君の好きなところ
「ねぇ、樫尾。なんで蔵内は私と付き合ってくれてるんだろう」
私は王子隊作戦室の仮想訓練室で王子と模擬戦をしている蔵内を見ながら樫尾に聞いた。
「どうしたんですか、急に」
「だってさぁ、 六頴館の生徒会長だった男だよ?B級上位常連の王子隊のメンバーだよ?高嶺の花じゃん」
「男性に高嶺の花という言葉を使うべきかはわかりませんが、確かに蔵内先輩は素晴らしい人ですね」
「そうだよね。やっぱそうだよね。なんで私なんだろう」
頬杖をついて考える。私、いいとこあるか?三門市立高で当真や国近と並んで赤点常習者、ボーダーでも部隊を組まずに適当に防衛任務をこなすだけの日々。見た目もまぁ不細工とまではいかないけど、ごくごく普通の顔だと思う。好きになったのもきっと私の方が先だし、告白したのも私からだ。考えれば考えるほど謎だ。
「蔵内先輩が選んだ人なんですから、先輩だって素晴らしい人ですよ」
「樫尾はなんでそう良い子なんだろうね。王子に影響されず蔵内の背中だけ見て育ってね」
樫尾の優しい気遣いに両肩をたたいて願う。王子にだけは似たらだめだ。あれば昔ひどかったんだ。
「こら、なんてこと言うんだ」
王子の声がして振り向けば、王子と蔵内の二人が訓練室から出てきていた。
「あ、聞こえてた?」
「聞こえてたよ。僕に似たっていいじゃないか、なあ樫尾?」
「はい、王子先輩みたいになれるように頑張ります!」
樫尾は良くも悪くもまっすぐ過ぎる。変な女の子に引っかかってだまされたりしないといいけど。
「待っててくれたのか、悪かったな」
「ううん、私が一緒に帰りたかっただけだもん。それにさっきまで羽矢さんに相手してもらってたし。今は樫尾が話し相手になってくれてたから」
蔵内に謝られてそう返す。私はボーダーでは防衛任務と個人ランク戦くらいしかすることがない。蔵内はランク戦もあり、忙しいのだ。暇な私が合わせて当然だ。王子隊のみんなは私が作戦室にきても快く迎えてくれる優しい人ばかりだ。羽矢さんとは趣味も合う。
「それで樫尾と何を話していたんだい?」
王子に聞かれて隠す事でもないので話す。
「ん〜蔵内はなんで私と付き合ってくれてるんだろうね、って話」
「そんなこと話していたのか」
蔵内は少し気恥ずかしそうにしている。もちろん王子隊のみんなは私と蔵内が付き合っているのは知っている。
「そんなの決まってるじゃないか、蔵内が君にぞっこんなんだよ」
王子が簡単な事じゃないか、と言いたげな顔で答える。
「王子ぞっこんって言い方古い…え、そうなの?」
私はあわてて蔵内の顔を覗き見る。
「ん、まぁ、そうだな……」
否定せずにいてくれた。そうなんだ……うれしい。
「ずっと前から僕に君の事聞いてたんだから、そうだよ」
王子がうれしいことを教えてくれた。王子とは高校3年間クラスが一緒でそこから蔵内の事も知った。まさか王子が恋のキューピッド??
「おい、王子あんまりそういうことは言うなよ」
「なんで?不安にさせるくらいなら教えてあげたらいいじゃないか」
蔵内が赤い顔をして王子を止めるが、王子は気にしない。いいことを教えてもらった。蔵内は私の事を付き合う前から気にしてくれてたんだ。自分の一方通行な思いではなかった事がたまらなく嬉しい。
「わたしばっかり好きなんだと思ってたから嬉しいな」
蔵内がさっきから少し顔が赤いのが愛されてる証拠だ。好きな理由はわからなくても、好きだと言う事実があればそれだけで嬉しいのだ。