「I have a bad feeling about this.」
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36

その日の夜、玉狛支部に向かっていた。


三雲君に日中会った時に借りを返せとは言われたが、まさかこんなことを頼まれるとは思わなかった。

本部の人間に見つかるとややこしいので、誰にも見つからないように玉狛へとやってきたわけだが、入り口でばったり烏丸君に会ってしまった。


「あれ?宮木先輩玉狛に何の用っすか?珍しい」
烏丸君は私の後ろをチラッと見て、他に誰もないことを確認する。
私は一人であることを少し申し訳なく思った。烏丸君はおそらく自分ではなく違う人がいることを期待したはず。


「……烏丸君、それが三雲君に呼ばれて」
それだけ言ったら烏丸君はわかったらしい。


「なるほど、宮木先輩も呼んだのか。とりあえず入ってください」
玄関の扉をあけてくれた。

一人で入るのはなんとなく気まずかったので、助かった。
そのまま促されるがままに仮想訓練室に入ると、玉狛第二のメンバーが揃っていた。


「こんばんは……」
完全に部外者なので恐る恐る挨拶する。

「宮木先輩夜にありがとうございます」
最初に声をかけてきたのは三雲君だ。

「ううん、ちょうど何もない日だったから大丈夫だよ」


少し居心地が悪そうにキョロキョロ周りを見る。
初めてくるところなので落ち着かないのだ。


「おっ、宮木先輩」
「尚美先輩、ようこそ」
空閑君と千佳ちゃんが声をかけてくれる。


「空閑君、千佳ちゃんお邪魔してます〜これみんなに差し入れね。シュークリームだよ」
手に持ったままだったお土産のシュークリームを千佳ちゃんに渡す。

玉狛支部に初めていくのに何もないのもどうかと思い、途中で買ってきたのだ。
ちなみに二宮隊に行く時によく持っていく行きつけのお店のものである。

正確な人数が分からないので小ぶりのシュークリームを20個買ってきたが、なかなかの荷物になってしまった。


「わぁ!ありがとうございます」
千佳ちゃんはぱあっと明るく喜んでくれた。
自分のチョイスは間違えていなかったようだと安心する。


「尚美!良い心がけだな!」
「陽太郎君久しぶりだね。元気そうでよかった」
声をかけられて視線を合わすようにしゃがみ込む。
陽太郎君とは本部で時々会うことがあるが、最近はなかなか会えていなかったので元気そうで安心した。


「うむ、尚美も元気にしてたか?」
「うん、元気だよ〜」
思わず笑顔になってしまう。
すると誰かの視線が気になった。


チラッと視線の方向を見ると、こちらをじっと何か言いたげに見てたのはヒュース君だった。


「あっ、あの……何か……?」
思わず相手は年下なのに敬語になってしまう。色々と仕出かしてしまった手前気まずかった。


「陽太郎、なぜこいつがここにいる?こいつは入隊式の時に新人でいたぞ」
ヒュース君はそう言いながら、こちらを指差してきた。


「あっ、気づいてた……?」
自分の存在が気づかれていたことに驚く。そんなに目立つことをしていたつもりはなかったのだが。


「ヒュースお前知らないのか、この人もお前と一緒で入隊0日でB級に昇格した新人だぞ」
私の横で烏丸君が言う。相変わらず冗談を言うのが好きみたいだ。


「ん……そうなのか?たしかにこいつは新人の割にトリオン操作が一番上手そうだった」
「……それはどうも」
褒めてるのか微妙な言葉だが一応お礼を言っておく。


「烏丸君嘘はダメだよ」
これはヒュース君、ひょっとして信じているのではないだろうか。
早めにネタばらししておいたほうがいいと思い、烏丸君を咎める。


「そうすか?ヒュースすまん、嘘だ」
「なっ?!」
ヒュース君は烏丸君を見て信じられないような表情をした。
やはり信じていたようで、意外と素直な性格なのかもしれない。


「ヒュース!前に言っただろう?真野隊の宮木先輩だ!お前のことで色々動いてくれてたんだよ」
「こいつが……?」
三雲君の言葉にヒュース君は今度は本当だろうな?と言わんばかりの目で見てくる。
たしかに入隊式の時に気づいていたんなら、そう思うだろう。


「改めて、真野隊の宮木尚美です。今日は三雲君に呼ばれてきました。入隊は3年前にしています。ポジションは……狙撃手スナイパーだよ」
「……ヒュースだ」
無愛想だが、名乗ってくれたので一応良しとする。


「宮木先輩どうぞこっち座ってください〜」
栞ちゃんに席を案内された。


「あ、ありがとう」
「で、俺たちは何をすりゃいいんだ?」
烏丸君が三雲君に訊ねる。
私も詳しいことは聞いていないので、気になっていたところだ。


「烏丸先輩と宮木先輩には仮想・二宮さんをやってもらいたいんです」
「仮想・二宮さん……?」
「え……」
まさかのお願いに少し戸惑う。
自分に二宮さん役が務まるだろうか。


「宇佐美先輩に訊いたところ、訓練室ならトリオン量の設定をいじれるらしくて……」
それだけで三雲君が言おうとしている事は大体わかった。

「つまり俺たちを二宮さんと同じトリオン量の設定にしておまえらと戦うってことか?」
烏丸君もわかったようで、話を続ける。


「はい」
「宮木先輩はともかく俺は本職の射手シューターじゃない、二宮さんの技術には敵わないぞ」
「記録で見つけた両攻撃フルアタックのシーンがいくつかあるのでそれを真似してもらえれば……」
「とりまるくん器用だから大丈夫だよ〜」
横から栞ちゃんが言う。


「ヒュースでもにのみやさん役できそうではあるけど……」
ヒュース君をチラッと見ながら空閑君も話す。


「それだとオレ自身の訓練ができないからな」
ヒュース君も試合に出るのだ。訓練はしておきたいだろう。
みんなの話を聞いていると、携帯が振るえた。
メッセージだろう。
ちょっとごめんと声をかけて携帯を見る。
そこには依織さんからメッセージがきていた。
――今日は本部にいないけど、どこに行ってる?――
依織さんとまことと私は本部基地内の居住スペースに住んでいるため、晩御飯は大体3人で食べているのだ。
おそらく部屋にいなかったから心配して連絡をしてきてくれたのだろう。
依織さんには言ってもいいだろうとメッセージを返す
――訳あって三雲君に呼ばれて玉狛にきています。夕飯は先に食べてください。連絡忘れててすみません――
三雲君に呼ばれたことに慌てていて、依織さんに不在にすることを言うのをすっかり忘れていた。
メッセージを送って携帯をしまうと、自分の話題になっていることに気づいた。


「修、宮木先輩によく来てもらえたな」
烏丸君が隣で三雲君に話していた。

「はい、多少強引な手を使いましたが……」
本当に強引だったと思う。


三雲君は穏やかそうな顔をして意外と強気な手を使うことがわかった。


「まあ二宮さん対策をするならこの人が一番だ」
「なんでだ?さっきこいつは狙撃手だと言ったぞ」
ヒュース君が烏丸君の話に入ってくる。
たしかに射手の練習をするのに、狙撃手をやっている人間が来ればおかしいと思うのは当然だ。


「宮木センパイは元々射手やってたって聞いたぞ。カゲ先輩達からもなかなかのやり手だと」
「……」
空閑君に言われて黙る。
影浦君が自分のことを言ったんなら多分褒め言葉ではないはずだ。空閑君はうまく隠しているようだが。


「そうなのか?今はやってないのか?」
ヒュース君はまだ気になるようだ。


「まぁ、色々あって今は狙撃手として活動してるよ」
ここで詳しく話す話題でもないので濁して答える。


「そんなので大丈夫なのか?」
ヒュース君は納得いっていないようで、まだ疑っている顔だ。
それをみた烏丸君がヒュース君に話しかける。


「宮木先輩は二宮さんの弟子だ。二宮さんは他に弟子を取っていないから、一番二宮さんの事をわかってるはずだ」
「え!そうなんですか?!」
三雲君にはそのことを言ったつもりだったが、どうやら言ってなかったらしい。驚いてこちらを見てくる。


「うん、まぁ、そういうことです。あと烏丸君「元」弟子ね」
私とっては二宮さんの弟子だったと言う事は誇れる事だ。


「お前手を抜かないだろうな?」
しかしヒュース君に疑われてカチンときた。
二宮さんの事となると自分は驚くほど強くなれるのだ。


「手を抜くつもりなんてないよ、私なんかが少し手伝ったことで二宮さんが負けるとでも?……ずっと射手一位としてやってきた二宮さんをあまり舐めない方がいい」

自分と二宮さんの事を乏しめられたような気がして強い口調で言ってしまう。


「それに二宮さんは一人で戦っても強いけど、今回は部隊でやるんだよ。二宮さんの事ばかり気にしてるみたいだけど、犬飼くんだって辻君だって甘く見ないほうがいい」
二宮さんをずっと支えてきた二人、いやひゃみちゃんのことも信頼しているのだ。
二宮隊は全員揃ってるからこその強さがある。本当はもっと強かった。


私の言い様に流石にヒュース君も悪いと思ったのか、バツの悪そうな顔をしている。


「宮木先輩すいません、僕が無理に頼んだから」
私とヒュース君の間に流れる空気にあわてて三雲君が割って入る。


「もっ、もちろん、今回は三雲君に借りがあるからきただけで、普段ならこんなことしないよ」
言いすぎたと思って笑いながら話す。


「三雲君は悪くないよ。ヒュース君だって私の立場を心配して言ってくれたんだよね?師匠との関係が悪くなるかもしれないって……心配いらないよ、そんなヤワな関係じゃないから」
「それならいい」
ヒュース君はそれだけ言うとそっぽを向いてしまった。


「そう?それなら良かった」
ほっと息をつく。


「それじゃ始めますか〜!」
栞ちゃんが手を叩いてみんなを立ち上がらせる。


「とりまるくんと、宮木先輩は設定いじるんで待っててくださいね〜」
キーボードを叩きながら栞ちゃんは話すが、そのスピードが凄まじかった。
やはりどこのオペもすごい。







「……これ、なんで?」
訓練室に入って、トリガーを起動させた時の自分の格好に驚いた。
普段の見慣れた白ではなく黒だった。
しかも、これはもしや二宮隊の隊服ではないだろうか?


「仮想二宮さんだからじゃないっすか?」
隣に立つ烏丸君も同じように二宮隊の隊服になっていた。
イケメンだから何を着ても似合うが、スーツはずるい。



「そうだとしても……」
気恥ずかしかった。
これはまるで、コスプレではないか。


「これ、真野隊の写真集に使えるんじゃないすか?」
烏丸君から写真集の話題が出たことに驚く。噂話とかは気にしないタイプなのかと思っていた。


「烏丸君もその噂知ってたんだね」
「はい、この間の防衛任務の時に聞きました。買いますよ」
「ハハッ……買うの……?」
そうだった。烏丸君は好きな人のためには意外と猪突猛進タイプだった。
乾いた笑いをして誤魔化した。



「じゃあ始めるか」

烏丸君は二宮さんと同じように両手にそれぞれ分割数の異なったキューブを出す。本職ではないのに器用だ。
昔から烏丸君はすぐに何でもそつなくこなせていたイメージだ。
私も負けれられないとキューブを出す。

 
「やるからには本気でやるからね。ハチの巣にするよ」
「よろしくお願いします!」
三雲君が気合の入った返事をした。



烏丸君が空閑君とヒュース君相手に両攻撃する様子を三雲君と2人、横でみる。


ヒュース君はダメージを食らい、活動限界のアナウンスが流れた。


「やはり先手を取られると苦しいな」
「でも今回のはけっこう耐えたじゃん」
ヒュース君の言葉に空閑君が話す。


「エスクードもう一個間に合えばいけるんじゃない?」
「いや二宮はおそらくさらに早い」
ヒュース君の言葉にうなずく。


「そうだね。記録で見る以上に二宮さんの攻撃は早いし、えぐるような攻撃だよ」
「……二宮さん対策なのはわかった、けどなんで「一対一」の設定なんだ?」
烏丸君が三雲君に訊く。


「二宮さんに有利を取りたいなら両攻撃を「使わせない」対策をするべきなんじゃないか?」
「私もそう思うよ、二宮さんの両攻撃に勝てる人なんてA級でもそういないし」
そして、一朝一夕で出来るものでもない。



「……ぼくも最初はそう思いました。……けど今はちょっと考えがちがってて、二宮さんが一対一で使う両攻撃は超強力ですけど、逆に言えば「確定で防御が空く瞬間」でもある。つまりこっちが一対一の状況を用意すれば、二宮さんに大きな隙を作れると思うんです」
三雲君の話は確かにそうだと思った。現に両攻撃する瞬間を狙撃手は狙うことも多いし、


私もそうやって狙われてきたし、狙っている。
ガードがない相手ほどたやすく崩せる相手はいない。


「今手伝ってもらってるのは隙ができるタイミングを覚える訓練と、一対一を長引かせて二宮さんの隙を持続させる訓練なんです」
「……つまり二宮さんの両攻撃を「防ぐ」ための対策じゃなくて「あえて使わせてその隙を突く」ための対策ってことか」
烏丸君が三雲君の話をまとめて整理する。


「はい」
「おまえたちの狙いは理解できる…が、二宮さんが一対一の誘いに乗ってこなかったらどうするんだ?単独一位の二宮隊がわざわざヒュースと一対一で撃ち合う必要はないだろ」
「「二宮隊」はそうかもしれません。でも「二宮さん」は乗ってくると思います」
三雲君のその話にピクリと反応する。何故そう思ったのか興味がある。


「何か確信があるのか?」
烏丸君が訊くのを横目で見守る。
「確信ってほどじゃないですけど…まぁ……」
「二宮さんと話す機会があったの?」
今度は私が三雲君に訊く。


「はい、一度玉狛支部に来ていたことがあって、あとこの間焼肉を食べに行ったときに会いました」
「そう」
それだけで二宮さんに何か思うところがあったのだとしたら三雲君は普段から人を良く見る癖がついているのかもしれない。


「あの人は意外とアツい所があるからね」
私はそんな師匠が大好きなのだが。




「とりまる先輩〜〜ゆばさんの早撃ちもやってよ」
「生駒の旋空もやってくれ、おまえならできる」
空閑君とヒュース君が烏丸君に無茶振りをする。


「無茶言うな」
「あの二人は特別だから、同じようにやろうと思っても…」
途中で驚いで止まってしまった。




「私が早撃ちやってあげるよ」
「生駒旋空できるかな〜〜無理だったらごめんね」
なぜがカンナと依織さんが空閑君とヒュース君の後ろに来ていた。



「え、なんでここに!?」
思わず声が大きくなってしまった。
空閑君とヒュース君も後ろを振り返る。


「誰だ…?」
「真野さんとカンナ先輩」
ヒュース君は初対面だから知らないだろうが、空閑君は手を挙げて特に驚いた様子もなく挨拶する。



「ヒュース君初めまして、そこの尚美の所属する真野隊の隊長をやってる真野依織だよ、よろしくね」
「同じく、銃手ガンナーの紫カンナです!」
2人がヒュース君に挨拶をする。



「え、依織さんどうしたんですか?」
あわてて駆け寄る。


「尚美から連絡もらった後にカンナと会ってね、尚美が修行をつけるとかなんとか聞いたから面白そうで来てみた」
依織さんはにっこり笑って話す。


「ちゃんと桐絵にこっち来ること連絡しといたから大丈夫ですよ!」
カンナに言われて、何が大丈夫なのかわからなかった。
カンナと小南ちゃんは同い年で仲がいいのは知っていたが。


「尚美いい恰好してるね」
依織さんが私の恰好をみて楽しそうに話す。


「あ、いや、これは栞ちゃんが」
「尚美先輩すっかりコスプレはまってるじゃないですか〜〜」
「カンナ怒るよ」
「はーい、すいません」


「お前たち早撃ちと生駒旋空ができるといったな?」
ヒュース君が話に割って入ってくる。
「うん、早撃ちはトリオン量調節して弾速あげれば大丈夫だと思うよ」

カンナが説明する。

 
「じゃあオレやりたい」
空閑君が手をあげてカンナと訓練することが決まる。



「生駒旋空はまぁ何とかなるよ」
依織さんはいとも簡単に言う。

「じゃあやってくれ」
「いいよ、じゃあ移動しよう」
ヒュース君に言われて依織さんは早速ヒュース君と別の仮想訓練室へ移動した。
初対面のはずなのに二人ともあっさりしすぎている。



この場が烏丸君、三雲くん、私の三人になる。


「三雲君。ヒュース君を軸に対策考えているみたいだけど、当然別案も考えているんだよね?」
三雲君に訊ねる。



「考えてはいるんですけど…」
まだ思いついていないらしい。
「前に唯我君に50勝したら追尾弾ハウンドのやり方教えるって言ったよね」
一つ考えがあった。トリオン量の少ない三雲君にぴったりの技。


「はい…?」
三雲君はピンと来ていないようだった。







それから少し練習した後に晩御飯の時間になったようで、栞ちゃんに呼ばれた。
真野隊の3人の分もあるというので、ありがたくいただくことにした。


「カレーだ!桐絵のカレーはおいしいんだよね!」
カンナが器によそってもらっているのを見て嬉しそうに話す。
「みんなで食べるなんて玉狛仲良しでいいね」
私も思わず笑顔になる。こんなに大人数で食べることなんてめったにない。合宿のようだ。

依織さんはいつの間にいたのか迅さんと二人で何やら話している。
あの二人は「暗躍」という共通の趣味を持っているので、聞かないようにそっと距離を置く。



「こなみ先輩のカレーは最高にうまいな」
私の食べている席の後ろで空閑君がしみじみ言う。


「あたりまえでしょ〜〜!」
小南ちゃんは褒められて得意げだ。
カンナは向かい合わせに座って、私の隣が千佳ちゃんカンナの隣に三雲君が来ている。



「ごはんのあとも烏丸先輩と真野隊の先輩たちに手伝ってもらって対策の続き、明日は本命の千佳とヒュースの連携を軸にした訓練だ」
「……うん」
千佳ちゃんがうなずく。


「千佳ちゃんとヒュース君が連携って千佳ちゃん大丈夫なの?」
思わず隣で千佳ちゃんに訊ねる。人が撃てないのにどうやってするつもりなのだろう。


「あ、宮木先輩それが」
三雲君が私に説明しようとしたが、それを千佳ちゃんが遮った。


「尚美先輩…私…次の試合は人を撃とうと思います」
千佳ちゃんが何かを決心したようにそう教えてくれた。


「……!そっか、応援する」
驚いたが、すぐにそう千佳ちゃんに伝えた。千佳ちゃんが決めたことならいいのだ。
自分の大事な友達だった彼女の事がちらつく。彼女のように千佳ちゃんにはなってほしくない。



「次の試合楽しみにしてるね」
「そういやあたし最終戦の解説に呼ばれたから玉狛支部として恥ずかしくない試合しなさいよね!」
小南ちゃんが思い出したように玉狛第二のメンバーに伝える。


「こなみ先輩が解説…」
「大丈夫なんすか?」
空閑君と烏丸君に次々に心配されている。


「ふつうにやったことあるんだけど!」
「桐絵のは聞いてて面白いよ!大丈夫!」
カンナもフォローしているのかどうだかわからない。


「そうだ、尚美。尚美も解説の依頼きてるよ」
他人事だと思って聞いていたが、依織さんの言葉で急に自分の話にもなってしまった。


「え!?またですか!?」
「うん」
「あれ?尚美先輩と一緒だったかな?」
小南ちゃんが考える。


「桐絵とは違うよ、尚美は中位の方の解説」
依織さんが教える。


「そうですか…」
小南ちゃんの解説を以前に聞いたことがある。それを踏まえて一緒にならなくてよかったと思うべきか…


「あ、宮木先輩、今こなみ先輩と一緒にならなくてよかったと思ったでしょ?」
「え!?そんなことないよ」
空閑君に言われてあわてて否定する。


「ふーん、宮木先輩ウソはだめだよ」
「えっ!?」
「宮木先輩、空閑は人のウソがわかるんです…」
驚いていると、三雲君が教えてくれる。
おそらくそういう副反応サイドエフェクトなのであろうと推測する。


「あー!ひどい!」
小南ちゃんが泣き真似をする。


「ごめん!ごめんって、私じゃ小南ちゃんの良さを引き出せないと思って」
「あ、今のは嘘じゃない」
空閑君が楽しそうに話す。

「よし……最後の追い込みだ。行こう」
三雲君が切り替えるように言った。

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