貴方色に染まらせて

年始一番最初の防衛任務が終わった。
今日は全部混成部隊で、私もその中の一つに入っていた。隊長が太刀川さんで、いろいろと無茶振りをされたのでいつもより疲れた。
別れ際に「おもちは良く噛んで食べてくださいね」とだけ言い残してきた。油断していると危ないのだお餅は。そして食べ過ぎると太る。
間違ってもトリオン体で食べないようにしてください。


混成部隊で一緒にチームを組んだ面々と挨拶をして別れた後に向かった先は荒船隊の作戦室である。
今日は荒船隊の初詣にお邪魔させてもらう予定なのだ。哲次くんからお誘いの連絡が来たときはあまりの嬉しさに飛び跳ねた。

楽しみで気持ちが浮き足立っていて、廊下を歩くスピードがだんだん速くなってくる。もはやもう小走りだ。
年末は家族と一緒に過ごしていたため、ほとんど会えていなかった。早く会いたいと気持ちが急く。



「あけましておめでとう」
作戦室に入ってすぐにみんなに声をかける。
「おめでとう」
「おめでとうございます」
「お疲れ、防衛任務」
「来た来た〜待ってたよ!」
哲次くん、半崎君、穂刈君、倫ちゃんの順番に話しかけられる。

倫ちゃんにすぐに手を引かれて、PCのあるデスクに連れて行かれる。
トリオン体の設定を少しいじってもらって私は振袖を着せてもらうことになっているのだ。
荒船隊のカラーである緑ベースの振袖でとリクエストしてある。
すでに荒船隊の男性3人も和装していて、倫ちゃんグッジョブと内心思った。倫ちゃんも赤い振袖がとっても似合っていて可愛い。
みんな普段とは違う格好で思わずはしゃいでしまうのは仕方ない事だった。

さっきちらっと見たけど、哲次くんの和装が、とってもかっこよかったのだ。恥ずかしくて直接は言えないけど。
相手が気づいていないところからガン見したい。

「はい、オッケーだよトリガー起動してみて」
「うん、ありがとう」
言われてすぐにトリガーを起動させる。

「かわいい!文句なし!完璧!」
「ありがと〜〜」
倫ちゃんが横で私の姿をみてうんうん頷いている。
鏡がないので、わからないけど、思った通りの荒船隊カラーで私としては満足だ。
2人できゃあきゃあ騒いでしまう。



「お前…それ…」
「あからさますぎるな。色が」
「恥ずかしくないんすか?」
しかし男性陣は顔に手を当ててため息をついていた。


「え?」
「どーみてもうちの色だろ」
哲次くんに言われてそりゃそうだと思う。私は哲次くんが好きだから荒船隊のカラーにしたのだ。何を文句があるのか。
「見てるこっちが恥ずかしいわ」
少し顔が赤くなっているのを見て、しまったと気づく。
あからさますぎたかもしれない。ばれないように帯の色にするとか、髪飾りの色にするとかするべきだったかも。
これじゃ初詣に行った時に荒船隊のメンバーと一緒にいる私をボーダー隊員に見られたら、何かしら思われるだろう。
哲次くんとのお付き合いはそこまでオープンにしていないし、哲次くんはお付き合いとかの話を出されていじられるのは苦手なところがある。
もし仲のいい鋼君とか影浦君に見られたらいじられること間違いなしだ。

そして哲次くんはこういう好意に弱いのだ。私は普段そこまで好意を口に出さないから、予想外に大ダメージを与えてしまったのかもしれない。
赤くなっているのは照れている証拠だというのは言われなくてもわかる。
ちょっとでも喜んでくれているのなら倫ちゃんに頼んだ甲斐がある。

けど、折角会えたのに気まずくなったら嫌だな。倫ちゃんにお願いしてカラーを変えてもらおうかな。
黒をベースに帯を緑系にしてもらうか。


「そんなこと言わずに荒船君なんか言う事あるでしょ?」
「あるな、確かに」
倫ちゃんが私の背中を押し、穂刈君が哲次くんの背中を押した。
私と哲次くんの距離がぐっと近くなる。
急な事で思わず、哲次くんの胸に手を置いてしまう。
普段見ない和装の哲次くんを直視してしまい、ドキドキと自分でわかるほど心臓の音がなっている。
かっこいい。和装も似合うって卑怯。写真欲しい。誰か撮って。言い値で買うから。転売したら良い値で売れそう。
脳内でとんでもないことを考えている私には気づかず、荒船くんはそっと肩に手をやって支えてくれた。

「あー、なんだ、その、」
言いにくそうに手を無意識に帽子のつばにやろうとして、帽子をかぶっていないことに気づき、宙ぶらりんだった手を再び私の肩にやる。

「似合ってんぞ、振袖」
「ありがとう…!!」

今年もこの一言だけで良い事ありそう。おみくじも大吉間違いなしだ。

「もう二人で行けばよくないですか?」
「それは無理!」
「それは隊長としてはだな!!やっぱり隊のみんなと…」
初詣の帰りに屋台のたこ焼きを荒船くんがみんなにおごってくれました。

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