大好きに会いに行こう

最近良くないことが続いていた。
期日前に余裕で仕上げていた課題を提出日を勘違いして家に忘れてきたり、朝早く起きて時間に余裕があったからとお化粧もヘアセットもきちんとして朝出たら急な雨に降られたり、お昼を食堂で買う予定が財布を忘れて友達にお金を借りたり。
そして今日、道を歩いてたら変な人にぶつかられた。特にフラフラしてたり、携帯を見ながら歩いていたわけではない。
少し混雑した道でゆっくり歩いたら、凄い勢いで後ろからぶつかられて、転んだ。
膝を擦りむいた。カバンの中身がこぼれた。
ぶつかってきた相手は無言でそのまま先を言ってしまった。悲しかった。嫌なことばっかり。
気持ちが落ちていた。こんな時は無性に会いたくなる。


ずっと前から一緒にいてくれて、私を大事にしてくれる人。特別って意味を教えてくれる人。

「新ちゃん……」
「え、あっ、どうしたの……?」 

連絡もせずに急に会いに行った。
私は何も言わずにぎゅっと後ろから新ちゃんを抱きしめた。広い背中。
小学生の時は私の方が背が高かったのに。 中学生になってからぐんぐん背が伸びて、可愛かった新ちゃんは凛々しくなって、周りの女の子にキャーキャー言われるようになった。 女の子が少し苦手な新ちゃんは私の後ろをずっとついて歩いていたけど、だんだんと女の子とも普通に会話するようになって、大学生になってからはそれはもうモテた。
私がいなくてももう大丈夫かな?って思った事もあったけど、それでもそばに私がいる事を求めてくれた。
昔から変わらない笑顔で私を見てくれるたびに、私のことを特別だと思ってくれてる事を実感する。

「なんかあった?」

何も言わない代わりにさらにぎゅっと強く抱きしめた。
顔もぐりぐりと背中に押し付ける。
新ちゃんの匂い。落ち着く匂い。
深呼吸していっぱい体の中に取り込む。
新ちゃんはそのままでじっとしてくれていて、私の好きなようにさせてくれた。


「最近嫌なことばっかりなの」
「うん」
「だから、新ちゃんに会いたくなって」
「うん」
「新ちゃんを充電させて?」
「うん」

辛いことがあっても大好きな新ちゃんがいれば大丈夫。大好きに会いに行けば大丈夫。
明日からはまた元気な自分に戻れるから、今日だけはいっぱい充電させてほしい。


「新ちゃん、大好き」