negative fighter


綾辻さんと付き合っていると噂が出た時、やっぱりと思った。
私よりも綾辻さんがお似合いなんだと。
私は彼には釣り合っていないんだと。周りからそう評価されたわけだ。


「綾辻さんと会長やっぱりお似合いだよな」
「蔵内君って綾辻さんと付き合ってるのかな?勝ち目ないよ〜」

周りがそういっているのを聞くたびに、胸がちくりと痛んだ。
違うよ、私だよ。
蔵内と付き合っているのは私。
そう言えたらどんなに良かっただろう。
けど、きっとそれを言うとみんなをがっかりさせちゃうから。
みんなの生徒会長は綾辻さんみたいに完璧な人じゃないと。
だから黙っているしかない。
時々苦しくなる時がある。
私、いつになったら胸張って彼女だって言えるんだろうか。


「知ってたよ〜綾辻さんには勝てっこないってこと。だってお似合いだもん」

私は自分の机に突っ伏して弱音を吐いた。
たまにはこうやって口に出してガス抜きしないとパンクする。

「綾辻と比べたらダメだろ」
「そー、そー、上ばっかり見ててもキリないよ」

弱音を吐いた私にそう答えたのは同じ六頴館高校3年の荒船と犬飼だ。
この2人、これで私の事を励ましているのだろうか、全然励ましになってない。
けど、私と蔵内の関係を知っている人は高校内ではほとんどいないし、すぐに話を聞いてくれるのはこの2人くらいしかいない。
流石に、綾辻さんのいる2年のクラスには行けないし、3年ではボーダーに所属している女子は私しかいない。
やっぱり柚宇ちゃんや今ちゃんみたいに三門市立高に行くべきだったかな。
けどそれだと蔵内と付き合えていなかったかもしれない。

「会長が選んだのはお前なんだから自信持てよ」
「そーだよ。会長、宮木ちゃんの事大好きだからね」
「うーん、それはわかるんだけど」

蔵内は忙しい中でも私と会う時間を大事にしてくれているし、会っているときの視線や表情で好意は伝わる。
告白してくれたのだって蔵内からだ。

言われた時は本当に自分の事か信じられなくて
「私でいいの?間違ってない?ほんといいの?」
と聞き返したくらいだ。
その時の蔵内は
「間違ってないよ、好きなんだ」
と優しい表情で言ってくれた。
あの時の事を思い出すと幸せな気持ちでいっぱいになる。

「思い出してにやけないでよね」
「にやけてない!」

犬飼がこっちを見て、げぇ〜って顔をした。
失礼な奴。

「私だって、生徒会なんだよ?私と噂になったってよくない?」

私も実は六頴館高校の生徒会で書記をしている。
一年の頃からなので蔵内とはもう2年以上の付き合いになる。
生徒会なんてやる気は全くなかったけど、担任の先生にお願いされて、いやいや立候補したら何故か当選したのだ。
それがきっかけで蔵内と仲良くなれたので、当時の担任にはなんだかんだで感謝している。

「お前、ばれると嫌だからって会長に黙ってろって言ったんだろ?どっちだよ」
「だってさ、生徒会長だよ?その生徒会長が付き合ってるのが私だって知ったらみんながっかりするじゃん」
「うわ、めんどくさっ」
「あ〜!」

犬飼にめんどくさいと言われて、また机に突っ伏す。

「蔵内もなんで綾辻さんと付き合ってるのか聞かれた時にはっきり否定しなかったのよ〜」
「否定してもみんな信じないだろ」
「私が蔵内と付き合ってるって言っても誰も信じないよ」
「そんなことはないでしょ」
「私の彼氏なのにっ」
「はいはい」
「どうせ噂にもなりませんよ、こんな女」
「はいはい」

荒船と犬飼が順番に相槌を打つ。
話を聞くのがめんどくさくなった二人が良くやる手だ。
私もそれをわかっているがついつい愚痴る。


「もうこの際だから付き合ってるのなかったことにした方がいいんじゃないかと思い始めてきた」
「それはやめておいた方がいいんじゃねぇか?」
「きっと別れても誰も何にも気づかないじゃん、友達の方が気が楽だよ」

付き合っているのを誰にも知られてなくても惨め、公表してもがっかりさせて惨め、詰んでる。
気分の落ち込みがひどくなってきた。
そろそろ完璧に落ち込む前に楽しいこと考えて、いつものように2人に冗談言って元気になろう。
そう思っていると頭の上から声がした。


「俺はお前が黙ってろと言うから黙ってたんだぞ、付き合いを無しにするならこっちも考えがある」

あれ、私今誰としゃべってるんだ?慌てて起き上がると目の前には蔵内。
どうやら先生に呼ばれて職員室に行っていたが、戻ってきたらしい。
にっこりさわやかな笑顔だけど、目が笑っていなかった。
あ、今の話聞かれてた?周りを見渡すといつの間にか荒船と犬飼はいない。
逃げたようだ。
薄情ものめ、気を使ったつもりか?
余計なお世話だ。
二人きりにさせないでくれ。
手をがっちりと握られていて、手を抜こうとしてもピクリとも動かない。
かなりの力を入れているはずなのに、蔵内は顔色一つ変えずにいる。
爆殺生徒会長とボーダー内で影で言われている理由がわかった気がする。
彼は優しい顔をして意外と強引だ。


「なんでそういつも不安になるんだ。俺の何が悪い?」
「えーと、蔵内が悪いんじゃなくてですね、私が勝手に不安になっただけで」

しどろもどろなりながら説明にもなっていない説明をする。私の自尊心の低さが原因なのである。

「そうか、おれが不安にさせてるってことだから、悪いのは俺で、責任取らないといけないな」

良く出来る蔵内の良くわからない理論にはてなマークを飛ばしていたが、その間に私の頬に手をやり、蔵内はそっと唇を落としてくれた。

「……!」
「俺たちは別れない。良いよな?」
「……はい」



「俺たち付き合ってるんだ」と肩を抱かれてみんなに蔵内が言う未来はこの半年後の卒業式で。