俺のこと好きになってください



「先輩!勉強教えてください」
「私にわかるかな〜蔵内先輩に聞いた方が…」
「先輩に教えてもらいたいんです。迷惑でしたか……?」
「迷惑じゃないよ、どこかな?」


「先輩!個人ランク戦してください!」
「樫尾、私今から防衛任務なんだ、ごめんね」
「わかりました!またしましょう」



樫尾のきらきらした目が、私にはまぶしかった。


「ね、どう思う?」
『どう思うってそれはあれでしょ。年上の先輩への憧れと好意っしょ?』
「私もそう思う」

私は思わず、防衛任務中に同い年で同じ隊の真登華と文香の2人に相談した。
ザキさんと虎太郎は聞いてはいるがこちらを見守っているだけである。
今はトリオン兵が出ていないので、私語も目をつぶってもらっている。
ありがたい。


「やっぱりそうなの??なんで私!?」
『そりゃ、 六頴館中の元生徒会長で〜学力優秀、ボーダーでも新人王取ったし〜』
「柿崎隊のエースで、攻撃手ランクもマスター級だったらあこがれる要素は十分よ?中身はあれだけど」

外面だけ見たら立派な気がするが、文香の言うとおり自分はそんな出来た人間ではない。
生徒会長をしていた時も、先生に泣きつかれて仕方なくやったし、そこまでマジメにやっていたわけではない。
うっかり忘れものもするし、宿題の提出日を間違えることもあるし、自分で言うのもなんだが抜けているところがある。
新人王もまぐれのようなものだ。
マスター級になれたのも、師匠の風間さんのおかげ。

きっちり、しっかりしている樫尾君が私の本当の姿を知ったらがっかりしてしまうのではないのか。

『作戦室にも良く来るもんね〜アンタ探しに』
「……」
「眼中にないならはっきり言ってやらないとかわいそうよ」
「それはそうなんだけど」
『おっ、少し気になってる感じ?絆されちゃった感じ』

2人に距離は離れているが、耳元であれやこれや言われると逃げられない。

「樫尾の目がね、きらきらなの。私の事、勘違いしてないかな、って」
『勘違い?』
「憧れで私をみて、いざ距離が近くなったら想像と違ってがっかりさせないかなって」


日常生活でだらしないところとか、個人ランク戦をして大したことないとか思われたり。
折角慕ってくれているのに、それがなくなったらさみしい気持ちがある。
憧れの先輩のままでいたいというのが本音だ。


「それはないわ。ちゃんと好きだと思う。見ていたらわかるわ」

文香に断言される。

「そ、そう……?」
「ええ、付き合ったらアンタの事しっかり支えてくれると思う。私は賛成。楽になるし」
「そうですか……」
『たしかに樫尾君しっかりしてるから、付き合ったら頼りになりそうだよね〜』

2人にそういわれて、付き合うって!?となったが、ザキさんの「そろそろ話終われよ〜基地に戻るぞ〜」の声に話は途中で終わりになった。




「お疲れ様です!」
「樫尾、お疲れ様」

後日風間さんに呼ばれて風間隊の作戦室に向かっているときに廊下で樫尾にばったり会った。

「どこ行かれるんですか?」
「風間さんに呼ばれてね」
「風間さんは宮木先輩の師匠ですもんね!いいですね」

その言葉に、ん?となる

「樫尾も師匠欲しいの?」

そうであれば風間さんにお願いしてみようか、と思う。

「いえ、宮木先輩と一緒に長くいられるのがうらやましいだけです」
「え、あ、そ、そう」

なんか真面目な顔でさらりと言われたけど、とんでもないことを言われた気がする。

「むしろ宮木先輩に師匠になってほしいくらいです」
「私が師匠だなんて、まだまだだよ」

慌てて両手を振って拒否する。人に教えるだなんて。まだ私も風間さんにあれこれ教えてもらっているのに。

「高校入る前にしておいた方がいいことありますか?」

樫尾が話を変えてくれてほっとして、話に乗る。

「うーん、入学してすぐに実力テストあるよ」

私はそれを知らなくて慌てた。
樫尾は知らなくても問題なく出来そうだけど、教えてあげる。

「そうなんですね!ありがとうございます!」
「まあ、内部進学テスト出来てたら余裕だと思うよ」
「はい」

またきらきらした目で見られる。その目でみられると弱いんだ。

「今度中学の卒業式なので、宮木先輩その日暇だったら来てください」
「あ、そっか中学そろそろ卒業式だね。久しぶりに先生たちにも会いたいな。予定確認するね」

元生徒会長の樫尾は生徒代表で話したりするんだろう。私も話したけど、当日言葉を書いた紙を無くして半泣きで暗唱した記憶がある。
一年前の事を思い出して、ふっと笑っていると隣の樫尾にとんでもないことを言われた。


「その日宮木先輩に告白するつもりなので、返事考えておいてください」
「へ……?」
「では、防衛任務があるので失礼します」
「え、樫尾、ちょっと待って」

そのまま樫尾は廊下を歩いて見えなくなってしまった。

告白、

だれが、

樫尾が?

私に?
 
言われた言葉を一人になって落ち着いて考える。
考えたところで頭がパンクしそうだった。
うつむいて、ぐるぐる答えの出ない考えをめぐらす。

卒業式行く?

行ったら告白?

逃げる?

でも結局ボーダーで会うし。


「ね、いつまでそこにいるの、風間さん待ってるよ」
「わ!」

正面から急に話しかけられて驚く。
菊地原だ。

「何?うるさいなぁ」
「わ、ごめん、考え事してて」
「それは知らないけど、風間さんとの約束は忘れないでよね」
「うん。ごめん」

どうやら作戦室にこない私を呼びに来てくれたようだ。
菊地原が先に行くのをついていく。

「なんか、面白そうなことになってたね」
「え、あ、聞いてた!?」

菊地原は耳がいい。
さっきの樫尾とのやり取りも聞いていたのだろう。

「風間さんにも言ってやろ」
「それはやめて!」


師匠に恋愛事を聞かれるなんてなんて拷問!
楽しそうに言う菊地原に慌てて口止めをお願いするのだった。