「I have a bad feeling about this.」
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51番

「あ〜〜終わった終わった!」


今日12月24日はクリスマスイブである。
我ら真野隊は昼間から学校を休んで防衛任務に当たっていた。
今隣で解放感に満ち溢れた顔をしているカンナなんて今月の防衛任務のシフトを見た時は烈火のごとく怒っていた。

「クリスマスイブに防衛任務!!オッキーなんて夜じゃん!!最悪!!」

と。そのままこの防衛任務のシフトを作っている諏訪さんと風間さんの所に乗り込みかねない勢いだった。
大体3日に一回は防衛任務は回ってくるのだ。クリスマスイブかクリスマス、どちらかに当たる可能性は高い。
カンナはクリスマスを恋人と一緒に過ごしたかったのだろう。気持ちはわからなくもない。
依織さんと頼さんの2人になだめられた後に隠岐君と話をしてクリスマス当日にデートすることになったようだ。素敵なクリスマスになることを祈っている。じゃないとしばらく荒れそうだ。
また別れるとカンナが騒ぐかもしれない。


明日のデートが楽しみで仕方ないのだろう。防衛任務の時からずっとウキウキだった。
恋する女子は実にかわいらしい。明日は映画を見に行くんだとか、服はこの間買いに行った、とかたくさん教えてくれた。耳タコである。

もう日も落ちてこようかという時間に本部基地に帰着した真野隊の4人は、オペのまことと合流し、このままとある会に参加することになっていた。
そうそれは大々的にはしていないが、毎年行われている。「ボーダークリスマス女子会」というやつである。
それは本部基地内の大きな会議室を一つ貸し切って行われる女子会で、当日予定のない女子であれば参加費1000円で誰でも参加OKで、飛び込み参加もOKというものである。
ちなみに1000円で参加が出来る理由は、とある男性隊員達からのカンパによるものらしい。詳しくは知らないけど。

私は今日のクリスマスイブも、明日のクリスマスも特に予定はなかったので、先週頼さんに誘われて参加を決めていた。
頼さんは今日と明日予定を作ろうと思えば作れたはずなので、本当に暇なんだろうかと疑ってはいる。
きっと向こうもクリスマスは稼ぎ時なのでアルバイトを優先したのかもしれないが。


頼さんと依織さんが二人で前を歩くのを見る。
クリスマス会は成人済みの人は一人1本アルコールを何かしら持ち込まないといけないらしく、頼さんの手にはワイン、依織さんの手には日本酒が握られていた。袋などに入れずに生身で持っているところが何とも言えない。


「尚美先輩、本当に参加してよかったんですか?オールですよ」
「え、眠くなったらすぐに部屋に帰ったらいいだけだし大丈夫だよ」
隣を歩くカンナに心配をされる。確かに私は夜更かしは苦手だけど、眠くなったら部屋に戻ればいいだけだ。
こういう時は本部基地に部屋があると楽でいい。

「そうじゃなくて、犬飼先輩は良いんですか!?」
「…なんで犬飼くんが出てくるの」

カンナから出てきた彼の話題にテンションが下がる。


犬飼くんは一応私の元彼氏である。
別れた後も犬飼くんはあれやこれやと私に話しかけたり、遊びに誘って来たりする良くわからない関係だ。
しかも、別れた後もどういうことかキスをして来たり、それ以上の事もしようとしてくる。普通別れた男女はしないものでは?
断ろうとしても、なんで断るの?断る意味が分からないといったリアクションをされるのだ。モテ男は考えることが普通の人とは違う。


「クリスマスですよ!会いたいに決まってるじゃないですか!」
「そう?向こうは家族と過ごすんじゃないかな?」

犬飼くんは自分の家がちゃんとあって、家にはお父さんもお母さんもお姉さん達もいて楽しくクリスマスを過ごしているのかもしれない。

そういえば、前に学校から一緒に本部基地に行くときに「クリスマスどうするの?」って聞かれたなぁ。
その時は「お互い防衛任務じゃない?」って答えたけど、相手も「だよね〜」っと笑って言っていたから特に二人で会おうとかそういう意味で聞いてきたんじゃないはず。

「も〜尚美先輩はそこらへん本当に疎いんだから。犬飼先輩かわいそう。ね、まこと」
「う〜ん、まぁ2人には2人の考えがあるから」
カンナが横にいるまことに話を振る。
まことはいつも恋多きカンナの尻拭いをさせられているから、こういう恋バナというやつには冷めた返答だ。

「それに二宮隊は明日の日中に防衛任務が入っているからどっちみち予定が合わないと思うよ」
まことが二宮隊の防衛シフトを知っていることが意外だった。

「え、なんで二宮隊の防衛任務知ってるの?」
カンナも同じことを思ったらしく、にやにやしながらまことをいじる。

「亜季に聞いたんだよ、今日の会に参加しないかなと思って。ちなみに亜季は泣く泣く欠席」
「な〜んだ」
「氷見ちゃん参加しないんだ、残念」

クリスマス会は防衛任務に入っていない女子は誰でも参加でき、普段話せない子とも話せるなかなか無い機会なので、私も楽しみにしていた。

「さすがにオールしてそのまま防衛任務はきついですよね」
「確かに、おもいっきり楽しめないよね」
「亜季は最後まで悩んでたらしいんですけどね」
「あ〜〜なるほど」

今回は景品がすごいって前評判高かったもんね。






薄暗い会場に入ると、すでに会は盛り上がっていた。にぎやかな話し声と笑い声がそこらじゅうでしていて、去年より参加者が多いように思う。
日中に防衛任務のない子が先に始めていたようで、C級隊員の子も多く参加しているようだ。
照明がきれいに部屋を照らしていて、クリスマスソングも流れていた。

テーブルが何カ所か設置されていて、立食バーティ方式になっている。
壁際に椅子が並べられていて、そこで自由に座って話しながら食べられるようになっているのは去年と変わりない。

しかしこんな広い会議室良く借りられたもんだ。上層部の許可をどうやってとったのだろうか。
幹事は沢村さん達成人女性隊員だと聞く、依織さんも幹事の一人らしい。
飲み会が大好きな依織さんは張り切って準備をしていたそうだ。

「とりあえずお腹ペコペコなので、ごはん食べましょ〜〜」
「賛成!」
カンナとまことに誘われて三人で食事をとりに行く。

テーブルの方に行くときらびやかな料理が並んでいた。
シーフードマリネ、テリーヌ、サーモンのカルパッチョ、キッシュ、ローストビーフ…


「これが1000円で食べれるなんて…」


つい声に出てしまう。一流ホテルのビュッフェ並みだ。外で食べようと思ったら5000円はするだろう。
これを全部食堂の人が作っているらしいからすごい。母はきっともう退勤して父と二人で過ごしているだろうけど。


「ボーダーってすごい」
「ほんと、これが福利厚生ってやつだ」
「どれもおいしそうで迷う」


お皿を一枚とって、次々に食べたいものを取っていく。
カンナに「向こうにスイーツ沢山ありましたよ」とかまことに「向こうでシェフがオムレツ焼いてます」とか教えられてあちこち歩き回った。
焼きたてのクロワッサンを一つ、サラダは海藻サラダにしようか、ミモザサラダにしようか。
ついつい取り過ぎてしまいそうだ。


「尚美こっちよ」
お皿に所狭しと並べられたご飯に満足してどこに座ろうかと考えていたら、声を掛けられた。

「あ、加古さん」
加古さんが一人で椅子に座っていたので、そのまま隣に座ることにする。

「防衛任務だったの?お疲れ様」
「はい。ありがとうございます。加古さんは防衛任務なかったんですか?」
「私は明日の昼よ」
「オールしてそのまま防衛任務ですか、すごい」
「去年もそうだったわよ」

いつも加古さんについて行く双葉ちゃんはまだ中学生の為今回は参加していないようだった。

加古さんはワインを飲んでいる。食事はすでに終わったようで、小皿に甘いものが数点置いてあるだけだった。

「さっきまで沢村さん達がいたのよ」
「そうだったんですね、私も話したかったなぁ」
「やめておきなさい。沢村さんもうかなり酔ってたわよ」
成人済みの人たちはお酒を飲みながら楽しくやっているようだ、向こうの方で一般職員の女性もちらほら見える。
エンジニアの人もいる。本当にたくさんの人が参加しているようだ。

「頼が持ってきたワイン美味しいわ。お酒弱い割に美味しい物知ってるわね」


加古さんがうれしそうにワインを口に運ぶ。
そういえば加古さんはお酒が強い方だったような気がする。
頼さんはアルコールに弱いけど大丈夫だろうかと、会場を見渡すが、頼さんの姿は見つけられなかった。

代わりに依織さんを見つけた。依織さんは羽矢さん、蓮さん、ののさんと話していた。


加古さんとあれやこれやと話をしばらくしていてふと聞かれる。


「尚美は今日はこのままここで過ごすの?」
「はい、そのつもりですけど」
「そ、じゃあ頑張りなさい」
「???」



加古さんの話が読めなくて聞き返そうとするが、そのタイミングで中央のステージの照明が付く。



「みなさん今年もお疲れ様でした〜〜少し早いですけど、忘年会も兼ねてビンゴパーティをします!」
司会をしているのは先ほどまで依織さんと話してた羽矢さんである。

隣りにはビンゴカードらしきものを持った蓮さんとののさんが立っている。
どうやら今年は19歳の3人が司会進行を担当してくれるようだ。去年は加古さんと頼さんがしていたから、来年は私含め18歳組がやらないといけないのかもしれない。


「今年もいろんな方のご協力をもとに素敵な景品が多数ありますので、どうぞお楽しみに!」

羽矢さんが指した方には景品と思わしき包装されたプレゼントの山が。参加人数より多い気がする。全員何かしら当たるやつだろうか。


「はい加古さん。尚美も」
ののさんがビンゴカードを渡してくれた。


「あらありがとう」
「ありがとうございます」
2人で受けとる。

「尚美頑張れよ!」
ののさんに肩を力強く叩かれる。


「え、はい?」
そんなにビンゴでいい景品があるのだろうか。
私が聞いたのはあれだけど。


「尚美にはぜひあれを持って帰ってほしいわ」
加古さんにもそう言われる。景品が何か知っているのだろうか。

「加古さんも知ってるんですか?」
「ええ、私もお手伝いしたから」

「じゃ、前で私はやることあっから」
ののさんは手を振ってステージの方に戻ってしまった。
私たちの所にビンゴカードを持ってきたので最後だったらしい。

「はい、参加者全員にビンゴカードが行き渡ったみたいですね。真ん中開けましたか〜〜?」
そしてビンゴゲームは開始された。





「ビンゴぉ!!!」
一人目のビンゴが出たようだ。
ステージの方に向かっていたのは香取ちゃんだ。高らかにビンゴと叫んで、カードを頭上にあげている。

香取ちゃんがこういう会に参加するのは珍しい。いつも参加していないイメージだ。やはり今回の景品が目当てなのだろう。


「さて、一人目のビンゴが出たようです」

蓮さんがさっと香取ちゃんのビンゴカードを確認している。

香取ちゃんすごいな、私まだ2つしか空いてないのに。
私は昔からくじ運というかこういうことには縁がない。今回も多分だめだろう。


「今回は知っておられる方もいるかもしれませんが、景品が一人につき二つあります!」
羽矢さん、蓮さん、ののさんの三人ともが小さい封筒を両手に沢山持っている。

「さ、香取さん一枚どうぞ」
香取ちゃんは悩みながら一枚封筒を取った。
そして丁寧に封筒をあけて中身を確認する。


「これじゃない〜〜〜!!ろくろーなんて見飽きてるわ!!」
中身を見たとたん香取ちゃんが地面に突っ伏した。


「はい、景品その1は男性ボーダー隊員ブロマイドです!」


「え、烏丸君だけじゃないの?」
「違うわよ」
羽矢さんの言葉に驚いていると、横から加古さんに突っこまれた。
私が参加する前に聞いていたのは、今回のビンゴ大会の景品に烏丸君のブロマイドがあるという事だ。
それで今回は烏丸ファンクラブの女の子が沢山参加しているはず。香取ちゃんもその一人だろう。
どうやって烏丸君の写真を入手したのかはわからないけど、おかげでクリスマス女子会は大盛況だ。

「たくさんの協力者の元、ほぼ全員の男性ボーダー隊員のブロマイドがあります」



「えっ、じゃあ…」
「そういうことよ」
羽矢さんの言葉を聞いて私がそわそわしだしたのを横で加古さんが相槌を打つ。


「二宮さんのブロマイドもあるんですか!?」
「なんで二宮くんなの」


加古さんはあきれた表情だが、私は力説する。
「私、二宮さんの写真一つも持ってないんです」
そうなのだ。二宮さんが師匠になってからもう2年は経っている。

「さすがに師匠に写真撮ってもいいですか、なんて恐れ多くて」
「別に普通に撮ったらいいじゃない、私のあげましょうか?」
加古さんが携帯を操作する。


「それはズルしてるのでだめです!きちんと自分の力でゲットします!」
片手で制して、そのままビンゴカードを握りしめる。
そうと決まればやる気が出てきた。なんとしても二宮さんのブロマイドが欲しい!




香取ちゃんはののさんに支えられながらステージから退場した。手にはメインの景品が持たされている。
香取ちゃんにとってはその景品はどうでもよくてきっと烏丸君のブロマイドが何より欲しかったんだろうな。


その後何人もビンゴが出たが、まだ二宮さんのブロマイドを当てた人はいない。
みんなその場で封筒を開けて、誰のブロマイドだったか公表してくれるのだ。

染井ちゃんは嵐山さんのブロマイドを当てて、珍しくガッツポーズをしていた。いつも冷静な染井ちゃんが珍しい。

カンナもビンゴになっていて、ブロマイドは柿崎さんだった。早速交渉しに行っていた。隠岐君のが手に入るといいね。

私もついにあと一つでビンゴというところまでになっていた。

羽矢さんが機械を操作して数字が動きだす。

51来い51…!!



「次は…」

必要以上に緊張してしまって、自分の心臓の音が聞こえてきそうだった。


「51です!!」


「わ、ビンゴだ」
思わず声に出してしまった。



「あら、尚美ほんとね」
横で加古さんが見てくれたがやはりビンゴのようだ。
まさか自分がビンゴになるとは。小学生の時のビンゴ大会以来の快挙である。



「いってらっしゃい」
加古さんに背中を押されて私は足がもつれそうになりながらもステージの方に向かう。



「ビンゴの方はステージに来てくださいね」

私はステージの下にいる蓮さんに声をかける。

「ビンゴです」
「あら尚美おめでとう」
ビンゴカードを蓮さんに渡すとさっと番号を確認してくれた。

「ビンゴね。じゃあここで待ってて」

他にビンゴになった人がいないか確認するためだろう。ウキウキする気持ちのまま横で待つ。
両手をぎゅっと組んで祈る。二宮さんが当たりますように。


「あれ、尚美も?」
声を掛けられて見上げると、頼さんがいた。

「頼さんもビンゴですか!」
「うん、ビンゴ〜」
そう言いながら、私の事をぎゅっと抱きしめてきた。
頼さんこれはかなり酔ってるな。

どうやら今回のビンゴは二人だけだったようで、そのままステージに上がる。

「さぁ、どちらが先に選びますか?」
枚数もだいぶ減っていて、ステージ上の机に封筒が並べられているのを見る。

「頼さんお先どうぞ」
目上の頼さんに先を譲る。


「良いの?じゃあ遠慮なく」
頼さんは特に悩むこともなく、目の前の封筒を手に取ったようだ。
続いて私も少し悩んで左端のを取る。


「お二人とも選びましたか?じゃあ開封お願いします」

羽矢さんの掛け声とともに二人とも封筒を開ける



「え!」
「げっ!?」

私と頼さんの声が被った。
いや、それにしてもこれは。
衝撃のあまり声が出なかった。


「尚美誰だった?」
ののさんが横から覗いてくる。

「頼さんは誰ですか?」
頼さんのは蓮さんが覗いている。

「尚美やったじゃねーか!犬飼じゃん」
「頼さん当たりですね、烏丸君」


そう、私が手にしたブロマイドには、笑顔の犬飼くんが映っていた。
イケメンだから写真写りも良い。

頼さんも隣で呆然としていた。そして酔いがさめたようだ。顔が真っ青である。
頼さんが烏丸君を引き当てたことで会場は悲鳴が上がった。


「んで尚美景品これな!」

ののさんに比較的大きな袋を渡された。大きい割に軽い。ブロマイドを持っている手と反対の手にさっと握らされる。

「あ、ありがとうございます」
とりあえず受け取るが、今だ状況が理解できない。
背中を押されてそのまま加古さんの元に戻る。


「当たりね。おめでとう」
にっこり笑って拍手される。

「二宮さんが良かったです…」
二宮さんのブロマイドは誰が手にするのか。

「そんなこと言って〜〜犬飼くん泣いちゃうわよ」
「というか、これどうしましょう」
右手には犬飼くんのブロマイド。


「どうしましょうって、大事に持ってたらいいじゃないの折角だし」
「ううう…」

やっぱり私にはくじ運は無かったみたいだ。








その後すべての参加者がビンゴになり、ビンゴ大会は終わった、
私は当たった景品の中に犬飼くんのブロマイドをそっとしまっている。
誰かに交換してくれと言われたらするつもりだったが誰にも言われなかったのだ。
頼さんは烏丸君のブロマイドをオークションさながらたくさんのファンの子に売ってくれととんでもない金額でお願いされていた。



少し小腹がすいたので、デザートを取りに行こうビュッフェに向かったら光ちゃんとオサノちゃん、くまちゃんがいたので少し立ち話をする。


「尚美〜〜やったじゃん」
光ちゃんに笑いながら背中をたたかれる。
「やったって、何が」
「犬飼の当たったんだろ?当たりじゃん」


光ちゃんにまで言われて、少し凹む。
「私は二宮さんのが良かったんだよ」
「そうなのか〜二宮がいいのか」
「師匠ですもんね」
くまちゃんは確かイコさんのブロマイドが当たっていたはずだ。





「歓談中ごめん。尚美来てくれる?」
呼ばれて振り返ると、依織さんがいた。

「はい、わかりました。ごめん、またね」
返事をして二人には別れの挨拶をする。
なんか非常事態だろうか。


連れられて向かった先は成人組のグループで、頼さんが椅子の上で横になって器用に寝ていた。

「あらら」
「見ての通りでね、悪いけど、一緒に私の部屋まで連れてってくれる?」
「はい、もちろん」

依織さんと二人で頼さんの両脇を支えて、基地内にある依織さんの部屋まで行くことになった。
頼さんは身長が高いので依織さん一人ではしんどいだろう。


会場を3人で後にして、基地内の廊下を歩く。深夜も過ぎたところだが、同じようにいろんなところでクリスマス会が開かれているのだろう。顔を赤くした人と何人もすれ違う。

「尚美ごめんね、付きあわせちゃって」
「いえ、そんなこと。私もそろそろ眠たくなってきちゃったので」
「そう?私の部屋に頼を置いたらそのまま尚美も部屋に戻ったらいいよ」
「はい、そうします」

そのつもりでもらった景品も一緒に持ってきた。

「そういえば、これなんなんでしょうね」
気になって依織さんに聞く。

「う〜ん中身は出資者が選んだものだからねぇ」」
「ちなみに出資者って誰なんですか?」

「成人男性隊員だよ。忍田さんとか、城戸指令が選んだやつもある」

「そうなんですか!?」

「普段から頑張ってくれている女性隊員をねぎらう会だからね。上層部は沢山出資してくれてるよ」
「知らなかったです」

「あ、匡貴も出してるはずだからひょっとしたら匡貴が選んだものかもね」
「!?!?」

それを聞いて元気が出てきた。部屋に戻ったら早速開けてみよう。


依織さんの部屋について、ベッドに頼さんを寝かせる。
途中寝ぼけてきつく抱きしめられたりしたけど、依織さんが何とかしてくれた。


「ありがとうね、後は任せて」
「はい、よろしくお願いします」
「メリークリスマス。素敵な夜を」

にっこり笑いながらそう言ってくれた依織さんと別れて、自分の部屋に帰ろうと廊下を歩く。


すると、一つの部屋の扉が開いた。

「ん?」
「え?」
「あ」

出てきたのは、犬飼くんと若村君で。


「尚美チャンじゃん。こんな遅くまで遊んでたの?」
「宮木先輩こんばんは」
「犬飼くん、若村君こんばんは」

出てきた部屋は諏訪さんの部屋だとわかった。
これは銃手組で集まっていたのかもしれない。

「そっちこそ、遅くまで遊んでたようで」
「おれたちは良いの。それに今から帰るところだし。ね」
「はっ、はい。」

「一人でこんな夜中に歩き回ってたらだめでしょ」
犬飼くんに咎められるように言われるが、歩き回るって、基地内ですけど。
不審者の心配をもしや基地内でしてる?
「いや、部屋すぐそこだから」

「ごめん、ろくろーくん、おれ尚美チャン送っていくからここまででいい?」
「はい。俺は大丈夫なので、ぜひそうしてあげてください」
「うん、じゃあね」
「え、ちょっと待って」

私を無視して二人で勝手に決めてしまう。
「じゃあ、犬飼先輩、宮木先輩失礼します」
「お休み」
「え、若村君、」
若村君は頭を下げるとすぐに廊下を走り去ってしまった。何も走ることないのに。


「…さて説教は部屋の中でしようかな?」
「明日防衛任務なんだから家に早く帰ったら?」
ぼそりとつい言ってしまう。犬飼くんの考えていることは本当に謎だ。

「尚美チャンの部屋に泊まるから大丈夫。明日の防衛任務まで部屋にいさせてね」
「え!?聞いてない」
「今言ったから〜」
犬飼くんは私の空いてる方の手を取って歩き出す。
「ほら、早く部屋にもどろう」

まるで自分の部屋のように先を進む。

「ここで会えるなんてラッキーだったな、サンタさんに感謝しなきゃ」
「……」
そんなにうれしそうな顔をされてしまったらもう何も言えない。
私だって少しはうれしい気持ちがあるのは嘘じゃないから。


犬飼くんの右手には明らかに女性が好みそうなブランドの手提げ袋が握られているのに気付くのはもう少し後。

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