱点を克服したんならこの試合勝ち確だけど、もし撃てるんなら最初から撃ってるはずだから、今のはうっかりヒットかな?』
私も犬飼くんと同じ考えだ。
千佳ちゃんのメンタルが心配になってくる。私の友人は間違えて人を撃った時寝込んだからだ。
『東隊は玉狛の付近に潜伏する動き』
『雨取ちゃんがもし人を撃てたとしても味方を巻き込む弾は撃てないからね。味方もろとも殲滅する気で撃つ場合でも、うっかり敵だけ生き残ったら最悪だし』
犬飼くんはROUND4で千佳ちゃんの爆撃を喰らったことがある。その時は誰も落とされなかったが。
『さあB級ランク戦ROUND 7も大詰め。生き残っているのは2部隊5名!現在の位置はこの通り。数の有利を取った玉狛第二が身を潜める東隊をサーチしにかかる!』
ヒュース君がエスクードを次々に起動し始めた。
『ヒュース隊員、道を塞いで東隊の逃げ道を狭めていく!』
『エスクードの射程は標準で25mくらいだけど、ヒュースくんのトリオン量ならもっと遠くまで封鎖できるねー』
犬飼くんの言葉に、ヒュース君のトリオン量はどれくらいなのだろうと考える。キューブの大きさで大体わかるが、あれだけあったら戦術も拡がっていいなと思った。
『なるほど。玉狛第二は……大穴が空いた南側は雨取隊員がカバーし、反対側からヒュース隊員が圧をかけ、それに東隊が反応したところを空閑隊員が奇襲する、という構えのようですね』
『東隊も玉狛の狙いには気づいてそうだけど、どう対処するのかな?』
「時間が経つにつれて動きづらくなってきますから、素早い対応が求められますね……東さんどうするんだろ」
私はモニターを見ながら話す。
そう言っているうちにもう対応してきたようだ。流石東さんだ。
『おっと?東隊のレーダー反応がいくつか南に向かって動いている!雨取隊員の居場所に当たりをつけて逆にプレッシャーをかける算段か?』
『まあ玉狛側からするとはったりにしか見えないだろうけど……』
お互い裏の読み合いだ。
南側に向かっていた反応がレーダーから二つ消えた。
『うわあさらに余計な情報を増やす』
犬飼くんが楽しそうにモニターを見る。
『東さんがやりそうな揺さぶりですね』
東さんをよく知っている結束ちゃんがそう話す。
『さあ今度はまた玉狛が対処する番だ』
犬飼くんが玉狛の動きを注視する。
『ひとまずは雨取隊員を逃すのが1番早いような気もしますが……』
『雨取隊員が移動中は建物の南側をマークできなくなるので、玉狛が今の攻めを継続する気なら動かしづらいところですね』
結束ちゃんの考えに嵐山さんは否定的だ。
『と、なると玉狛の取れる手は……』
『東隊の仕掛けをフェイクと断定して攻めを継続するか、「万が一」を考えて攻めを捨てて雨取隊員の守りに入るか。あるいは「第3の選択肢」か』
嵐山さんがわかりやすく選択肢を示して説明した。
『けどまあ三雲くんの性格からして雨取ちゃんの守りを捨てるっていう選択肢は……』
『選ばない気がします』
犬飼くんと嵐山さんは三雲君の性格をよく知っている。
『!玉狛に動きがあった!空閑隊員が雨取隊員のカバーに向かい、ヒュース隊員は残った模様!』
『両対応の動き「第3の選択肢」で来ましたね』
『けど戦力を分散していいのかな〜これだとモールの中ほぼ2対1になるけど』
犬飼くんの言うとおり、中には東さんがいるのでヒュース君一人には荷が重い気がする。
『上の階からじわじわと封鎖して着実に東隊を追い込んでいくヒュース隊員!』
『小荒井隊員がモールから脱出するにはどこかで壁を破壊する必要がありますが……』
『その前にヒュースくんに見つかりそうだね。カウンター狙うかな?』
そういう間にヒュース君が小荒井君を補足したようだ。
ヒュース君の目には小荒井君の片足がないことも見えているだろう。
『ついにヒュース隊員はが小荒井隊員を捉えた!ここで決まるか!?』
ヒュース君がトリオンキューブを出して小荒井君を狙おうとしたところ、東さんのものであろうバッグワームが見える。
やはり小荒井君を囮にしてヒュース君は狙われたようだ。
ヒュース君もそれを読んでいたようで、バッグワームめがけて攻撃を放つ。
東さんに当たったかと思われた攻撃は、バッグワームのみに当たった。
東さんはそこにいなかったのだ。
『あっ!』
バッグワームとは反対側からの攻撃にヒュース君の体に大きな穴が開く。致命傷だ。
東さんによるアイビスでの攻撃。
『ヒュース隊員緊急脱出!』
しかしヒュース君もただではやられなかった。
残していた半分の弾でしっかり東さんの足を削った。
『東隊が土壇場で追加点を獲った!そしてショッピングモールを脱出!』
この後の東隊の動きが気になるところだが、すぐに千佳ちゃんによる炸裂弾が降ってきた。
『あっと東隊の二人が自発的に緊急脱出!』
『東隊は足にダメージがありましたからね、妥当な判断だと思います』
嵐山さんの言うとおり、ヒュース君が先ほど東さんの足を削ったことが生きたことになる。
『東隊の二人は逃げ切りで退場。最後まで生き残った玉狛第二には生存点2点が加算されます!』
『ここで試合終了!最終スコア6対2対2対1!玉狛第二の勝利です!』
画面上に得点表が表示される。
『大量6得点!最後は東隊長に討ち取られたものの、玉狛の新人大暴れ!という結果になりました。解説のお二方はこの試合いかがでしたか?』
『ていうかあれ……最後の東さんの変わり身の術。どういう仕掛けだったの?』
犬飼くんが結束ちゃんに逆に質問する。
『私の想像ですが……』
結束ちゃんが素早く画面操作を行う。
『おそらくこういうことだったのではないかと』
画面に絵が表示される。芸が細かい。
ダミービーコンの反応に紛れて小荒井君が誘導するヒュース君を待つ。バッグワームは上のフロアに置いたライトニングに引っ掛けておく。
ヒュース君の攻撃に合わせてアイビスを起動。それと共にライトニングが消えるので、バッグワームが落ちる。
バッグワームに反応したヒュース君を東さんが撃つという流れだ。
見ていてわかりやすかった。
『うわぁえげつな。あとで記録見直そ』
またこういう手を使ってくるかもしれないと犬飼くんは思ったのだろう。見た目に反してこういうところが真面目なんだよなぁと思う。
『これは……視野が広い隊員ほどひっかかりそうですね。一方のヒュース隊員も万が一に備えて弾丸を半分手元に残してた。最後落とされながらも東隊の機動力を奪って退却を余儀なくさせたヒュース隊員の判断は的確だったと思いますね』
嵐山さんはヒュース君を褒める。
『……ではあらためて試合を振り返っての総評をお願いします』
結束ちゃんが2人に話を振って、まず犬飼くんが答えた。
『序盤はカゲじゃなかったらもっと刺さったと思うよ。まあ結果的には鈴鳴は1点どまりで太一くんとか一発も撃たずにやられちゃったわけだけど』
犬飼くんの言うとおり、影浦君は副反応のおかげであの程度のダメージに抑えられたのだろうと思う。その点鈴鳴は少し運が悪かった。
『鈴鳴第一は基本戦術も進化しているのでそのうえで相手に「何をやってくるかわからないぞ」と思わせられればそれは今後の強みになると思います』
嵐山さんは褒める。
『玉狛が参戦してからの中盤戦は盾トリガー無双って感じだったね。あれだけ数出してトリオンが切れないのもすごいけど、使い方に驚いた。人から生やすやつとか』
『玉狛支部には迅隊員と烏丸隊員という二人のエスクード使いがいるのでそこからヒントをもらったのかもしれませんね』
私も盾使いはあまり対戦したことがなかったので、新鮮で楽しかったし勉強になった。
確かに烏丸君が使っているのを前は良く見ていたが、あんな使い方はしていなかった様に思う。ヒュース君は発想力があるのだろう。
『まあ相変わらず鋼くんがヤバくて玉狛と鈴鳴はけっこういい勝負だったと思うけど……空閑くんが地味にいい働きしてたよね』
『そこですね。今回はヒュース隊員が活躍した印象が強いですが、それと同じくらいに全体を通した空閑隊員の細かい援護が大きかったと思います』
『ヒュース隊員の能力をより生かす動きをしていた、と』
結束ちゃんがまとめる。
『そういうことですね』
『逆に言えば今回はカゲの動きがいまいちだったなーいつもはもっと余裕ある感じなんだけど、慎重というか消極的な感じがした。最後必死に逃げたのもなんかカゲらしくない感じだったし』
犬飼くんの言葉に私もうなずく。いつもはもっと無茶をやっているのに今日は良くも悪くも慎重だった。どうしたのだろうか。
『……でそのあとは雨取ちゃんのハイパー炸裂弾か。結果的には東隊は撤退を選択したわけだけど、あれって小荒井たちが決めてるんだよね?』
『東さんの育成方針だとそのはずですね』
犬飼くんの問いかけに結束ちゃんが肯定する。
『奥寺はともかく小荒井が退くのを選んだのは意外だなー最後までワンチャン狙うと思った』
『成長を感じますね』
嵐山さんが褒める。みんなランク戦ごとに成長が感じられてすごいと思う。
『まあ結局今回の感想は「玉狛怖えー」だね』
『ヒュース隊員の情報がないことを最大限活かして、しっかりと点を獲ったあたりが玉狛らしいと思いましたね』
おそらく今回も三雲君が策を作ったのではないかと予想する。
『なるほど……さあそして総合順位。夜の部の試合が残っているため暫定的なものですが…影浦隊と玉狛第二が同点で横並び!同点の場合はシーズン開始時の順位が高い方が上になるので、影浦隊が2位、玉狛が3位ということになります!遠征選抜の条件「B級2位以上」を巡る戦いは最後までもつれそうですね。ROUND7昼の部は以上で終了になります。解説の嵐山さん、犬飼先輩ありがとうございました』
結束ちゃんが最後にさっとまとめる。
『ありがとうございました』
『結束ちゃんもおつかれ〜』
嵐山さんと犬飼くんも挨拶をして、終了した。
「最後の最後で影浦隊と玉狛が横並びか〜これ二宮さんとこの役割デカいんじゃないすか?玉狛が遠征選抜行けるかどうか。組み合わせ的に次、玉狛と当たる確率高いでしょ?」
出水君が二宮さんに訊ねる。
「どうだろうな」
二宮さんはあまり興味がないように見えるが、二宮さんが玉狛に注目していることに私はうすうす気づいている。
「一応過去トータルの組み合わせ回数が少ないとこほど当たる可能性が増える傾向はあるらしいけど、ほかの部隊との兼ね合いもあるからね」
辻君の言葉に玉狛は今シーズンがデビューでどの隊も試合回数は多いから確かにわからない。
「どこが来ようといつも通り撃ち堕とすだけだ」
「え〜〜なんか感想ないんすか?前はもっとボロクソに言ってたじゃないすか」
出水君の言葉を聞いて、前に二人に会ったROUND3の時を思い出す。あの時の事だろうか。
「……おまえはどうなんだ?玉狛の評価は前と変わったのか?」
「そうすね……今の玉狛第二となら結構面白くなりそうかな」
二宮さんの問いに出水君はにやりと笑って答える。
「……だろうな。つまりはそういうことだ」
二宮さんは明言はせずに立ち上がり部屋を出ていく。それについていくように辻君も出て行った。
出水君と二人きりになる。
「二宮さんも素直じゃないなぁ〜」
「そうだね、玉狛が気になるって顔に書いてあるよね」
二宮さんの師匠と二宮さんの弟子がそれぞれ笑う。クールに見えてわかりやすいのだあの人は。
「そういえば尚美さん、メガネくん今唯我に71勝ですよ」
「そうなんだ、50勝いったんだね」
最近私は忙しくて三雲君の面倒を出水君に任せきりになってしまっていた。
50勝超えたのなら約束通り追尾弾を教えてあげないと。
「合成弾教えるまではまだまだすけどね」
「三雲君、今はあまり合成弾には興味なさそうだけどね」
自分の戦力アップよりも味方の事に夢中になっていそうだ。
彼は自分の事より他人の事に一生懸命になりがちな気がする。
それが少し気にかかってはいた。
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